我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

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大変お待たせしました!
一週間ぶりの更新です。

「『非力な私を許してくれ…』」


この一週間でいったい何作の他の新作小説が現れ、何話の最新話が更新されていることか……
こんなマイペース更新な作品を呼んでくださり、そして感想、誤字報告、お気に入り登録、評価付与してくださる読者の皆々様には感謝しきれません!


そんなこんなで、原作開始前の最後のお話です!
イヴちゃんの中身はハイテンションでキャラ崩壊気味!? 過去最多文字数更新! もう少しで2万字突破!? 内容的にも色々詰め込みすぎな気がする最新話をどうぞ!!


お楽しみはこれからだ!+α

ねぇ、『もう一人の僕』*1

 

 

 

――――特機部二(トッキブツ)のみんなが言ってた「セイイブツ」と「星遺物(せいいぶつ)」って別物なんだよ?

 

 

 

知ってた? (ワタシ)はちょっと前に知ったよ。

レポートみたいなのを見て、そこに書いてある字が「星遺物(せいいぶつ)」じゃなくて「聖遺物(セイイブツ)」だったんだ。まぎらわしいよね。

 

 

………………。

…………。

……。

 

まぁ、一人『AIBO』*2ごっこはここまでにしておこう。

 

 

何故「星遺物(せいいぶつ)」≠「聖遺物(セイイブツ)」ということを知ったのかといえば「このいうことを聞かない口の改善のためには星遺物の起動もしくはそのチカラの収集が必要なのではないか?」という推測が――そして、「星遺物」を探そうと情報を集めようとした事が――発端である。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

時間もあるし、トッキブツ本部にあるセイイブツの資料片っ端から読み漁ってみよう――ってわけで、リョーコさんの研究室(ラボ)で資料を盗み見――もとい拝借して閲覧することに。

()()()()()()()()()()()

資料の文面を見た瞬間、頭に(疑問符)が浮かんだ。

 

 

「聖遺物」って何さ?

「聖遺物」はセイイブツだけど、せいいぶつ違い?

もしかして、みんなが言っていたセイイブツは「聖遺物」?

ってことは、「聖遺物」って「星遺物」とは関係無い?

あれ? じゃあ《星杯の妖精リース》は……?

「星遺物」ストーリーは関係無いの?

 

 

とまぁこんな具合に頭の中で考えがグルグルと回る。

だが、まだ他のセイイブツに関する資料も、「星遺物」ではなく「聖遺物」に関する資料ばかりだと決まったわけじゃあない。そう思ってドンドン読み漁っていったのだが……お察しの通り、どれもこれも「聖遺物」とばかり書かれていて「星遺物」の文字はどこにも書かれていなかった。

 

 

「さっきから、何をコソコソとしているかと思えば……」

 

 

研究室(ラボ)の片隅で独り没頭していたためか、いつの間にかリョーコさんにすぐそばにまで接近されていたのだ。

しかもこの感じ、今のリョーコさんはいわゆる闇リョーコさん(ワタシ命名)のようだ。グチグチとお小言をいただいてしまいそうな予感……そう思ったのだが――

 

「熱心なことは構わんが散らかすな。あと、お前のようなヤツには価値が理解できんだろうが、こんな場所(ラボ)でもそこそこ貴重なモノや危険なモノがある。勝手に触れてまわって何かあっても知らんぞ」

 

――所々にトゲはあるけど、思っていたよりもキツくはない。いや、むしろ「あれ? もしかして心配してくれてる?」ってくらいにはマイルドな言い回しな気がする。

まぁ、実際になにかやっちゃった時にはもの凄い怒ってくるって事はわかってるんだけどね! ワタシ、知ってる。

 

 

そんなことを考えていると、不意に目の前に何かを差し出された。

もちろんそれを渡してきてるのは闇リョーコさんなんだけど、これはいったい……?

 

「お前が探している資料はこっちだろう。とっとと持って行け」

 

O☆KA☆WA☆RI☆DA(おかわりだ)*3

 

何を言ってるんだろうか、この人は? いや、それはワタシもだけどさ。

 

内容は……?

……待て。この「開かずの間」っていうの、さっき見た《星遺物(せいいぶつ)―『星杯(せいはい)』》があった場所の資料と……あれ? これってもしかして、あの時と一緒で山に「星遺物(せいいぶつ)」が埋まっててそれが「聖遺物」――もしくはその遺跡――と勘違いされているパターンなのだろうか?

 

真偽はさておき、確かにこれはワタシが探していた「星遺物(せいいぶつ)」の資料だ。

ということは……もしかして、この闇リョーコさんは「聖遺物(セイイブツ)」と「星遺物(せいいぶつ)」が別物だってわかっていて、さらにはその判別までできるのか!?

 

「姉が過保護なら、妹も妹か……家族ごっこもここまでくると感心すらしてしまいそうだ」

 

……そんなことを言われて「ん?」と思って改めて目を通してみたら、この「開かずの間」がある山「皆神山」というらしい。以前、闇リョーコさんが言ってたけど、特機部二(ここ)に保護される前にワタシが倒れていた場所であり、数年前にカナデが家族を失った場所でもある「聖遺物」の発掘現場だとか。

なるほど、闇リョーコさんが考えてることはなんとなくわかったし、「星遺物(せいいぶつ)」のことを知っているわけじゃないということもわかった。

 

 

にしても、困ったな。

この「開かずの間」は気になるけど、ただでさえ許可が下りそうにも無い遠出になるのにそんな曰く付きの場所となれば「行きたい!」なんて言ったところでダメに決まっている。特にカナデは……絶対に許してくれないだろう。

どうしたものか……。

 

 

 

 

 

「……いや、こいつは前からそういう生き方をするヤツだったな」

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

……と、まあそんなこんなあって「星遺物(せいいぶつ)」≠「聖遺物(セイイブツ)」のことを知ったわけだ。

 

そして、皆神山の聖遺物発掘現場跡地についてだが……ワタシの知らないうちにトントン拍子に話が進んでいた。もちろんそれは「行く」方針でだ。

どういう…ことだ…!?

 

 

 

数日後ついに決行された。

電車の中でこのいうこと聞かない口がリョーコさんに向かって「『うるさいBBA(ババア)だ』」なんてこと言ったせいで周りに人がいるのに闇リョーコさんが出てくるというハプニングこそあったが、それ以外には特に何の問題も無く予定通りに目的地である「皆神山」へとたどり着くことが出来た。

 

 

()()()()()()()

 

 

実はとある事情でこの皆神山行き決行の前に、ゲンジュウロウさんやシンジさんと情報交換や事前の打ち合わせをしていたのだ。

特にシンジさんとはそれはそれは念入りに……いや、あれは打ち合わせと言うか質問攻めというか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?

