魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

72 / 80
アタシは魔道士リザ。
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔であるオリオリは・・・
現在、全宇宙に君臨する邪悪な組織
『宇宙政府』、これに反抗する為
レジスタンスグループ『義勇軍』を率いて
打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌^_^



エピソード5.「ピエール再び」

『新しい魔星王が眠る場所、それはビナビ諸島(のどこか)』

 

2度の処刑の危機から救い、そしてその相棒

をも監禁の憂き目から救いようやくアタシ

達は全知全能のオンナとその相棒のチカラ

によって魔星王の眠る場所を知る事が

できた。

 

しかし喜ぶ間もなく、ソイツは現れた。

アタシ達義勇軍を裏切り、そしてソイツに

取っては最も傷付けてはいけない相手、

アタシ達のリーダー、オリオリを傷付けた

ソイツ。

 

元・義勇軍親衛隊長であり現在は宇宙政府

の手先に成り下がってしまった・・・

白いスライムナイトことピエールッ!!

 

ヨンツゥオ大聖堂での死闘において

アタシ達に敗れて以降、義勇軍に戻る

ことなくいずこかへ行方をくらませていた

コイツがっ!

突如として此処、ゼンチャンの館に現れたっ!

 

「モガーーーーッ!?

お前はっ!白いスライムナイト・ピエールッ!?」

 

「ボ、ボロンッ!」

 

「・・・ボロン・・・!」

 

パーティーのメンバーが口々に彼の名を

呼ぶ・・・。

 

「・・・久しぶりだな義勇軍の諸君、

そして愛しいオリオリよ、息災のようで

安心した。」

 

「・・・ボロン・・・。」

 

一瞬、コッツの表情が曇ったように見えた。

けどそれは。

かつて尊敬すべき先輩だったボロンが

・・・今は軽蔑すべき敵と成り下がって

しまった事への嘆き・・・落胆の感情が

表情に出たのだと・・・その時のアタシは

感じたの。

 

「オリオリ・・・それにコッツ・・・

忘れてもらっては困る、私はピエール、

ボロンとはかつての名だ、私はかつて

ボロンという名で呼ばれていた・・・

今は宇宙政府に仕える白いスライムナイト

ことピエールだっ!

その事を忘れるなっ!」

 

仕えるって・・・もう完全に政府の手先

みたいな事をいう・・・。

アンタのせいでどれだけオリオリが思い

悩んでるのかわかってんのっ!?

それに相変わらずのカンに触る喋り口、

この子こんなにイヤなヤツだったっけ??

あの似合わない仮面を被ったら人格まで

変わっちゃうのかしら?

 

一緒に冒険してる時は・・・確かに

ぶっきらぼうなトコはあったけど・・・

こんなにヤなヤツじゃなかった。

それともこれが本性だって言うの?

 

アタシはやっぱり・・・ピエールと対峙

すると・・・どうしても心が平静で

いられなくなってしまう・・・。

たとえ正体がボロンだってわかっていても。

 

「モガーッ!

ピエールでもボロンでもどっちでもいいっ!

なんで此処に来たっ!?

性懲りも無くまたオイラ達の邪魔をしに

来たのかっ!?けど無駄だぞ!

リザ達はお前に勝ったんだっ!

ブルリア星の冒険王姉弟がいる限り

お前に邪魔はさせないぞっ!!」

 

ピクッ

 

仮面を被っているので表情は見えないけど

一瞬、ピエールの体が強張ったように

見えた。

ヤツの体から発せられるオーラ、それに

僅かな乱れが生じたもの、アタシには

わかるっ!

 

「フフン、モガ丸よ、言われなくても

わかっている、今の私ではリザ達には

勝てん、それはこの間の戦いでよぉく

思い知った。

しかし、息巻いているところ恐縮だが

今日は諸君らに用があるのではない。」

 

えっ!?

アタシ達を追ってきたんではないっ!?

では一体何のために此処に??

 

するとピエールは・・・ゼンチャンの方へと

向き直った。

 

「全知全能のオンナ、ゼンチャンよっ!」

 

「えっ!!??あ、は、はいっ!!」

 

「今日、私はそなたに用があって

出向いてきた。」

 

「ワ、ワタシにっ!?え、どういう事!?

