【外なる英雄もどき】   作:Ecoli@良性TYPE

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だいぶ長らくお待たせしました。今回は個性把握テストという名の体力測定編です。


第6話

「お前達にはこれから体力測定をやってもらう‼︎」

 

入学式の次の日、体操着に着替えてグラウンドに集合した1-Bに対し説明をするブラドキング。

 

「内容は中学校の時にやったであろう【個性無し】の体力測定を、“個性”有りで行う。これにより何が出来て何が出来ないかが分かる……そしてそれぞれの課題を、今後の授業で克服してもらうということだ!」

 

熱血スイッチが入り、力強い説明となった。それに感化され、鉄哲を始め、半数の男子が高ぶっていた。『ちょっと男子〜?熱くならないで〜〜』みたいな感じで。

だが、盛り上がるのも十分理解できる。公共の場での“個性”の使用は原則禁止とされている。だが、花に水をやるために【水を出す“個性”】を使うことは、違反ではあるが、そこまで厳しく取り締まらない。せいぜい軽い注意を受けるだけだろう。現に常時“個性”が発動している人もいるのだ。高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応しているのだろう。

そんな環境から一変、授業において“個性”を制限なく使えるとなると、誰だって興奮する。中には「面白そう」といった、考えが遊びよりに捉えられる言葉を発する者もいた。そんな浮ついている空気の中、

 

 

 

「バカモンッッ!!!」

 

 

ブラドキングの怒声がグラウンドに響く。その一喝により、全員が静かになる。

 

「そのような心構えでヒーローになれると思うな!一瞬の気の緩み!慢心‼︎それが命取りになることもあるんだ!それだけではない、救える命も救えなくなる。それこそヒーローとしてあるまじき行為だ……」

 

ブラドキングの言葉で、反省したのか目線を下に向ける者もいれば、感銘を受けて相槌をうつ意欲的な者もいる。

その様子を見たブラドキングはさらに言葉を続ける。

 

「思い切り“個性”を使えるのであれば、面白そうだと誰もが思う。その点ではお前たちは間違っていない。だからこそ、今回の考えを改めて、立派なヒーローになってもらいたいのだ。俺はお前たちならなることが出来ると確信している!この3年間、我々教師陣はお前たちに苦難を与え続ける。そして乗り越えろ‼︎これが雄英高校の校訓、

Puls ultra(更に向こうへ)だ‼︎」

 

「うぉぉーーっっ!!ブラド先生ェェェーーッッッ!!」

 

感動して涙を流しながら賞賛の叫びを上げる鉄哲。

鉄哲ほどではないが、無言で涙を流しながら拍手をする泡瀬。

「ああ、なんて私は浅はかだったのでしょう……」

と、祈りをしている塩崎。

『。゚(゚´Д`゚)゚。』

と、顔文字になっている吹出。

 

様々な反応をしている。

 

(なんとまぁ、個性豊かなクラスメイトなんでしょう。私はとても愉しみです)

 

と、至極真顔なニアだった。

いざ体力測定を始める。内容は

 

・ボール投げ

・50m走

・立ち幅跳び

・長座前屈

・上体起こし

・反復横跳び

・握力

・持久走

 

といった、ごく一般的な体力測定だ。“個性”有りとなれば、素の身体能力での取り組みよりも好成績を収めることができるだろう。

 

「ではまずはボール投げだな。出席番号順で行うから、泡瀬はこの円に入って準備をしてくれ」

 

「はい!」

 

威勢のいい返事とともに、体力測定が始まった。

泡瀬や鉄哲のような“個性”では素の身体能力で行うしかないが、塩崎は荊の髪の毛でハンマー投げのように飛ばし、100mを余裕で超えた。手が巨大化する拳藤は、1回目は巨大化した手で普通に投げたが、思った以上に成績が伸びなかった。しかし2回目はボールを投げるのではなく、殴ることで1回目の倍以上の成績を残した。

 

「あれで殴られたらひとたまりもありませんね……」

 

「ハハハ、それは同感。でもあのやり方は参考になるなァ……」

 

物間はいい笑みを浮かべている。そういえば色んな人と握手などでボディタッチをしていたが……何か関係あるのだろうか?まぁ、すぐにわかるだろうとあまり気にしなかった。

だがしかし!!!