 

シンジさんはいざという時に頼りになる人ではあるけど、一対一で面と向かって相対するのはさすがに緊張感がハンパない。言っておくが、別に「シンジさんみたいなイケメンとふたりっきりなんてキンチョーする~」なんてそんな脳内ピンク色の思考なわけじゃない。むしろワタシの中の決闘者(デュエリスト)としての本能が言っているんだ「緒川慎次(こいつ)はデキる奴だ」と。故に緊張してしまうのだ。

そんなシンジさん相手にワタシのことに関する質問や答えのわかりきったクイズなどを何度も出され続けたのだが――事前にシンジさんが紙に書いて用意して問いの度にさし出してくるいくつもの選択肢(かいとう)から選ぶだけだったが――実に、じつーに精神的に疲れた。その疲労感に拍車をかけたのは大抵の場合「よしっ、これで伝わる!」と感じた時点で身体が動かなくなったり、手が勝手に紙に書かれた複数の別々の選択肢を行ったり来たり連打しだして……とにかくゲームならバグったのではと思うような行動をとってしまい。結局肝心なところは毎度伝わることが無かったから。申し訳ないやら自分の事が嫌になるやらで、精神がゴリゴリ削られていた気がする。

 

 

って、今はそれじゃなくて、ちょーっと前から時折ワタシのことを追跡してきている人物(ストーカー)についてだ。

打ち合わせの際にシンジさんから「葵さん、あなたを追跡している人物がいることはご存知ですか?」と聞かれ知っていたので頷いたら驚かれたのだが……まぁとにかく、監視カメラ等で何度も確認されて何とか尻尾を掴みたいって話だった。

あと、知ってる人かどうかも聞かれたのだが、それには肩をすくめてみせながら「わからない」と書かれた紙を指差した。いちおうごく稀にだがチラッと顔が見えることがあるんだが……見たことがあるような気はするんだが、名前やどこで会ったかが思い出せないのだ。今のワタシの知り合いの範囲なんてすっごく狭いから、そんな悩んだりするはず無いんだけど……何故だろうか? しかも、むこうはむこうで何故か毎度驚いた顔をするんだよなぁ。不思議なことばかりだ。

 

そんな追跡者(ストーカー)さんをおびき出す作戦も兼ねている今回の遠出なのだが、その思惑は――先程いったように()()()()()かかってくれたようだ。今日もチラッとその姿を拝むことが出来た。

周りを取り囲んでいるはずの人たちの動きが少し気になるところだけれど……きっと大丈夫だろう。なんせシンジさんもいるんだし。

 

「ほら、そろそろ入るわよ」

 

まぁ、入り口にいたところで何も始まらないからね。

 

『王を救うのだ! 全軍突撃ー!』

 

 

「この先に王だなんて、そんなピラミッドとか古墳じゃないんだから……しかも、それじゃあ死んじゃってるわね」

 

ワタシがいつものように変なセリフ口走ったせいで言いだしたんだけど、王が眠る(しんでる)って、そんなエジプトのピラミッドじゃないんだから。

エジプトと遊戯王――特に原作漫画やDM――は切っても切れない縁があるが、さすがに今回は…………そういえば、皆神山がピラミッドだとか何とか言う話を噂程度にだが聞いたことがあったような? 星遺物が発掘されていた遺跡がこうしてあるわけだし、この世界だと本当に王族が眠る古墳か何かだったりするのかもしれない。

 

 

 

 

 

そんなこんなで遺跡発掘現場だった皆神山内部の坑道へと突入したわけだが……

 

「……ふんっ、このあたりで十分か」

 

ワタシと手を繋ぎながらも半ば先行するように歩いていたリョーコさんが、そんなことを言いながら手を離しちょうど通路のT字のつきあたりで急に立ち止まったのだ。

いや、口調や雰囲気からしてこれはリョーコさんじゃなくて闇リョーコさんか?

 

 

「付けられていたマイクも、発掘現場跡地(この中)にいるが故の電波障害ともなんとも言い訳が利く。それこそ例の「開かずの間」とやらのせいにしてしまえばいい。アレのことを理解出来ている奴はいないのだから、好き勝手言えるな」

 

なっ!? 「開かずの間」のせいにするだって!? 「星遺物(せいいぶつ)」かもしれないモノに擦り付けないでほしいなぁ!

そもそも勝手に他人のせいにするなんて、なんてヒドイことをするんだ!(《鎖付きブーメラン》*4

 

『俺カードに選ばれすぎぃ!』*5

 

もういつものことだけど、色々と違うね。

 

「呑気にそんなことを言っていていいのか?」

 

 

む、それはどういうことだろうか?

 

 

 

ポヒョン♪

 

 

 

ちょっと気の抜ける奇妙な音。

聞き覚えのあるその音が後ろのほうから聞こえ、ワタシは反射的にバッと振り返った。

 

もうかなり遠くなってきていたワタシたちが入ってきた出入り口に見えたのは、まるで着ぐるみかゆるキャラのようなあの独特のシルエット。逆光で若干見え辛くはあるが、人型ノイズ数体が入り口をふさぐように並んでいるように……って、あれ? 模様とか腕の向きからして、()()()()()()()()()()()

 

うん。やっぱりコッチ側に背中をむけてるし、外へと向かって進んでる。なんなら、外から悲鳴が聞こえてきてる――――って、ヤバイじゃないか! ワタシがというよりは外の人たちが!

 

 

ポヒョン♪

 

 

……今の音、やけに近くで聞こえたような……?

さっき振り返った時とは打って変わってギギギッと軋む音が聞こえそうなぎこちない動きで音のした左手(ほう)へと顔を向けると――――そこには、入り口にいるのと同じ人型ノイズが1体たたずんでいて、そのどこにあるかもわからない目でこちらをジーッと見てきている……ような気がした。

 

 

「おおっと、外だけに展開するはずが、私としたことが通路の中にまでノイズを出現させてしまったー。戦わなければ命が危ういなぁー?」

 

おいおい、この状況で何ニヤニヤ笑って――――って! 今言ってる感じからして、ノイズって闇リョーコさんが操ってるのか!?

