我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
一週間ぶりの更新です。
「『非力な私を許してくれ…』」
この一週間でいったい何作の他の新作小説が現れ、何話の最新話が更新されていることか……
こんなマイペース更新な作品を呼んでくださり、そして感想、誤字報告、お気に入り登録、評価付与してくださる読者の皆々様には感謝しきれません!
そんなこんなで、原作開始前の最後のお話です!
イヴちゃんの中身はハイテンションでキャラ崩壊気味!? 過去最多文字数更新! もう少しで2万字突破!? 内容的にも色々詰め込みすぎな気がする最新話をどうぞ!!
ねぇ、『もう一人の僕』*1。
――――
知ってた?
レポートみたいなのを見て、そこに書いてある字が「
………………。
…………。
……。
まぁ、一人『AIBO』*2ごっこはここまでにしておこう。
何故「
―――――――――
時間もあるし、トッキブツ本部にあるセイイブツの資料片っ端から読み漁ってみよう――ってわけで、リョーコさんの
資料の文面を見た瞬間、頭に
「聖遺物」って何さ?
「聖遺物」はセイイブツだけど、せいいぶつ違い?
もしかして、みんなが言っていたセイイブツは「聖遺物」?
ってことは、「聖遺物」って「星遺物」とは関係無い?
あれ? じゃあ《星杯の妖精リース》は……?
「星遺物」ストーリーは関係無いの?
とまぁこんな具合に頭の中で考えがグルグルと回る。
だが、まだ他のセイイブツに関する資料も、「星遺物」ではなく「聖遺物」に関する資料ばかりだと決まったわけじゃあない。そう思ってドンドン読み漁っていったのだが……お察しの通り、どれもこれも「聖遺物」とばかり書かれていて「星遺物」の文字はどこにも書かれていなかった。
「さっきから、何をコソコソとしているかと思えば……」
しかもこの感じ、今のリョーコさんはいわゆる闇リョーコさん(ワタシ命名)のようだ。グチグチとお小言をいただいてしまいそうな予感……そう思ったのだが――
「熱心なことは構わんが散らかすな。あと、お前のようなヤツには価値が理解できんだろうが、こんな
――所々にトゲはあるけど、思っていたよりもキツくはない。いや、むしろ「あれ? もしかして心配してくれてる?」ってくらいにはマイルドな言い回しな気がする。
まぁ、実際になにかやっちゃった時にはもの凄い怒ってくるって事はわかってるんだけどね! ワタシ、知ってる。
そんなことを考えていると、不意に目の前に何かを差し出された。
もちろんそれを渡してきてるのは闇リョーコさんなんだけど、これはいったい……?
「お前が探している資料はこっちだろう。とっとと持って行け」
「『
何を言ってるんだろうか、この人は? いや、それはワタシもだけどさ。
内容は……?
……待て。この「開かずの間」っていうの、さっき見た《
真偽はさておき、確かにこれはワタシが探していた「
ということは……もしかして、この闇リョーコさんは「
「姉が過保護なら、妹も妹か……家族ごっこもここまでくると感心すらしてしまいそうだ」
……そんなことを言われて「ん?」と思って改めて目を通してみたら、この「開かずの間」がある山「皆神山」というらしい。以前、闇リョーコさんが言ってたけど、
なるほど、闇リョーコさんが考えてることはなんとなくわかったし、「
にしても、困ったな。
この「開かずの間」は気になるけど、ただでさえ許可が下りそうにも無い遠出になるのにそんな曰く付きの場所となれば「行きたい!」なんて言ったところでダメに決まっている。特にカナデは……絶対に許してくれないだろう。
どうしたものか……。
「……いや、こいつは前からそういう生き方をするヤツだったな」
―――――――――
……と、まあそんなこんなあって「
そして、皆神山の聖遺物発掘現場跡地についてだが……ワタシの知らないうちにトントン拍子に話が進んでいた。もちろんそれは「行く」方針でだ。
どういう…ことだ…!?
