ただ守り通すだけの物語   作:寝る練る錬るね

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そんなに遅くならない(更新スピードは変わらない)
今日の夜からインドということで、今のうちに投稿〜

ちなみに、(偽)というのは、上下的なアレです。
宝具獲得回。

なんか話の流れよくわからんな?と思った方は次回の(真)をご期待ください


第4話 下賜(偽)

 生まれてから『世界』を認識したのは、生まれて5秒のことだった。

 

 人類最高峰の造りである人造人間(ホムンクルス)の私は、生まれた瞬間から自意識を持つ。その状態で十分に成熟した体、確固たる知性を伴い、人間社会へ紛れて自衛する為の数年間を過ごすのだ。

 

 針葉樹で囲まれた森の中、檻に囚われているような気分で三年。『器』として完成した私は、外に出ることを許された。

 

 初めて見る外の感想は筆舌に尽くしがたい。造り親から、見てはいけない、魔境であると教えられた世界は光が満ち溢れ、希望に満ちたものだった。五十年程度前に家と離反した大祖母様の気持ちが理解できたような気がする。

 

 しかし、理解しようと実行することは出来なかった。大祖母様が逃げ出した時以来、私達は全員『楔』をつけられるようになったから。

 

 ならばこそ、私は任務を遂行し(聖杯を勝ちとら)なくてはならない。他ならぬ、アインツベルン(・・・・・・・)のマスターとして。自己の自由を確立するために。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「さぁ!アンヘルとやら。王からの稀有な下賜である!感涙に咽びながら選ぶといい!」

 

「どうしてこうなった!」

 

 とある昼頃の王広間。寝室とはまた違った装飾がこれでもかと部屋を鮮やかに彩りながらも、黄金特有の圧迫感を感じさせない計算され尽くした広間である。しかし、大凡千人は無理なく収容可能なだだっ広い空間に居るのは三人だけ。

 

 アンヘル、エルキドゥ、そして全身を黄金で着飾った英雄王、ギルガメッシュその人である。

 

 そして広間の床には、無数の武器らしきものが突き刺さっていた。斧、槍、槌、鎌など、剣に至っては種類が多すぎて何本あるのか分かったものではない。

 

 その大量の武器、それも素人目から見ても一級品の武器を、かの英雄王は下賜としてアンヘルに与える、と宣言したのが今の状況である。

 

「どうしてこうなった!」

 

 大切な事なので二回叫んだ。

 

 エルキドゥに泣かされた数日間、何も変わらず仕事をしていたら、突然エルキドゥに問答無用で誘拐され、王広間についてみればこのザマだ。他の文官が嘆いているのが聞こえてくる。

 

 下賜の理由を尋ねてみても『国に貢献したから』の一点張り。確かに国に貢献したつもりではあるが、一文官には過ぎた待遇だ。ここ一週間だけで増えた頭痛が再発した。

 

「えぇっと……?お、王様?ほんとにこの中から一つ貰っていいの?」

 

「戯け、この(おれ)に二度言葉を紡げと申すか。その不敬、此度の功績で許すが……」

 

 二度目はないぞ?と無言で促すギルガメッシュに、アンヘルは己に選択権がないことを察した。諦めてしぶしぶ武器を物色し始める。

 

「うーん……どれも凄くいい物だよね……素人の僕がみてもこれ一本で国が動くのがわかるし……」

 

「フン、(おれ)の宝物庫から出したものだ。当然よな」

 

「……」

 

 アンヘルは地面に刺さった大剣を眺めるフリをして、ギルガメッシュのそばに立つエルキドゥを観察する。

 

 アンヘルを誘拐した頃からだが、彼は一向に喋ろうとしない。走っている途中アンヘルが質問しても、あまりの誘拐され心地の悪さにアンヘルが吐き気を催しても、口を開こうとすらしなかった。いや、吐かれないかどうか心配だったのか口元がヒクヒク震えてはいたが。

 

 とにかく、エルキドゥの雰囲気からして、これがただの下賜で済むはずはない。何かしらの警戒をして挑む、或いは何かしらの手段でこの状況を脱出する必要があるのだ。

 

「……ん?」

 

 何か脱出するための手段はないか、と辺りを見渡すと、一つだけ一風変わった武器が刺さっているのに気がついた。

 

「これは……?」

 

 盾。武器の種別を尋ねられればそう答えるのが相応しかった。ただ、盾と呼ぶにはあまりに通常の盾とはかけ離れている。

 

 まず色彩。本来、あまり加工する必要の無い盾とは素材本来の色が活かされる。鉄ならば白、もしくは黒。木ならば黄土といった具合に。

 

 だがこの盾にはそれがない。というか、色がないのだ。無色透明、盾の向こうの景色がそのまま見えた。その盾は硝子のようにも、水晶のようにも見えるが、何故か『脆そう』という感想は出ない。この盾が壊れることはないだろう、と自然に理解させられるような盾だった。

 

 第二に、装飾。本来、盾というものに装飾は必要ない。守る、という一点においていたずらに耐久性を下げる装飾は不要なものだからだ。

 