 

『私に近づく者は地獄の業火に包まれる』*6

 

「こんな時でも余裕……ふんっ、今のお前にはこの程度は苦でもないということか?」

 

いや、いつも通りに思っている事と別の言葉が勝手に出てるだけだよ!

それにしても、この仕打ち、あれか!? あれだな!! さっき言ってたことからして、マイクの事で一旦引っ込めてたけど「BBA(ババア)」発言を根に持ってたんだな! 闇リョーコさんって、ワタシと二人きりの時しか出てこないから、きっとそうに違いない!!

 

 

 

とはいえ、闇リョーコさんがノイズを操っていることに驚きはしたけれど、今ワタシの置かれた状況はそこまで焦るほど大変なわけじゃない。

なにせ、前とは違って今のワタシはノイズを倒せることをあのライブで実証してみせたのだ。ノイズの1体や2体、恐れる必要も無い。

 

 

ワタシの中に眠っている《星遺物(せいいぶつ)―『星杯(せいはい)』》のチカラを引き出し、そのチカラをそのまま自分自身の身体に纏わせるようにイメージをする。

次の瞬間、ワタシの視界が一瞬光に包まれたかと思えば力漲る久しい感覚を感じ、確認するとやはりと言うべきかイメージした通り《星杯を戴く巫女(ワタシ)》の姿は《星杯神楽(せいはいかぐら)イヴ》へと変貌を遂げていた。……とは言っても、大元のワタシがイヴちゃんよりも幼いために《星杯神楽イヴ(この姿)》もカードで描かれているよりも多少幼いんだけどね。

 

 

「ほぅ? 報告には聞いていたが、それが……お手並み拝見といこうか」

 

 

そう言う闇リョーコさんは余裕の様子で壁を背に立っている。

……あれ? もしかして「BBA」発言のせいじゃなくて、《星杯神楽イヴ(ワタシ)》を観察するために? 今なんて完全にコッチを観察する態勢だし……

 

確かリョーコさん自身は「聖遺物(セイイブツ)」研究の第一人者だったはずだ。するとワタシの持つ「()遺物」に興味を持ってもおかしくない――が、今の今までその様子が見られなかったように思えるのは……ああ、そっか。

あの「ツヴァイウィング」ライブ以降一度も《星杯神楽イヴ(この姿)》にはなってなかったからなぁ。

 

ワタシとしても色々と気になるところではあったんだが、ライブでの一件もあってかワタシがノイズと戦えることが判明してからも、戦闘訓練とかそういうのは出来ていなかった。ゲンジュウロウさんが頷かなかったっていうのもあるが、それ以上に訓練に参加しようとするとツバサが涙を溜めて――泣き付ついてきて止められてしまうからだ。原因がなんであれきっとワタシが一度死んだあのことがトラウマなのだろう。カナデ? カナデは何も言わないよ? ただ、眉間にシワを寄せてもの凄く難しい顔をするだけで……まあ、確かにそれも色々とやり辛い要因ではある。

 

 

外のこととかなんでここまでするのかは説明つかないけど、なんとなく闇リョーコさんの意図はわかった。外のシンジさんたちも気になるし文句も言いたいし他にも色々あるけど……何はともあれ、目の前の問題を解決してからだ。

 

 

『こうなりゃ正真正銘のダイレクトアタックだ!』*7

 

 

なんだか猛烈に嫌な予感がするが、そんなことは関係無い。

通路の幅や高さに気を付けつつ「鍵杖(けんじょう)」を大きく振りかぶって――――殴りつけるっ!

 

 

 

すかっ

 

 

 

『モンスターが実体化したっ!?』*8*9

 

してません。むしろすり抜けました。

――じゃないっ! ライブの時(あの時)は確かに当たってたはずだ。それで問題無く倒せていた……なのにコレだ。一体何がどうなっているんだ!?

ほらっ、観察してた闇リョーコさんも目をまん丸にして呆然としちゃってるじゃないか!

 

ノイズが倒せないとなれば、これからどうしなければならないかも一変する。

ワタシはノイズへと向けていた身体を一転させ、闇リョーコさんの手をふん捕まえてT字通路のノイズがいる方とも、ノイズたちによって塞がれていた入り口とも別の通路へと駆け出した――――否、逃げ出した。

 

 

「……はっ!? いや待て、何がどうなっている!? 貴様はノイズを倒せるんじゃなかったのか!?」

 

それはワタシが聞きたい!

ノイズの共通効果である「攻撃対象にならない」効果は特定の条件下でなければ適用されないという風にも考えられる。すると、ライブの時と今とでは状況が何かしら違い、それが原因で今はワタシの攻撃が通っていないということになる。《星杯神楽イヴ(ワタシ)》に「効果を無効化する効果」が無い事を考慮するとそういう結論にたどり着くのが自然だろう。

が、その「特定の条件下」というのがわからないから、現時点ではどうしようもないんですよ!

 

「くそっ、放せ! 何故私まで一緒になって逃げねばならんっ! ……無駄に力が強いなぁ!?」

 

何故って、そんなの言うまでもないだろう!? ノイズは危ないんだぞ? そんなヤツに襲われでもしたら…………あっ、ノイズって闇リョーコさんが操ってるんだっけ? そりゃあ、逃げる必要無いな、テンパってるわワタシ――ぬわっ!?

 

「なっ!? 貴様手を――ぐっぅ」

 

 

(アツ)ゥイッ!?』*10

 

あ痛っ!?

「立ち止まってもいいんじゃ?」って思って、いちおう後ろ(ノイズ)を確認しておこうと振り返ろうと視線を動かした瞬間、脚に何かが引っかかり走ってた勢いのまま盛大にズッコケてしまった。当然、手を繋いでた闇リョーコさんも巻き込まれる形でこけるわけだが……そもそも、闇リョーコさんがノイズを出現させたせいなのだから、ワタシの知ったことではない。

 

 

にしても、なんだかデジャブを感じるな。

何かにひっかかってこけて……ちょっと前にもこんなことあったよね?