数日後ついに決行された。
電車の中でこのいうこと聞かない口がリョーコさんに向かって「『うるさい
実はとある事情でこの皆神山行き決行の前に、ゲンジュウロウさんやシンジさんと情報交換や事前の打ち合わせをしていたのだ。
特にシンジさんとはそれはそれは念入りに……いや、あれは打ち合わせと言うか質問攻めというか、
シンジさんはいざという時に頼りになる人ではあるけど、一対一で面と向かって相対するのはさすがに緊張感がハンパない。言っておくが、別に「シンジさんみたいなイケメンとふたりっきりなんてキンチョーする~」なんてそんな脳内ピンク色の思考なわけじゃない。むしろワタシの中の
そんなシンジさん相手にワタシのことに関する質問や答えのわかりきったクイズなどを何度も出され続けたのだが――事前にシンジさんが紙に書いて用意して問いの度にさし出してくるいくつもの
って、今はそれじゃなくて、ちょーっと前から時折ワタシのことを追跡してきている
打ち合わせの際にシンジさんから「葵さん、あなたを追跡している人物がいることはご存知ですか?」と聞かれ知っていたので頷いたら驚かれたのだが……まぁとにかく、監視カメラ等で何度も確認されて何とか尻尾を掴みたいって話だった。
あと、知ってる人かどうかも聞かれたのだが、それには肩をすくめてみせながら「わからない」と書かれた紙を指差した。いちおうごく稀にだがチラッと顔が見えることがあるんだが……見たことがあるような気はするんだが、名前やどこで会ったかが思い出せないのだ。今のワタシの知り合いの範囲なんてすっごく狭いから、そんな悩んだりするはず無いんだけど……何故だろうか? しかも、むこうはむこうで何故か毎度驚いた顔をするんだよなぁ。不思議なことばかりだ。
そんな
周りを取り囲んでいるはずの人たちの動きが少し気になるところだけれど……きっと大丈夫だろう。なんせシンジさんもいるんだし。
「ほら、そろそろ入るわよ」
まぁ、入り口にいたところで何も始まらないからね。
「『王を救うのだ! 全軍突撃ー!』
「この先に王だなんて、そんなピラミッドとか古墳じゃないんだから……しかも、それじゃあ死んじゃってるわね」
ワタシがいつものように変なセリフ口走ったせいで言いだしたんだけど、王が
エジプトと遊戯王――特に原作漫画やDM――は切っても切れない縁があるが、さすがに今回は…………そういえば、皆神山がピラミッドだとか何とか言う話を噂程度にだが聞いたことがあったような? 星遺物が発掘されていた遺跡がこうしてあるわけだし、この世界だと本当に王族が眠る古墳か何かだったりするのかもしれない。
そんなこんなで遺跡発掘現場だった皆神山内部の坑道へと突入したわけだが……
「……ふんっ、このあたりで十分か」
ワタシと手を繋ぎながらも半ば先行するように歩いていたリョーコさんが、そんなことを言いながら手を離しちょうど通路のT字のつきあたりで急に立ち止まったのだ。
いや、口調や雰囲気からしてこれはリョーコさんじゃなくて闇リョーコさんか?
「付けられていたマイクも、
なっ!? 「開かずの間」のせいにするだって!? 「
そもそも勝手に他人のせいにするなんて、なんてヒドイことをするんだ!(《鎖付きブーメラン》*4)
「『俺カードに選ばれすぎぃ!』」*5
もういつものことだけど、色々と違うね。
「呑気にそんなことを言っていていいのか?」
む、それはどういうことだろうか?
ポヒョン♪
ちょっと気の抜ける奇妙な音。
聞き覚えのあるその音が後ろのほうから聞こえ、ワタシは反射的にバッと振り返った。
もうかなり遠くなってきていたワタシたちが入ってきた出入り口に見えたのは、まるで着ぐるみかゆるキャラのようなあの独特のシルエット。逆光で若干見え辛くはあるが、人型ノイズ数体が入り口をふさぐように並んでいるように……って、あれ? 模様とか腕の向きからして、
うん。やっぱりコッチ側に背中をむけてるし、外へと向かって進んでる。なんなら、外から悲鳴が聞こえてきてる――――って、ヤバイじゃないか! ワタシがというよりは外の人たちが!
ポヒョン♪
……今の音、やけに近くで聞こえたような……?
