魔道士リザの冒険譚(星のドラゴンクエストStory冒険日誌)   作:ジョギー

75 / 80
アタシは魔道士リザ。
ブルリア星の2代目冒険王姉弟の1人。
かつて全宇宙を平和に治めていた宇宙王。
その末裔であるオリオリは・・・
現在、全宇宙に君臨する邪悪な組織
『宇宙政府』、これに反抗する為
レジスタンスグループ『義勇軍』を率いて
打倒宇宙政府を目指していた。
アタシ達姉弟は義勇軍に参加しオリオリと
共に宇宙政府を打倒する為ここ惑星クラウド
での冒険を続けているの。
さて本日の冒険日誌^_^



エピソード8.「不思議な女戦士」

「モガーーーーッ!?

こ、これはどういう事だっ!?」

 

「そ、そこいら中に倒された魔物の

遺骸が転がっていますね。」

 

ゼンチャンとチャングーをピエールから

救出する為、そして謎の女戦士がこの

洞窟へ向かったとのシスターイェルバの

証言があり、この女性をも助け出す為、

アタシ達は此処、迫真の洞窟へと

辿り着いた。

 

しかし此処に巣食っていたハズの宇宙政府

の魔物達は・・・何者かに既に全滅させられてたの。

まぁ、おそらく・・・ピエールがやったんだろう。

 

洞窟の最深部まで進んだけど生き残って

いる魔物はもういないっぽい。

辺りを見回しても、もう動かない魔物

の遺骸ばかりだった。

 

「・・・懐かしい〜・・・と言いたい

ところですが・・・この状況では・・・

思い出に浸っている場合ではなさそうですね。」

 

書からオリオリが現れ独り言つ。

確かにね。

幼少期の思い出の場所が魔物の死体だらけ

では、感傷に浸る気分すら失せるというもの。

 

「モガ〜・・・ピエールは・・・もう

宇宙政府の人間だってのに。

言わばコイツらは味方だったはず。

それを全滅させるだなんて・・・

よっぽど此処を魔物のアジトにされた事

が我慢ならなかったのかな?」

 

「やはりピエールに取っては・・・

オリオリ様との大事な思い出の場所、

という事なのでしょう。」

 

「・・・。」

 

まぁ、確かに。

ピエール曰く、心底から政府に忠誠を

誓ってるってワケじゃないしね。

表向き従ってるだけの組織。

その組織の魔物達が自分の思い出の地を

荒らすのは許せないって事なんだろう。

けどアタシ達からすれば・・・一体

アンタはどっちの味方なの!?って

言いたくなるけどね。

オリオリが「自分勝手なっ!」って怒る

のも無理のない事。

 

「あ・・・この花は・・・。」

 

と、オリオリがフロアに咲いている花に

気づいた。

赤、ピンク、黄色といった鮮やかな色合い

の花々だった。

 

「・・・この花です、私が幼い頃この

洞窟を訪れていた目的は。

このクラウドケイトウという花は、この

辺りでは此処にしか咲いておらず、私は

この花が好きでよくこの洞窟にやってきて

摘んでいました。

・・・ボロンは『かったるい』と不平を

言いながらも、毎回私について来て

くれていました・・・。」

 

・・・そうなんだ。

悲しい境遇の中の、心休まるひと時だった

んでしょうね、オリオリにとって。

そしてボロンに取っても・・・オリオリと

2人で過ごせる大事な時間だったんだろう。

 

「どりゃどりゃどりゃ〜〜〜っ!!」

 

な、なんだ!?

 

「乙女の戦士セセニョン参上〜〜っ!

宇宙政府の魔物はどこだ〜〜〜〜!?」

 

奇妙な掛け声を発し剣を振り回しながら

若い女の子が突然現れた。

乙女の戦士・・・あっ!この子がっ!!

シスターイェルバが言っていた若い女性戦士かっ!?

 

「モガ〜、誰だお前は?ん?

あっ!そそそ、その服っ!!

