魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

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アタシは魔道士リザ。
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔であるオリオリは・・・
現在、全宇宙に君臨する邪悪な組織
『宇宙政府』、これに反抗する為
レジスタンスグループ『義勇軍』を率いて
打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌^_^



エピソード9.「宇宙王一族の覚悟」

この洞窟そのものが巨大な処刑場・・・

その名の通り、さっそく処刑場の洗礼を

受けたアタシ達は、なんとか最初の“刑”を

切り抜け洞窟内部へと進んでいた。

 

逸る気持ちを抑え難くはあるけど、また罠

にかかって全滅の危機に瀕するのは

絶対に避けたく、警戒を強めて慎重に

進んでいた。

 

洞窟内はまさに処刑装置のオンパレード

だった。

 

「モガッ!

前方後方とも扉が閉まったっ!?

こ、今度はどんな処刑だっ!?」

 

シュオオオオオオオ

 

またまた密室に閉じ込められたかと

思った矢先、なにやらガスのようなものが

噴射されるような音が聞こえてきたっ!

密閉空間・・・ガス・・・毒殺かっ!?

ガス処刑っ!?

 

「クッソォ!!

こんなに密閉された狭い空間では、

たちまち毒ガスが回ってしまうぞっ!!」

 

「う、ゴホゴホっ!!」

 

「みんなっ!!喋っちゃダメっ!!

口からガスを吸い込んで毒の周りが

早くなってしま・・・ゴホッ!!

ゴホッォオ!!」

 

クッ!毒ガスッ!

な、ならばこの呪文でっ!!

 

「主神ミトラよっ!

害なす魔の因子から我らを護り給うっ!

トラマナッ!!」

 

ボワァアアン

 

アタシの杖から淡い木白色の光が生まれ

パーティー全員の体を覆った。

毒や電磁波といった類のダメージを負う

物質を寄せ付けない聖なるバリアを用い

体を護る補助呪文をアタシは詠唱した。

 

「これで大丈夫、しばらくは毒が充満

したこの部屋でも毒に侵される事は

ないわ。」

 

「え?あ・・・ほ、ホントだっ!

息をしても苦しくないっ!!

モガーッ!!スゲーぞリザッ!!

毒ガスでさえもリザにかかれば無力に

なってしまったぞーっ!」

 

「ピピィっ!」

 

とはいえ皆、多少は毒を吸い込んで

しまったでしょうから、ついでに解毒も

しなくては。

その前に・・・いくら寄せ付けなくした

とはいえ、致死量の毒ガスが充満している

こんな気持ちの悪い空間からは一刻も早く

脱出したい。

中からは扉を開けるスイッチは・・・

ないか、当たり前ね。

では強行突破しかない!

 

「みんな、下がっててっ!」

 

パーティーを後方に下がらせてアタシは

出口の岩でできた扉に向かって呪文を

詠唱した。

 

「イオラッ!!」

 

キュ〜〜〜ンドォオオオオン

 

岩の扉に向かって中級の爆発呪文を炸裂

させた。

 

ガラガラガラ〜〜〜〜

 

岩でできた扉は派手に破壊され奥へと続く

通路が姿を見せた。

ヨシ、脱出しよう!

“ガス室”から脱出するようパーティー

全員に促す。

 

「モガ〜、しっかしホントに罠だらけ、

っていうか処刑装置だらけだな〜、オイラ

もうくたびれたぞ〜、体力もそうだけど

気持ちが・・・」

 

モガ丸が愚痴るのも致し方ない。

洞窟内の床、天井、壁・・・全てに罠の

作動スイッチが仕込まれてるかも

っていう疑心暗鬼の連続で・・・。

気が狂いそうだわ。

 

「しかし、どれもこれも全くもって残虐な

方法の処刑装置ばかり。

ヤツ・・・処刑の洞窟の役人サシーラは

死刑囚に対する慈悲、敬意といった感情

を全く持ち合わせておらぬ。

ただただ殺しを楽しむような狂った殺人鬼

だ。処刑執行人の風上にも置けぬヤツ

・・・!」

 

突然、コモゴモスが処刑の洞窟の役人

・・・サシーラって名前なの?・・・

そのサシーラをなじるような事を口に

したの。

同じ政府の魔物から見ても・・・サシーラ

とやらの残虐非道なやり口には反吐が

出るんだろうか。

うん、そりゃそうよね、当然ながらアタシ

だって・・・この洞窟に仕掛けられている

トラップ兼処刑装置・・・こんなの作るの

頭がイかれてるとしか思えないもの。

けどコモゴモスが語った今の話で・・・

なんか違和感も感じたは確か。

囚人に対して慈悲、敬意を払う・・・?