さっき振り返った時とは打って変わってギギギッと軋む音が聞こえそうなぎこちない動きで音のした
「おおっと、外だけに展開するはずが、私としたことが通路の中にまでノイズを出現させてしまったー。戦わなければ命が危ういなぁー?」
おいおい、この状況で何ニヤニヤ笑って――――って! 今言ってる感じからして、ノイズって闇リョーコさんが操ってるのか!?
「『私に近づく者は地獄の業火に包まれる』」*6
「こんな時でも余裕……ふんっ、今のお前にはこの程度は苦でもないということか?」
いや、いつも通りに思っている事と別の言葉が勝手に出てるだけだよ!
それにしても、この仕打ち、あれか!? あれだな!! さっき言ってたことからして、マイクの事で一旦引っ込めてたけど「
とはいえ、闇リョーコさんがノイズを操っていることに驚きはしたけれど、今ワタシの置かれた状況はそこまで焦るほど大変なわけじゃない。
なにせ、前とは違って今のワタシはノイズを倒せることをあのライブで実証してみせたのだ。ノイズの1体や2体、恐れる必要も無い。
ワタシの中に眠っている《
次の瞬間、ワタシの視界が一瞬光に包まれたかと思えば力漲る久しい感覚を感じ、確認するとやはりと言うべきかイメージした通り《
「ほぅ? 報告には聞いていたが、それが……お手並み拝見といこうか」
そう言う闇リョーコさんは余裕の様子で壁を背に立っている。
……あれ? もしかして「BBA」発言のせいじゃなくて、《
確かリョーコさん自身は「
あの「ツヴァイウィング」ライブ以降一度も《
ワタシとしても色々と気になるところではあったんだが、ライブでの一件もあってかワタシがノイズと戦えることが判明してからも、戦闘訓練とかそういうのは出来ていなかった。ゲンジュウロウさんが頷かなかったっていうのもあるが、それ以上に訓練に参加しようとするとツバサが涙を溜めて――泣き付ついてきて止められてしまうからだ。原因がなんであれきっとワタシが一度死んだあのことがトラウマなのだろう。カナデ? カナデは何も言わないよ? ただ、眉間にシワを寄せてもの凄く難しい顔をするだけで……まあ、確かにそれも色々とやり辛い要因ではある。
外のこととかなんでここまでするのかは説明つかないけど、なんとなく闇リョーコさんの意図はわかった。外のシンジさんたちも気になるし文句も言いたいし他にも色々あるけど……何はともあれ、目の前の問題を解決してからだ。
「『こうなりゃ正真正銘のダイレクトアタックだ!』」*7
なんだか猛烈に嫌な予感がするが、そんなことは関係無い。
通路の幅や高さに気を付けつつ「
すかっ
してません。むしろすり抜けました。
――じゃないっ!
ほらっ、観察してた闇リョーコさんも目をまん丸にして呆然としちゃってるじゃないか!
ノイズが倒せないとなれば、これからどうしなければならないかも一変する。
ワタシはノイズへと向けていた身体を一転させ、闇リョーコさんの手をふん捕まえてT字通路のノイズがいる方とも、ノイズたちによって塞がれていた入り口とも別の通路へと駆け出した――――否、逃げ出した。
「……はっ!? いや待て、何がどうなっている!? 貴様はノイズを倒せるんじゃなかったのか!?」
それはワタシが聞きたい!
ノイズの共通効果である「攻撃対象にならない」効果は特定の条件下でなければ適用されないという風にも考えられる。すると、ライブの時と今とでは状況が何かしら違い、それが原因で今はワタシの攻撃が通っていないということになる。《
が、その「特定の条件下」というのがわからないから、現時点ではどうしようもないんですよ!
「くそっ、放せ! 何故私まで一緒になって逃げねばならんっ! ……無駄に力が強いなぁ!?」
何故って、そんなの言うまでもないだろう!? ノイズは危ないんだぞ? そんなヤツに襲われでもしたら…………あっ、ノイズって闇リョーコさんが操ってるんだっけ? そりゃあ、逃げる必要無いな、テンパってるわワタシ――ぬわっ!?
「なっ!? 貴様手を――ぐっぅ」
「『
あ痛っ!?
「立ち止まってもいいんじゃ?」って思って、いちおう
にしても、なんだかデジャブを感じるな。
何かにひっかかってこけて……ちょっと前にもこんなことあったよね?
