魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

61 / 80
アタシは魔道士リザ。
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔であるオリオリは・・・
現在、全宇宙に君臨する邪悪な組織
『宇宙政府』、これに反抗する為
レジスタンスグループ『義勇軍』を率いて
打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌^_^



エピソード4.「基地での小さからぬ変化」

ビュウウウンビュウウウウンッ!!

 

「あぁ、もう行ってしまわれた・・・。」

 

「事情や経過報告すらなさらないとは

・・・よほど急を要する展開なのか?」

 

大規模ルーラでバァジ島の基地へ瞬間移動

してきたアタシ達。

けどゼンチャンは今にも処刑されちゃう

かもしれないので、アタシもオリオリも

・・・ほとんど会話をせず、

 

「3番隊を見つけましたっ!

皆無事ですっ!ここで療養させますっ!

ゼンチャンの件で急ぐので我らは即刻

現場へ戻りますっ!

マルツェル!事の次第を皆に伝えるようっ!

ドゥエインッ!3番隊が知らない事を

全て話すようにっ!

ではっ!

我らはこれにてっ!!

モガ丸さん、お願いしますっ!!」

 

「あ、あぁ!

よおし、じゃあベェルの町へ戻るぞ!

ルーラッ!!!」

 

というカンジで即刻ベェルの町へと

トンボ帰りしたの。

 

「そ、それにしても・・・マルツェルッ!

本当にマルツェルかっ!?」

 

「ドゥエイン隊長っ!

ご無沙汰しておりましたっ!

いかにもっ!

3番隊副隊長マルツェルにございますっ!

マルツェル以下3番隊全員、ただ今

帰還いたしましたっ!!」

 

「ただ今戻りましたっドゥエイン隊長っ!」

 

「ドゥエイン隊長っ!」

 

マルツェルと3番隊の若い隊員達が口々に

ドゥエインに無事の帰還を報告する。

 

「お、おぉ!3番隊の小僧達、み、みんな

揃っている!本当にっ!

無事だったかっ!良かった・・・!」

 

ドゥエインも・・・以前に厳しくコッツを

叱責してはいたものの、それはドゥエイン

自身も3番隊の安否を気遣っていた証拠。

全員無事の帰還にホッと胸を撫で下ろした

様子だった。

 

「うむ、それで?マルツェル、オリオリ様

が仰っておられた事の次第とは?

取り急ぎ今現在、オリオリ様達が

置かれている状況を報告せよ。」

 

「はっ!

し、しかし報告の前に・・・1つ質問を

してよろしいですかドゥエイン隊長。

そ、そこに立っている赤い顔の・・・

ま、魔物!?は、一体どういうわけで

この基地に居合わせているのですか?」

 

「ん?お、おぉそうか、お主達はずっと

魔法団の警護をしておったゆえ今日が

初顔合わせか。」

 

マルツェルは言外に・・・魔物がいる前で

アタシ達の現況、つまり軍の最重要機密を

口にしていいのかドゥエインに確認

したかったのね。

それを察したのか・・・。

 

「む、これは。

ワシは外した方がいいのかな?

ハッハッハッすまぬ、気が利かんことで

あったな。」

 

「あ、いやマレドー殿、構わぬ、同席

してくれ。

オリオリ様達の現況、むしろ意見があれば

申して欲しい・・・。

マルツェル、案ずるな、この方は大丈夫だ。

名はマレドー、宇宙政府の元上級執行官で

今は義勇軍に籍を置き我らに協力して

くれている。」

 

魔物、元政府の役人マレドーが恐縮して

席を外そうとしたけどドゥエインが

それを止めたの。

最新の、最前線の情報だからこそマレドー

に聞いてもらいたいという・・・。

それぐらいにマレドーの軍内での役割は

小さくないものになってきているという

表れかもしれないわね。

 

「もっ、元上級執行官ですとっ!?

ほっ、本当に大丈夫なのですか、隊長!?」

 

「はっは、驚くのも無理はない。

しかしマレドー殿は本当に大丈夫だ。

宇宙政府に属する者全てが全て、邪悪な

考えの持ち主ではない、という事実の

お手本のような方だ。

それはオリオリ様もご承知の事だ。」

 

「ドゥエイン様、それは持ち上げ過ぎ

だろう、こそばゆくなってきたわい。」

 

えらく和みムード。

1番隊とマレドーは待機状態が長いからか

親睦が深まっているのかもしれないわね。

 

「は、左様でしたか。

マレドー殿、失礼の段お許しください。」

 

「なに、マルツェル殿の申す事は

ごもっともな事です。

して、司令官らの状況とは?