コモゴモスには囚人を尊敬するっていう

考え方が存在するんだろうか・・・?

 

この時アタシは・・・コモゴモスの言葉

の意味を理解していなかった。

いや、サシーラの残虐な人格を嫌悪する

っていう意味だとしか思い至らなかった

といったほうが正しいかしら。

この言葉の真の意味を理解するには、

もう少し時間が必要だった。

 

ガス室から脱出してからもいくつか

処刑装置に出くわした。

床一面に電磁波が流れている部屋、

切り立った一本の細い床の両側が谷底の

ように抉られ、その谷底に無数の剣が設置

されている空間など。

 

電磁波の床は、またまたトラマナで

切り抜け断崖絶壁の剣山の部屋は慎重に

歩を進めて事なきを得た。

 

やがて洞窟の最深部にようやく到達した。

そこは、この洞窟に入ってからでは

1番広い空間だった。

そこには・・・ゼンチャンとコッツを

攫った憎き役人のボス、サシーラが居て

・・・さらには・・・信じられない光景

が広がっていたのっ!!!

 

「やはり・・・ここまで辿り着いたか

義勇軍ども。予想はしていたが・・・。

しかしあれほどの数の処刑装置の罠を

突破してくるとはな。

いや、こうでなくてはっ!

さすがだぞ、義勇軍の面々っ!

ほれ、せっかく面白い余興を用意して

やったのだ。

途中で死んでしまわれたら興醒めと

いうものっ!」

 

「あ、ぐ・・・グググ・・・!

オ、オリオリ様・・・リザ殿・・・!!」

 

「オリオリちゃんっ!!!

た、助けてっ!!

コッツちゃん、もう限界よぉっ!!!」

 

「はーっはっはっは!愉快、実に愉快っ!

実にいい声を出すじゃないかっ!

ええっ?ゼンチャンっ!

それに義勇軍の女戦士よぉっ!!」

 

なんとっ!!

ゼ、ゼンチャンがギ、ギロチン台に

かけられているっ!

そしてギロチン刃はっ!!

つっかえを外されて、1本の鎖のみで

なんとか空中で留まっているっ!

そ、その鎖の先を視線で追うとっ!

コッツがっ!!

コッツの手にグルグル巻きにされていたっ!

つまりゼンチャンの首が飛ぶかどうかは

コッツ自身に委ねられているっ!!!

 

な、なんという残虐非道な仕打ちっ!!

これまでたくさんの政府の卑劣な魔物と

出会ってきたけれどもっ!

こんなに酷い事をするヤツは見たことが

ないっ!!!

お、おのれ・・・ゲスが〜〜〜!!!!

 

「クックック、このギロチン台は俺様

自らが考案し作らせた特別製でなぁ、

巨大な魔物の首でもあっさり切断できる

シロモノさ。

それぐらいに強力って事はよぉ、ギロチン刃

も相当な大きさ重さってワケよぉ。

この義勇軍の女戦士が一体どれぐらいの

時間、このままの態勢でいられるか、

どれぐらいキツイ状態かってのは容易に

想像できるよなぁ??」

 

た、確かに!

ゼンチャンがかけられているギロチン台は

人間を“設置”するにはサイズが大きすぎ

だと思われる。

ゼンチャンの上方で、その首を今にも

落とさんと構えている刃も異常なほどに

大きい。

あ、あんなモノを!

そのか細い腕で引っ張らされているコッツ。

その肉体的苦痛と、自分がゼンチャンの

命を握らされているという恐怖、重圧。

とても耐えられないものに違いないっ!

 

な、なんという卑劣極まりない所業っ!