 では、目の前の盾はなんだろうか。盾、と呼ぶより『オブジェ』のようである。星の光のように尖った棘が複雑な形で組み合わさり、緻密に構成された芸術品。持ち手こそあれど、あまり実践的なものだとは思えなかった。

 

 そして最後に、雰囲気……というのだろうか。見た目や色もそうだが、それ以外の……他の武器とは全く違う、別の何かをアンヘルは感じ取った。

 

 自然と、手が伸びる。自分の身長と同じぐらいの盾の中心に、ほんの少しだけ、手が触れる───

 

「あっ……」

 

 細く、白い指先が、盾の中心に触れていた。それだけ。それだけで、アンヘルの中の魔力が倍近くに跳ね上がる。

 

 そして理解した。この武器の本質を、この武器の性質を。これは盾ではない。盾であって盾でない。そう、これはもっと別の──

 

「……ほう?(おれ)ですら使うのを止めた武具の本質に、一瞬でも触れる、か。エルキドゥ、貴様、かなり良い拾い物をしたかもしれんな」

 

「……」

 

 目を閉じ、膝をつき、アンヘルはひたすらに感じ取る。盾の本質を、盾の願いを。後に宝具と呼ばれる、無垢なる盾について。

 

 盾に触れて膝を折るアンヘルの姿は、一途に神へ祈りを捧げる信徒のような神聖さを纏っていた。数多の財宝をその目に見納めてきた英雄王がほんの一瞬、見惚れるほどに。

 

 なればこそ、摘み取らねばなるまい。たとえ罪の意識がなくとも、その行動は罪そのものであるのだから。

 

 

 

 

 

 永遠のような数分が過ぎた。漸く目を開いたアンヘルは、ぼうっとしたまま確認するようにキョロキョロと辺りを見渡す。そして、英雄王を見てハッキリと目が覚めたのか、ゆっくりと口を開く。

 

「えぇっ……と。この子、貰っていい?」

 

「……良かろう。それ程までに貴様と馴染んでいるのだ。我が宝物庫に置いても持て余す。その盾は神代よりもなお古の物だ。扱いに気をつけ、存分に扱うといい」

 

 ギルガメッシュがそう告げると、アンヘルは新しいおもちゃを貰った子供のように顔を綻ばせる。地面から盾を軽々と抜き、盾を四方からキラキラと眺め、上方から眺めて抉れた床の修繕費に愕然、と百面相をしている。その姿からは、先ほどの神聖さなどカケラも見当たらない、年相応の無邪気さが伺えた。

 

「ハン、所詮は童。可愛らしいところもあるではないか。なぁ、友よ」

 

「……ねぇギル。この辺りで解散にしておかないかな?ここまでってことには……」

 

「くどい。我が一度決めたのだ。変わらぬことは知っておろう」

 

 アンヘルが飽きるほど盾を眺め終わり、ようやっと冷静さをとりもどす。英雄王の前ではしゃぎ回った手前申し訳なさそうにしながら、感謝の言葉を述べる。

 

「えっと、王様。こんないいもの、ありがとう。ほ、ほんとにもらっちゃっていいのかな、こんなもの」

 

 そして、アンヘルは忘れていた。ちょっと英雄王っていい人なんじゃないか、なんて浮かれて、現状況を警戒することを。そして、英雄王は誰よりも傲慢な押し付け王であることも。

 

「おっと、礼を言うのは早いぞ、童。折角の武器だ。使わぬのは宝の持ち腐れというものだろう。今ここで、その盾、十全に使いこなして見せよ」

 

 瞬間、アンヘルの顔の横を黄金の突風が一陣、吹き抜けた。ギギギ、と壊れた人形のように風の吹いた先を見てみれば、そこには白い煙を上げながら壁に突き刺さる剣の姿があった。

 

王の財宝(ゲートオブ・バビロン)だこれェェェ!?」

 

「ほう、我が宝物庫の名を知っているか。よい、よいぞ!そのまま我を愉しませよ!せいぜい踊るとよいわ!」

 

 そうして英雄王の背後から、無数の剣や槍が金色の波紋の中枢から現れる。その一つ一つが必殺。当たることは死を意味していた。

 

 のっけからハードモード極まっている。とアンヘルは自己の不幸を嘆いた。

 

「……どうせこうなるんだから、連れてくるんじゃなかったかなぁ……?」

 

 流石に丸腰で英雄王と対峙するのを防いだ神造兵器が、そうぼやいた。




宝具
????

 * ランク:EX
 * 種別:対人宝具
 * レンジ:──
 * 最大捕捉──

アンヘルの基本武装。ガラスのように透き通った盾で、神代の神秘の結晶。こらそこ!アクリル板で作ったおもちゃみたいとか言わない!

魔力を通し易い素材で作られているのでアンヘルの??????と相性が良いが、本人曰く、アンヘル専用には作られていない為、コツさえ判れば割と誰でも使いこなせる…らしい。英雄王曰く、コツを理解すれば難しくはないが、コツを理解するのに(オレ)でも三百年はかかる…らしい。
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