(ドキドキッ❤︎)」

 

「そなたのそのチカラ、全知全能を知る

チカラ、私はそれが欲しい・・・。

政府内において・・・衛兵達の立ち話

からそなたの存在を知った。

『全知全能のチカラを持ったゼンチャン

なる者が政府の重大な秘密を知ったがゆえ

に処刑される』という話でな。

宇宙政府の重大な秘密、全知全能のチカラ

・・・どれも取るに足らん・・・眉唾物

だと、その時は思ったのだが妙に私の耳

に残るフレーズでもあったのは確かだ。

ゆえに真偽のほどを確かめるため、私は

そなたが刑に処されるというイバラの町

へと赴いた。」

 

ピエールの目的がゼンチャンッ!?

しかも・・・その全知全能のチカラを

欲している・・・これは・・・ぜ〜〜〜

ったいに良くない事を企んでる。

 

「しかし私が町に着いた時、すでにそなた

の姿はなかった。

すでに処刑後だったのかと落胆したが

そなたの住処に行けば何か手がかりが

残っているかと思い此処にやって来たのだ。

するとそなたは生きていた。

これぞ運命だと思った。

よく無事でいてくれたなゼンチャンよ。」

 

「モガーッ!

ゼンチャンが無事だったのはリザ達が

必死で処刑の危機から救ったからだぞっ!

お前に会わせる為に救出したんじゃない

ぞっ!」

 

「・・・義勇軍諸君が此処に居合わせる、

ということはそんなところだろうとは

思っていたさ。」

 

そ、そうよ!

どれだけ苦労してゼンチャンの居場所を

突き止め助け出したと思ってるの!

だのにこの男はっ!

そんなアタシ達の苦労など意に介さぬ

様子だっ!

全く腹立たしいಠ_ಠ

 

「そ、そんなにワタシの事を想って

此処まで来てくれたの??」

 

しかし当の本人、ゼンチャンの様子が

怪しくなって来た(・_・;

 

「ああ。先程の・・・魔星王の眠る場所を

言い当てた事といい、そなたが知り得た

宇宙政府の重大な秘密の信憑性といい、

実に素晴らしい能力、素晴らしいオンナだ、

そなたが私の側近く侍っておれば、他にも

政府の重大な秘密を知ることができる、

私は政府内でのし上がっていく事が

できる・・・ゆえにゼンチャンよ、私の

モノとなれっ!私の仲間になるのだっ!!」

 

「素晴らしいオンナ、私のモノになれ

・・・あぁもうダメ・・・

ズッ、ズッキュ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!」

 

えっ今なんか・・・何かが撃ち抜かれた

音がしたような気がしたけど??

い、イヤな予感・・・ま、まさか・・・

ゼンチャンッ!!??

 

「ハイッ!なりますなりますっ!!

ワタシ、ピエール様についていきますっ

どこまでもっ!!」

 

あちゃ〜っ!!

や、やっぱり・・・Σ(゚д゚lll)

イチコロじゃんっ!

なんとピエールのイヤらしい事っ!

ゼンチャンの自意識過剰と自己偏愛さと

惚れやすさと、全部満たすような口説き

文句を言い放ったっ!

ゼンチャンったら、あっさりオチチャッタ

(ノД`)

 

「この美しく麗しいワタシをモノにしたい

だなんてっ!

こんな熱いアプローチ、受けなきゃ乙女が

廃るっ!!!」

 

ゼンチャンの目は完全にハートマーク・・・。

ま、まずいわね。

 

「そうだ、それでいいのだゼンチャン。

さぁこちらへ、私と共に行くのだ。」

 

「あぁピエール様ぁ・・・ワタシもう

アナタに首ったけ・・・。」

 

ふらふらふら〜っと、花の蜜に吸い寄せ

られる蝶のごとくゼンチャンがピエール

の元へ近付く。

 

「あっちゃぁぁ、あかんっ!

ゼンチャンはこないなってしもたら

もうあかんっ!

完全に周りの事が目に入らへんのやっ!」

 

チャングーが言う。

え、ええ、そうでしょうね。

見てたらわかるわ。

 

「チャングーッ!

アナタも一緒に行くのよっ!

ピエール様のお役に立つんだからっ!

アナタが居ないと意味ないでしょっ!!」

 

「あ、あいてててっ!

ちょ、ちょっと痛いわぁ!

乱暴やなぁっ!!」

 

ゼンチャンは目がハートになりながらも

ちゃっかりチャングーを連れて行く事を

忘れていなかった。

 

こ、これはっ!