自らゼンチャンの処刑を行うといいながら

自らの手は汚さずアタシの仲間の手を

汚させようという・・・!

 

バチィッバチィ!!

 

「あうぅっ!!」

 

「カーッカッカッカッ!

ほれ、手を離すんじゃないぞぉ!!

お前らが助けようとしているゼンチャン、

その首をお前が吹っ飛ばしてしまうん

だぞぉっ!?えぇっ!?

ほれぇっ!!しっかり握ってろよぉ!?」

 

バチィッバチィッ!!!

 

「ギャッ!!」

 

「ヒエェェッ!!コッツちゃんっ!!

ご、ごめんねぇワタシのせいでぇ!

け、けど、頑張ってぇっ!!!」

 

な、なんと役人のボス、サシーラは

あろうことか必死で鎖を引っ張っている

コッツの腕を手に持ったムチで何度も

鞭打ったのっ!!

あれではっ!

もう今にもコッツは苦痛に耐えきれず

鎖を手放してしまうっ!!

グギギギ、なんと卑劣なっ!!!

こんな卑怯な魔物は見た事がないっ!

アタシは怒りに震えとっさに杖を構えた!

 

「おっとぉっ!動くなよ?

妙な事や俺を攻撃しようもんなら

即刻コイツの首をはねちまうからな!?」

 

処刑の洞窟の役人はそう言うともう片方の

手に持った巨大な斧の刃をゼンチャンの

首元にあてがった。

刃の大きさはギロチン刃と同じぐらいの

巨大さだった。

 

「ヒッ!!

た、助けて〜〜〜!!!

こ、殺さないでーーーーー!!!」

 

「ハーッハッハッハッ!

いい声で鳴くじゃないかぁ、えぇ!?

ゼンチャンよぉ〜。」

 

クッ!

人質の命を盾にされては・・・!

アタシ達にはなす術がないっ!

 

「まぁそういうワケだ、ほれ、武器を床に

置きなっ!

貴様ら義勇軍はそこで指を咥えて見物する

しかないって事さ!

“公開処刑”の見物人になるしかな〜っ!」

 

「リ、リザ姉・・・。」

 

「姉ちゃん・・・。」

 

ジョギーとレイファンがチラとアタシを

見やる。

アタシは小さい頷きを2人に返し杖を前方

の床に置いた。

 

コト

コト

 

弟達もアタシに倣い武器を床に置く。

 

「ヘッヘッヘ、よぉしお利口さんだな。

あ、いや、どのみちゼンチャンの首が

飛ぶのは時間の問題。

お前らは無抵抗なままコイツが死ぬのを

黙ってみているだけ。

何も得るものがない。

ただただゼンチャンの首が飛ぶだけだ。

俺だったらゼンチャンを犠牲にしてでも

敵と戦うがな。

ゆえにお利口さんとは言い難いな〜

とんだ間抜けばかり揃ってるってワケだ、

ハッハッハッハ!」

 

くっ!確かにっ!

このままでは敵を倒すことも出来ず、

コッツの体力が尽きてゼンチャンが

殺されるのを待つだけ。

かと言ってヤツを攻撃すればたちまち

ゼンチャンの首は刎ねられてしまう。

ど、どうすれば・・・!

 

「へへ、さぁ後はこの女が力尽き鎖を

離すのを待つだけ。

それまで時間がある、俺が面白い話を

してやろう。

今、たった今、貴様らは“公開処刑”を

用意したこの俺を残虐な魔物、だとでも

思っているだろう?

しかし公開処刑ってなぁ、その昔、宇宙王

の時代ではよく行われていた出来事だった

んだぜぇ?」

 

む?な、なんだ?

なんの話をしようとしている?

 

「街の広場にギロチン台が置かれ、罪びとは

そこで処刑される。

広場には大勢の見物人が溢れかえっていた

そうだ。皆余興として公開処刑を楽しんだ

って話だ。

興味本位、蔑み、被害者遺族の怒りや仇感情

など、それはそれは様々な思惑が渦巻く

空間の中で罪びとは首を刎ねられる。

どうだい、お前ら人間も相当残虐な歴史を

持ってると思わねえか?」

 

な、なんと・・・我々人間にもそのような

暗い歴史があっただなんて・・・。

そ、それは本当の事なんだろうか?