義勇軍の軍服にソックリだぞ!

って事はお前がシスターが言っていた女戦士かっ?」

 

そう、そして赤い・・・コッツやオリオリ

が着ている義勇軍の服にソックリな軍服を

身に纏っていたの!

 

「んん〜?誰だい、アンタ達?あれ?

どっかでアタイと会った事あるかい?

ごめんよぉ、アタイは物覚えが悪くてね〜?

人の顔や名前を覚えらんないのさ。」

 

「それは困った性格だな!けどお前と

会ったのはこれが初めてだぞ!」

 

「あ、そ、そうかい、アタイはホントに

物覚えが悪くてね〜。もしかして会った

事があるんなら申し訳ないな〜と思って

一応聞いてみたのさ。」

 

「なんだそりゃ!

ホントに困った性格だな〜!」

 

【挿絵表示】

 

「それより、此処に宇宙政府の魔物が

居るって聞いて退治に来たんだけど・・・

あれ?魔物が全部倒されている?

これアンタ達が倒したのかい?」

 

その・・・セセニョンという名の女の子

・・・どこかボロンに似ている・・・

とアタシは思ったの。

 

綺麗な色合いのシルバーの髪、パープル

の肌、尖った耳など・・・もしかしたら

同族なのかしら?

 

「アタイが倒そうと思っていた魔物を

倒すだなんて、アンタ達なかなかやる

じゃないか!

なんて名前だい?

覚えるのは苦手だけど聞いてあげるよ。」

 

「モガ、オイラはモガ丸。

このスライムはスラッピ。

そしてコイツらはブルリア星の冒険王姉弟

リザ達だ。

ほんでこっちは・・・。」

 

モガ丸がコッツとオリオリの事も紹介

しようとするとコッツが首を横に振った。

義勇軍だという事を伏せようと暗にその

顔は語っていた。

そしてとっさにコッツは書から出ていた

オリオリの前に立ちセセニョンの目に

触れないようにしたの。

 

・・・確かに。

この女の子・・・悪い子じゃなさそう

だけど・・・正体不明ではあるし・・・

義勇軍の服装を真似ているところが

少し引っかかると、コッツは判断したんだろう。

 

「モガ丸にスラッピにリザ達か。

アタイは顔と名前を覚えるのは苦手

だけどリザ達の事は忘れないよっ!

じゃあ、魔物はもう退治されちゃってるし

アタイはこれで失礼するね!」

 

「あ、ちょっと待ってください、

セセニョン殿っ!」

 

「ん?なんだい?」

 

「貴方のその服装・・・義勇軍の制服に

よく似ています。

もしかしてセセニョン殿は義勇軍の戦士

なのですか?

私・・・実は義勇軍の大ファンなんです!

ホラ、この服も義勇軍の制服のレプリカ

なんです、それぐらい憧れてるんですぅ!」

 

コッツは・・・本物の制服を着ている事

を逆手に取り、とっさに義勇軍のファン

を演じてみせた。

 

「アハ、これかい?

アタイは本物の義勇軍の戦士じゃないよぉ、

アンタとおんなじさ。

義勇軍に憧れてるんだ。

今は1人で魔物と戦ってるけど、いつか

本物の義勇軍に入って悪い宇宙政府を

倒すのが目標なんだ。

この制服もアンタと同じように複製品さ。

以前に一度だけ本物の義勇軍が戦って

いるところを目撃して。

その時、彼らが着ていた服が印象に

残っていて・・・自分で調達したのさ。」

 

「な、なぁんだセセニョン殿も私と同じ

だったんですね〜。

私もいつか義勇軍に入ってみたいな〜。

そしたらセセニョン殿と2人で義勇軍の

女戦士コンビって呼ばれるかもしれませんね!」

 

「アハ!そうなるといいねぇ。

けどアタイはまだ当分1人で魔物を倒すのを

続けるよ。

もっともっと強くならないと、義勇軍に

入隊する事はできないって思うんだ。

まぁ今は・・・1人義勇軍ってとこかな。」

 

「1人義勇軍・・・そうですか・・・。

単独行動は危険だと思いますが・・・

無理をせずお互い頑張りましょう!」

 

「あぁ!

