魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔であるオリオリは・・・
現在、全宇宙に君臨する邪悪な組織
『宇宙政府』、これに反抗する為
レジスタンスグループ『義勇軍』を率いて
打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌^_^



2ndシーズン第9章[囚われた全知全能]***惑星クラウド・ボォフゥ大陸編***
エピソード1.「乙女達の憂鬱」


ふーむ、おかしい。

うん、絶対おかしいわ。

だって今までそんな事、ほとんどなかった

もの、一体どうしちゃったんだろう。

・・・そういえばこの大陸に来てから

ほとんど姿を見せてないわ。

 

アタシは・・・偽ゼンチャン事件が解決した

直後に感じた違和感が頭から離れず次の

目的地に向かう旅路のさなかも、ずっと

その事を考えていた。

きっと難しい顔をしていたと思う。

 

と、そんなアタシと同じように難しい、

いやこちらは難しいというより思い詰めた

表情を滲ませていた人物が居た。

 

アタシは自分の違和感を思い切って

打ち明けてみようと小さな決心をした。

 

「ねぇコッツ・・・。」

 

「あのぉ、リザ殿・・・。」

 

えっ!?あ、あらやだ、思わず呼びかけが

被っちゃったわ。

 

「え、あ、ごめん、どうしたの?コッツ。」

 

「い、いえいえリザ殿こそっ!お先に

どうぞっ!」

 

「あ、あそう?じゃあごめん先に話するね。

えっと・・・ごめんコッツ、ちょっと

こっちへ。」

 

アタシはチラとモガ丸が手にしている

宇宙王の書を見やり、モガ丸から少し距離

を取って歩くようコッツを誘導した。

 

「あのね、オリオリなんだけど・・・。

そういえばここのところ、書から姿を

見せないな〜って。

ホラ、偽ゼンチャン事件が解決した時

だってこっちから呼びかけてようやく書

から出てきたくらいだし。

あぁいう、事件が解決した時には必ず姿を

見せてたと思うんだけど・・・。

コッツどう思う??」

 

アタシはオリオリに違和感を感じていた。

その事を率直にコッツに問いかけてみた。

 

「ボロンの事、やっぱりショックがまだ

尾を引いてるのかしら。

あ、ううん!

そりゃあ幼馴染だったんだもの、

引きずってるのは当然だと思うんだけど。

えっとね、コッツはその時まだ合流して

なかったけど・・・青雲の巨塔で旦那様が

義勇軍を離れるというメッセージを皆んな

で聞いたんだけど、その時もかなりショック

を受けたはずなのに気丈に振る舞っていた

と思うの。

ここまで姿を見せないってことはなかった

と思うんだ。」

 

コッツはしばし沈黙の後、口を開いた。

 

「・・・揺れておられるのではない

でしょうか?」

 

「え?揺れる!?そ、それは・・・

打倒政府路線かボロン、あ、いやピエール

の内政変革路線かって事・・・まさかっ!」

 

「あ、いや、リザ殿・・・そうじゃなく。

女性として、です。」

 

「え?女性として???

え、え?それはどういう・・・?」

 

アタシはコッツの言わんとしている事の

真意を図りかねた。女性としてって??

 

「・・・率直に言ってしまえば・・・

セアド様とボロンの間で揺れている・・・

つまりボロンが・・・異性としてオリオリ

様に愛の告白をしてしまった、その事に

よってオリオリ様のボロンへの見方が

変わってきている、という事かと。」

 

「ええぇぇぇ!!??

そ、そんな事って???」

 

「リ、リザ殿っ!!こ、声が!!」

 

ハッ!ア、アタシったらコッツのあまりな

衝撃的な発言の内容に思わず大声を出して

しまった!

思わずモガ丸のほうを見てしまう。

・・・だっ大丈夫、気づかれてはなさそう:(;゙゚'ω゚'):

 

「だ、だってっ!

オリオリはもう既婚者なのよ!

そ、そんなっ!いくら幼馴染だからって、

そ、そんな気持ちになるものなの!!??」

 

「わかりません、

ですがこれは女の勘です。」

 

「か、勘って!コッツ、アナタ何を言ってる

のかわかってるのっ!?」

 

「・・・無礼を承知で言ってます、リザ殿。

私の全くの憶測でしかありません、ですが

勘なのです。

ホラ、以前他ならぬリザ殿が私に言った

でしょ?『好きな人に告白してみれば相手

の人も自分を見る目が変わるかもしれない』

って。今のオリオリ様が正にその状態では

ないのかなと、私は思います。」

 

あっ!そ、そういえば、アタシ確かにコッツ

にそんな事言ったわ無責任にも。

そうか、だからオリオリもボロンを幼馴染

じゃなく異性として・・・って違うっ!

コッツの想い人は独身かもしんないけど

オリオリは既婚者なのよっ!?それとも何?

コッツの想い人も既婚者だっていうの!?

そ、それって・・・ふ、ふり・・・!?

 

「ちっ違いますっ!!

私が想いを寄せている人は独身ですっ!!