あの様子だとゼンチャンについて

既に何か情報を得ているようだが?

お聞かせ願えるか?」

 

「はっ!

実は我らもほんの数時間前にオリオリ様や

コッツ隊長に救出されたばかりで

ゼンチャンとの関係性などは存じ上げない

のですが。」

 

「ふむ、そうだなぁ、お主達は長く世間

から隔離されていたわけだから、

知らない事の方が多い。

ま、それについては話が長くなる、

まずはお主が知っている事を話して

くれるか?マルツェル。」

 

「はい。

我らはボォフゥ大陸のベェル町という、

囚人達を収容する施設に収監されて

おりました。

ある時、そのゼンチャンという者が

連行されてまいりましたが時を経ずして

処刑が決まり、あっという間に処刑場へ

連行されていってしまったのです。」

 

「なっ!処刑だとぉ!?」

 

「はっ!

オリオリ様達はゼンチャンに面会を求めて

ベェル町に参られたようですが処刑の

事を知り、急ぎゼンチャンを救出すべく

処刑場に向かう、との事です。

そのさなか、我らを偶然にも発見し救出

していただき、此処の基地で静養するよう

にとご命令された次第です。」

 

「・・・うむ、了解した。

しかし運良くゼンチャンの足取りを掴めた

はいいものの、処刑間近とは。

救出が間に合えばいいがのぉ。」

 

「ベェルの収容所から処刑場へ連行か。

むぅ、まずいな、そのルートには

確か監獄の砦という関所があったハズ。

そこは政府関係者だけが有する手形が

ないと越える事が出来ないのだ。

司令官、どうするつもりだろう?」

 

「・・・強行突破・・・だと存じます。」

 

「強行突破っ!?」

 

「はい。

あの強き冒険王のご令嬢がそう仰って

おられたかと・・・。

彼女らなら、それも可能かと・・・

自分は思います。」

 

「はっ、ハッハッハッハ!

こ、これは失敬っ・・・クック・・・

いやこれが笑わずにいられようか。

確かに!ブルリア星の冒険王殿・・・

特にあの魔道士のお嬢さんは・・・

堂に入ると鬼神の如き荒々しい気性に

変貌すると聞く、魔界の魔神でも寄り付かん

ぐらいにな。

他でもない貴公の隊長のお嬢さんが

申されておった。

ゼンチャンの処分を聞いて政府のやり口が

余程に腹に据えかねたのであろう、

いやむしろ単純明快、強行突破こそが

最も成功率の高い行動かもしれんなぁ。」

 

監獄の砦のアタシ達の攻略方法を聞き

珍しくマレドーが声を上げて笑った。

って何っ!?

誰が鬼神ですってー!?

んもうっ!コッツったらっ!

アタシに内緒でアタシの事そんな風に

言いふらしてたなんて!

 

まぁけど、宇宙政府の理不尽な仕打ちや

ピエールの自己中な考えを聞くと自分を

抑えられなくなるってゆーのは否定

できないけど(-_-;)

 

「ん、よし、承知した。

とにかく現状は・・・ゼンチャンの所在を

掴むところまで進み、これを救出する

為に動いておられる、という事だな。

報告ご苦労だったマルツェル。

そして・・・長き牢獄生活に耐え3番隊

総員無事に帰還した事、大義であった。

このドゥエインも嬉しく思うぞ。」

 

「はっ!

ありがたきお言葉っ!