 

そんなことを考えながら立ち上がろうと視線をあげて行くと、独特の質感を持った壁が視界の左端にあることに気付きそちらを見た。

はー……もしかしてこれが「開かずの間」だろうか? となれば、今こうして何となーく感じているこの感覚ってやっぱり――――なんて考えていると、視界が眩しいまでの閃光に塗りつぶされた。

 

 

あっ、これ、あの時と一緒だ。「ツヴァイウィング(カナデとツバサ)」のライブの日、《星遺物(せいいぶつ)―『星杯(せいはい)』》を手に入れたあの時と。

 

 

 

 

 

 

元に戻った視界。そこに見えるのは壁にポッカリと開いた穴と、そこに浮く「腕部と胸部の装備を中心とした防具」のミニチュアサイズの発光物体。

見る人が見ればわかる。カードに描かれていたことは無いが、これが星遺物(せいいぶつ)―『星鎧(せいがい)』》であり、星遺物(せいいぶつ)―『星鎧(せいがい)』》のチカラそのものなのだと。

 

 

浮遊しているミニチュアサイズの《星遺物(せいいぶつ)―『星鎧(せいがい)』》がスーッとワタシの方へと飛んできて、そのままワタシの胸へと――身体の中へと――入り込んだ。本当に実体が無いかのように、触れた感触も抵抗感も無く、本当にスルッとワタシの身体の中に入ったのだ。

 

そのことを深く考えるヒマを与えてくれるはずも無く、事態は動き続ける。

 

《星遺物―『星杯』》の時と同じく、OCGの「星遺物」ストーリー内の星遺物と違ってその場に在った星遺物はなくなってしまった。何故そうなるのかは、やっぱり現状ではわからないな。

ん? 星杯の時(あの時)と同じなら……マズくない?

 

ワタシの思考を肯定するかのように、地響きと共に目の前にポッカリと開いてる穴――《星遺物―『星鎧』》があったであろう場所――を中心に床が、壁が、天井がひび割れ崩れていく。

 

 

「なっ……!? 次から次へと、何事だというんだ!?」

 

声に反応して振り向けば、ようやく立ち上がった様子の闇リョーコさんが騒いでいて……その十数メートル後ろにいたノイズはといえば、ちょうど崩れていく床と共に下へと落ちていっていた。おそらくあの床の下方には、ワタシたちのそばの壁から一部を覗かせていた星鎧とは別のパーツがあったのだろう。そして、あのノイズの姿は数秒後のワタシたちの姿かもしれない……そんなのはゴメンである。

 

 

思いつく策は力押しもいい所だが、何もせずに生き埋めだなんて願い下げだ。なので、多少根性論で乱暴な力ずくの作戦であっても、やってやるしかない。

「鍵杖」を持っていない方の手で闇リョーコさんの腕を捕まえ、そばまで引き寄せてから「鍵杖」を構え、そして――振りかぶる。

 

その結果は――――

 

 

 

 

 

 

『トムの勝ちデース』

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

崩れていく山の内部から命からがら脱出しながらも気の抜けるセリフをぶちかましてしまったあの後。

 

トッキブツ本部へと帰るまでの間は……まぁ、何事も無かった。リョーコさんからの視線が多少刺さりはしたが、すぐそばにシンジさんたちがいたためか闇リョーコさんが出てくることも無かったので、のんびりと帰ることが出来たのだ。

とは言っても、シンジさんから渡された通信越しにカナデとツバサから色々と言われたりもして、ゆっくりと休めたわけではないのだが。

 

 

そして、その道中にワタシの中では()()()()について考えが巡っていた。

 

それは「クローラー」というカテゴリのカードたち……「星遺物」ストーリーにてイヴちゃん一行が最初に相対する敵である、《星遺物―『星鎧』》の周囲に生息している「機怪」と呼ばれる機械のような虫のような存在たちの軍勢だ。

ストーリー上で彼らは、昔から生息しているが比較的大人しい存在――なのだが、イヴちゃん一行が起動させるために《星遺物―『星鎧』》に近づいて行ったところ凶暴化、大乱戦となるのだが……。

 

その乱戦のことはここで説明する必要は無いが、問題は今回確信をもってでは無いもののワタシが《星遺物―『星鎧』》に接近し接触・起動させたわけだが……そこに「クローラー(彼ら)」が関わってこなかったことが気になっていたのだ。

いやまぁ、《星杯を戴く巫女(ワタシ)》と「星遺物」以外にあのストーリーに関わる存在が確認できていない今、あの世界とは大きく異なる文化・文明を築いているこの世界であのストーリー通りの出来事が起こると考える方が不自然なのかもしれない。しかし、なんとなく引っかかるのである。

 

 

しかし「どうして?」「何故?」に対する答えがワタシの中から出てくるわけもなく、トッキブツ本部へと帰り着くのだが……そこで、そんな疑問が吹っ飛ぶ事態となるのだった。

 

 

 

「「ツヴァイウィングライブの襲撃犯」、「謎の物質で作られた遺跡の襲撃犯」、「葵君の追跡者」……これらは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「「「なっ!?」」」

 

「えっ」

『ゑ?』

 

 

 

いや、確かに今回やライブの日の時といい、「星遺物」を回収したために意図的にではないとはいえ山を崩し、その上他人を巻き込んでしまっていることも悪いと思っている。

 

だがしかし、だ。

 

ライブ襲撃の件には関係無いし、ワタシが(ワタシ)追跡(ストーキング)するってどういうことさ!? ……とは言っても、ゲンジュウロウさんが「謎の物質で作られた遺跡の襲撃犯」って言ってる「星遺物」の件もあるし、闇リョーコさんがノイズを操っているっぽいこともあって完全に否定しきれないのがなぁ。

でも、主張しよう。「星遺物」以外はワタシは関係無い!!

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

それから数日後……

 

 

 

「ん~……! ったぁ。こうやって外をのんびり歩くのも、すっごく久々な気がするなぁ」

 

「実際奏はライブ(あの時)以降、絶対安静が続いてたものね」

 

 

ワタシの右手をカナデが、左手をツバサが握って歩くお昼時。

今ワタシたちは、ようやく快復に至ったカナデの快気祝いにと三人でお出かけ中である。

 

とは言っても、あくまで「()()()」だろう。

行先が例のカフェ「ラ・ジーン T8」であることから察することが出来るが、おそらくカナデとツバサ(ふたり)からしてみれば、少なくとも半分くらいはワタシのご機嫌取り――というか元気づけるためのものなんだろう。

 

 

 

――――――

 

 

 

最近のワタシは自分で言うのも何かアレだが、目も死ぬ勢いで気落ちしていた。

原因がなにかといえば……まあ、他でもないこのイヴちゃんのちびっ子ボディなのだが。

 

 

《星遺物―『星鎧』》を起動させて言語能力に何か変化があったか確認したのだが、特に無かった。ここまでなら、ワタシの推測が間違えていたのかなーとへこみはしても大ダメージにはならなかっただろう。

 

 

じゃあ、何があったのか?