阻止・・・阻止しなきゃっ!

ピエールがゼンチャンの能力を得る・・・

きっと良からぬ事が起きる・・・とは

思うんだけど・・・だけど・・・だけどよ?

ゼ、ゼンチャンのあの喜びよう、完全に

ピエールにフォーリンラブ状態のゼンチャン

の邪魔をしちゃっていいのかしらって・・・

なんか変な気遣いがアタシの中に生まれ

ちゃって・・・い、いいのよね?オリオリ、

ゼンチャンが連行されるのを阻止して。

 

「待ってっ!ボロンっ!!」

 

と。

突然、ピエールを呼び止めたのはコッツ。

 

「・・・やれやれ、私はもうボロンでは

ないと言っている。なんだ?コッツ!」

 

「ピエールだなんだって・・・格好つけて

もアナタはボロンよっ!

それより・・・アナタさっき聞き捨て

ならない事を言ったわ。」

 

え?聞き捨てならない事?

コッツ・・・どうしたの??

 

「アナタ・・・ゼンチャンが知り得た政府

の重大な秘密の信憑性って言ったわ。

って事はアナタ・・・その秘密がどういう

内容か知ってるって事よね?」

 

「・・・それがどうした?何が言いたい?」

 

「アナタのお父様がアレスの聖剣に在籍

しているってオリオリ様から聞いたわ!

つまり、アナタのお父様が所属する組織が

・・・オリオリ様一族を滅亡に追いやった

事件の片棒を担いでいた事になるのよ?

それを知ってなんとも思わないのっ!?」

 

あっ!そうだっ!!そうだったわっ!

ピエール、いえボロンのお父上がアレスの

聖剣のメンバーで、聖剣と宇宙政府が結託

したのが事実ならっ!

それをボロンが知っていたのならっ!

ボロンは思い悩んで苦しんでいただろう

っていうコッツの推測だったわ。

 

それをこの男は、何事もなかったように

さらりと口にしたっ!

 

「アナタそれ、前々から知ってたのっ?

だとしたら大問題よっ!!」

 

コッツがピエール・・・いやここは・・・

ボロンか・・・に厳しく詰問するっ!

ボロンはしばし沈黙していたけど、やがて

口を開く。

 

「・・・いや、私とて此処でゼンチャンと

諸君らが話しているのを聞いて初めて

知った事実だ。

父が突然失踪したのは私がまだ子どもの頃

の話、政府と結託だなんだと・・・その

ような大人の事情を理解できるハズも

ない。」

 

「・・・じゃあ、大人になった今、それを

聞いてどう思ったの?」

 

「・・・もし、アレスの聖剣が政府と結託

したというのが事実なら・・・まずは

オリオリに対し詫びなければな。

私の父が宇宙王一族を滅亡させた片棒を

担いでいたのなら・・・私の愛する

オリオリを悲惨な状況に追い込んで

しまった事になる・・・。

しかし同時に!

父やアレスの聖剣に対しては・・・禁忌を

犯した厭うべき存在だという烙印を押さねば

なるまい・・・。

遥かな過去の時代から・・・聖剣は宇宙王

一族にご恩を受け召し抱えられていたのに、

あろうことか裏切って宇宙政府と結託

するなど愚の骨頂でしかないっ!」

 

・・・そうか、子どもの頃の出来事だから

・・・知らなくて当然・・・この時ばかり

はボロンは嘘を付いていない・・・

アタシはそう感じた。

 

「我ら一族は身分の低い一族として他種族

から永く差別を受けてきた。

そのような境遇にありながらも父は努力を

重ね剣の腕を磨き、そしてゼナ3世に

見初められアレスの聖剣に入隊する事を

許された。

我が父ながら、その生き様は賞賛に値する

ものであり被差別種族の父を抜擢なされた

ゼナ3世のご恩は海より深いものであった

のだ。

それを政府と結託などと・・・ご恩を仇で

返す行為であり、また自らの努力、生き様

を貶める行為でもあるっ!