後日行われる戦闘訓練であんな事件が起きるとは、誰も思わなかった!!!

それはまた別の機会にお話ししよう……

 

「次!ナイアーラ!」

 

「わかりました」

 

ニアは指示された通りに円の中に入り、ボールを受け取る。そして空いた手にあの時の魔術書を取り出すと、それは同様に輝き始めた。

 

「では手始めに……出てきなさい、ゴーレム」

 

そう呟くと、円の内側の土が盛り上がり形をつくる。1.3mほどの人型の土塊はボールを掴み、足を高く上げ、全力で投げつけた。

 

「記録……1.2m」

 

全力で投げつけた。地面に。

周りは「え、何してんの?」と訝しげな表情をしたり、「真面目にやれニアァァァア!!」と、ちょいおこである人もいる。

 

「ナイアーラ、真面目にやれ」

 

ブラドキングも呆れて注意する。

 

「いやぁ、ぶっつけ本番でもいけるかなーと思ったのが間違いでしたね。新たな課題ができました」

 

「なぜいけると思った……記録は2回とる。もう一度真面目にやるんだ」

 

ニアが反省しているのかしていないのか、判断つかないブラドキングは顔を抑えて軽くため息をつく。そしてもう1つのボールをニアに渡す。

ニアも「わかりました」と告げて、再び円の中に入る。

そして再び魔術書が輝き始める。それと同時にニアは誰にも聞こえない声で唱え始めた。

 

「開け、門よ……」

 

すると彼の目の前に銀に光る小さな靄が現れる。そしてニアはボールをその靄に入れる。そしてブラドキングに言う。

 

「どうですかね記録は。おそらく1000±1mに飛ばしたのですが?」

 

「……1000.4m。色々と確認したいことがあるが、ナイアーラ。それは()()か?」

 

「いえ、今回はノーリスク、微調整可能な範囲で飛ばしました」

 

「……全力ならばどこまでいける?」

 

「そうですね、後先を考えずに限界まで遠くに飛ばせるのであれば……

 

 

 

 

宇宙の果てまでですね

 

 

 

 

『!?』

 

ざわつくクラスメイト。いくら汎用性のある非常に優れた“個性”であれ、規模が異次元なのだ。

 

「そうか……」

 

ブラドキングも驚愕のあまり、薄いリアクションを取らずにはいられなかった。そして同時に、ナイアーラを

()()()()()()()()

を考えなければならなかった。自分の生徒の安全を。

 

 

魔王(アザトース)までが遠くても100億光年。それでもまだ私には余裕がある……そもそもの宇宙の果てが464億光年と言われているが、その先は一体何があるのだろうか?ん、なぜ在るものだと仮定したのだ私は?あったとしても、それは何だ?魔王すら知らない次元なのか?何はともあれ、行く価値は……十二分にある)

 

1人思考を巡らせクラスメイトと合流するニア。彼を見る周りの目は、畏怖なのか感心なのか?それを知る由はない。

と、まぁ、こんな感じにサクサクとビスケットを食べるが如く、ダイジェストで体力測定を行っていった。

 

 

・50m走

 

「よっこいしょ」

 

卍(゜ロ゜卍)「ブイィィィーーーーン」

 

ニアの記録

1秒07!!!

吹出の記録

3秒02!!!

 

ニアは門を創り、それを跨ぐ感覚でゴールに移動。一緒に走った?吹出はスピードが出そうなオノマトペに乗ってゴール。

そしてブラドキングの適切な判断により、門による移動は禁止となった。

 

 

 

・立ち幅跳び

 

グオン!!!

