前話のアンヘル両親の世界について言及しておくと
『fate/grand orderの世界線において、藤丸リツカという救世主が現れず、人理焼却が問題なく行われた』世界線になります。だから気づいたら全員元に戻ってるとか、そういのはなく、完全にあの二人は死滅しています。
感想ください。作者がエタらないためにも。ええ。
ねぇ、エルキドゥ。
『アンヘル、大丈夫かい?もう三十連勤じゃないか。これ、寝るときによく効くらしいお香だから。明日は一日ぐらい休んだらどうだい?』
『弱い弱い!王様、そんなものなの!?そんなへなちょこじゃ、全然足りな……ごめんなさいほんと調子乗りました
『ギル。アンヘルをいたぶるのはいいけれど、あまり無茶はしないように……いたぶっているんじゃなく訓練?それにしてはアンヘルが泣きながら土下座してるんだけど……まぁ、いいか。とりあえず仲直りだ。そして、今後も仲良くね』
君は、いつも優しかった。国の人たちはみんな、君を慕っていたよ。
『よし、フンババは殺しておこう!ん?いや、個体としての恨みもないしお世話になりもしたけど、でも敵対したんだし、とりあえず殺しておかない?』
『……(ドン引き)』
『え、グガランナ……だよね?あの伝説の。死んじゃったんだけど……え?こ、こんなに弱いものなの……?』
『ハハハハ!!滑稽だねイシュタル!男に振られて、挙句わざわざ持ち出した
……君は時に残虐だった。子供のような無邪気さで旧友を殺していたし、神の使いのグガランナの生肉をイシュタルに投げつけたのは正直どうかと思った。国民はみんな君のことを怖がっていたよ。
それでも……君はみんなと友達だった。神に作られた君は、どうしようもなく人ではなかったけど、それでも僕にないものを、きっと君は持っていたんだ。それが羨ましくて、妬んだ時もあった。
……ねぇ、エルキドゥ。
……エルキドゥ?
『……エルッ!!』
だから僕は……
君が死んだらどうするかなんて、考えもしなかったんだ。
──気持ち悪い
「……そこの資料は外交用だ。あっちの倉庫に運んでおいて」
いつもと同じ仕事。見慣れた光景。変わらぬ立場。だというのに──気持ち悪い。今にも胃の中身をぶちまけそうなほどに、気持ち悪い。
いつもはうるさい仕事場も、今は通夜のように静かだ。いや、実際、通夜のようなものだろう。ここにいる皆の空気は、数日前から鉛のように重苦しかった。
……エルキドゥが倒れた。その報せが国中を駆け巡ったのは、約十日前のことだった。
エルキドゥの容体は……最初に診察した医者が、匙を投げるほどだった。これは神の呪いだと判断したギルガメッシュは、すぐさま天界へと向かった。
残ったアンヘルは、文字通り、国中の医者を呼んだ。闇医者でも、名医でも、薬師でも、なんならちょっとした診療所をも駆けずり回った。エセ占い師も、怪しい魔術師も、誰だって頼った。
全て、無に帰した。誰も彼も、無駄だと。自分には治せないと、心底悔しそうな表情で、病室を去っていった。
エルキドゥが倒れて三日後、ギルガメッシュがウルクへ帰還した。……顔面蒼白な彼の顔を見て、成果について問う者は、一人もいなかった。
『森番フンババと聖牛グガランナを倒した三人のうち、誰かが死なねばならなかった』
エンリル神から伝えられたのは、それだけだったらしい。フンババ討伐に協力したシャマシュ神は、グガランナを差し向けたイシュタルの画策によるものではないかと予想を口にしたそうだ。
『……大丈夫だ。必ず……』
イシュタルを見つけてみせる、とギルガメッシュは執念を燃やしていた。……が、結果は、芳しくない。いつもなら週に一度は顔を見せる強欲神は、一週間が経っても顕れようとはしなかった。
そして不幸が畳み掛けるように、外交関係も著しい悪化の一途を辿っている。一応、 ウルクの土地神はイシュタルだ。そのイシュタルがいなくなったことで宗教主体の国がこちらに懐疑心を抱き、輸入や輸出にかなり難が発生していた。いらない仕事が増え、文官たちのストレスはピークに達しようとしている。
