襲撃事件による臨時休校は、なかなか充実したものになった。
アビーを連れてパンケーキ屋に行ったり、ミ=ゴが作った新しいアイテムのプレゼンテーションとテストをしたり……とても有意義であった。
アビーのパンケーキにおける話は、もはや論文発表だった。本当に12歳?というレベルだ。凄い。
ミ=ゴの開発した玩具の中で、
『何故作ろうと思ったので賞』の最優秀作品に輝いたのは、
【H&K G11(5.56mmタピオカ入りミルクティー)】
だった。このミ=ゴはかつてライトセイバーを作り、ニアとス◯ーウォーズごっこをした存在である(ニアがダースベイ◯ー役、ミ=ゴがル◯ク役をした)。
制作理由を聞くと、
「人間の失敗作と話題の物を合わせることで最強に見えるから」
だという。
ちなみに性能はというと、ミ=ゴの科学技術と魔術回路を組み込んだシステムのため、火薬を未使用。熱による磨耗と暴発を防ぐことが可能。さらに最大射程は100m程度で、10m以内であれば1cm厚の鉄板を容易く貫通できるという。
兵器として使わないのであれば、手動で『茶番モード』に切り替えられる。このモードの時は市販の水鉄砲の要領でタピオカミルクティーが発射されるため、誤嚥が起こらない限り死ぬことはない。さらに手動切り替え部分は、誤って兵器モードにならないよう二重構造のフェイルセーフとなっている。
試作品であるためタピオカそのものを入れないと使えないが、今後は原料を入れるだけでタピオカミルクティーが発射されるように改良するという。
タピオカなら土に還るため、従来よりも自然に優しくなっている。これには他のミ=ゴ達からも好評だった。
ちなみにタピオカミルクティー自体は不評だった。
また、ニアの義手について、いくつかの候補があった。
「……これは?」
『ハイ、こちらは普通の腕と見分けがつかないようになっているシンプルなものとなっております。しかしただそれだけであるため、ニア様のお好みには合わないかと』
「なるほど、普通の義手としては満点ですが、あなたのいう通り、面白さが皆無です。次はどんな義手ですか?」
別のミ=ゴがカートを持ってきて、上のものを説明する。
『こちらは先程の義手に一手間加えたものとなります。外見こそ先程のものと同じですが、この部分を押しながら引っ張りますと…このように腕部分が取れます』
ミ=ゴが説明した通りに義手を引っ張る。すると腕の部分が取れ、あるものが現れた。
「……コレってもしかして?」
『ハイ、サイコガンです。それ自身に魔力を込めているため、装着者自身の負担が軽減されます。一種のアーティファクトと思っていただければ』
「………それは紛れもなく奴さ?」
『『『『コ〜ブラ〜〜』』』』
「コブラじゃねーか」
『ナイスツッコミ、ありがとうございます。そして並行開発していた装備がこちらになります』
プレゼンターミ=ゴの鋏が差す方を見る。そこには全身赤タイツと葉巻、金髪のカツラがあった。
「コブラじゃねーか!」
素晴らしいものだったが、ニアが失ったのは右腕。コブラは左手がサイコガンだったので却下された。
先程の赤タイツとカツラもアーティファクトであり、同時装備で威力が3倍になるという。力の入れどころは百点満点だった。
そして次の義手はというと……
『
「え、普通に凄いんですが。これに『しかしですね……』……何か問題が?」
ミ=ゴがニアの言葉を遮り、説明した。
『一回錬成する毎に、身体の何処かのパーツが消えてしまうんですよ。現在調査中ですが原因は一切不明でして……申し訳ございません』
「わぁーお…等価交換…………ん、何故消えてしまうということが判明したのですか?」
『……あちらをご覧ください』
「あっち……わぁーーお……」
ニアが見たのは、
『ニアさま、たましいいがいもっていかれました!!どうですか?いっそのことぜんしんとりかえてみませんか!?』
「自分の心配をしなさい‼︎」
と、いった感じで遊んでいた。ブレード状の義手もあれば、指鉄砲で薄口醤油が出る、卵かけご飯専用の義手もあった。美味しかったです。
で、最終的には最初の義手に決まった。シンプルイズベスト。
2日間の休みが終わり登校する。
教室ではやはり、襲撃事件が話題になっていた。新聞にも載っていたしニュースにもなっていたしね。
ただ、“個性”の暴走による死傷者についてはウチの母が原因です。サーセン。
朝のホームルームでもその事件について説明されたが、本題はそこじゃない。
「襲撃事件が起きてしまったのは……我々教師陣の対応が不十分だった
ことが原因だ。お前たちを不安にさせてしまって申し訳ない……だが過ぎたことをいつまでも引きずる場合ではない。何故ならば……」
ブラドキングは一呼吸置き、目を開かせた。
「体育祭があるからだ!!」
