望んだものは、何だったか。
■、■■■■■──
望まれたものは、何だったか。
我、■■に■■──
何か大切なものだった気も、誰でも得られる下らないものだった気もする。
我、■■に願う──
ただ、その願いはささやかで…
我、聖杯に願う──
ひたすらに暖かい…
───どうか、この子が……
誰かの切な思いが、こもったものだった。
「おい、どうなっている?」
古代メソポタミア。ウルクと呼ばれるこの地の、大凡中心。絢爛豪華なウルクの神殿。ジグラッドの、そのまた絢爛豪華に飾られた場所、王の寝室。
本来火急の用を除き一般人は愚か、文官ですら入ることの許されない絶対領域。この時代のありとあらゆる贅沢を尽くした、正に夢のような寝室である。
当然警備も万全。人の手こそ入れてはいないものの、警備用の宝具は数知れず。盗みに入ろうなどという不届きものは塵すら残らない防犯仕様だった。
ところがどうか、当の本人、英雄王ギルガメッシュがいざ眠らん、という時になって……
「何故、何故!この高貴たる
寝台をよくよく見てみれば、そこには齢十も超えないであろう少年が、すぅすぅと寝息を立てているではないか。あろうことか王の寝台で、それはもうグッスリと。
当然、防犯用宝具が発動した跡もない。しっかりと少年は原型を留めていた。
「チッ……興の削がれる見た目よな。どこぞの神からの供物か?」
見た目は端正。白金の髪色から、この辺りの生まれでない余所者だということが伺えた。まるで作り物のように整った容姿は、どこか英雄王たる彼の
完全に同じなら偽物として首を削ぎ落とそうかとも思ったが、髪色は緑とは似ても似つかぬ白金であるし、
「……ええい!考えるのも面倒極まる!エルキドゥよ!我が友は居らぬか!?」
国の全土に轟くように親友の名を叫ぶ。しばらくして、ひたひたと床を歩く音とともに彼はやって来た。
「どうしたの、ギル。そんな声を荒立たせて……ん?」
緑の髪をたなびかせた秀麗な青年は、呆れながらも慣れたように周囲を見渡した。
初めこそギルガメッシュに悪感情を抱き、三日三晩にかけて戦ったものの、その末にお互いを認め合い、共に数多の冒険を繰り広げた後、今の親友関係に至る。戦友と悪友の二つの側面を持つ青年である。
「何、いざ眠ろうかとすれば、寝室にこんな雑種が紛れ込んでおってな。どこか貴様に似た節を感じた。わざわざこんな雑種に千里眼を使うのも煩わしい。何か知っているか?」
「うん、わかる、わかるとも。しかし……まだ太陽は高いけど、人というものは、寝るものなのかい?」
「戯け!人は寝たい時に寝るものだ!己が欲を満足させずに何が欲求か!」
因みに、今は日の丁度一番高くなる頃……つまりは正午である。この王、昼食を済ませてから国事を一切行わず、昼寝を決め込むつもりであったのだ。
「まぁ、それは置いておこう。で、この子供が何なのか、だけど。あまり、その。断言は出来ないのだけど……」
「フッ……その曖昧を許さぬ様、相変わらずよな。良い、予想でも構わん。述べてみよ」
「じゃあ、言うけど。多分、これは
「
だがしかし。目の前の少年如きに全てを見通す千里眼を使用するのは、英雄王のプライドが許さなかった。
「フン……仕方あるまい。こうなれば選択肢は二つに一つだろう。即ち……」
「……即ち?」
「殺そうか!起こそうか!───などと、ふざけるのはほどほどにしておいて、だな。王の寝室を血で汚すわけにもいくまい。適当なところへ放り捨てておけ。魔神ということであれば寝室への侵入も難しくはなかろう。興味も失せたわ」
冗談を言った途端にエルキドゥの目が細められたのを見て、慌てて訂正を加えたギルガメッシュ。誤魔化すように少年を摘み上げ、エルキドゥの方へと乱暴に放り投げた彼は、そのまま寝台へ寝転がってしまった。………どうやら、昼寝の意思は固かったらしい。
命じられたエルキドゥはといえば、王の無茶振りには慣れている、といった風に寝室から出た。俗にいうお姫様抱っこの形で、少年を抱き抱えながら。
因みに。
「はいはい。とりあえず……ウルクの外壁から外に突き落とす、かな」
エルキドゥは基本友好的だが、己が神に作られたものであることの影響か、全くの別物ではあるものの、名前に神の入った『魔神』に優しくするほどお人好しではないことを忘れてはならない。
真名 ???
身長/体重:150cm・35kg
出典:ギルガメシュ叙事詩
地域:バビロニア、ウルク
属性:善・秩序 性別:男性