「アンヘル君?」
「……ごめん。そこは纏めなくていいから、置いといて。そろそろ、昼の休憩だ」
ハッと、声をかけられて意識が戻る。……ぼうっとしている時間はない。こうしている間にも、国を動かすのはアンヘルの仕事だ。私情を挟んで国を揺るがすような事態になれば、困るのはアンヘルだけではない。
「……みんな、昼休憩だ。次の鐘が鳴ったら業務再開。知らない人には教えてあげてね」
大きく手を鳴らして休憩を伝えても、やはり文官の顔色は芳しくない。
しかし、トップであるアンヘルが動揺するわけにはいかなかった。上が混乱すれば、その影響は下へ下へと伝染していく。まだ、アンヘルが弱い部分を見せるわけにはいかない。根をあげるわけにはいかない。
近くの文官から伝わってくる心配の
「……ぉ……う、ぇ……」
途端に緊張の糸が切れ、嘔吐感が込み上げてくる。うめき声が口から漏れ、空っぽの胃から中身が洗いざらい容器へと吐き出された。
「……おぶぇ……うぇっ……、おぅぇ……ッ……」
どれだけ吐き出しても、嘔吐感が止むことはない。いい加減色すらなくなった薄い胃液が、次から次へと溢れ出てくる。固形物など、ここ数日口にしてもいない。
「……くっ……うぇっ……ぁぁ……」
涙も、止まらない。吐き出しても吐き出しても無くならない胃液と共に、ポタポタと目から雫が落ちていく。
「……ぁぁ……あ゛あ゛あ゛!!」
嗚咽は、慟哭に変わった。閉鎖空間なのをいいことに、惨めに泣き叫び、のたうち回り、腕を地面に叩きつける。
「なんでっ……なんで……っ!エルキドゥが……!」
『森番フンババと聖牛グガランナを倒した三人のうち、誰かが死なねばならなかった』
つまり、アンヘルでも良かった。たまたまエルキドゥが選ばれただけ。エルキドゥでなくても、特に問題はなかったということだ。
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
今でも、目に焼き付いている。ごくごく自然に歩いていたエルキドゥが、突然倒れた瞬間が。スローモーションのように、コマ送りのように焼き付いて、瞼の裏から離れない。
「……ぐっ……くそっ!くそぉっ!」
無力感は毒のようにアンヘルを蝕んでいく。何故呪われたのが自分でないのか。何故それを解決する手段を自分が擁していないのか。そして─なぜ、皆は自分を責めないのか。
責められてもいいはずだ。誰かに、お前のせいでこうなったとでも、お前が代わりに呪われれば良かったのにと。
けれど、伝わってくる糸は心配、憐憫などあれど、アンヘルを責めることをしない。ただただ、自分を思ってくれている。その事実が、さらにアンヘルを蝕んでいく。
「イシュ……タルゥゥゥ!!」
無力感は、思いは、全て恨みとなって、神一柱呪えそうなほどの忿怒に変わる。
涙でぐぐもった声が、部屋にこだまして鈍く響いた。
「……よし。今日はこれで解散。明日は安息日だ。その分の仕事も今日で終わった。各自、自由に過ごしてね」
空が焼けて、日も暮れて。辺りが暗くなったところで、やっと業務が終わった。いつもは飲みに行こうとはしゃぐ集団も、今日ばかりは静かだった。
「……まだ、いける」
机にかじりつき、カリカリとペンを動かす。とうに痛みを感じなくなった頭をフル回転させて、資金運用の資料をまとめ上げる。
「……まだ……まだ……」
頑張れるはずだ。自分の父は、原初から生きてきた魔神なのだから。そう言い聞かせ、次の仕事へ取り掛かる。
眠気など、感じる暇もない。エルキドゥは、今この瞬間も苦しんでいるのだから。アンヘルも自分のやるべきことをしなければ、発狂して死んでしまいそうだった。
考えるより先に手を動かす。間違いは許されないが、速度を落とすのはそれよりも許されない。頭が痛むなら痛まないほど使い回す。手が上がらないなら手の感覚をなくしてでも動かす。いっそ自傷行為のような労働が、もう五時間は続いていた。