『っしゃあああぁぁぁ!!!』
全員が盛り上がり、鉄哲なんかは椅子の上に立ち上がっている。彼らにとってはそれほど大事なイベントなのだから。
雄英体育祭はかつて存在していた、オリンピックに匹敵するほどの巨大イベントだという。オリンピック自体、“個性”が発現したことにより身体能力の差別化が進み、衰退していった。その代わりに“個性”をフル活用できる祭事として、ヒーロー養成校の体育祭が現れた、という話だ。
そしてこの体育祭、お茶の間だけではなく全国のプロヒーローも観る。卒業後の
つまり目立たなければ死ぬのだ。
「落ち着けお前たち。気合いと根性だけでは勝てるものも勝てなくなってしまう。体育祭まであと2週間、この2週間で己を磨き、自分たちこそ未来のヒーローだと世間に知らしめてほしい‼︎」
『はい!ブラド先生!!』
元気で何より、お後がよろしいようで。
そして今日のヒーロー基礎学は特別だ。何故なら……
「わ〜た〜し〜が〜〜」
「扉から来たッッ!!!」
『オールマイトだぁぁぁ‼︎』
そう、今日のヒーロー基礎学はあのNo. 1ヒーロー【オールマイト】が担当するのだから。
画面の向こうからでしか見たことがない存在が、みんなの憧れの存在が教師として指導してくれるのだ。
画風も違うし筋肉もモリモリしている。
(私はこの筋肉にウッカリ屋さんと言われたんですね……何か腹立ちます)
そう考えていると、オールマイトは授業の説明をする。
「今日は戦闘訓練だ‼︎ではさっそく、行ってみよー!!」
〜少年少女移動中〜
「今日の戦闘訓練は室内における戦闘を想定しているぞ!チームはくじで決める2対2、内容は『核を盗んだヴィランがビル内に立て篭もる!ヒーローは時間内に核を確保するかヴィランを捕縛するか』だ!確保にはこの捕縛テープをヴィラン役に取り付ければ捕縛したことになるよ。じゃあさっそくやっていこう‼︎」
そして全員がくじを引き終える。
「……オールマイト先生、これは一体?」
ニアが引いたのは何も書かれていない札だった。正確にはペア番号である英文字ではなく、星マークが描かれていた。
「おめでとう!今回の当たり枠はナイアーラ少年に決まったぞ‼︎B組は21人だから、2人1組だと1人余っちゃうんだよね」
「……つまるところ、ぼっち…ということですね?」
「…………」
「目を逸らさないでくださいオールマイト先生」
「まぁ、その〜……ほら!ナイアーラ少年は今回の入試で1位通過だったから、ね?」
「それとこれとは関係ないと思いますが?」
「ウッ……」
「あとお尻のポケットからカンペが見えてますよ?」
「えっ⁉︎あ、本当だ⁉︎……あ」
「おやおや、No. 1ヒーローがこr「いい加減にしろ‼︎」ぬ"ッ⁉︎」
拳藤の手刀で意識を刈り取られるニア。無様にのびる姿はお笑いだった。
「ごめんなさいオールマイト。ナイアーラはこれが普通ですので……」
「あ、そうなんだ……ブラドキングから聞いていたけど、まぁ……気を取り直して訓練を始めよう‼︎」
そんな感じで訓練が始まった。ちなみにニアは1人となっているが、よく考えてほしい。
1年B組は21人。2対2で進めていくと、1人だけ何もせずに余ってしまう。
……本当にぼっちとなるのだ。
そのことに気が付いたオールマイトは急遽2対3の変則マッチにしようと提案したが、誰もニアと組みたいという人物は居なかった。
鉄哲は、
「もう訓練しちまったから組めない!2回も訓練すると抜け駆けしたみたいだからダメだ‼︎すまねぇニア‼︎」
と、彼らしい返答だった。
他にも
「ナイアーラだからなぁ……味方すら巻き込んで独り勝ちしそうだからなぁ……」
「味方を犠牲にして勝ちに来そう」
「寧ろ挑んでみたい。というかぶちのめしたい」
「切り刻みがいがある」
「ナイアーラって何かそこら辺のヴィランよりもヴィランっぽいから、より実戦的だから挑みたい」
と、いった感じだ。
「ナイアーラ少年って嫌われてる?」
「いやだなぁオールマイト先生、それだけ愛されているのですよ。扱いはともかく」
このままでは拉致が開かない。そうなった時、物間がある提案をした。
「オールマイト先生、ナイアーラ君は入試試験を1位通過したと仰いましたが、それは本当ですね?」
「うん、筆記もダントツで1位通過だったね!」
「ならば彼の実力は僕たちよりも遥かに上だと思うのです。まだ高校生活を始めて間もないですが、彼の能力はそれほど素晴らしいものなんです」
「そうなんだね。ブラドキングから聞いていたけど性格以外は非常に優秀だってね‼︎」
「ちょっと待ってください、それどういうこt「ナイアーラ、今は僕が話しているんだ」…おっふ……」
ニアの言葉を遮り、物間は結論を言う。