そんなことを考えながら立ち上がろうと視線をあげて行くと、独特の質感を持った壁が視界の左端にあることに気付きそちらを見た。
はー……もしかしてこれが「開かずの間」だろうか? となれば、今こうして何となーく感じているこの感覚ってやっぱり――――なんて考えていると、視界が眩しいまでの閃光に塗りつぶされた。
あっ、これ、あの時と一緒だ。「
元に戻った視界。そこに見えるのは壁にポッカリと開いた穴と、そこに浮く「腕部と胸部の装備を中心とした防具」のミニチュアサイズの発光物体。
見る人が見ればわかる。カードに描かれていたことは無いが、これが《
浮遊しているミニチュアサイズの《
そのことを深く考えるヒマを与えてくれるはずも無く、事態は動き続ける。
《星遺物―『星杯』》の時と同じく、OCGの「星遺物」ストーリー内の星遺物と違ってその場に在った星遺物はなくなってしまった。何故そうなるのかは、やっぱり現状ではわからないな。
ん?
ワタシの思考を肯定するかのように、地響きと共に目の前にポッカリと開いてる穴――《星遺物―『星鎧』》があったであろう場所――を中心に床が、壁が、天井がひび割れ崩れていく。
「なっ……!? 次から次へと、何事だというんだ!?」
声に反応して振り向けば、ようやく立ち上がった様子の闇リョーコさんが騒いでいて……その十数メートル後ろにいたノイズはといえば、ちょうど崩れていく床と共に下へと落ちていっていた。おそらくあの床の下方には、ワタシたちのそばの壁から一部を覗かせていた星鎧とは別のパーツがあったのだろう。そして、あのノイズの姿は数秒後のワタシたちの姿かもしれない……そんなのはゴメンである。
思いつく策は力押しもいい所だが、何もせずに生き埋めだなんて願い下げだ。なので、多少根性論で乱暴な力ずくの作戦であっても、やってやるしかない。
「鍵杖」を持っていない方の手で闇リョーコさんの腕を捕まえ、そばまで引き寄せてから「鍵杖」を構え、そして――振りかぶる。
その結果は――――
「『トムの勝ちデース』」
―――――――――
崩れていく山の内部から命からがら脱出しながらも気の抜けるセリフをぶちかましてしまったあの後。
トッキブツ本部へと帰るまでの間は……まぁ、何事も無かった。リョーコさんからの視線が多少刺さりはしたが、すぐそばにシンジさんたちがいたためか闇リョーコさんが出てくることも無かったので、のんびりと帰ることが出来たのだ。
とは言っても、シンジさんから渡された通信越しにカナデとツバサから色々と言われたりもして、ゆっくりと休めたわけではないのだが。
そして、その道中にワタシの中では
それは「クローラー」というカテゴリのカードたち……「星遺物」ストーリーにてイヴちゃん一行が最初に相対する敵である、《星遺物―『星鎧』》の周囲に生息している「機怪」と呼ばれる機械のような虫のような存在たちの軍勢だ。
ストーリー上で彼らは、昔から生息しているが比較的大人しい存在――なのだが、イヴちゃん一行が起動させるために《星遺物―『星鎧』》に近づいて行ったところ凶暴化、大乱戦となるのだが……。
その乱戦のことはここで説明する必要は無いが、問題は今回確信をもってでは無いもののワタシが《星遺物―『星鎧』》に接近し接触・起動させたわけだが……そこに「
いやまぁ、《
しかし「どうして?」「何故?」に対する答えがワタシの中から出てくるわけもなく、トッキブツ本部へと帰り着くのだが……そこで、そんな疑問が吹っ飛ぶ事態となるのだった。
「「ツヴァイウィングライブの襲撃犯」、「謎の物質で作られた遺跡の襲撃犯」、「葵君の追跡者」……これらは
「「「なっ!?」」」
「えっ」
「『ゑ?』」
いや、確かに今回やライブの日の時といい、「星遺物」を回収したために意図的にではないとはいえ山を崩し、その上他人を巻き込んでしまっていることも悪いと思っている。
だがしかし、だ。
ライブ襲撃の件には関係無いし、ワタシが
でも、主張しよう。「星遺物」以外はワタシは関係無い!!