 

「なっ⁉︎座ったままの姿勢!膝だけであんな跳躍を‼︎」

グオン!といってパパウ!と飛ぶなんて!そして着地はメメタァだっ!!!」

「最期は身体が真っ二つになりそうだね……」

「それとアイツ、どこまで飛んでいく気だ?」

 

「戻ってこいナイアーラ‼︎」

 

ニアの記録

(無限)!!!空も飛べるはず〜

 

「どうせなら魔法使いっぽく箒に乗ってほしかったな」

 

「箒ですか?一度やりましたが……まぁ事故って私の偉大なる黄金の双玉(キ○タマ)を強打したのでね。二度とやりませんよ?男性の皆さんならわかるでしょう?」

 

『…………』

 

男子生徒全員、顔を引きつらせたり青ざめたりと、想像してしまったようだ。下からの衝撃はやばいぞ!やばいぞ!!!

 

 

 

・握力

 

「フンッ‼︎」

 

ニアの記録

38キロ

 

「普通だな」

「逆にスゲー」

「むしろ身体能力は高くないんだな」

「身体鍛えろよニア‼︎」

 

「んー?聞こえんなぁ〜?」

 

 

 

・長座前屈

 

「……クッ」

 

ニアの記録

43.8cm

 

「「「「普通だな」」」」

 

「珍妙なものを見るような目をしないでください」

 

 

 

・上体起こし

 

「つ、疲れました……」

 

ニアの記録

27回

 

「ここまでくるとさっきの記録がおかしく思える」

 

「おっと、心は硝子ですよ?」

 

 

 

・持久走

 

「飛べるって素晴らしい」

 

ニアの記録

1分45秒

 

「箒の上で寝ながら飛ぶとか……」

「何かムカつく」

「ん」

「同意するー」

「oh!コレが激おこプンプンマル!というやうデスネ‼︎」

「その使い方だいぶ違う」

 

女子たちのコメントに対し、

 

「当たり前じゃないですか。行動で煽っているのですから」

 

「最低だな、お前……」

 

「愉悦部員ですから」

 

 

 

・反復横跳び

 

「クハハハハ!!!」

 

いい笑顔で行ったので58回。

 

「意外に好成績だ……」

「何か違和感しかない」

 

「そうですね……真面目に答えるのならば、私は基本、やろうと思えば大抵はできます。しかし素の身体能力では皆さんよりも劣っているため、後方支援が最適です。ですが現実はそんな甘くはありません。攻撃的な“個性”でも救助活動は必然ですし、その逆も然り。ならばその両方に必要とされる判断力、機敏性はあった方が良い。そう私は考えています」

 

周りは鳩が豆鉄砲を食らったように驚いている。そして最初に口を開いたのは鉄哲だった。

 

「ニアがまともな事を言ってるだと⁉︎」

 

「鉄哲?それは心外です」

 

「まだ2日しか経ってないけど、ナイアーラはねぇ……物間と同類だわ」

 

と、取蔭が切り込む。

 

「アレレェ⁉︎どうして僕にまで飛び火してるのかなァ⁉︎」

「そうですよ。彼は心がアレなだけで、私は心が無いのですよ?」

 

「「「ダメだろそれ‼︎」」」

 

複数のツッコミが入る。しかしニアは平然としている。それが彼なのだから。

そんなこんなで全員の“個性”有り体力測定が終了した。ブラドキングは端末を使いモニタを展開、21名の成績を出した。10個もない内容であるため、自身の実力を発揮できない者もいれば、発揮できる部分だけでは好成績を残している者もいる。

 

「今回の結果から自分が出来ること、出来ないことを改めて実感しただろう!中には上手く実力を発揮出来なかった者もいるはずだ。しかし‼︎お前たちはまだ未熟だ!未熟だからこそ伸び代しかないのだ‼︎これを機に、お前たちには努力してもらいたい‼︎」

 

「「「「「ハイ!!!」」」」」

 

「以上!これにて体力測定を終了する。各自着替えてから教室に戻るように!」

 

 

こうして、雄英高校、第1の試練が終わった。

それぞれ己の長所、短所を理解し次に繋げようと、簡単な反省会をしながら教室に戻った。

 

 

 

 