ドゥエイン隊長、我らの隊長コッツは

・・・立派になられた。

再会してまだ数時間と経っていないが、

以前とは全然違う表情をしていた。

ジニョリスタ塔で生き別れて以来、

どのように過ごされたのか存ぜぬが

さぞかし厳しい修羅場をくぐり抜けて

きたのであろう。」

 

「ふむ、そうか。

副隊長のお主がそう言うのだから

きっとそうなのであろう。

そしてお主には礼を申さねばな。

3番隊が全滅の危機に扮した際にコッツを

逃すよう取り計らってくれたのは

お主の意向であろう?」

 

「無論です、自分はコッツ隊長の後見役

です、当然の行為です。」

 

「俺は此処でコッツをこっぴどく

叱りつけた。

隊を捕虜に取られておめおめ逃げ延びる

など無責任にも程がある、とな。

しかしそこにはお主の意向が働いている

のは容易に想像できた。

お陰でコッツも3番隊の隊員も皆無事

だった、そしてお主達が全員無事だった

事でコッツの心も救われただろう、

全てお主の英断のおかげだ、

ありがとうっ!」

 

そう言ってドゥエインはマルツェルに

向かって頭を下げたの。

 

「隊長っ!

頭を上げてくださいっ!

自分は当然の任務を果たしたまでの事。

そもそも政府の執行官ドアヌの軍勢に

不覚を取りさえしなければ、ここまで

軍の皆に心配を与えることもなかった

のです、自分の不甲斐なさを恥じて

おります。

更に言えば・・・あの白いスライムナイト

さえ現れなければこんな事には・・・!」

 

「む、白いスライムナイトか。

マルツェル、今度はこちらからの報告

になるが・・・。

こちらは喜ばしい事やら、そうでない事

やら、色々状況が複雑すぎるのだが。

まずはどこから話そうか。」

 

ドゥエインの口調が明らかに暗い色を

帯び始める。

マルツェル達3番隊がドアヌの軍勢に

襲われてから後の事・・・

星屑魔法団の翻意の理由、新しい魔星王

の事、そして・・・白いスライムナイトの

事・・・それらを順を追って・・・

マルツェルが気を取り乱さないように

気遣いながらゆっくりと・・・報告をした。

 

さすがにマルツェルは・・・平常を保つ

のが難しい様子でドゥエインの語る

報告内容を聞き漏らすまいと必死の形相で

聞いていた。

 

「・・・というワケで・・・目下のところ

我々が今最も為すべき事は新しい魔星王

の眠る場所、これを見つけ出す事にある。

その場所を教えてくれそうなのが

ゼンチャン、というワケだ。」

 

「・・・なるほど・・・それでオリオリ様

達はあれほどにゼンチャンの救出を

急いでいたというワケなのですね。

・・・しかし・・・星屑魔法団の翻意が

偽りであったのは喜ばしいが・・・

白いスライムナイト・・・!

あれがまさか親衛隊長殿だったなんて

・・・我らを愚弄するにも・・・いや

義勇軍全体を軽んじるにも程があるっ!!」

 

ガシッ!!

 

マルツェルは平伏したまま、床を拳で

殴りつけ、その態勢のままワナワナと

肩を震わせた。

やり場のない怒りを床にぶつけるしか

なかったんだろう。

 

「あぁ、ボロンについては俺も失望

している。

色々な考えを持つのは個人の自由だ。

しかし義勇軍に於いて重要な役割を

担っている者が・・・秘密裏に政府に

加担する事、それが許せぬ。

そして・・・私的にもヤツはオリオリ様の

幼馴染、最もオリオリ様が傷つく事を

しでかしたという事を、ヤツは理解

していないのだ。」

 

ボロンの寝返りについては、やはり

他の義勇軍のメンバー達も相当ショックを

受けている様子だった。

当然よね、アタシだって相当ショック

だったし腹立たしかったもん(๑`^´๑)

 

「属していた組織を裏切るという意味では

ワシも同じ立場なので心苦しいが。

ワシもボロンの行動や行動原理には

納得のいかない事が多すぎるので敢えて

申し上げる。

まず、宇宙政府を内部から変革させる

という彼の大前提の行動原理、これが

無理がある話なのだ。

政府の上層部は腐敗し切っている。

もはや自分達の富と権力を維持する事

以外に意識が向くなどあり得ん状態だ。

ワシも随分煙たがられたものだ。

統率力を持ってして宇宙を支配する事

すらもう眼中にない。

それ故ボロンのような新参者が暗躍する

事ができるという側面もあるにはあるが

内政変革に本腰を入れて動き出した瞬間、

上層部からの反感を買うだろう。

今はまだ、その動きを鮮明にしていない

ゆえ、上層部からマークされていない

という状態に過ぎん。

上層部が一旦、危険分子と判断したなら

強大な力であっという間に排除されて

しまうだろう。

若いボロンには・・・政府の恐ろしさの

実感というものが存在していないゆえ

内政変革などという妄想に固執するので

あろうな。」

 