オリオリ・・・コイツの言ったことは

でまかせではないの?

書から現れた宇宙王の末裔の女性は

・・・重い表情と声で答える。

 

「・・・私も話でしか聞いたことは

ありませんが・・・確かにそのような

出来事が過去の宇宙王時代にあったとは

聞いています・・・。」

 

オリオリはものすごく暗い表情で・・・

しかし魔物が口にした過去の事実を

肯定した・・・。

 

ま、まさか本当だったなんて・・・。

平和だったっていう宇宙王の時代に・・・

しかも人間がそんな残酷な事をやって

いたなんて・・・。

 

「初代宇宙王の時代・・・その創成期は

・・・未だ各地で反乱勢力による戦火の

灯火が燻っていたといいます。

不安定な情勢だったのでしょう。

王は反対勢力への抑制効果として敵方の

捕虜を厳しく処断されたそうです。

それが平和で安定した社会を早く到来

させるための手段だと考えた、と私は

伝え聞いております。」

 

・・・つまり・・・平和な世の中を

もたらす為に多少の犠牲は厭わなかった

というワケか・・・なんだか子孫である

オリオリの理念とはかけ離れた思想ね

・・・しかしアタシには当時の情勢や

状況はわからない・・・それをしなければ

いけないほど当時の世は荒れすさんだもの

だったのかもしれないわ・・・今アタシ達

が軽々しく初代宇宙王を非難するのは

愚かしい事なのかもしれない・・・。

きっとオリオリもそう考えているからこそ

の・・・この暗い表情なのかも。

 

「宇宙政府の処刑の役人、名はなんと

言いましたか?」

 

「あぁ!?

あぁ、そう言えばまだ名乗りを上げて

なかったなぁ。

俺様はボォフゥ大陸の囚人収容施設及び

処刑場を管轄する担当官サシーラだ。

しかし、俺様の名を知ったところで

貴様らには意味のない事だ・・・

ゼンチャンの処刑が済んだらすぐさま

貴様ら全員、俺様が直に処刑してやるから

なぁ、ハッハッハッハっ!」

 

「・・・サシーラとやら、確かに貴方の

申す通り、過去の時代には人間の社会

にも公開処刑という悲しい出来事が存在

していました。

しかし、それは必要悪だったのです・・・

致しかたのなかった事だったと・・・

私は思うようにしています。

しかしながら貴方は・・・!

明らかに処刑そのものを楽しんでいるっ!

この洞窟内に仕掛けられた数々の処刑装置

・・・どれもこれも残虐極まりないもの

ばかりですっ!

死刑囚が受ける苦痛は想像を絶するもの

ばかりでしょうっ!

少なくとも我が祖先、宇宙王が課した

処刑方法は死刑囚の苦痛が最も少ない

ギロチンのみだったと伝え聞いています

っ!

王に必要だったのは反体勢力者達の死

という事実のみで、いかに苦しませながら

殺すか、という内容は必要としていません

でしたっ!

貴方のような狂った殺人者と同列に

語られる事は私は許す事はできませんっ!」

 

「ハンッ!

御託を並べたところで囚人を殺した事に

変わらねぇさっ!

お前もその大量殺人者の血を引いてるっ!

俺様と何も変わりはないぜっ!

まぁ最もっ!

先祖が犯した粛清と言う名の大量殺人の

業・・・やがてはその子孫に跳ね返って

来たワケだがなぁ!」

 

ピクッ!

 

オリオリと役人サシーラとの応酬、

アタシには凄まじい内容過ぎて・・・

ただただ聞き入る事しかできない・・・。

初代宇宙王時代の創成期の・・・生々しい

実情が明らかにされていく!