「だから僕からの提案です。ナイアーラ君は1人チーム、そしてまだ戦闘訓練をしていない2ペア…4人を1チームとした変則マッチにしませんか?」
「大胆な提案だね物間少年⁉︎でもそれじゃバランスが崩れそうだと思うんだが……」
「そうしなければバランスが良くならないのですよ。それほど彼の能力は秀でています」
「うーむ、そこまで言うなら許可するけど……ナイアーラ少年が受け入れてくれるかどうか次第だよ?」
「それについては僕に任せてください」
物間はニアの前に立って話を始める。
「ナイアーラ、君の実力は素晴らしいと思う。僕らが簡単に対処できるもんじゃない……」
「おやおや、それは嬉しいですね。それで?」
「本来ならばうまく調整して2対3が普通だ。しかし君をどちら側のチームに入れるかどうか、それを決めるのに時間が必要になる。まっ、くじで決めればすぐ解決する問題だね。でもそれじゃあ…………
面白くないだろう?」
「……ほぅ?」
ニアの口角が上がる。されど話は続く。
「君の性格から推測した、僕自身の考えだ。気分を悪くしたら申し訳ない。君は
「ええ、その通りです。私は今を愉しむ事を最優先とします。これは誰にも干渉されたくない、私自身の性質です。それを踏まえた、物間君の提案は実に素晴らしいものです。しかし…どなたか1人くらい、私のペアになってくれても良いはずでは?流石の私でも4人相手では愉しむ余裕が…ね?」
なかなか合意に至らない。
だが、すぐに決着がつく。
物間は
「おやおやァ?楽しむことよりも保身に走るのかな〜〜?それは自分自身の性質を否定することになっちゃうんじゃないのかなぁ〜?」
「…………」
物間は止まらない。
「あぁ‼︎もしかして僕らに負けるかもしれないと思ってるんだ⁈そうかそうか、それじゃあ仕方ないかぁ……」
物間は振り返りオールマイトにその旨を説明しようとする。しかし物間の肩を掴み止める者がいた。ニアだ。
彼の肩を掴んだニアは、険しい表情をしている。
「なかなか言うじゃありませんか。ですが私はそういった挑発には乗りませんよ?」
それに対し、物間は無言のまま表情を変えない。だからなんだ?と言わんばかりの表情だ。
「(物 •´∀•` )」
「( ニ ˙-˙ )」
数秒の間……
「(物 •´∀•` )」
「( ニ ^ - ^)」
また数秒の間……
「(物 •´∀•` )」
「( ニ ^ω^)」
さらに数秒の間……
「(物 •´∀•` )」
「( ニ ^ω^)」
そして数秒後……
「やってやろうじゃありませんかコノヤロウ!!!」
「えぇ……」
No. 1ヒーローのオールマイトは困惑していた。
クラスが険悪なムードだと思えば、どこかのスポーツ王で見た茶番が繰り広げられたのだから。
「オールマイト先生、こうなったらナイアーラと物間は止まりません……訓練始めませんか?」
「……そうだね」
拳藤がそう言い、オールマイトも了承する。
こうして、1対4の変則マッチが始まろうとしていた。
そして組み分けは、ヴィラン側がニア1人。対するヒーロー側は、茶番実践の物間、茶番原案の吹出、B組委員長の拳藤、今回の茶番を高く評価した取蔭の4人となった。
関係ないが、ニアがヴィラン側に決定した瞬間、B組のほとんどが哀れみの目をヒーロー側4人に向けていたという。
やめて!ヴィラン側になったナイアーラの“個性”で戦闘訓練を始めたら、ヒーロー側4人の精神まで茶番で擦り切れちゃう!
お願い死なないで物間!あんたが今ここで倒れたら、ニアとの茶番と拳藤の手刀の生贄はどうなっちゃうの⁉︎
SAN値はまだ残ってる。ここを耐えればまだ茶番は続けられるんだから!
次回、物間死す。訓練スタート‼︎
ニア=ナイアーラにヒロインっている?誰が良いかな?
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A組の誰か
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B組の誰か
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最近出番がないアビゲイル・ウィリアムズ
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外なるブラコン、イブ=スティトル
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ニャルラト……は要らないか
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物間
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要らぬ。いない方が人類のためだ。