―――――――――
それから数日後……
「ん~……! ったぁ。こうやって外をのんびり歩くのも、すっごく久々な気がするなぁ」
「実際奏は
ワタシの右手をカナデが、左手をツバサが握って歩くお昼時。
今ワタシたちは、ようやく快復に至ったカナデの快気祝いにと三人でお出かけ中である。
とは言っても、あくまで「
行先が例のカフェ「ラ・ジーン T8」であることから察することが出来るが、おそらく
――――――
最近のワタシは自分で言うのも何かアレだが、目も死ぬ勢いで気落ちしていた。
原因がなにかといえば……まあ、他でもないこのイヴちゃんのちびっ子ボディなのだが。
《星遺物―『星鎧』》を起動させて言語能力に何か変化があったか確認したのだが、特に無かった。ここまでなら、ワタシの推測が間違えていたのかなーとへこみはしても大ダメージにはならなかっただろう。
じゃあ、何があったのか?
たぶんダメだろうと思いながらも一応確認のためにとペンを持ったところ、変に力もかからず「あれ?」と思って動かしてみたら、
やった! これで――――!!
大歓喜で思ったことを紙に書いていき「できたっ!!」と字を書いた紙を机の上から取り上げて自分の目の前で広げてみた。
『スsでgヴnイiはh前t名eノ当g本nのaシrたtワsがスgでnイおiアyるaイsrてッoなfニe話z世おiモg時何o様l皆てoシpまaメ初I』
「『絶対に許さねぇぞ、ドン・サウザンドォォォォォッ!!』」*13
いつだかぶりにワタシのお口がドンさんのせいにした。
そして、その時ワタシがいた場所がトッキブツ本部だったこともあって、ちょっとした騒ぎにもなった。
なお、この時書いた紙は「預かるわ」と言ったリョーコさんが持って行ったのだが、数日後――
「う~ん……わかんない♪」
――そう言って匙を投げたのである。
櫻井理論の提唱者である天才とはなんだったのか……。
――――――
とまぁ、そんなことがあった。
事件に巻き込まれた後ということもあってか、
理由はともあれ、ワタシには嬉しいことだからいいんだけどね。
……っと、そんなことを考えていたらもうカフェに着いたようだ。
入り口をくぐり店内に入ると、時間帯のせいか前に来た時と違って席の半分くらいが埋まる程度にはお客さんが入っていた。
「いらっしゃい。よく来たねぇ」
そんな白い髪とお髭のマスターに出迎えられ、ワタシ達は軽く挨拶を返した。
さて、注文だが……どうしようか?
おやつじゃなくてちょっとしたお昼くらい、軽く食べておきたい……けど、やっぱり前回食べれなかった「トリシューラプリン」を食べたいというのも素直な気持ちだ。前に見た時に他にも気になるモノはあったし、本当に迷うなぁ。
と、その前に飲み物か。
それじゃあまずはメニューを貰わないと。
「『じいさん、その『
「んん~? キミの手元にカードとやらがあるようには見えないんだが?」
ワタシのお口が勝手なことを言ったら、マジレスされた。
まあ、おっしゃる通りなんですけども。だけど、そこは
しかし、ワタシの方にも非があったとはいえ、そう返してこなかったってことは、遊戯王ネタにあふれたカフェを
と、自分で言うのもなんだけどいつも通り決闘者なワタシと違って、ツバサとカナデは随分と慌てた様子。原因は……うん、わかってたけど、ワタシの意味不明な言動のせいだ。
「この子、少し変なことを言ってしまうことがあって……!? その、気にしないでください」
「本人には悪気は無いから……店長さん? 何してるんだ……?」
ショーケースから離れて、何やらカチャカチャとしているマスター。それを見てカナデが疑問を口にしたんだけど……振り返ってきたマスターは不思議そうに首をかしげて言葉を返してくる。
「何って「ブルーアイズマウンテン」を注文しただろう? 用意をしているのさ、それを淹れるために」
「「えっ」」
出身はともかくやっぱりこの
さっきのセリフ「ブルーアイズホワイトドラゴン」と「ブルーアイズマウンテン」とを問題無く結び付けられてるわけだし、間違いはないだろう。
色々と聞いてみたいことはあるが……ワタシはこの通り、思ったこととは別のことを言ってしまうからどうしようもない。その上、相手が
待てよ? この人なら《クリフォート・アセンブラ》のテキスト表記でももしかして……?