 

そんな中、サシーラの、「先祖の所業が

子孫に返ってくる」という言葉を聞いた

瞬間、オリオリの体が一瞬強張った。

いえ、オリオリだけじゃない、後方に

控えているコモゴモスの体も・・・

一瞬震えたようにアタシは感じた。

しかしアタシはサシーラの次の言葉に

意識を奪われていて、なぜコモゴモス

までもが体を強張らせたのか、という

疑問を感じなかったの。

 

「・・・そうですね、貴方の言う通りかも

しれません・・・初代宇宙王が敵対勢力の

粛清を選択した事の罪深さを・・・子孫で

ある私の両親が償う事になったのかも

しれません・・・!」

 

「オホッ!

なかなか殊勝じゃねえか、事の道理を

弁えてるってワケだなっ!?

俺ぁ、今でも脳裏に焼き付いてるゼェ、

宇宙王の末裔であるお前の両親が・・・

惨めにも一般人になりすまし宇宙政府に

潜り込み、政府の執行部の恐怖政治を

変えようなどと愚かな試みを進めた

ものの正体がバレて呆気なく処刑され

ちまった時の光景がなぁっ!」

 

オリオリの体は誰の目にも明らかな程に

震えだしたっ!

ご、ご両親の最期の場面がサシーラから

語られようとしている・・・。

オリオリが最も聞きたくない、思い出し

たくない出来事だっ!

 

「多くの反対勢力者達を公開処刑で葬った

宇宙王っ!その末裔がっ!

今度は宇宙政府の構成員で溢れかえった

広場で公開処刑されるっ!

それはそれは見物者達全員の歓声で

地鳴りが起こりそうだったぜぇ!

全員が「ザマァっ!」って叫んでいた。

俺もその中の1人だった。

お前の両親は観念したのか、恐怖で震え

上がっていたのか、微動だにせずに

ただただ首が吹っ飛ばされる瞬間を

迎えたってワケよ!

俺様はあの光景が忘れられず処刑執行人に

なりてぇと思ったワケよ。

そうすりゃ、あの興奮をいつでも味わえる

ワケだからよぉ、へ〜ッヘッヘッヘっ!!」

 

な、なんと・・・なんという・・・

何に思いを馳せればいいのか・・・

あまりにも沢山の衝撃の事実・・・

しかしオリオリにとっては・・・悲しみ

と怒りと屈辱でしかない事実・・・。

ご両親が処刑された悲しみは当然の事、

あろうことかこのゲス役人はオリオリや

ご両親、果ては初代宇宙王までも・・・

宇宙王一族全てを侮辱するような語り口

でオリオリに伝えてしまった。

それへの怒り・・・オリオリの心中は

アタシなぞでは計り知れないぐらいに

悲しみと怒りで溢れている事だろう・・・

オ、オリオリ・・・だ、大丈夫かしら

・・・。

 

「・・・!!!」

 

オリオリは下を向いているっ!

体を激しく震わせながらっ!

 

「はぁはぁっ!!

サ、サシーラ・・・!

先程も申し上げた通り、私の両親は・・・

初代宇宙王の業をその身で償ったのです

・・・因果応報とは正にこの事っ!

しかしひとつ、これだけは違うと言える

事があります・・・!

私の両親は・・・死のその瞬間までっ!

恐怖に震えていたワケではないとっ!

ただ、無念であったとっ!そう思います。

初代宇宙王の業はいずれ子孫に返ってくる、

それは私達宇宙王一族の共通した認識、

覚悟でもありました、故に処刑される事に

一片の恐怖も抱く事はなかったと、私は

信じていますっ!!

ただっ!刑を科す者がっ!

宇宙を平和に治めようとする組織で

あればっ!

その組織に取って我々宇宙王一族が

邪魔であるのであればっ!

喜んで処刑台に上がったことでしょうっ!

自分達の役目は終わったんだと・・・

受け容れる事ができたでしょうっ!

しかし刑を科す者が宇宙政府のような

邪悪な組織であった事が・・・そのような

者らに屈する事に・・・無念を感じていた

であろうとは思います。」

 

なっ、なんというっ!

凄まじい一族なのかっ・・・!

この・・・華奢な体のどこにこれほどの

覚悟を潜ませているんだろうっ!?

 

オリオリは・・・宇宙王一族は・・・

アタシでは想像もできないぐらいの

覚悟を持って・・・生きているのかっ!?

 

ご両親の最期の場面を・・・屈辱的に

語られながらっ!