HR(ホームルーム)が終わり、ニアはさっさと帰ろうとする。すると彼に声をかける人が現れた。

 

「ニア!一緒に帰ろーぜ‼︎」

「駅までだけど俺も一緒にいいか?」

 

「ええ、いいですよ」

 

鉄哲と泡瀬とニアの3人で帰宅した。その道中、今日の体力測定の話になる。

 

「そういえばふと思ったんだけどよォ、ニアの“個性”って何だ?魔法なのか?」

 

「あー、俺もそれ気になった。でも始まった時に本が現れたから……それが魔力源みたいな感じか?よくあるだろ、ゲームの装備とか」

 

その質問に対し、ニアは当然のように答える。

 

「そうですねェ……まず、私の“個性”は【魔法】ではなく、正確には【魔術書】というものです。かつて存在したと言われている魔術書を自在に取り出すことができるのですよ。そしてそこに記載している魔術を使うことが出来る、というわけです。魔術書は1つだけではないので、様々な魔術を使えるのですよ」

 

「マジか!魔術書ってゲーム内だけじゃないのか⁉︎」

 

「驚くのも無理はありません。ですが……そうですね………【本当に存在していたから】ゲームでも魔術書があると私は考えていますよ。魔女だって同じです。かつて存在していたから、恐れられていたから魔女狩りという歴史があるのですよ」

 

「「へぇー」」

 

2人が興味ありげに話を聞いている。すると鉄哲があることを聞いてきた。

 

「じゃあよ、身体能力を上げる魔術もあるんじゃねーの?」

 

「確かにそうだな。そうすりゃもっと良い記録を残せたよな」

 

「ええ、確かに自己強化の魔術はあります。ですがそれを使うと、他の魔術が一切使えなくなるデメリットがあるのですよ。それに効果時間は一定ではなく、さらに使用後の筋痙攣が起きてしまうのでね……使わないようにしたのですよ」

 

「そうなのか。確かに現場で筋痙攣して動けなくなったらマズイもんな」

 

「まぁ、改良することは不可能ではありませんので、今後の課題の1つにしますよ。あ、すみません2人共。私家がこっちなので……ではまた明日会いましょう」

 

「オウ!じゃーな‼︎」

 

「また明日な!」

 

そうして2人と別れ、帰路につく。

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました」

 

『お帰り!そして久しぶりだね我が息子(玩具)よ!元気にしていたかな?』

 

ハウス(一昨日きやがれ)

 

玄関開けたらヤベーやつ(ニャルラトホテプ)がいた。なんの前触れもなく登場するこの邪神、ニアの胃に穴を開ける行為を喜んでするのだ。

 

『もうっ!親に向かってそんなこと言ってると……消しちゃうぞ

 

「……本気でイラッとしたので本音が出てしまったことを謝罪しましょう。それで、突然現れたのは……私に用があるのでは?」

 

部屋に入りコーヒーを飲む。そして母の要件を聞いた。

 

『流石!とは言っても、一言伝えるために来たからね』

 

「一言ですか?わざわざ会いに来るほど?」

 

ニアはコーヒーを含みながら警戒する。もう嫌な予感しかしないのだ。彼の第六感がやっべぇぞ!と囁いている。

そして案の定、爆弾発言を残した。

 

『そろそろ妹が出来るから♪』

 

「ブッ‼︎ッゲハゴホ⁉︎っお"ェ"!?ン"っ!!?」

 

『じゃ、そーゆーことで!アデュ〜!』

 

愉悦部名誉会長(ニャルラトホテプ)は一瞬で霧散し消えた。ニアが吹き散らしたコーヒーを残して。

ニアの悩みのタネが増え、自分にも胃薬を処方しなければならなくなったことは、まだ誰も知る由はない。




B組の皆さんの口調が判らぬ……判らぬのだァ!

気の強そうなのは…誰かなァ?(B組のみ)

  • 拳藤 一佳
  • 小大 唯
  • 取蔭 切奈
  • 塩崎 茨
  • 柳 レイ子
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