「……あの」
ペンの音だけが響く執務室に、妙な雑音が混ざった。ピタリ、とペンを動かす音が止まり、アンヘルの顔が上がる。
「……何、シドゥリさん。どうしたってのさ」
そこには、最近祭祀長となったシドゥリという女性が立っていた。見慣れた顔をみて、糸から悪意がないことを読み取り、何事もなかったかのようにペンを動かしはじめる。
「アンヘル君、君は休むべきです。この一週間、ほぼ飲まず食わずで作業しているのを、私たちは知っています」
「……だからなんだ。今仕事を止めてみなよ。明日の安息日でこの国は終わる。それに、休んだところで何になるんだ。今は仕事をやってる方が、よっぽど落ち着くよ」
休みなく、滞ることもなく手を動かす。シドゥリとの会話を若干のタイムロスと考えてしまった効率的な自分が嫌で、のめり込むように数字を書き連ねた。
「ええ。わかっていますよ。ですから私は……いいえ、私
扉が開く音、そして人がズカズカと部屋に入ってくる音が聞こえる。足音からして、ほんの数人程度。
「……たち、ね。一体、何人の文官を集めてきたんだか。でも残念、そんな人数じゃ、この量の仕事は捌き切れな……」
顔をあげる。ほんの十人にも満たない文官を、深夜にわざわざご苦労なことだと、嗤ってやるつもりだった。
執務室の中には、アンヘルの耳が聞き取った通り、数人しかいなかった。各部署のリーダー的存在が、合計で八人。それだけなら、まだ納得できた。
「……本当に、足りませんか。あなたを除いた、
執務室の外には、大量の人々がひしめき合っていた。ウルクに勤務する文官が、誰一人として欠けることなく、全員。安息日の
「なんで……いや、というか、どうやって!?そんな、今日は安息日だぞ!?神に定められた、働くのを禁止された日……なのに、君ら、正気か!?」
「狂気でしょうね。でも、ここにいる全員は、ずっとアンヘル君のことを見守っていました。みんな、知っているんです」
文官は、皆知っていた。エルキドゥが倒れたその日から、アンヘルが一睡もせずに働き続けていたことを。夜遅くまで残って業務を済ませていたこと。そして……自室で、一人涙を流していたことも。全て、知っていた。
「……なんだよ、それ。わけわかんない。馬鹿じゃないの」
「ええ、馬鹿でいいんです。それでも私たちは、アンヘル君に休んで欲しかった。休んで……一日でも早く、エルキドゥのところへ、行って欲しかったんです」
シドゥリは語る。エルキドゥが、毎晩魘されている時アンヘルとギルガメッシュの名を呼ぶことを。起きている昼も、アンヘルのことを常に思っていることを。そして……そのわがままにアンヘルを巻き込まないために、誰にも、何も言わないことを。
「お願いします、アンヘル君。今すぐ、エルキドゥに会いに行ってください。行って、彼の本心を、私たちの代わりに聴いてきてください。彼は、きっとそれを望んでいます」
外にいる文官も含め全員が、一斉に頭を下げる。こうべを垂れて、アンヘルへ願った。親友の元へ急げ、と。
「……参ったなぁ」
手から、ペンが落ちる。癒着したように握り続けていた手からは、ほんの少しだけ血が流れていた。その血を握りしめて、アンヘルは勢いよく席を立った。
「みんなしてこんな仕事を押し付けてくるなんて!こんな仕事はもうたくさんだ!今日一日お暇をいただくよ!」
逃げ出すように、外へ駆けて行く。深夜だと思っていたが、もう日は開けていたらしい。久しぶりに浴びた赤い朝日が、目に眩しかった。
『行ってらっしゃい!』
背後から、そんな声が聞こえた。振り向くことは、しなかった。最短距離を、できる限り早く。目指すのは、エルキドゥのいる病室。明るい日差しが、走るアンヘルの行く先を照らし続けた。
「……やぁ、待ってたよ、アンヘル。どうも、随分と無茶をさせてしまったみたいだ。鳥達から聴いたよ」
感動は、密かに行われた。密談は、盛大に行われた。久々に見る友は、想像の何倍も痩せ細って、弱って、けれど、思いの外元気そうに見えた。