 

 

たぶんダメだろうと思いながらも一応確認のためにとペンを持ったところ、変に力もかからず「あれ?」と思って動かしてみたら、()()()()()()()()()()

 

やった! これで――――!!

 

大歓喜で思ったことを紙に書いていき「できたっ!!」と字を書いた紙を机の上から取り上げて自分の目の前で広げてみた。

 

 

 

 

 

 

『スsでgヴnイiはh前t名eノ当g本nのaシrたtワsがスgでnイおiアyるaイsrてッoなfニe話z世おiモg時何o様l皆てoシpまaメ初I』

 

 

 

 

 

アセンブラァー!?*11*12

 

 

『絶対に許さねぇぞ、ドン・サウザンドォォォォォッ!!』*13

 

 

いつだかぶりにワタシのお口がドンさんのせいにした。

そして、その時ワタシがいた場所がトッキブツ本部だったこともあって、ちょっとした騒ぎにもなった。

 

 

 

なお、この時書いた紙は「預かるわ」と言ったリョーコさんが持って行ったのだが、数日後――

 

「う~ん……わかんない♪」

 

――そう言って匙を投げたのである。

櫻井理論の提唱者である天才とはなんだったのか……。

 

 

 

――――――

 

 

 

とまぁ、そんなことがあった。

事件に巻き込まれた後ということもあってか、カナデとツバサ(ふたり)にはかなり心配されたのだが……その延長線上にあるのが、今日のこの「カナデの快気祝い」という名目でのカフェ「ラ・ジーン T8」へのおでかけというわけだ。

理由はともあれ、ワタシには嬉しいことだからいいんだけどね。

 

 

……っと、そんなことを考えていたらもうカフェに着いたようだ。

 

入り口をくぐり店内に入ると、時間帯のせいか前に来た時と違って席の半分くらいが埋まる程度にはお客さんが入っていた。

 

 

 

「いらっしゃい。よく来たねぇ」

 

 

そんな白い髪とお髭のマスターに出迎えられ、ワタシ達は軽く挨拶を返した。

 

さて、注文だが……どうしようか?

おやつじゃなくてちょっとしたお昼くらい、軽く食べておきたい……けど、やっぱり前回食べれなかった「トリシューラプリン」を食べたいというのも素直な気持ちだ。前に見た時に他にも気になるモノはあったし、本当に迷うなぁ。

 

と、その前に飲み物か。

それじゃあまずはメニューを貰わないと。

 

 

『じいさん、その『青眼の白龍(ブルーアイズホワイトドラゴン)』1枚とこのカード全部を交換してくれ!』*14

 

 

「んん~? キミの手元にカードとやらがあるようには見えないんだが?」

 

 

ワタシのお口が勝手なことを言ったら、マジレスされた。

まあ、おっしゃる通りなんですけども。だけど、そこは武藤双六(じーちゃん)のように笑いながら「ダメ」と答えてほしかった……決闘者(デュエリスト)としてはね。

しかし、ワタシの方にも非があったとはいえ、そう返してこなかったってことは、遊戯王ネタにあふれたカフェを経営して(やって)いるけどワタシのような決闘者(デュエリスト)ではなくて、あくまで「遊戯王DM」等を知らない遊戯王世界の住人のようなひとなんだろうか、このマスターは?

 

 

と、自分で言うのもなんだけどいつも通り決闘者なワタシと違って、ツバサとカナデは随分と慌てた様子。原因は……うん、わかってたけど、ワタシの意味不明な言動のせいだ。

 

「この子、少し変なことを言ってしまうことがあって……!? その、気にしないでください」

 

「本人には悪気は無いから……店長さん? 何してるんだ……?」

 

ショーケースから離れて、何やらカチャカチャとしているマスター。それを見てカナデが疑問を口にしたんだけど……振り返ってきたマスターは不思議そうに首をかしげて言葉を返してくる。

 

「何って「ブルーアイズマウンテン」を注文しただろう? 用意をしているのさ、それを淹れるために」

 

「「えっ」」

 

出身はともかくやっぱりこのマスター(ひと)決闘者(デュエリスト)だね!

 

さっきのセリフ「ブルーアイズホワイトドラゴン」と「ブルーアイズマウンテン」とを問題無く結び付けられてるわけだし、間違いはないだろう。

色々と聞いてみたいことはあるが……ワタシはこの通り、思ったこととは別のことを言ってしまうからどうしようもない。その上、相手が決闘者(デュエリスト)であった場合別方向に勘違いが加速してしまう可能性もあるから、下手なことは言えない。本当にもどかしいものだ。

待てよ? この人なら《クリフォート・アセンブラ》のテキスト表記でももしかして……?

 

 

「「ブルーアイズマウンテン」を?」

「っていうか、それって確か一杯3000円の……!?」

 

スッと近寄ってきたマスターが、ワタシたちにしか聞こえないような大きさの声で言ってくる。

 

「お金は気にしなくていい。無事だったことへのお祝いのようなモノだからね」

 

ああ、そういえばこのマスターって変装してるカナデとツバサ(ふたり)のことをわかってるんだった。そして、ファンでもあるっぽかった。

あのライブの後に無事に店に来てくれたんだから、そのくらいのサービスをしてきてもそうおかしくないかもしれない。

 

 

 

「ああ、そうだ。前言ったように、お昼時に来てくれたから残っているよ。「トリシューラプリン」と対を成すこの店もう一つの看板メニューが」

 

「ほら、そこに」とマスターが示すショーケースそばのカフェの一角には、四角いボックス状の機械が――見た目だけで言えば、コンビニなんかでアイスが入っているあの装置のようにも見えなくはない。どうやら機能は冷凍ではないようだけど……保温か何かだろうか?

 

 

「「トリシューラプリン(アレ)」と対……って、ヤバイくらいの値段がしそうだなぁ」

 

「むしろ採算度外視さ。アレルギーが無いのであれば、オススメするよ」

 

「? いったいどういうメニューなのかしら?」

 

三人そろってそのボックスに近づき――ワタシはちょっと背伸びをしながら――中を覗きこんだ。

 

 

「なにこれ?」

 

「はんばーがー……ですか?」

 

 

こ、これは……まさかっ!?

 

 

 

 

「「ドローパン」さ」

 

「「ドローパン?」」

 

 

説明しよう! 「ドローパン」とは!?

デュエルを勉強する学校「デュエルアカデミア」、そこの購買で売られているパンである!