政府の元上級執行官ゆえにマレドーの

言葉には説得力が備わっていた。

 

「・・・まぁ、ボロンには個人的な

想いもあるようなので、内政変革を

どこまで真剣に考えているのかは

測りかねるがな。

人間の恋愛感情など魔物のワシには

さっぱりわからん感情ゆえ。

もしや、その恋愛感情とやらが彼の

行動原理の中心で、それを満たす為に

宇宙政府の内政変革を手段に選んだ、

と言えなくもないかもしれん。

若い男にはよくありがちな事では

ないのか?

どうであろうドゥエイン様?」

 

「む、むぅ、どうであろうな、同じ男

として、惚れた女にイイ所を見せたい

と思う気持ちが全く理解できないわけ

ではないが・・・だとしても選んだ選択肢

がどれだけの規模で周りに迷惑をかけて

いるか・・・俺だったら絶対に避ける

がな。」

 

そう、ボロンがオリオリに恋愛感情を

抱く事、これは心に発現する自然現象的

な要素だから、誰も批判できる事じゃない。

けどお互いの立場や気持ちを考えて

それを表出しない事が己の心の強さだと

アタシは思うの。

 

けど彼はそれをやった。

そして自分の気持ちに忠実に行動した。

ただ想いを伝えるだけならまだしも

色んな人に迷惑をかけるやり方で。

 

「そうか、やはり同じ人間の男であっても

気持ちはわかっても行動に移したその

思考回路には賛成しかねるという事だな。

・・・しかしワシは1つ懸念があってな。

司令官がボロンに下した処分、甘過ぎる

のではと憂えておる。

その場で処刑するか、それが難しくても

投獄、幽閉などの措置を取るべきだった。」

 

「む、マ、マレドー殿、オリオリ様に

ボロンを殺せ、と申すのか?

それは・・・それでむごい話ではないか?」

 

「そうであろうか?

ボロンのしでかした事で、ここに居られる

マルツェル殿らが受けた仕打ちを考えれば

当然の報いだと思うが。

それに、自分の欲望にあれほど忠実に

動いてしまうような男だ、しかも自分には

非がないと信じている。

この先またとんでもない事をしでかす

かもしれん。

義勇軍にさらなる災いを運んでくるやも

しれん。ワシはそれが心配なのだ。」

 

「む、むぅ、そう言われてしまえば

・・・。しかし今はもう、ボロンが我が軍

にとって限りなく敵対勢力である事が

判明しているのだ、警戒を強め事に当たる

より他あるまい。

俺もボロンのやった事は腹立たしいが

命まで取ろうとまでは、さすがに

思えない。」

 

「じ、自分もドゥエイン隊長と同意見

です。

1発殴ってやりたい、とは思いますが

それで目を覚ましてくれれば、とも

思います。」

 

「左様か、いや気分を害されたのなら

申し訳ない。

ワシの心配も杞憂に終われば良いのだ。」

 

アタシも・・・。

ドゥエイン達と同じかな。

死んでしまえばいいとまでは思わないけど

早く目を覚ましてくれないか、とは思う。

だって、ずっと仲間だと思ってたから。

 

けどこの時マレドーが口にした懸念。

残念だけど後に現実のものとなって

しまうの・・・。

 

「さて、お互いの報告は以上か。

ワシは少し疲れたので休ませてもらい

ますぞ?ドゥエイン様。」

 

「了解した。

マレドー殿、貴重なご意見をいただき

感謝する。」

 

「うむ。

マルツェル殿も長い牢獄生活は体に

こたえたであろう、早く休まれると良い。

では失礼する。」

 

そう言うとマレドーは部屋から退出した。

部屋にはドゥエインとマルツェルが

残る。

 

「・・・ところで隊長。

コッツ隊長には・・・あの事実は

伝えられたのですか?」

 

「・・・いや。

今更伝えたところでな・・・。

コッツは・・・随分と逞しくなって

きたようだなマルツェル。

もうこのまま、伝えぬまま過ごすという

のもひとつの選択肢かもしれん。」

 