「───」
「……、───!」
「──?…………」
言葉を交わす。二人には、それで十分だった。エルキドゥの語ることを、アンヘルはただただ噛み締める。
「でも。それじゃ、エルは……」
「ううん、いいんだ。人は……一人じゃ生きられない。例え、その在り処がどれだけ人と離れていたとしても。……僕は、君に十分価値をもらったさ。君から、伝えてあげて。これは、僕から」
そうして、エルキドゥは『何か』を差し出した。アンヘルは、神聖なものでも触るかのようにそれを受け取った。
「……そっか。じゃあ、僕は、やらないとね」
「ごめんね、最後の最後に、わがままを言ってしまって」
「いいさ。最後の最後に、わがままを言ってくれて、嬉しかった。エルキドゥ、君は僕の、最ッッッッ高の親友だ」
「……そうかい。僕も感情はないはずだけど、君とギルのことは大好きだったよ。ありがとう。きっと、伝えてくれ」
「まかせてよ、親友」
そうして、二人は軽くお互いを抱きしめた。アンヘルはすぐさま病室を飛び出し、エルキドゥは寝台へ体を預けた。
「……大丈夫だ。必ず──」
その翌日、エルキドゥは眠るように息を引き取った。国民全員が悲しむ中、葬儀は、その当日に行われた。参列者の中に、何故かアンヘルの姿は無く、ギルガメッシュは、己の不甲斐なさを嘆きつつも不満を募らせていた。
葬儀は、淀みなく進んでいった。ギルガメッシュの計らいで、棺は絢爛豪華に彩られている。数々の宝石、数多の宝。その中に入れられたエルキドゥは、今にも動き出しそうなほどに美しかった。
『──以上。国民代表の言葉を、祭祀長シドゥリが述べさせていただきました』
「はぁっ……はぁっ……!」
魔術によって拡声されたシドゥリの挨拶に皆が涙を流す中。一人、街を走る子供の姿があった。
『続きまして、我らが王、ギルガメッシュ様より挨拶を賜ります』
息が切れる。体が熱い。何日も休まず動き続けたツケが、巡り巡って少年を苦しめている。……それでも。
『皆の者、我が友、エルキドゥの葬儀に参列してくれたことを、改めて感謝させてもらう』
あまりに似合わない挨拶に、思わず少年の口元が歪んだ。手に握りしめたものに力が入り、危うくこけそうになりながらも、走る。
『さて、挨拶もほどほどに、だ。今ここで、宣言しておくことがある』
「ちょっ、嘘、はやっ!ど、どいて下さい!どいて!」
ようやく王城が見えたところで、計算よりかなり早くギルガメッシュが話し始めた。集まる群衆を掻き分け、前へ前へと進んでいく。
『今ここにいない愚か者に聴かせてやる。友の死に目にもいなかった薄情者だが、声ぐらいは届くであろう』
「……ったく!好き勝手いってくれやがって!」
このままでは間に合わない。そう察知した少年は、遂に最後の手段に出た。
「クリフィ!」
愛盾のバリアを足場に、人の波の上を走る。視界が眩む。歪む。限界はもう超えた。ただ、間に合うように。あの大バカ野郎に、わからせてやるために。
『聴けッ!旧友、エルキドゥは、我の生涯、唯一の「ちょぉぉっと待ったぁぁあ!!」
なんとか。スレスレ。ほんの僅差で、間に合った。ギルガメッシュに、その一言を言わせずに済んだことに安堵する。
アンヘルの声で、群衆が割れる。王城までの一本道が開かれた。それをふらつきながらも歩き、ギルガメッシュへと向かっていく。
「……ほう、ようやくお出ましか。まぁいい。言いたいことは数知れぬが、まずは宣言を─「ここに」……ん?」
「ここに!名簿がある!」
高々と、見せつけるようにその紙の束を掲げた。そこには、名簿らしく人の名前が、約数百も記されている。
「なんだ、そのみすぼらしい紙切れは。貴重な羊皮紙を、一体何に使ったというのだ」
「ここに記されているのは、国民一人一人の名前だ。誰一人、赤ん坊だろうと、ここに名前が記されていないウルクの国民はいない!」
ギルガメッシュは、ただ戸惑う。住民帳簿か何かの写しを持ってきて、何を言うのか、と。全く、理解が追いついていなかった。