って私の話はともかくっ!・・・リザ殿、

私達の指導者に対し非常に不敬ながら発言

しますね・・・オリオリ様は多分・・・

生まれてこのかた、恋というものをされた事

がないのかな、と。生まれた時から結婚する

相手が決まっていた、いえ、もちろん

オリオリ様のセアド様への愛は嘘偽りのない

ものであると思います、そしてセアド様は

この上なく素敵な旦那様であられると私も

思います。しかしそれは・・・偶然、もしく

は奇跡でもあると思うんです。

オリオリ様のお家とセアド様のお家との婚約

はご本人達が生まれる前から取り決められて

いた事であると聞きます、セアド家に

生まれる男児がセアド様のような方では

なかった可能性もあって然るべきです。

オリオリ様の意志よりも両家の取り決めの

方が順番が先で効力が強いものだった

でしょうから、オリオリ様の旦那様となる

お方はセアド様以外の方であったとしても

オリオリ様に拒否権はなかったと

思われます。」

 

「ふむふむ。拒否も何も、生まれたての

赤ん坊には無理な話よね、承諾か拒否か

だなんて。」

 

「たまたまお互い愛し合う人物同士が夫婦

になれたわけです、これはほとんど奇跡と

呼べるのはわかってもらえます?リザ殿。」

 

「うん、わかるよ。・・・けど、結果、

現実にはお互い愛し合っている夫婦の妻で

あるオリオリがどうしてボロンを異性

として見ちゃうワケ?」

 

「オリオリ様の結婚は取り決めだったの

です、良き取り決めだった。

つまり用意された良き旦那様だった。

だから誰かから告白を受けるとか、自分で

誰かを選んで好きになる、という事が

なかったはずです。

今、オリオリ様はボロンから告白を受けた、

生まれて初めての出来事に直面されている

のです。愛の告白に限らず、人は誰でも

生まれて初めての出来事には戸惑うものでは

ないでしょうか?」

 

「なるほど・・・そうね、アタシやっぱ

恋愛にはとんと疎いもんだから理解が

どうしてもできない、というか追いつかない

けど・・・生まれて初めての事だったら、

確かにどうしていいかわからなくなるわ

よね。」

 

「はい。よもやオリオリ様が道を踏み外す、

なんて事はないと思いますが動揺はして

おられるのではないか、というのが私の

勘です。幼馴染だと思っていた者が自分の

事を異性として見ていた。恥ずかしいやら、

どうしていいのかわからないやら、

そのようなお気持ちなのではないで

しょうか?」

 

「しかもボロンの告白自体、ボロン自身も

複雑な心境の上でのものだったもんね。

ボロンはボロンでオリオリと知り合った

時点で既にオリオリには許嫁がいる状態

だもの、ボロンにはどうする事もできなかった、

けどオリオリにどんどん惹かれる自分を

止める事ができなかった。

ふーむ、そう考えるとボロンも可哀想では

あるわね・・・あらやだっ!アタシったら

ボロンの味方しちゃってるわ、いいえ!

だからって内政変革の話はまた別よっ!」

 

「・・・どうしようもない・・・だから

可哀想・・・かぁ・・・。」

 

「えっ?どうしたの?コッツ。

なんて言ったの??」

 

コッツはとても小さな声で何か呟いたんだけど、

アタシはそれが聞こえなかったの。

 

「あ、いえ!

なんでもないですよ、リザ殿。」

 

「あら、そう?まぁけど、もしそういう問題

なら完全に個人的な事だからアタシ達には

踏み込めない問題よね。

放っておくしかないのかしら。

ただ、軍としての行動に支障が出なきゃ

いいんだけど。アタシはそれが心配。

・・・ところで?

コッツも何か言いかけてなかった?」

 

もしコッツの勘が当たってるならこれ以上

アタシ達がアレコレ考えても仕方がない事だ。

アタシはコッツも何か話したげだったのを

思い出し話題を変えた。

 

「はい・・・これから向かう町・・・

ベェルですが・・・牢屋の町だとカラ殿は

おっしゃってました。

牢屋の町と呼ばれるからには宇宙政府に

捕らえられたたくさんの囚人がいると

思われます。

もしかすると連行された私の部下達、

3番隊の隊員達が収監されていないかと思って

いたのです、リザ殿、どう思いますか?」

 

あっ!!そうかっ!!確かに牢屋の町って

カラが言ってたわっ!

 

「うんうんっ!そうかもしんないわね!

牢屋の町っていうぐらいだからこの大陸だけ

じゃなくって、この星中の囚人が集められてる

かもしんないっ!

だとしたら3番隊の人達がいたとしても

不思議じゃあないっ!!

コッツッ!これは急がないとっ!ゼンチャンも

大事だけど3番隊のみんなを助けるチャンス

かもしんないよ!」

 

「は、はい!リザ殿にそう言ってもらえると

私も希望が湧いてきましたっ!」

 

「よしっ!これはオリオリにも伝えなきゃねっ!

今よりもう少しペースをあげようっ!」

 

コッツは・・・やっぱり隊長だ!牢屋の町と

聞いてピンと来たのね。それは常に隊員達の

無事を祈ってる証拠。

ドゥエイン、心配しなくてもコッツは立派な

隊長だよ。

バァジ島の秘密基地でコッツを叱責した

1番隊隊長のドゥエインに向かってアタシは

心の中でコッツの責任感の強さを伝えた。

 

うん、アタシも俄然期待感が湧いてきたっ!

アタシとコッツはモガ丸に近寄りオリオリを

呼び出してペースアップを進言した。

・・・もちろんオリオリが心揺れているかも

って話は内密のままね。

 

当然ながらオリオリも3番隊の事を気に

かけていたのでペースアップの件は全員賛成

だった。

よしっ!超特急でベェルへ向かおう!

ゼンチャンも3番隊も皆んな助けなきゃ!

アタシ達はもうほとんど走りながら牢屋の町

ベェルを目指した。




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
宇宙政府との抗争のさなか、自分を除く3番隊の
隊員全員を政府に捕虜として奪われてしまう。
その事に深く後悔と自責の念を抱きながらも
アタシ達と共に懸命に冒険を続け、
上級執行官候補者やピエールとの戦いでは
実際に戦闘に参加するなど戦力面でも
成長を遂げる。
アタシに憧れを抱いている模様\(//∇//)\

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