狂気山脈(英語版)はあるんだけどなぁ……
救助訓練の次の日の朝、学校の正門が騒がしい。カメラとマイクといった機材を持った騒がしい存在、
そしてその矛先がニアに向かった。
『オールマイトの授業の感想をお聞かせください!!』
「申し訳ございませんが、まだ彼の授業を受けていないのです。ですのでマスコミの皆様のご期待に応えることができません…」
と、頭を下げる仕草をするニア。ニアにしては丁寧な対応をされたマスコミたちは納得したのか、一歩下がる。
「あ、それはそうと……そこのお姉さん?」
「え、私……?」
「昨日はお楽しみだったようですね?うなじに
「えっ⁉︎嘘⁉︎ちゃんと確認したn………あっ」
気まずい空気にすることができて満足げな表情をする。
そしてそれを見ていたクラスメイトの取蔭に、
「ナイアーラ…アンタさぁ……」
「おや、おはようございます取蔭さん。どうかしましたか?」
「あ、おはよー…じゃなくて。さっきのマスコミの対応さ、アレは酷いよ……」
「どこがです?私なりに丁寧な受け応えをしたと思いますが?」
「そのあと!なーんで余計なことを言うのさ?あのマスコミのお姉さんが可愛そうじゃん、プライベートがバレて……」
「ああ、その事ですか……そりゃ面白そうだと思ったからですよ。逆にあんな堂々とキスマークを残されちゃあ、誰だって指摘しますよ。私はただ!周りの仕事仲間にバレたらどんな反応をするのかな〜という考えがあっただけで、別に彼女を陥れようとはしてませんよ。まぁ強いて言うなら、愛し合った相手と朝帰りしたような反応をしてくれたら百点満点でしたがね」
「…………」
「ま、そもそも朝から仕事があるのにも関わらず身支度を怠った…それを指摘したまでですよ?それにオールマイトの授業はまだ受けてませんしね。アレ?何か悪いことしましたかね、私?」
「ふーん……じゃ、一言で纏めると?」
「愉悦♡」
満面の笑みで答えると、脛を蹴られたニア。その場で蹲りフルフルと堪える。
(別に悪いことしてないはずなんですがね……痛い)
そんなこんなで教室にたどり着き、HRが始まる。
そして担任のブラドキングが真剣な顔をして言い放つ。
「これから学級委員長を決めてもらうッッ!!!」
「うおおおおおおお!!!」
クラス中が盛り上がる。本来、学級委員長なぞクラス代表という名の雑用係だ。流石ヒーロー科、誰もが自分が自分がと手を挙げ、立候補する。
「うむ、全員やる気に……む、お前は立候補しないのかナイアーラ?」
「ええ、私は遠慮させてもらいます。そのような役職には向いていないと自覚していますのでね……あ、ですが面倒くさいからやらないというわけではありません。委員長が困っていたらちゃんと助力しますよ」
「む、そうか。無理に立候補しろとは言わない。だが何故だ……お前がそう言うと逆に不安になってきたぞ」
「何故に⁈」
担任にも不審がられているニア。
「裏から助言するってアレだよな。裏ボス的な感じだよな」
「悪の親玉」
「ホラー映画にいても違和感0」
「ん」
「推理小説の犯人に助言しそう」
「雄英のモリアーティ」
「校門前のマスコミが1人犠牲になったばかりだしね」
「うわぁ……」
さらに追い討ちをかけるクラスメイト。愉悦に情けは不要なり。
するとニアはいつの間にか眼鏡をかけ立ち上がり、言い放つ。
「どうしてなんだ……私はただ他の人のために行動した……!まともなのは私だけか⁉︎」
「「「「いや、それはない」」」」
クラスメイトには息ぴったりのツッコミを受け、
「ボートを用意しろ。1人分で良い」(超低音ボイス)
「何……だと………⁉︎」
ニアの茶番の抑止力、吹出がノってくれた。
「茶番は済んだかナイアーラ?お前は『まとも』という言葉を辞書で調べて線を引いておけ」
「わかりました」
と、いつもの表情に戻り着席する。
「さて、皆さんから見た私の評価がボロクソだったところで、さっさと決めちゃいましょうか」
そしてB組の学級委員長は拳藤、副委員長は骨抜が就任した。
午前の授業を終えて昼休み。基本的に教室で弁当を食べるか、ランチラッシュが作る学食を食べるかとなる。
「ニア‼︎メシ食いにいこーぜ!!!」
「すみませんが遠慮させてもらいますね。今日はコレがありますので」
と、机の上にある弁当箱を指差すニア。鉄哲は「それなら仕方ねーな‼︎」と、納得して骨抜と泡瀬とともに教室を出る。彼らと入れ替わりに、吹出と凡戸がやってくる。
「一緒に弁当食べよ〜」
「(▭-▭)✧僕もいるぜ!」
「ええ、構いませんよ」
3人は机を合わせて弁当を食べ始める。
「ねぇ、それってナイアーラ君が作ったの?」
「コレですか?そうですよ。姉が作ることもあれば、今日のように私が作ることもあります。どうです?折角ですし、おかず交換しませんか?」
「(*´ω`*)ヤル」
「いいね〜」
そんな感じで和気藹々と昼休みを過ごしていく。そして事件は起きた。
吹出がニア特製の卵焼きを食べた瞬間にだ。
「びゃあぁああゔm」ウゥーーーー!!!
