夢ってなんだろう?
ふとした拍子に、その疑問が浮かぶの。
館に住んでいた住人を毎日驚かせること?違うわ。確かにそうなればいいなあって思っているし望んでいたことだけど、夢っていう言葉とはズレている気がする。
その疑問が出てくるたびに考える。答えを探す。
ずっと、ずっとよ。
もう、飽きるくらい考えたわ。手の指どころか、全身の骨の数よりもはるかに多い回数はね。まあ、今の私に骨があるかどうかは分からないんだけど。
無視しようとしたこともあるわ。でも、そうしていると心がもやもやしてくるの。だから、結局は答えを見つけようとするの。少なくても、考えている間は、このもやもやとした気持ちが無くなるからね。
幸い、私は騒霊(ポルターガイスト)だから、自分から行動を起こさない限りは1人でいれるの。私が念じている限り、姿は普通の人間に認識できるはずないから、時間はたっぷりあるって訳。
・・・でも、いくら時間をかけても、考えても、答えは見つからないの。
季節がいくら変わっても、館の主の娘さんが大きくなっても、その娘さんが嫁いでいなくなっても・・・
・・・・・・館の住人が全員死んでしまった今でも、まだ、見つからないの。
「・・・はぁ」
館の中を1人で周る。100を超える年数、過ごしてきた(憑りついていた?)家だから、目をつぶっていても自然と足が動く。
自由気ままに、時間をかけて散歩をする。ゆっくりと、景色を見ながら歩く。ただただ、足を進める。
意味なんてない。理由も分からない。ただ、じっとしていると何かがおかしくなりそうだったから動いている。館の人を驚かすために使ってきた時間は、ほとんどが散歩の時間になった気がする。
台所を通り過ぎる所で、ふと足を止めた。使う者がなくなって蜘蛛の巣が張っていた釜、そこにいた蜘蛛がいなくなっていた。じっと釜の底を見ても、いない。少し時間をかけて周りを探してみる。それでも、見つからない。
「・・・どこに行っちゃったんだろ・・・」
チクリ、と何かが胸に刺さった気がした。そして、頭を振る。
馬鹿馬鹿しい。ただ蜘蛛1匹がいなくなっただけじゃない。
足を速めて台所を後にし、2階への階段を上る。手すりに手を添えながら登って行こうとした。が、そこに埃が積もっていることに気づき、挙げかけた手を降ろす。
前に見たときよりも汚れている気がする。掃除をしようか、と思った。が、実行に移せない。掃除をするのは使用人やメイドの仕事だ。私がやる義務なんてない。
そう、昔は毎日掃除が行われていた。潔癖症の主だったから、それはもう徹底的だった。使用人、メイド総出で行われるものだから人がごった返し、さながら戦争が起こっているように見えた。
仮に埃1つでも残っていようものなら、主の怒声が館中に響き渡ったものだ。がくがく震えている使用人や涙目になっているメイドを相手に1時間近く怒鳴り続け、いつも最後は夫人が宥めて、説教が終わる展開だった。
いつもは笑顔を浮かべ、気さくな主とのギャップが中々面白かった。二重人格かな、と考えたこともあったが、どちらも素であると理解するのにさほど時間がかからなかった。
そんな人がこれを見たらどう思うだろう。まあ、怒声だけじゃあ済まないことは確かだ。怒りの余り卒倒してしまうかもしれない。
「怒って気絶かぁ・・・。ふふ、本当にそんなことあるのかな?見てみたいな~その場面」
無意識のうちに笑い声が上がる。その声が乾いていたことには気づけなかった。
「ははは・・・・・・・・・・・・・本当に、見てみたかったな・・・そんな一面」
もし、このまま放っておけば、掃除をしに人が来るのだろうか。また、あの懐かしい顔を見れるのだろうか?・・・また、会えるのだろうか?
そこまで考えて、思考を中断する。
「・・・馬っ鹿みたい。みんなもういないのに。死んだ人間が生き返るはずないじゃない」
急いでその場を後にする。最近、埃がさらに嫌いになった気がする。何故かは分からない。いくら考えても、答えは出ない。
「・・・・・・・・・・・はぁ」
どさっ、とベットに寝転がり、仰向けになったままため息をつく。前までは騒霊らしく(?)屋根の裏を勝手に居住スペースにしていたのだが、誰もいなくなった今では、夫人の部屋だった所で寝起きするようになった。
まだ、寝るような時間ではない。部屋の窓からは、日光が差し込んでおり、星1つ確認できない。いつもなら、2階を周ってから庭に行く。
だけど、なんだかそんな気分にはなれない。体が重い。疲れていないはずなのに、動きたくない。
目を覆うように腕を移動させる。真っ黒になった視界の中、浮かぶのは昔の事ばかり。
「・・・もう、他の家に憑りつこうかなぁ・・・。そしたらまた人を驚かせることが出来るし・・・」
そんな事を口にし、自分に嫌気がさした。ギュッ・・・、と体を丸めるような体勢にする。
ああ、一体何度言ったのだろう、その言葉を。何度も何度も言ってきた。何度も何度も考えた。
それでいて、結局自分はここから、たった1度も離れていないではないか。
「・・・何でだろうねぇ・・・。無人の館に住む騒霊なんてきっと私だけだわ。ふふ、絶対笑いものにされるだろうなぁ・・・」
ぽつんとつぶやいた言葉に、返事はない。返ってくるのを期待していた時期は・・・もう、覚えていない。
「・・・いいや、一回寝ちゃおう・・・」
そうすればこの気持ちも晴れるだろう、そう決めてカーテンを閉め、目を閉じる。
が、このタイミングで、いつもの現象が起きた。
「・・・っ、何なのよ!いつもいつも・・・!」
普段ならこんなに怒りを感じなかっただろう。そもそも少しも感じなかったはずだ。だというのに、今、無性に怒りが湧き上がってくる。
髪を手でぐちゃぐちゃにし、物にあたろうとする。ベットから飛び起き、既に枯れている花が挿してある花瓶を持ち上げる。それを床に投げようとして、手を止める。
「・・・こんなことやって、何だっていうのよ」
もう、ここで何をしても誰も驚かない。花瓶を割っても、椅子や机を動かしても、家を揺らしても・・・・・誰も驚いてはくれない。
チクッと胸が痛んだ気がした。
「なんなのよ!『夢』ってなんなの!?なんで私はこんなことで惑うの!?教えてよ!」
少女騒霊は頭を抱える。いくら時間をかけても分からない解を求める。自分の心をかき乱すたった1文字の言葉を叫ぶ。
どこからも答えは返ってこなかった。
スペルカード発動!「二次設定」!
というわけで館の住人を勝手に殺したり、カナが暗かったりと原作どこいった?でした。すみません。