じゃあアタイはこれで失礼するよっ!

他にも宇宙政府の魔物達に脅かされて

いる人達がいるからね。

アンタ達また会うといいねっ!

じゃね〜っ!」

 

そう言うと、セセニョンは洞窟を

去っていった。

ふ、不思議な女の子だったなぁ。

けど悪い子には思えなかったけど。

やっぱり警戒はしておいた方がいいのかな。

 

「・・・オリオリ様、どう思われますか?

あの者。咄嗟に我等の素性は明かさぬよう

取り計らいはしましたが・・・特に我等に

害を成す存在ではないように私は思います

が・・・。」

 

「・・・あの女の子・・・何処かで会った

ような・・・いえ、記憶があるわけでは

ないのですが・・・初めて会った気が

しません。あの澄んだ瞳・・・。

あの瞳を何処かで目にしたような気が

するのです・・・。」

 

オリオリが含みのある内容を口にする。

オリオリは幼少期を過ごしたこの地方に

足を踏み入れてからというもの、幼い頃の

記憶を次々と蘇らせている。

セセニョンとは顔見知りだっていう話も

あながち思い違いではないんだろう。

 

「・・・しかしとりあえずは・・・

正体が判明するまでは我等の素性は

伏せておく、という事にしておきましょう。」

 

「ハハッ!仰せの通りにっ!」

 

ひとまずはアタシ達が義勇軍である事、

オリオリの事は伏せておく、という事で

話はまとまった。

 

さて、ピエール達は此処にはいなかった。

政府の魔物の根城になってしまった

もう1つの洞窟、ここへ向かうのかしら?

オリオリ。

 

「そうですね。

もう1つの洞窟、『星雲の洞窟』も・・・

私とボロンはよく訪れていました。

今度こそボロ、いえピエール達に追いつき

ゼンチャンさん達を救出しましょう。」

 

ピエールは・・・やっぱり幼少期のオリオリ

との思い出の洞窟のこだわっている。

もう1つの洞窟、「星雲の洞窟」の魔物達

も退治するつもりだろう。

 

ここ「迫真の洞窟」ではピエールとは

入れ違いになってしまったけど、次の洞窟

ではピエールに追いつけるといいわね。

 

そして不思議な女戦士セセニョン。

彼女は一体何者なんだろう?

オリオリとは赤の他人ではなさそうだけど。

 

************************************************************

 

「グ、グガガガ・・・おのれぇ・・・

我等宇宙政府に楯突くとは・・・貴様、

このままで済むと思うな・・・!」

 

「・・・フン、負け犬が吠えそうなセリフ

そのままだな。」

 

ガスッ!!

 

「ガハァッ!!!

・・・む、無念・・・グフッ!」

 

その頃、なんとピエールは星雲の洞窟の

魔物達も、既に全滅させていたの。

 

「・・・この洞窟には・・・そう・・・

クラウドパンジーか・・・この花も・・・

オリオリは好んでよく摘みに来ていた。

オレもよく付き合わされたものだ・・・。」

 

またしても洞窟に咲き誇る花々の名を呼ぶ

ピエール。

クラウドパンジーというらしいわね。

オリオリが愛した花。

魔物達の遺骸が転がる地獄絵図の中で

対照的に懸命に生きようと咲いている花達

のそばでピエールは膝をつき、その花を

愛でる。

 

「クラウドパンジーの花言葉は・・・

純愛・・・遠く離れ離れになってしまった

許嫁セアド・・・ヤツを純粋に愛する

オリオリ・・・といったところか・・・。

しかしこの花の花言葉は・・・オレにも

当てはまるものであった・・・。

傍目から見れば許されざる想いとしか

映らんだろう。

しかしオレの想いは・・・オリオリを想う

心は・・・ただ純粋なモノだと断言できる

・・・。

見返りなど要らん。

オリオリが幸せならば・・・その相手が

オレでなかろうともかまわないのだ。

ただ、その人を想う気持ち・・・。

フッ、まぁ、理解できる人間など居らぬ

であろうがな。

オレ自身がわかっていればそれでいい事。」

 