結果、宇宙政府のような不自由で不公平

な社会を作る組織を生むことになった。

結局はまた差別される社会をなぁっ!!」

 

・・・ボロンの過去の話・・・そして出自

が低いと言われてきた一族の根の深い、暗い

感情・・・ボロンはボロンで・・・宇宙政府

との結託というアレスの聖剣の行いを愚行

と捉えている。

そんな想いをアタシは感じ取った。

 

「そ、それだけ宇宙政府を憎んでるのに

どうして政府の手先なんかになれるのっ!?」

 

「・・・甘いなコッツ。

憎らしい相手に憎しみを持って弓を引く

・・・そんな発想しか持ち合わせぬとは

なんと幼稚千万っ!

前から言っておろうっ!

政府に対し力で対抗するのはまだ時期尚早

なのだ、根回しを進め機が熟すのを

待たねばならん、私がゼンチャンを欲する

のもその一環よ。」

 

「ワタシを欲する・・・なんて情熱的なの

ピエール様❤︎」

 

・・・相変わらず場が狂うわね・・・。

 

「アレスの聖剣と政府の結託、それが事実

なのか、私は私なりに調査する。

だがもし事実であれば・・・私の手で父や

聖剣メンバー達を裁かねばな。

それが身内としての責任だ。

あの日・・・王宮が襲われた事件に父や

聖剣が絡んでいるという事は・・・

父は王一族だけでなく・・・わ、私すらも

・・・き、切り捨てたという事になる!

そうであろう?オリオリよっ!」

 

「・・・ボ、ボロン・・・!」

 

あ、あの日!?王宮が襲われた??

一体何の話だ!?

 

「・・・そう言えば、この辺りは私達が

幼少期を過ごしたあの教会にほど近い地

でもあるな。

私はあの教会で過ごした不遇の日々を

決して忘れなかった。

あのような境遇に我等を陥れた宇宙政府

を激しく憎んだ。

しかしまさかそこにアレスの聖剣も絡ん

でいようなど・・・まだ容疑の段階とは

言え・・・夢にも思わなんだわ!」

 

教会での日々・・・なんだろう?

ピエール、いえボロンは・・・アタシ達

の知らない、ボロンとオリオリにしか

わからない過去の話をしている・・・

っていうのはなんとなくわかるけど。

アタシにはさっぱり状況が飲み込めない

話を続けている。

 

「・・・まぁ、あくまで容疑なのでな。

黒と決めつけるのは早計であろう。

そして憎らしい宇宙政府ではあるが、

政府内に潜り込んでいれば、そのような

裏事情の真相も見えてこよう。

わかるか、コッツ。

もう私は子どもではないのだ。

アレスの聖剣の失踪、当時は私はまだ

子どもだった、父親が居なくなった事を

悲しみ泣き叫ぶ事しかできなかった。

しかし今は、それも含めて大人の事情

とやらの・・・その大人の側になった

のだ。どう対応するかは・・・熟慮して

決めねばならん。

その対応の1つが・・・今は政府に身を

置く事なのだ。

お前の質問・・・答えはこれでいいかな?」

 

「さ、裁く・・・お父上を・・・!?」

 

・・・ボロンはボロンなりに・・・アレス

の聖剣の行いにケジメを付けようと・・・

しかしお父上に、アレスの聖剣に

憧れて・・・聖剣メンバーになるとも

誓った幼少期。

その胸中は複雑・・・といったところか。

 

「返事がないようなので異論はないと

解釈いたす。

では私は急ぐのでな、これにて失敬する!

行くぞ、ゼンチャンッ!!」

 

「ハイッ❤︎ピエール様〜!!」

 

「アイタタタッ!

痛いって〜ゼンチャンッ!!」

 

ビュウウウウンビュウウウウン!!

 

ピエールはゼンチャン達を連れてルーラで

飛び去ってしまった。

逃してよかったのかっ!?

かと言って今回ピエールはアタシ達を

襲ってきたわけではない、しかも・・・

アレスの聖剣の失踪のワケを知るには政府

内に身を置くほうが利がある、という考え

には一理あるとも思える・・・

ど、どうしよう・・・なんか以前のように

軽々しくピエールの言う事を否定できない。

それぐらい事態が複雑になってきた。

 

けど、けどよっ!?

ピエールがゼンチャンの能力を利用しよう

としているのは火を見るより明らか。

イヤな予感しかしないわっ!

ここはオリオリの判断に任せるしかない、

どうする?オリオ・・・

 

「モガーッ!!

ゼンチャンとチャングーが拉致されて

しまったぞっ!