「「ブルーアイズマウンテン」を?」
「っていうか、それって確か一杯3000円の……!?」
スッと近寄ってきたマスターが、ワタシたちにしか聞こえないような大きさの声で言ってくる。
「お金は気にしなくていい。無事だったことへのお祝いのようなモノだからね」
ああ、そういえばこのマスターって変装してる
あのライブの後に無事に店に来てくれたんだから、そのくらいのサービスをしてきてもそうおかしくないかもしれない。
「ああ、そうだ。前言ったように、お昼時に来てくれたから残っているよ。「トリシューラプリン」と対を成すこの店もう一つの看板メニューが」
「ほら、そこに」とマスターが示すショーケースそばのカフェの一角には、四角いボックス状の機械が――見た目だけで言えば、コンビニなんかでアイスが入っているあの装置のようにも見えなくはない。どうやら機能は冷凍ではないようだけど……保温か何かだろうか?
「「
「むしろ採算度外視さ。アレルギーが無いのであれば、オススメするよ」
「? いったいどういうメニューなのかしら?」
三人そろってそのボックスに近づき――ワタシはちょっと背伸びをしながら――中を覗きこんだ。
「なにこれ?」
「はんばーがー……ですか?」
こ、これは……まさかっ!?
「「ドローパン」さ」
「「ドローパン?」」
説明しよう! 「ドローパン」とは!?
デュエルを勉強する学校「デュエルアカデミア」、そこの購買で売られているパンである!
丸パンが上下半分に切られて間に具が挟まっている、ただそれだけ……それだけなのだが……!!
「至って普通のパンさ、
そう! そうなのである!!
マスターの言う通り、数多く売られている「ドローパン」のその中身は様々で多種多様。そして、それは売られている状態――ハンバーガーのように紙に包まれている状態――では中身がわからないようになっているのだ!
つまり「
「なるほど、だからアレルギーを……」
「ってか、それってロシアンルーレットか何かかよ」
カナデの言うことは的を射てはいる。
中身の具は、当然人によっては不味いと思えるものや、パンと合うのか疑問なものも入っている。アタリハズレの判断基準は人によってマチマチだろうが、確かにロシアンルーレット呼ばわりされても仕方ないだろう。
「『お楽しみはこれからだ!』」*15
まあ、確かにたのしみではある。食べることにも、ふたりのリアクションにも!
なんとか、カナデ達にも食べさせたいなぁ……。
「もちろん、衛生管理はしっかりとしているから、心配しないでほしい」
「ケーキじゃなくて、小腹が満たせるサンドイッチとかを……って思ってたけれど、何が入ってるかわからないっていうのはちょっと恐いかも」
「そうか? あたしは結構興味あるよ」
くいつきは、ツバサはいまいちでカナデはノリノリっぽい。
もちろん、ワタシには買わない理由が無いね!
「奏だけじゃなくて葵まで……な、なら私も」
最終的に、ワタシに釣られるようにしてツバサも「ドローパン」を買うことに決めたようだ。
「今日はまだ
「1/21というと、そうそうソレには当たりそうには無いわね」
「あたしとしては、どっちの意味で大当たりなのか聞きたいけどなぁ」
真面目な顔でワゴン内の「ドローパン」たちに目をやるツバサに対し、カナデはマスターのほうをむいて苦笑を浮かべている。
ワタシ? ワタシは、買うと決めた瞬間に値段を確認して三人分のお支払いの用意をしたよ。あとはこれとレジカウンターに出すだけ。マスターのもとへと行ってしまえば、後でカナデたちから「あたしが払う」だのなんだの言われても知った事じゃなくなる。
そんな事をする理由は……そう大したものじゃない。あえて言うなら、アニメで遊城十代が先にお金渡してから取って食べてたからとか、自分の分を先に渡すのなら一人の分だけじゃなく皆の分やってたほうが良いかなとか、そんなものだ。
「……なるほどね。うん、確かに受け取ったよ」
さあ、ふたりが真剣に「ドローパン」を選んでいるスキにお金を渡し終えたぞ!
となれば、後は引くだけだ!!