突如と鳴り響く警報音。それにかき消される吹出君渾身のボケ。ほら、吹出君の頭部がシワシワピ○チュウになっちゃってるよ。
「何〜これ〜⁉︎」
「警報音です。」
「違うそうじゃないよ〜。何の警報音なんだろ〜⁉︎」
「どうする?他のクラスの人はドワァーーーッッと避難してるっぽいけど……」
「今避難すれば人の雪崩に巻き込まれる可能性があります。現に廊下でちょっとしたパニックになっているでしょう。待機して先生たちの指示を待ちましょう」
ニアの提案を受け入れる2人。しかし警報のアナウンスは、屋外に避難しろと言う。なので3人は人混みが落ち着いてから避難をする事にした。
暫くすると騒ぎが落ち着いた。原因は勝手に侵入したマスコミだという。ヴィランより害悪では?と思ったニア。パニックを引き起こして怪我人が出たら大問題だ。ニャルラトホテプよりたちが悪い気がする。
放課後、鉄哲と何気ない会話をしていると、実に面白い話を聞くことができた。
「なぁニア、最近発生してる妙な事件知ってるか?」
「妙な事件?」
「何でも、世界各地で発生してるんだってよ。見てみろよコレ」
鉄哲からスマホを受け取り、画面のニュース内容を見る。
タイトルは『怪奇⁉︎世界各地で失踪相次ぐ!』と記載されている。内容も、それについて様々な考察や被害者数といった、ごく一般的な記事であった。
「ふむ、至って普通の失踪事件ですが……確かに被害者の失踪時刻、国柄等の共通点がありませんね。この日に限っては5件も発生しています。ですが何故この記事を私に?まさかとは思いますけど……私がやったと思ってませんか?」
「いや‼︎ニアはこんなことはしねぇ‼︎やるならもっと大胆にやる気がする‼︎」
「確かに私なら不特定多数ではなく対象の情報を手に入れてから……じゃなくて。さらっと容疑者にしないでくれます?」
「すまん、でもニアの意見を聞きてぇんだよ。どう思う?」
「どう、と言われましても……仮に犯人が分かった場合、貴方はどうするおつもりですか?免許を持ってない貴方がどうこうできる事件ではありません。逆に何故そこまで知っているのか?と思われて疑われてしまうかもしれませんよ?」
ニアの言葉に鉄哲は黙り込む。そしてニアは真剣な顔から一変して、笑顔になる
「ハハハ!そんな真剣にならなくても大丈夫ですって。ちょっと意地悪したくなっただけですよ」
「ッ!ニア!お前って奴は……‼︎」
「それが私ですから気にしないでください。お詫びに私の意見を聞かせてあげますよ。そうですね……直結に申し上げますと、私なら不可能ではありません。体力測定で使った『門の創造』を応用すれば、筋が通ります」
「何だと⁉︎」
「嘘ではありません。ただ、この事件を見るに
と、笑顔で教室を出るニア。
1人で帰る彼は、周りに誰も居ないことを確認するとスマートフォンを取り出し電話を掛ける。
「……もしもし、私です……ええ、少し調べて欲しいことがありまして…………世界各地で発生してる失踪事件についてです………はい、見当は大体ついています。何、私自身干渉する予定はありませんが少し気になりましてね…………ええ、お願いします。では……」
通話を終え、彼は再び歩き出す。いつになく、愉しみに満ちた笑顔と共に。
学級委員長を決めた数日後のこの日、1-Bのヒーロー基礎学は座学だ。担当は18禁ヒーローのミッドナイトだ。年齢は確か……おっと、謎の寒気がしたな。くわばらくわばら……
それはさておき、授業内容は、コスチュームに関する法律やそれに関する歴史。他にもヒーローの必要性及び必要になった出来事などの概要といったところだ。
コスチュームに関してなかなか面白いところがある。
目の前の三十路ナイト……じゃなくてミッドナイトの“個性”は『眠り香』だ。肌から即効性の睡眠作用を持つ成分を出せる。そのため、衣服で肌を隠すほど効果が薄まるという。かつては18禁に恥じぬコスチュームを身につけようとしたらしいが、それはただの露出狂である。それに武器が鞭だって?完全にSMですねわかります。
きっと中にはビキニで良いだろう!と、言う人もいるかもしれない。
だがしかし‼︎
この言葉を聞けば老若男女問わず!納得するだろう……