「・・・左様ですか。

であれば出過ぎた質問でございました。

申し訳ございませぬ。」

 

「いや、心遣い感謝する。」

 

部屋を出たマレドーは基地の外に向かい、

1番隊の訓練風景に視線を送っていた。

 

「せいっ!やぁああ!」

 

「せいっ!やぁああ!」

 

「せいっ!やぁああ!」

 

隊員達の訓練の掛け声が辺りにこだまする。

マレドーは無言のまま視線を送り続ける。

 

(「・・・3番隊が全員無事帰還・・・

頭数では現状維持か・・・。

しかし頭数に数えるのも憚れるような

小僧ばかり・・・。

小さい、小さ過ぎるのだ、義勇軍っ!!

個々の戦闘力、確かに人間にしてみれば

それなりに高い者ばかりだろう。

ワシの提案した、一段上のlvに上がる為の

訓練メニューをも、この隊員達はどんどん

こなせるようになって来ている、

その志も、宇宙政府に虐げられた者の

反骨心を土台とし打倒政府の志はこの上なく

高いと感じる。

しかし規模がっ!小さ過ぎるのだっ!

軍の規模に懸念を抱くという点ではワシも

ボロンと同感だ。

しかし宇宙の為に宇宙政府を打倒する

気持ち、これはオリオリ司令官に共鳴する。

あぁワシはっ!

どうすればいいのだ!どうすれば政府を

倒し平和な世界を作れるのだっ!!」)

 

訓練風景を見ながらもマレドーの思考は

深い海の中を彷徨うようだったの。

 

(「セアド殿だっ!星屑魔法団団長殿!

彼に会ってみたい、どのような展望を

抱いているのか知りたいっ!

このワシでも思いつかないような事を

彼は考えていた。

きっと政府を倒した後の事までビジョン

として持っているに違いない。

魔法団は依然、義勇軍と同盟関係にあると

判明した。このまま義勇軍に籍を置いて

いれば、いずれ彼と会うこともできる

だろう。

しかしワシは待てるだろうか?

毎日毎日、この規模の小さい訓練風景を

見ながら待てるだろうか?

いや、今のワシにできるのはそれしか

ないのだろうがな。」)

 

深い思考が巡り巡るも、結局は最初の

思考へと還ってくる。

思考の堂々巡りに疲れたのか、マレドーは

自室へと戻っていった。

 

その夜、義勇軍の面々が寝静まった後、

基地の外へ出、近くの森へ入っていく

1つの人影があった。

基地の入り口を警護していた見張り兵の

眠らされた姿が転がっていた。

 

森の奥深くまで歩いてきたその人影は

水晶玉を手にしていた。

その玉を胸元近くの宙に浮かせて

人影は何やら呪文を詠唱する。

 

玉は白み薄い光を放つ。

光に照らされた人影、マレドーだった。

 

(「魔星王を生み出す秘術のような

大きな術を扱える者であれば水晶の交信

ごとき容易く扱えるはず。

頼む、映ってくれ!」)

 

マレドーは水晶玉を使い誰かと交信しよう

と試みていたの。

すると水晶玉に誰か、人影が映し出された!

 

「しめた!」

 

マレドーの小躍りするような小さな叫び声

が暗い森にこだました。




★★★登場人物★★★
・ドゥエイン
義勇軍1番隊隊長。
アタシ達が前線に赴いている間バァジ島の秘密基地
で留守を預かってくれているの。
加えて宇宙政府から寝返った元上級執行官マレドー
の警護も担当している。
同じ隊長クラスとはいえ若い3番隊隊長コッツに
厳しくもあり、気にかけてもいる様子。
・マレドー
宇宙政府の元上級執行官。
魔物ではあるけど真に宇宙の平和を願う男。
それゆえに宇宙政府のやり方に反発し
義勇軍に寝返った。
一見、邪悪な風貌をしているのに加えて
上級執行官ほどの男が寝返るという事実に
アタシは信用に値できるのか疑問を抱いていたけど
執行官時代の善政を市井の人々から聞き考えを
改めたの。
・マルツェル
義勇軍3番隊副隊長。
若い隊長コッツをサポートするために請われて
副隊長の任に就いた。
ドゥエインとは旧知の仲らしく、それが副隊長
に推薦された理由かもしれないわね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。