「…………」
「おや、どうしました?そんな驚いたような顔をして」
何事も無かったかのように話すこの男、ニア=ナイアーラは呆然としている心操に訊ねる。他の2人は虚なままだが、この男だけは違った。
(何故解けてる⁉︎洗脳が浅かったのか?ならもう一度……)
「いや、何でもない……それよりも準備はいいか?」
「ええ、もち……」
再びニアは虚な表情に戻る。
(よし、これで大丈夫なはずだ……)
そう安堵していたのも束の間、それはすぐに消えた。
「……なるほど、呼びかけに応じると洗脳されるのですね。実に素晴らしい“個性”じゃありませんか。あ、私のことは気にせず愉しんでいきましょう」
「なっ⁉︎どうして⁉︎」
ものの数秒で洗脳が解けてしまったことに、心操は動揺を隠せない。
彼の洗脳は、彼自身が解除する。もしくは一定以上の衝撃を与えることで解除することができる。
しかし、そのことを周りに話したことはほとんど無い。ましてや雄英に入学してからは誰にも話したことがない。
それなのにも関わらず、この目の前にいる褐色の男、ニア=ナイアーラは2度の洗脳を
「時間が無いので一言で済ませます。精神力ですよ。貴方の洗脳よりも私の精神力が上回った。それだけです」
「クソっ……何だよそれ……」
心操は自分の“個性”が効かないことに、焦りと苛つきを感じていた。
考えていた作戦が完遂できない。
そう思っていると、その原因の男が話しかけてきた。
「それにもう始まっているのですよ?貴方は騎手、私は騎馬……指示が無ければまともに動くことはできません。作戦はあるのでしょう?」
「……あったけどアンタがそれじゃ上手くいくかは分からない。けど諦めたわけじゃない。勝ちにいく」
「よろしい。ならばこのナイアーラ、存分に力を奮いましょう!」
大袈裟に振る舞うニアを見て心操は再び苛立つが、それ以上に頼もしいと思えた。
(コイツは俺を何とも思っちゃいない。だったら俺は存分に利用させてもらう!)
ギラついた眼でニアを見たあと、周りを見渡す。半分近くが1000万ポイントを取りに行っている。1000万ポイントさえ取れば、確実に次に進めるのだ。
だが、物間をはじめB組のいくつかのチームは、1000万ポイントを狙うような大きな動きをしていない。好機を伺っているように見える。
(そいつらを狙うか?)
そう考えるが、
ならば1000万ポイントを狙っているチームから掠め取ることが最善手だと。
「決まった…1000万に群がる奴らから奪うぞ」
「承知しました。上手く奪ってくださいね?」
そして心操チームはやっと動きはじめた。
「動き始めたかナイアーラ」
物間はニアの方を見て呟いた。
アレに挑むのはまだ早い。それに騎手が知らない奴だ。あのナイアーラを差し置いて。警戒をした方がいいだろう。
そう思いつつ、物間は自身の作戦通りに動きはじめた。
騎馬戦が始まって10分が経過した。その時点での順位はこうなった。
1位…緑谷チーム
2位…轟チーム
3位…心操チーム
4位…物間チーム
5位以下0ポイント
1000万ポイントを持つ緑谷チームは殆どのチームから狙われているのにも関わらず、上手く対処し回避をしている。ひたすら粘り続ける緑谷チームに、油断も隙も無い。
2位の轟チームは、いくつかのチームからポイントを奪い2位を維持。
3位は心操チーム。ニアという要注意人物と彼を騎馬にしている心操に警戒をするが、心操の【洗脳】という初見殺しよりポイントを稼ぐ。奪われそうになってもニアの魔術により防がれる。
4位は物間チーム。物間の作戦により1000万ポイントを狙うチームからポイントを奪う。ポイントを奪われた爆発ボンボヤージュこと爆豪は、騎手でありながら騎馬から離れ宙を飛ぶが、物間チームの騎馬にの1人、円場の空気凝固によりポイント奪還ならず。激おこプンプン丸である。
残り5分。
突然、緑谷チームの周りを氷の壁が覆う。
「行くぞ、緑谷……」
「轟君……!」
緑谷チームと轟チームが睨み合う。攻防、機動力に優れる轟チームに対し、緑谷チームは4人の連携により1位を保っている。
「……轟君、残り3分弱、僕はまともに動けなくなる。だから1000万ポイントを必ず獲るんだ」
「おい、どういうことだ?」
DRRRRRRRR!!