この麗しき宇宙王の末裔はっ!

私情を一切挟まずにっ!

己の定められた運命と覚悟だけを口に

したっ!

 

「オッオリオリ殿ォォォッ!!!」

 

っ!?

後方に控えていたコモゴモスが突然

オリオリの名を叫び、その場に

崩れ落ちたのっ!

 

「えっ!?

コッコモゴモスさんっ!?

ど、どうしましたっ!?」

 

オリオリは驚きコモゴモスに視線を送る。

アタシもビックリして同じように彼の方を

向いた。

コモゴモスは膝をつき体を激しく震わせて

いた。

そしてなんとっ!

目から涙を溢れさせていたっ!!

 

「あ、あぁ・・・な、なんとご立派な

・・・!

お、お強くっ!

そしてご立派な方に成長なされたっ!

い、一族としてのお覚悟を正統に受け

継がれている・・・そして何よりっ!

他の何物とも比べるべくもない、真の正義

を心にお持ちになられているっ!

今のそのお姿をっ!

ご両親にお見せしたかったっ!

さればご両親、無念など抱かずに天へ

召された事でしょうにっ!!」

 

「っ!?

コモゴモスさん・・・貴方・・・やはり

・・・私の両親と面識があったのでは

ないですか?」

 

た、確かにっ!

コモゴモスの様子、只事ではない。

オリオリのご両親の無念・・・少なくとも

それを知っている者の言いようだわ。

 

「ワ、ワシは・・・いえ、ワタクシめは

・・・あ、貴方様の・・・っ!」

 

「!?」

 

「あ、貴方様の・・・!

お父上とお母上の・・・く、首を刎ねた

張本人にございます・・・っ!!!」

 

ギリギリギリ

 

ゼンチャンの首を落とさんと宙に浮く

ギロチン刃を鎖で引っ張らされている

コッツの手に巻かれた・・・その鎖の

軋む音が洞窟内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




★★★登場人物★★★
・魔道士リザ
本編の主人公、つまりアタシ。
職業は賢者。
偉大な魔道士を目指すべく
日々、冒険を通じ修行をしてるの。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスター。
得意な武器は剣。

・レイファン
末の妹。
職業はスーパースター。
回復行動に優れ、オンステージという
スキルで味方をサポートする役割が多い。

・モガ丸
モモンガ族。
おっちょこちょいで時に空気を読まない
発言が多い。けど憎めない、アタシ達の
一番の友達であり理解者。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉を話すわけじゃないけど
モガ丸だけはスラッピの話している
ことがわかるらしい。
実はスラッピが人間の言葉を話すと
関西弁だということが判明。

・オリオリ
冒険王の書に似た『宇宙王の書』という
本から現れる謎の女性。
その正体はかつて全宇宙を平和に治めていた
宇宙王の末裔。
かつ宇宙政府打倒を目指すレジスタンスグループ
『義勇軍』の総司令官。
実は既婚者だという事が判明。
これにはアタシもビックリ!

・コッツ
義勇軍3番隊の女性隊長。
宇宙政府との抗争のさなか、自分を除く3番隊の
隊員全員を政府に捕虜として奪われてしまう。
その事に深く後悔と自責の念を抱きながらも
アタシ達と共に懸命に冒険を続け、
上級執行官候補者やピエールとの戦いでは
実際に戦闘に参加するなど戦力面でも
成長を遂げる。
アタシに憧れを抱いている模様\(//∇//)\

・コモゴモス
宇宙政府の役人。監獄の砦の責任者。
アタシ達と戦い敗れるも、本心ではゼンチャンの
処刑に反対していたので砦を通してくれた。
冤罪に近い罪で人々を逮捕する政府の方針に
常々嫌気がさしているという、宇宙政府に
ありながらも心ある魔物。

・サシーラ
ボォフゥ大陸の宇宙政府の牢獄、処刑場などの
施設を統括する役人。
コモゴモスら一般の役人のボス。
残虐な性格。
死刑囚を残酷な方法で処刑する事に
快感を覚える狂った殺人者。
その残虐さは、ゼンチャンの公開処刑を
コッツに執行させようとするなどの
行為にも表れている。

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