「ロマンですね?」
「そう!ロマンよ‼︎」
やはりそうだったか。ロマンを求めることに善悪なぞ不要。
ロマンという『夢』を求める『行動』こそ万人に必要なのだ。自分を信じ続ければ、夢はいつか必ず叶うって偉い人が言ってた。
そんな感じで授業をするミッドナイトに、連絡が入った。その内容を聞いた途端表情が険しくなる。
「全員教室で待機‼︎いいわね⁉︎」
突然の指示に困惑するクラス。しかしミッドナイトの表情から察するに、緊急事態が起きたのだろう。すぐにざわつきが収まり、彼女の指示に従う。
(気のせい……ではありませんね、この感じは。心地良くて親近感が湧く魔力、魔導書…のようなレプリカですか……)
窓からその感覚がする方を見る。
ああ、運が悪かった。是非とも会ってみたかった……
ところ変わって雄英高校敷地内施設USJ、そこに『ヴィラン連合』を名乗る集団が襲撃した。彼らの目的はオールマイトの殺害だったが、授業を受けていた1-Aとオールマイト、そして雄英で教師をしているヒーローたちに敗北した。
主犯格と思われる2人は逃げたものの、その他を一斉逮捕することができたそうだ。
だが、事件は終わらなかった。
逮捕したチンピラたちは縄に繋がれて警察に連行されていく。その中の1人の男が声を荒げる。
「おい!テメェさっきからうっせーんだよ!!!ぶち殺されてぇのか⁉︎」
「おい!黙って歩けッ‼︎」
「だったらこいつを静かにしろよ‼︎」
警察官に指摘されるが、男は後ろに繋がれている汚いローブの人物に文句を言い続ける。それに対しローブの人物は俯いたままブツブツと何かを呟いている。
「静かにしろ‼︎」
「………みよ……で…ね………」
「おい聞こえているのか⁉︎」
「……こそ世界に…………す…
警官の言葉に一切反応せず、呟き続ける。その瞬間、顔を上げて天を仰ぐ。
「お、おい⁉︎何をしている⁉︎」
ローブの人物は男だった。しかしその瞳に光は無く、虚である。だが“死んで”はいなかった。そして男は叫ぶ。
「おお…!おお……!今こそ世界に混沌を!悪意に満ちた貴方様にぃぃ!我が身を捧げんんんん!!!」
異常
その一言を表した狂気に、その場にいる全員が男を見る。いや、見てしまったのだ。身体の穴から血を吹き、それでも喜びに満ちた笑みを。
「しっ、静かにっっ⁉︎ぐぶちっ……ぁ?」
拳銃を構えて近づいた警察官の首に、
何が、あった……?
疑問はすぐに晴れる。
周りは警察官からローブの男に目を向けると、彼に付けていた手錠と縄は千切れている。だが、それだけなら良かった。
彼の掌から、ぐちゃ、ぐちゃと肉を汚く噛む咀嚼音が聞こえる。
彼の掌から、鉄臭い、粘性のある赤い液体が滴り落ちる。
彼の掌から、鋭い牙が生え、長く汚い舌が見える。
「神よ!我が神よ!!我が神イゴーロナクよ!!!」
その狂喜の叫びとともに、男の首が落ちた。
そして身体はブクブクと膨れ始め、男が着ていたローブが千切れる。肌の色が肌色から白熱した青白い巨体。掌には涎を垂らし続ける口が悍ましさを表している。
ついに目覚めた。
無知なる者よ、知る時だ。
無知なる者よ、恐れる時だ。
理解せよ、理解せよ、理解せよ……
目の前にいる異形こそ、支配者なのだと……
しかしそれはまだ、深淵の一端でしかない。
鉄哲が見せてきたニュースですが、分かる人には分かるかもしれません。
ええ、奴です。
これに関しては後々に絡ませますよ。
気の強そうなのは…誰かなァ?(B組のみ)
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拳藤 一佳
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小大 唯
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取蔭 切奈
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塩崎 茨
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柳 レイ子