……ギルガメッシュ、ただ一人のみが。
「これを書いたのは、ウルクの住民一人一人だ。昨日から今日にかけて、国中を訪ねて回って書いてもらった」
ギルガメッシュは知らなかった。一日中病室に入り浸ったギルガメッシュは、外で何が行われていたか、全く把握していなかった。
「そしてこの名簿の題名は……これだよ」
ペラリ、と名簿の表紙が捲られる。どんな内容が書かれているのか、ギルガメッシュは緊張の眼差しでそのタイトルを読み……
「……は?」
酷く、間抜けな声を上げた。当然だ。何故ならそのタイトルは、国の運営に関わることではなく、或いは世界を動かすようなモノでもなく……
『英雄王のお友達希望者一覧』
だったのだから。
「これは、ウルク国民一人一人に、題名を伝えた上で書いてもらった書類だ。参加は任意。つまり、全員が王様と友達になりたくて書いたってことだ!」
「な、何を言う!そも、我が友は生涯一人だと、今まさに宣言しようとしたところでだな!」
「うっさい!ぼっちが!エルキドゥが、本当にそんなこと望んでると思ってるのか!?」
アンヘルが、エルキドゥから伝え聞いたことは、ただ一言のみ。
『ギルを、ひとりにしないであげて』
自然を友とし、様々なものを知ったエルキドゥが唯一恐れたもの。それが『孤独』だった。『人は一人じゃ生きられない』と。エルキドゥは死の際にそう言い残した。
故に、彼は親友へ自分の恐れたものを味わって欲しくなかった。自分が死ぬことで、親友がひとりぼっちになることを何よりも憂いたのだ。例えそれで、エルキドゥがギルガメッシュの唯一無二の
「だから、これを作った!ここに乗ってる名前、その優秀な頭で全部覚えろ!エルの名前もある!そして、僕の名前だって……」
最後の一ページに、でかでかと『アンヘル』の名を書く。これで、『英雄王のお友達希望者一覧』は完成した。
「ここにある!だから……だから……!!」
『お前の友達が一人だけなんて、そんな寂しいことは、二度と言うな!!ここにいるみんな、お前の友達だッッ!!』
エルキドゥは、最後まで一人ではなかった。国がその死を悼み、嘆き、悲しんだ。そしてまた、その友、ギルガメッシュもまた、この瞬間一人ではなくなった。一人でいることを、国民から拒否されたも同じだからだ。
孤高の王ギルガメッシュは、今ここで死んだ。殺されたのだ。目の前の少年と、死んだはずの友によって。
「……フフフフフハハハ!!」
返答は、笑い声だった。友が倒れてから苦笑いの一つも浮かべなかった顔には、痛快な笑顔が刻まれている。
「フハハハハ!良い!良い!アンヘル!実に良い!それが手向けか!それが願いか!良い!良いぞ!まんまとしてやられたわ!あの友には死んでも敵わん!」
笑う。笑う。無邪気に、無遠慮に、傍若無人に、ギルガメッシュは愉快愉快と笑い続けた。
『よし!今ここで、宣言してやる!こんなものを使わんでも声は届くが、冥界にいるヤツにも届くように、盛大にな!』
拡声の魔術が戻り、国中に、否。範囲をさらに広げて、どこまでも。ギルガメッシュの声が反響する。
『宣言するッ!ウルクの民は、皆
声が、響く。広場は、一瞬恐ろしいほど静まり返り……
『うぉぉぉぉ!!』
轟くような歓声が上がった。
『ギルガメッシュ王万歳!』
『英雄王万歳!』
『ウルク王万万歳!』
ウルク民が……否。英雄王の友人が、一斉にギルガメッシュを賛美する。それはまるで歌のように、夜になるまで国中から湧き上がり続けた。
「……これで、よかったんだよね、エル。
僕、頑張った。頑張った……よ……」
最後の一言を告げて、アンヘルはその場に崩れ落ちた。『ありがとう』と、声が聞こえたような気がしたが、きっと、気のせいだった。
『
生命の死というものは、如何ともし難い』
『あーあ。もうちょっと待って欲しいんだけど』
『
『死に、たく、なぃなぁ…』
…あぁ、そうだ。もし、名前をつけるとするなら。
あの名前を、借りるとしよう。