自分だけが知っていればいいという

ピエール・・・ボロン・・・。

残念ながら、その言葉通りに・・・

その独り言ちは洞窟内に虚しく響く

だけだった。

 

 




***登場人物紹介***
・リザ
本編の主人公。つまりアタシ。職業は賢者。
偉大な魔道士を目指し冒険を通じ日々修行
しています。理不尽な事がキライで宇宙政府
の汚いやり方等を聞かされるとちょっと、
ほんのちょっと気性が荒くなる、と言われます(;´Д`A
恋愛には疎く恋バナはニガテです。

・ジョギー
アタシの弟。
職業はバトルマスターで剣が得意。
彼もアタシ同様、日々修行を欠かさずどん
どん強くなっていて、そのスキルの強さ
にはもうアタシでもかなわないわ。
アタシも負けてられないっ!

・レイファン
末の妹。職業はスーパースター。
回復行動やオンステージというサポート行動
が得意。
こだまする光撃という最高のサポートスキル
でアタシやジョギーの攻撃を最大限に強く
してくれます。

・モガ丸
アタシ達の冒険の最初からの友達。
戦闘は得意ではないけど見え〜るゴーグルで
宝物を発見したり移動呪文ルーラで冒険の
移動を助けてくれたり、と冒険のサポート
をしてくれる。
種族はモモンガ族で一族には悲しい過去が
あったけど、それを乗り越えて今なおアタシ
達と一緒に冒険を続けてくれてるの。

・スラッピ
モガ丸といつも一緒にいるスライム。
言葉は通じないけどモガ丸だけはスラッピ
の話している事がわかるの。ただ、トラスレ
の聖水を飲む事でアタシ達とも会話ができる
ようになり、実はコテコテの関西弁を話す事
が判明。モガ丸のワガママで関西弁で話す事
は禁止されてるけどʅ(◞‿◟)ʃ

・オリオリ
宇宙王の書という本にワケあって閉じ込め
られている美しい女性。その正体は宇宙王
の末裔。
圧政を敷く宇宙政府を倒すため義勇軍という
レジスタンス組織を作り反政府運動を続けて
いる。義勇軍の総司令官。
実は既婚者でセアドという夫がいるの。
義勇軍親衛隊長ボロンとは幼馴染だけど
ボロンが義勇軍を離れ宇宙政府に参加した上
にオリオリに愛の告白をした事により衝撃を
受けてしまったの。

・コッツ
義勇軍3番隊隊長。
3番隊は政府軍に捕虜として連行されていた
けどベェルの町でついに全員無事で発見され
救出された。コッツは冒険のさなかも部下達
の安否に心を砕いていた。
無事の救出でようやくコッツの心の闇は完全
に取り除かれた。
アタシ達と行動を共にするうち、アタシに
強い憧れを抱くようになったらしい\(//∇//)\

・ピエール(ボロン)
宇宙政府を内側から変革させて宇宙平和を
もたらそうと考えるスライムナイト。
その正体は義勇軍親衛隊長ボロン。ボロンは
幼馴染であるオリオリに恋心を抱いていた。
打倒政府を目指し続ければオリオリの身に
危険が及ぶ事を憂慮して政府の内政変革に
路線変更した、というのが彼の言い分。
その“裏切り”がオリオリだけでなく様々な
関係者に悪い影響を及ぼすという自覚はない
の。困ったものだわ。

・セセニョン
1人義勇軍を名乗る自称、乙女の戦士。
その正体は今のところ全くもって不明。
そして実力のほども定かではない。
義勇軍に強く憧れを抱いている様子。
オリオリとは何やら浅からぬ縁がありそう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。