真面目メガネの男子から、けたたましいエンジン音が鳴り響く。
そして次の瞬間、轟チームは緑谷チームの後ろまでに走り出していた。
レシプロバースト!!
「なっ⁉︎」
突然のことに緑谷は何もすることが出来なかった。
そして頭に巻いてあった1000万ポイントのハチマキが無くなっており、そのハチマキは轟の手に握られていた。
「言っただろう緑谷君……僕は君に挑戦すると!」
『ついに奪われたァァーー!飯田のスーパーダッシュが炸裂ゥゥゥゥ!!緑谷チーム!一気に0ポイントにダウン‼︎つーか4位以下が0ポイントって⁉︎どうしたどうした⁉︎』
『心操チーム、物間チームは、緑谷たちを直接狙わずその周りから奪っていった。1000万を取らなくても他が0ポイントならば次に進めるからな』
『そいつは良い作戦だな!だがまだ2分も時間があるんだぜ⁈終了のブザーが鳴るまで走り続けろよエブリワーン!!!』
喧しい実況の中、生徒たちは更に熱を上げ、激戦となる。
緑谷チームはすぐに1000万ポイントを奪い返そうと攻めに走るが、轟の氷によって妨げられる。それでも諦めず、攻め続けることで一本のハチマキを奪った。
「位置を変えておきましたの!緑谷さんならば、必ずハチマキの位置を把握していると!」
緑谷が奪ったのは1000万ポイントではなく、別のチームのハチマキであった。そして緑谷チームの順位は4位……いや、5位であった。
1位が轟、2位が心操、3位が爆豪、4位が物間となっていた。
〜 ほんの少し前 〜
「周り見なさすぎなんだよA組は」
「なっ⁉︎」
物間チームは1000万ポイントを狙う爆豪チームからハチマキを奪った。爆豪はすぐさま取り返しに反撃するが、物間はコピーした【爆破】で迎撃。迎撃できない攻撃には【硬化】して防ぐ。
「俺と同じ“個性”も⁉︎」
「アホが……パクリやがったな……!」
「正解。僕の“個性”はコピーさ。君とは色々と話がしたいけど、僕らは君らを相手するほど暇じゃないんだ。本戦で当たったら聞かせてよ、
高笑いしながら爆豪チームから離れる物間チーム。ハチマキが奪われて0ポイントとなった爆豪は、わなわなと怒りに震えている。
「作戦変更だァ……」
「は⁉︎今からか⁉︎」
「えー、どうすんのさーー!」
爆豪は一呼吸置いて、鬼の形相で両手を爆破させた。
「
爆豪は騎馬から離れ、爆破を器用に操り空を飛ぶ。目標は物間チーム。
物間も爆豪の猛襲に気付く。
「円場!防御‼︎」
「おう!フッ!」
円場の空気凝固により爆豪は見えない壁に阻まれるが、大きく振りかぶった右腕を振り下ろし、壁を破壊。そのままハチマキを奪った。
宙にいる爆豪を、騎馬の一人である瀬呂が肘からテープを射出し、爆豪を回収。
「まだだ‼︎」
爆豪は吠えた。
彼が手にしているのは1本だけ。しかも点数がかなり低いものだ。これだけでは本戦に出れない。
しかし、彼はそれを目標としていない。
体育祭における爆豪の目標は
こんなところで手間取っている暇は微塵も無いのだ。
爆豪は騎馬に指示を出し、物間チームに迫る。その指示は非常に的確かつ無駄が無かった。
その勢いのまま、物間のハチマキを全て強奪した。これにより爆豪チームは3位に浮上。この順位であれば、本戦へ出場できるが、爆豪はまだ止まらない。
「次ァ1000万だ‼︎」
爆豪の声に、騎馬の3人は強く返事をした。
「「「おう!!!」」」
そして現在に至る。
残り1分を切った中、緑谷チーム、そして爆豪チームが1000万ポイントを持つ轟チームへと攻撃する。
だがそこに、不穏な影がやってきた。
「愉しそうですね。私たちも混ぜてくださいよ」
『1000万争奪戦についに登場!心操チームが乱入だァァ!!!』
ニアは不敵な笑みを浮かべている。騎馬の心操は苦笑いしているが。
4チームによる乱戦。現にポイントを持っているのはこの4チームだけなのだ。