リザッ!追わなくていいのかっ!?」

 

モ、モガ丸・・・そ、それが・・・。

 

「・・・ボロン・・・ど、どうして

あんな風になってしまったの・・・?

一緒に・・・宇宙政府を倒すって・・・

誓ったのに・・・一緒に義勇軍を作った

のに・・・どうして義勇軍を離れるの

・・・貴方も言っていた通り、私もあの

教会での日々・・・シスター様はお優しく

私達は裕福ではなかったけど不自由のない

生活を与えて頂いた・・・けど・・・

けどっ!私達の故郷を奪った宇宙政府を

許さないっていう気持ちは私も貴方と

同じだったわ・・・それなのにどうして

・・・あぁボロン・・・。」

 

き、危惧していた事が・・・!

再びボロンと対面した事でオリオリの

心が・・・揺らぎ始めているっ!

せっかく立ち直ったと思っていたのにっ!

 

「モガ〜、オリオリが・・・ショックを

引きずってる・・・?

ボロンの寝返りのショックを!?」

 

・・・一旦は断ち切ったはずだと・・・

アタシとコッツは判断してたけど・・・

そうか、ず〜っと引きずっていたのかも

しれない。

無理やり心の奥底に押し込めていたのかも

しれない。

 

「ボロンはオリオリの幼馴染だもんな〜。

オイラわかるぞ〜、オイラにも同族で

敵味方に別れたっていう過去があるからな

〜、オリオリのツライ気持ちはわかる

・・・!」

 

モガ丸・・・そうか、ワルモンガの事ね。

ワルモンガ達の境遇も可哀想だった。

仲間を想えばこその寝返り。

ボロンもしかり、彼もオリオリの命を

最優先に考えてるのだけは偽りないと、

それだけはわかる。

 

しかし今はっ!

感傷に浸ってる場合じゃないっ!

ここはオリオリに踏ん張ってもらいたいっ!

 

と。

モガ丸やアタシがオリオリの複雑な胸中を

慮って黙りがちなのとは対照的に!

オリオリにハッキリと意見を言う人物が

いた!

 

「オリオリ様っ!

コッツは・・・ただ今から非常に失礼かつ

部下としてあるまじき行為・・・ご忠告を

申し上げますっ!」

 

コッツがっ!

強い口調でオリオリに諌言を始めたの!

 

「ボロンが申す主張・・・確かに一考の

余地が残されている部分もあるかと存じ

ます、そして父親やアレスの聖剣の嫌疑、

ボロンに取ってはオリオリ様以上に

茫然自失となってもおかしくないもので

ありましょう、しかしっ!

だからと言って彼の理念、行動を無条件に

許すものとはなり得ませんっ!

オリオリ様っ、何よりの我らの大前提の

大義、宇宙の平和をもたらすために宇宙

政府を倒すという大義、オリオリ様には

どうか大義を見失わず事に当たっていただ

きたいと、私は願っておりますっ!

なんだかんだと政府に身を置く事の理由を

説いてはおりますがボロンは・・・

もう我らと袂を分かつ、そういう選択を

したのですっ!

惑わされてはなりませぬっ!!」

 

「コッツ・・・!」

 

コッツ・・・アナタがここまで強硬に、

オリオリに向かって意見を言うなんて、

そうそうある事ではない。

コッツにとっても、ボロンの寝返りは

許しがたい行為だったもんね・・・。

 

そしてそうか、コッツ、アナタも父親と

幼い頃に生き別れている。

けどアナタは腐らずにオリオリの大義の

為に懸命に義勇軍の一員として生きて

いる!

 

同じように父親の失踪を体験している2人

ながら一方は義勇軍を、オリオリを信じ

戦っている、もう一方は・・・オリオリ

を大事に想っているのはわかるけど・・・

義勇軍を裏切ってしまった。

 

同じ境遇だっただけにコッツは尚更

ボロンを許せないのかもしれない。

 

「あのヨンツゥオ大聖堂での戦いの後、

オリオリ様はしかと、そのお口から、

ボロンの除籍を命じられたはずっ!

オリオリ様ご自身も・・・お覚悟を決め

られたはずっ!

ならば迷いなど・・・もうとうに晴れて

おられるはずっ!!