丸パンが上下半分に切られて間に具が挟まっている、ただそれだけ……それだけなのだが……!!

 

 

「至って普通のパンさ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そう! そうなのである!!

マスターの言う通り、数多く売られている「ドローパン」のその中身は様々で多種多様。そして、それは売られている状態――ハンバーガーのように紙に包まれている状態――では中身がわからないようになっているのだ!

 

つまり「ドローパン(これ)」は、まるで未知のカードである一番上(デッキトップ)から望んだカードを()()()するかのような、正にドロー力を試すパンなのであるっ!!

 

 

「なるほど、だからアレルギーを……」

 

「ってか、それってロシアンルーレットか何かかよ」

 

カナデの言うことは的を射てはいる。

中身の具は、当然人によっては不味いと思えるものや、パンと合うのか疑問なものも入っている。アタリハズレの判断基準は人によってマチマチだろうが、確かにロシアンルーレット呼ばわりされても仕方ないだろう。

 

『お楽しみはこれからだ!』*15

 

まあ、確かにたのしみではある。食べることにも、ふたりのリアクションにも!

なんとか、カナデ達にも食べさせたいなぁ……。

 

 

「もちろん、衛生管理はしっかりとしているから、心配しないでほしい」

 

 

 

「ケーキじゃなくて、小腹が満たせるサンドイッチとかを……って思ってたけれど、何が入ってるかわからないっていうのはちょっと恐いかも」

 

「そうか? あたしは結構興味あるよ」

 

くいつきは、ツバサはいまいちでカナデはノリノリっぽい。

もちろん、ワタシには買わない理由が無いね!

 

『当然、正位置ィ!!』*16*17

 

「奏だけじゃなくて葵まで……な、なら私も」

 

最終的に、ワタシに釣られるようにしてツバサも「ドローパン」を買うことに決めたようだ。

 

 

「今日はまだ()()()()が出ていないから、残り21個のうち1個が大当たりさ」

 

「1/21というと、そうそうソレには当たりそうには無いわね」

 

「あたしとしては、どっちの意味で大当たりなのか聞きたいけどなぁ」

 

真面目な顔でワゴン内の「ドローパン」たちに目をやるツバサに対し、カナデはマスターのほうをむいて苦笑を浮かべている。

 

ワタシ? ワタシは、買うと決めた瞬間に値段を確認して三人分のお支払いの用意をしたよ。あとはこれとレジカウンターに出すだけ。マスターのもとへと行ってしまえば、後でカナデたちから「あたしが払う」だのなんだの言われても知った事じゃなくなる。

そんな事をする理由は……そう大したものじゃない。あえて言うなら、アニメで遊城十代が先にお金渡してから取って食べてたからとか、自分の分を先に渡すのなら一人の分だけじゃなく皆の分やってたほうが良いかなとか、そんなものだ。

 

 

「……なるほどね。うん、確かに受け取ったよ」

 

 

さあ、ふたりが真剣に「ドローパン」を選んでいるスキにお金を渡し終えたぞ!

となれば、後は引くだけだ!!

 

悩む必要などない、ただ自分の感覚を――決闘者(デュエリスト)としての直感を信じて!!

 

 

『ドロー!!』*18

 

 

さあさあ! 中身はなんだろなっ?

なかみの確認以上にかぶりつきたい衝動にかられ、紙の包みを開こうとしたワタシの手が、掴まれた。

 

「コラ、(あおい)。こんなところで立ったまま食おうとするのは流石に行儀が悪いぞ?」

 

「ええ、それに支払いも――」

 

「支払いは問題無いよ。今回はもう、ね」

 

マスターの言葉に揃って「「えっ」」って顔を見合わせるふたり。

だけど、首をかしげて不思議そうにしながらも、「ブルーアイズマウンテン(さっきの一件)」があったからか特にそれ以上は何も言わなかった。

 

「こっちの「ブルーアイズマウンテン」もできたよ。砂糖とミルクも用意したから、一緒に持って行くといい」

 

「あっはい、どうも」

 

「んじゃあ、あたしらもさっさと決めるか」

 

わざわざ砂糖とミルクを用意したのは、きっと「ブルーアイズマウンテン」が他のコーヒーよりも苦みが特徴的だから、マスターが気をきかせてくれたんだろう。

でも、ワタシは意地でもブラックで飲むけどね。

 

 

「っと、これでいっか」

 

「じゃあ行きましょう」

 

早く開けてかぶりつきたい衝動をなんとか抑えながら渋々従い、ほどよい席へとむかう。

そして――――

 

 

「それじゃあ、たべましょうか」

 

「……そうだ! なぁなぁ、ふたりとも。一口目を食べる時、中身を見ないでせーのっで同時に食べてみないか?」

 

『お前のノリを見せてみろ!』*19

 

おおっ! わかってるね、カナデは。

こういうモノは、包み紙を開けて中身を確認してから食べるのは邪道というものだと、私は勝手に思っている。そんなことをしては面白みに欠けてしまうだろう?

 

「あっ、葵は変なのだったらすぐペッってしていいからな」

 

しかしまぁ、相変わらずのワタシへの気遣いではある。

 

「奏、私は?」

 

「翼は……頑張れ、アーティストなんだし」

 

「それは関係あるのかしら?」

 

あるんじゃないかな? ライブの一件で今は休止中だけど、アーティストなんだからテレビ映えとかもろもろ……そういうのを考えると、プライベートとはいえオエッっちゃうのはダメでしょう。

 

 

 

 

 

「開けたか? じゃあいくぞ、せー……のっ!」

 

 

カナデの合図と共に、3人そろって自分の「ドローパン」にかぶりつく。

さあ、中身は…………――っ!?

 

 

「これは、エビ……この味に大きさからして「伊勢海老」かしら? 素材を活かした素朴な味付けだけど身がしっかりしてるから、食べごたえもあって美味しいわね」

 

「ふこぉっ!? なんだ、はぁ「豆腐」!? 薬味がちょっとしたアクセントになってるけど全体的には地味な味だし……普通に合わないわ、これ。パンに挟んで食べるもんじゃないだろ……」

 

「そう? ヘルシーでいいんじゃないかしら?」

 

「それは翼が良いもん食べれてるから言えるんだって。あたしにひとくちくれよー」

 

「えっ!? ま、まぁ奏が良いならいいんだけど……あら? そういえば葵は……?」

 

 

 

 

「たまごパァーンっ!!」*20*21

 

 

 

 

「タマゴパン? 葵ってそんなはしゃぐほどタマゴが好きだったっけ?」

 

「おぼえはないけれど……あれ? 気のせいかしら、周りの人たちが何だか……?」

 

気のせいではない、気のせいではないのだよ!