「ナイアーラ……その作戦で良いのか?」
「ええ、他のチームがどうしようが2位は維持できます。それに貴方の“個性”はタネが分かれば勝ち目がない……これ以上目立つのは貴方にとって枷となり得るのでね。今は我慢しましょう。お2人もよろしいですね?」
その問いに尾白と庄田は不本意ながらも同意する。
そして試合が動く。
緑谷、爆豪、轟チームはニアたちを警戒し、動きが一瞬だけ止まる。だが、それが決着を付けたのであった。心操は声を上げた。
「引くぞ!」
心操の声により騎馬の3人は乱戦から距離を取る。そして宙に浮かばせている魔本が光出す。
「ギガ・ラ・セウシル」
ニアが唱えると、緑谷、爆豪、轟チームの周りを透明な半球が覆う。
「セウシル」
続けざまに呪文を唱えたニアの周りにも、同様の半球が覆う。
『どういうことだコリャ⁉︎強固なシールドで3チームを守った⁉︎』
プレゼントマイクが困惑していると、爆豪がそのシールドに向けて爆破した。
しかしその爆風は
「言うのが遅くなりましたが……一定以下のエネルギー量は全て跳ね返します。気をつけてくださいね?」
緑谷、轟チームは爆豪チームを見て動くことができなくなった。0ポイントの他チームも、そのシールドを壊そうとするが、ヒビが入るだけで壊すまでにはいかなかった。そのままポイントは変動することなく、タイムアップとなった。
『試合しゅ〜〜りょ〜〜!!!最後はまさかの動き無し‼︎ナイアーラがエゲツない⁉︎つーか上位4チームが進出だけどポイント持ちが4チームしかいないって何じゃこりゃ?まぁだがお疲れ様だぜと伝えておくゥ!1位!轟チーム!2位心操チーム!3位、爆豪チーム!そして4位に緑谷チームが本戦出場だぜ‼︎出れないからといってもう終わりじゃあない‼︎レクリエーションがあるからまだまだ出番はあるぜオイ!んじゃ昼休憩を挟んでからのレクリエーション、そして本戦の開始だゼ‼︎てなわけでイレイザーヘッド、メシ行こ〜』
『……Zzz』
『え、寝てる……?』
こうして騎馬戦が終わった。
ニアは休憩しようと歩いていると、心操に話しかけられた。
「どうしましたか?」
「……ひとつ、聞かせてくれ。アンタは何でヒーローを目指している?」
その言葉に目を見開くニア。そしてすぐに目に笑みを浮かべ口を開く。
「
「……………そうか」
心操はこれ以上、話すことなくこの場を去ろうとする。
「では私からもお聞きしましょう。貴方はどうしたい?」
ビクッとした心操はその場で立ち止まり、ニアに背を向けたまま答えた。
「
「いえ、大変素晴らしいと思いますよ。せいぜい諦めず足掻きなさい。私から言えるのはそれだけです。本戦で愉しみにしていますよ」
そうしてニアもこの場を去った。
つぎからやっと本戦トーナメントだー……
ニア=ナイアーラにヒロインっている?誰が良いかな?
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A組の誰か
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B組の誰か
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最近出番がないアビゲイル・ウィリアムズ
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外なるブラコン、イブ=スティトル
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ニャルラト……は要らないか
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物間
-
要らぬ。いない方が人類のためだ。