お願いですっ、私は迷いを見せるオリオリ

様を・・・見たくはないのですっ!!」

 

「コッツ・・・!」

 

コッツの強い陳情を受け、しばらく黙して

いたオリオリは・・・やがてふるふると

首を左右に振り、そして顔を上げた。

その瞳には強い意志の光が宿っていた。

 

「わかりましたコッツ。

そうですね、リーダーの私が迷っていては

貴方やリザさん達に動揺を与えてしまい

ます、危うく大義を見失うところでした

・・・今私達が為すべき事、それは・・・

ビナビ諸島に向かう事・・・ではなく!

ピエールに攫われたゼンチャンさん達を

救出する事っ!!

敵はピエール、宇宙政府の手先に成り

下がった彼を成敗するっ!」

 

「オリオリ様っ!!」

 

「我々はゼンチャンさんにご恩があるの

です、いくら我らの願いを聞いてくれた

後とはいえ、だからといってもうゼン

チャンさんには用がないなどとは決して

考えてはいけませんっ!

ピエールは・・・己の野望のためにゼン

チャンさんを利用しようとしている、

それは一目瞭然です、用が済めばゼンチャン

さん達はどう扱われるのか・・・。

それを思えば・・・これは救出して差し

上げるのが義というものっ!

コッツ、リザさん達っ!

ピエールを追いましょうっ!!」

 

「オリオリ様っ!

それでこそオリオリ様です、私達の

尊いリーダー・・・!

オリオリ様・・・ご無礼の数々・・・

お許しくださいっ!」

 

「いえ、コッツ、ありがとうっ!

貴方のお陰で目が覚めました。

この辺りは確かにボロンと共に幼少期を

過ごした地、そしてそのボロンと対面

した事で・・・私自身、過去に捉われ

すぎという状態になるところでした。

貴方のような・・・正しく、そして主を

想う部下を持てて私は幸せ者ですっ!」

 

「もったいなきお言葉・・・あ、ありが

とうございますっ!!」

 

そう言うとコッツは・・・その場に平伏し

深々とオリオリに向かって頭を下げた。

蹲ったその肩は・・・僅かに震えていた。

 

コッツにとっては・・・上官に向かって

意見を言うなんて・・・とても勇気を

要する行いなんだろう。

部下としてあるまじき行為。

しかし、その禁を破ってでもオリオリの

あるべき姿を取り戻そうとした、逆に

部下としてあるべき行動だとも思えるわ

アタシには。

 

お陰でオリオリはリーダーとしての

振る舞いを取り戻し今後の決断を得る

事ができた。

 

コッツ、アナタ、本当に大きくなった。

隊長として素晴らしい人物に成長した。

なんだかアタシまで胸がアツくなる。

 

「ピピィッピピピッピーピピッピーピー

ピーピッ!!」

 

「ふむふむ、モガッ!!

なんだってっ!?本当かスラッピっ!?」

 

「ピピィッ!」

 

と、突然スラッピが何やら語り始めた。

モガ丸が解説するっ!

 

「リザッ!オリオリっ!聞いてくれっ!

自分と同じニオイのするチャングーの

ニオイをスラッピが感じ取れるらしいっ!

それを辿ればピエールの居場所が判る、

とスラッピが言っているぞ!」

 

え、ホントッ!?

お手柄じゃないスラッピ!

 

「ピッピーピピッピピーッ!!」

 

「ニオイはあっちの方へ続いている

らしいぞっ!!」

 

スラッピの語った内容を元にモガ丸が

その方向を指差した。

その先には・・・例の居座り竜巻が

見えていた。

 

アタシは目を瞑り星見るチカラに神経を

委ねる。

・・・!確かに・・・!

その方向にピエールのモノと思しきオーラ

を微かに感じる。

アタシとスラッピの感覚が符号した!

 

「そちらの方角には・・・あぁっ!

そっちにはっ!そうでしたっ!!」

 

モガ丸の指し示した方向を眺めていた

オリオリが・・・何かを思い出したように

声を上げた。

 

「幼少時の記憶がまたまた浮かんできまし

たっ!ピエールが向かったであろうその

方角には教会があります!

『竜巻の教会』と呼ばれているのですが

・・・先程の私とピエールとの会話に出て

いた教会ですっ!

私とピエール・・・いや、幼少時の私と

ボロンはその教会に身を寄せていたの

です!

ボロンは・・・教会で過ごした日々を

忘れた事はない、と言っていました。

何か思うところがあって過去にお世話に

なった教会を訪れようとしているのかも

しれませんっ!」

 

オリオリとピエー・・・この場合はボロン

か・・・が幼い頃住んでいた教会っ!