周りから聞こえてくる「羨ましい……!」とか「今日はあの子かぁ」とか「いいな~」とか諸々の言葉、それはワタシが引いたこのたまごパン――正確には普通の目玉焼きが挟まれたパン……ではなくて、()()()()()()で作られた()()()()()()()を挟んだ()()()()()()()()――に向けての羨望であり、それこそがマスターの言っていた「大当たり」なのだ!

 

 

「黄金の雌鶏が1日1個しか産まない黄金の卵で作った目玉焼きを挟んでいるのさ」

 

 

「ホント、真っ金々だな……大丈夫なのか、食べ物として」

 

「でも、凄く美味しそうに食べてるわ」

 

 

「この私が全身全霊をもって作った究極のパン、美味くないはずが無いじゃないか」

 

 

マスターの言う通り、問題無く食べられるし、思っていた以上に美味しいぞこの「黄金のたまごパン」!

 

 

 

こうしてワタシのテンションは最大まで高ぶったことは、最早言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「あぁ……やはり特別だよ、キミは」

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「弦十郎くん、例の話聞いた~?」

 

「例の……? ああ、あの欧州諸国の政府が火消しに追われているというアレのことか」

 

指令室に不意に現れた了子くんが言ってきたことに一瞬首をかしげてしまったが、すぐに思い当たる事件(こと)があったため頷き答えた。

 

「そうそう! 欧州に突如出現してユーラシア大陸中心へ向かって進行したって言うアレよ」

 

了子くんの言葉は当然ながら俺だけでなく指令室にいた他の面々の耳にも入る。

その中でも、情報を観る機会があったのかオペレーターのふたりが反応を示す。

 

「私たちの耳にも入ってきてます。特異災害の一種ではないかと言われてますね」

 

「けど、通常兵器を扱う軍隊によって迎撃・鎮圧したって話でしたし、ノイズとはまた別のモノなんじゃないですか?」

 

「一般人たちの間では「政府が秘密裏に開発した生物兵器」や「宇宙からの侵略者」なんていう噂まで出てきてる始末だ。俺たちからしてみれば、何かしらの聖遺物が関わっているか、そもそもそれ自体が聖遺物か……。どちらにせよ、情報統制が行き届かないほどの規模な出来事でネット上を中心に情報が拡散している状況、他国のことだが他人事としてみてられんな」

 

もし仮に、その出来事が欧州ではなく日本で起きていたとすれば……あまり考えたくないな。

 

 

「それで、撃退されたっていう「()()()()()()()」の破壊された現物を見てみたいんだけど……なんとかならないかしら?」

 

「無理だな。あくまで俺たちは日本政府直属の機関だ。よそまではおいそれと手を伸ばせん……了子くん、わかって言ってるだろう?」

 

「まぁ、そうだけど……ちぇ~、だ」

 

 

 

……しかし、今回の欧州での出来事、俺としても気になるモノではある。

ネット上で得られる目撃情報だけで不確かな部分はあるが、機械のような蟲たちの進行ルートは確かにユーラシア大陸の中心付近に向かっていたらしい。……だが、そのルートの延長線上には日本(この国)がある。

 

そして、情報からおおよその出現時間を割り出し、時差などを計算すると……虫型機械が出現したのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

しかし、ここまで物理的に離れた距離では関連性も何も……俺の考え過ぎなのか?

 

 

「本当に……偶然、なのか?」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「欧州……まさか()()()の仕業か? ちょろまかとウザったいものだな」

 

 

「いや、だとしても今回のようなことを起こし()()()が得られるメリットが、目的が思い当たらん」

 

 

「ようやくまとまってきた策、その邪魔さえしてこなければいいのだが……」

 

 

 

 

 

 

*1
「遊戯王」において表遊戯→闇遊戯を呼ぶ時の呼称。時期にもよるが他にもいくつか呼び方はあるものの、回数や知名度的にもこれがメジャーである

*2
同じく「遊戯王」にて先程とは逆に闇遊戯→表遊戯を呼ぶ際の呼称。正確には「相棒」なのだが主にネット上では「AIBO」と表記されることが多い

*3
「遊戯王5D`s」ジャック。カフェでただの追加注文(3000円)した際の一言……が、このありさまである。コーヒーのおかわりだけで笑いを取れる元キング。なお、カフェのウエイトレスのガ二子ことステファニーにとってジャックの事が最優先事項なため、他の客が注文しようとしても、ジャックのおかわりが優先されてしまい中々注文をとってもらえていなかった。そういう光景は頻繁におこっているのだと推測される

*4
モンスターを守備表示にする効果と装備カードとなって攻撃力を上げる効果、ふたつの効果を持つ罠カード。主な使い手としては城之内があげられる。効果をふたつ持っていたり、選択できたり、装備カードとなったりと登場した時期にしては比較的珍しいカードだった。また、イラストに描かれている武器は、実在する武器がモデルになっているらしい

*5
「遊戯王ARC-V」沢渡シンゴ。レアカードに傾倒している彼がデュエル中にいいカードをドローした際に笑いながら発したセリフ。他にもダーツを投げる仕草からの「シュッ」や、後の再登場時の自称「ネオ沢渡」など最初期からずっとネタに事欠かないキャラ。登場時彼は主人公・遊矢が持っていたカードを奪って代わりに「クズカード」よばわりしたカードを与えたり、何かと小者臭が漂うイヤミなキャラだったのだが、彼も物語の中で成長を見せ、遊矢と競うようなエンターテイナーになる……のだが、性格は相変わらず自信過剰なお調子者のままで、どことなく憎めないキャラに落ち着くことになる

*6
「遊戯王ZEXAL」Ⅴ(ブイ)。ワールド・デュエル・カーニバルという大会の決勝戦のデュエル・コースター(文字通り、ジェットコースターのようなモノに乗ってコース上の魔法や罠といったギミックをかいくぐりながら、自分のライフポイントを守りつつ別の参加者たちとデュエルしながら終点を目指す種目)に参加中、Ⅴが襲ってきたモブデュエリストを罠で倒しながら発したセリフ。真剣な真顔でそんなセリフを吐いたことから、ニートキャラに加えて中二病扱いする決闘者が一気に現れた。……デュエリストの多くが中二病患っているとか、そんなことは言ってはいけない。病気じゃなくて、実際に凄いチカラを持っている存在も多数いるので……

*7
「遊戯王ZEXAL」ウルフ。WDCのデュエル・コースターにて金で雇われ主人公・遊馬をぶっ潰しに行った「フォールガイズ」のリーダー・ウルフが、仲間はすでに負け、自身の最強モンスターでの渾身の一撃を別のデュエリストによって遊馬には届かず絶体絶命のピンチに陥った時、遊馬へと自身の乗る車体ごと突撃していった際に発したセリフ。おそらくは、デュエルの勝敗結果ではなく物理的にぶっ潰そうとしたが故の行動なのだろうが……いったい何が「正真正銘」なのか? レーンがある程度入り組んでいるとはいえどうやってUターンしてきたのか? などと疑問が尽きない。なお、この「正真正銘のダイレクトアタック」とやらは無事失敗する模様

*8
モンスターガ、ジッタイカシタ!?