そこにピエールが向かう・・・な、何の

為にっ!?

 

「わかりません、わかりませんが・・・

とにかく竜巻の教会へ向かいましょうっ!

居座り竜巻をぐるりと迂回して山を越えた

辺りにその教会はあるはずですっ!」

 

再びアタシ達の前に現れたピエールは

・・・ゼンチャンを籠絡し(ってか簡単に

オチ過ぎ、ゼンチャン!)利用するべく

連行してしまった。

ゼンチャンの気持ちはともかく、目を

覚まさせてピエールから引き離さねば!

 

アタシ達はスラッピの“探索機能”を頼りに

オリオリが幼い頃住んでいたという教会

を目指し移動を開始した。

 




***登場人物紹介***
・リザ
本編の主人公。つまりアタシ。職業は賢者。
偉大な魔道士を目指し冒険を通じ日々修行
しています。
理不尽な事がキライで宇宙政府の汚いやり方
等を聞かされるとちょっと、ほんのちょっと
気性が荒くなる、と言われます:(;゙゚'ω゚'):
恋愛には疎く恋バナはニガテです。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスターで剣が得意。
彼もアタシ同様、日々修行を欠かさずどん
どん強くなっていて、そのスキルの強さには
もうアタシでもかなわないわ。
アタシも負けてられないっ!

・レイファン
末の妹。職業はスーパースター。
回復行動やオンステージというサポート行動
が得意。
こだまする光撃という最高のサポートスキル
でアタシやジョギーの攻撃を最大限に強く
してくれます。

・モガ丸
アタシ達の冒険の最初からの友達。
戦闘は得意ではないけど見え〜るゴーグルで
宝物を発見したり移動呪文ルーラで冒険の
移動を助けてくれたり、と冒険のサポートを
してくれる。
種族はモモンガ族で一族には悲しい過去が
あったけど、それを乗り越えて今なおアタシ
達と一緒に冒険を続けてくれてるの。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉は通じないけどモガ丸だけはスラッピ
の話している事がわかるの。
ただ、トラスレの聖水を飲む事でアタシ達
とも会話ができるようになり、実はコテコテ
の関西弁を話す事が判明。
モガ丸のワガママで関西弁で話す事は禁止
されてるけどʅ(◞‿◟)ʃ

・オリオリ
宇宙王の書という本にワケあって閉じ込め
られている美しい女性。
その正体は宇宙王の末裔。
圧政を敷く宇宙政府を倒すため義勇軍という
レジスタンス組織を作り反政府運動を続けて
いる。義勇軍の総司令官。
実は既婚者でセアドという夫がいるの。
義勇軍親衛隊長ボロンとは幼馴染だけど
ボロンが義勇軍を離れ宇宙政府に参加した
上にオリオリに愛の告白をした事により衝撃
を受けてしまったの。

・コッツ
義勇軍3番隊隊長。
3番隊は政府軍に捕虜として連行されていた
けどベェルの町でついに全員無事で発見され
救出された。
コッツは冒険のさなかも部下達の安否に心を
砕いていた。
無事の救出でようやくコッツの心の闇は完全
に取り除かれた。
アタシ達と行動を共にするうち、アタシに
強い憧れを抱くようになったらしい\(//∇//)\

・ゼンチャン
全知全能のチカラを持つと言われている人物。
その正体はオネエだったガーン
その能力ゆえ幾度となく宇宙政府に命を
狙われ処刑寸前に。
アタシ達は心ある宇宙政府の役人コモゴモス
の協力もあり、なんとかゼンチャンを救出
する事に成功したの。
その全知全能の能力とは!
チャングーという相棒のスライムと協力して
行う霊視だった!
彼女(彼)はホンモノだった!
ただアタシはどうしても彼女(彼)のキャラが
受け付けられなくて、極力絡むのを内心避け
てるの、これ内緒だけどね( ̄◇ ̄;)

・チャングー
ゼンチャンの相棒のスライム。
ゼンチャンがその能力を発揮するためには
チャングーの身体を媒介しなきゃいけない。
イコール2人で1つのコンビなの。
宇宙政府はそこに目をつけチャングーの事
も捕らえて監禁していた。
スラッピと同じく何故かコテコテの関西弁
を話すの(−_−;)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。