*9
「遊戯王DM」闇遊戯。G(ジー)ちゃんこと祖父・武藤双六の仇をうつため、闇遊戯へと人格を交代し海馬とのデュエルモンスターズでの勝負に挑む遊戯。その開始直後、召喚したモンスターが最新鋭のソリッドビジョン・システムによって出現した際に闇遊戯が驚愕と共に発したセリフ。最初期という事もあって演技力やクセの強い声色が今もなお語り草となっている

*10
「遊戯王5D`s」ジャック。潜入捜査へ向かった遊星の帰りを待っていたところ、そうそうとれないピアスがとれたり、花瓶が割れたり、髪の毛のハネが上手くセットできなかったりなど留守番組一同の身におこることが不吉な前触れではないかと心配する中、ジャックは「くだらん」と切り捨てた――が、持っていたコーヒーカップの取っ手がとれて飲んでいたコーヒーが自分の膝へと零れ慌てふためいた際のセリフ。発音と勢いが独特。なお、飲んでいたものが「ブルーアイズマウンテン」かは不明だが、拠点での出来事なうえクロウがいる前で堂々と飲んでいるのでおそらくは別のものだと思われる

*11
デュエルターミナル世界に登場するモンスター《クリフォート・アセンブラ》。特徴として、そのカードの効果欄に書かれているフレーバーテキストの一部がバグを起こしたかのように意☆味☆不☆明な文字列になっている……が、解読すればちゃんとした意味があることがわかる。それのことを「クリフォート語」や「アセンブラ語」など決闘者たちは呼んだりする。遊戯王には以前にも「ヴェルズ語」と呼ばれるテキストがあったが……?

*12
スデ テガニ クゴス ガ ゴイエ シタワ

*13
感想欄でも大人気

*14
「遊戯王」海馬瀬人。世界でも4枚しか存在しない幻のレアカード《ブルーアイズホワイトドラゴン》を目にした海馬がカードの持ち主である武藤双六に対して発したセリフ。主人公武藤遊戯と海馬との、今世での因縁の始まりと言える場面であり、遊戯王DMの始まりのお話である。このとき海馬が差し出したジュラルミンケースにはレアカードがぎっしりと詰められていた……のだが、そこにあるカード達は今はもちろん当時としても微妙なラインナップで、昨今は「どいつもこいつもクズばかり」などとネタにされがちである

*15
「遊戯王ARC-V」榊遊矢。主人公・遊矢の代表的なセリフ。主にデュエル終盤の逆転劇のための盛り上げの際などに使用され、番組の次回予告の最後のセリフとしても使用されていたため聞く機会は多い。また、遊矢以外にもこのセリフを使うキャラは存在し、「かっとビング」ほどの大きな変質をせずに同様のセリフで使用されている

*16
「遊戯王GX」斎王琢磨(さいおう たくま)。「遊戯王シリーズ」各作品ごとに存在すると言われる「顔芸枠」のその一人、熱狂的な信者(ファン)のいる「光の結社編」のラスボス・斎王琢磨の代表的なセリフ。彼が使うタロットをモチーフとしたカード群「アルカナ・フォース」カテゴリは召喚した際に正位置・逆位置が決まり、それによって効果が変わるカードたち。一部を除き、正位置が自分に利益のある効果、逆位置が自分に不利益な効果となっているのだが……終盤では、運命力が高まった影響でこのセリフのように斎王の思うがままに決定できてしまうようになった

*17
なお、この手のもののお決まりの展開ではあるが、最終決戦では途中主人公・十代による一手もあってこの当然正位置は失敗する……「何ィ!?」

*18
説明不要……だと思う。シリーズ共通、全デュエリスト共通の名台詞

*19
「遊戯王ZEXAL」ゴーシュ。仕事であればある程度割り切りはするが、とにかく物事を「いいノリ」、「悪いノリ」、「気に入らねぇノリ」などとノリで判断し時に本来の目的以上に重視することもある男性デュエリスト・ゴーシュ。彼が全力の熱いデュエルをやろうと主人公・遊馬にかけたセリフ……一部ノリを受け入れられればかなり熱い名デュエル、その一幕である。口調等、荒々しく粗暴なイメージがあるがことデュエルに関しては真摯なデュエリストで、熱いノリのデュエルが好きな熱血漢。普通に良い人。なお、濃いタイプの顔で中々にたくましい身体をしている彼の年齢が明かされた際には多くのデュエリストが驚愕した

*20
「遊戯王GX」天上院明日香。まだクールビューティー的なヒロイン枠内だったころの明日香が、「ドローパン」で「大当たり」を引けてはしゃいでいた際のセリフ。ハイテンションなセリフだけでなく、初めて見るというくらいのイイ笑顔を含め軽くキャラ崩壊レベルだった

*21
一応補足をしておくと、この場面は天性のドロー運の持ち主である主人公・十代と、ドローを磨くために山籠もりまでして半野生化しちゃってたアカデミア生徒が「ドローパン」の「大当たり」に関係する出来事からデュエルで本気でぶつかり合い互いに認めつつ決着。後日、どっちが「ドローパン」の「大当たり」を引けるか正々堂々勝負!……と言う流れからの、明日香が引き当て大喜びし、十代たちは落ち込むという最後のオチ。その時のセリフがコレである




適合者「欧州、だと……!?」

決闘者「『分かるように説明しろ』」

適合者兼決闘者「それは常在戦場の意志の体現『だって当然だろ? 決闘者(デュエリスト)なら』」

この作品の一般読者「『どういう…ことだ…』言ってること、全然分かりません。でもやって(読んで)みます!」
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