悩む必要などない、ただ自分の感覚を――
「『ドロー!!』」*18
さあさあ! 中身はなんだろなっ?
なかみの確認以上にかぶりつきたい衝動にかられ、紙の包みを開こうとしたワタシの手が、掴まれた。
「コラ、
「ええ、それに支払いも――」
「支払いは問題無いよ。今回はもう、ね」
マスターの言葉に揃って「「えっ」」って顔を見合わせるふたり。
だけど、首をかしげて不思議そうにしながらも、「
「こっちの「ブルーアイズマウンテン」もできたよ。砂糖とミルクも用意したから、一緒に持って行くといい」
「あっはい、どうも」
「んじゃあ、あたしらもさっさと決めるか」
わざわざ砂糖とミルクを用意したのは、きっと「ブルーアイズマウンテン」が他のコーヒーよりも苦みが特徴的だから、マスターが気をきかせてくれたんだろう。
でも、ワタシは意地でもブラックで飲むけどね。
「っと、これでいっか」
「じゃあ行きましょう」
早く開けてかぶりつきたい衝動をなんとか抑えながら渋々従い、ほどよい席へとむかう。
そして――――
「それじゃあ、たべましょうか」
「……そうだ! なぁなぁ、ふたりとも。一口目を食べる時、中身を見ないでせーのっで同時に食べてみないか?」
「『お前のノリを見せてみろ!』」*19
おおっ! わかってるね、カナデは。
こういうモノは、包み紙を開けて中身を確認してから食べるのは邪道というものだと、私は勝手に思っている。そんなことをしては面白みに欠けてしまうだろう?
「あっ、葵は変なのだったらすぐペッってしていいからな」
しかしまぁ、相変わらずのワタシへの気遣いではある。
「奏、私は?」
「翼は……頑張れ、アーティストなんだし」
「それは関係あるのかしら?」
あるんじゃないかな? ライブの一件で今は休止中だけど、アーティストなんだからテレビ映えとかもろもろ……そういうのを考えると、プライベートとはいえオエッっちゃうのはダメでしょう。
「開けたか? じゃあいくぞ、せー……のっ!」
カナデの合図と共に、3人そろって自分の「ドローパン」にかぶりつく。
さあ、中身は…………――っ!?
「これは、エビ……この味に大きさからして「伊勢海老」かしら? 素材を活かした素朴な味付けだけど身がしっかりしてるから、食べごたえもあって美味しいわね」
「ふこぉっ!? なんだ、はぁ「豆腐」!? 薬味がちょっとしたアクセントになってるけど全体的には地味な味だし……普通に合わないわ、これ。パンに挟んで食べるもんじゃないだろ……」
「そう? ヘルシーでいいんじゃないかしら?」
「それは翼が良いもん食べれてるから言えるんだって。あたしにひとくちくれよー」
「えっ!? ま、まぁ奏が良いならいいんだけど……あら? そういえば葵は……?」
「タマゴパン? 葵ってそんなはしゃぐほどタマゴが好きだったっけ?」
「おぼえはないけれど……あれ? 気のせいかしら、周りの人たちが何だか……?」
気のせいではない、気のせいではないのだよ!
周りから聞こえてくる「羨ましい……!」とか「今日はあの子かぁ」とか「いいな~」とか諸々の言葉、それはワタシが引いたこのたまごパン――正確には普通の目玉焼きが挟まれたパン……ではなくて、
「黄金の雌鶏が1日1個しか産まない黄金の卵で作った目玉焼きを挟んでいるのさ」
「ホント、真っ金々だな……大丈夫なのか、食べ物として」
「でも、凄く美味しそうに食べてるわ」
「この私が全身全霊をもって作った究極のパン、美味くないはずが無いじゃないか」
マスターの言う通り、問題無く食べられるし、思っていた以上に美味しいぞこの「黄金のたまごパン」!
こうしてワタシのテンションは最大まで高ぶったことは、最早言うまでもないだろう。
―――――――――
「あぁ……やはり特別だよ、キミは」
―――――――――
「弦十郎くん、例の話聞いた~?」
「例の……? ああ、あの欧州諸国の政府が火消しに追われているというアレのことか」
指令室に不意に現れた了子くんが言ってきたことに一瞬首をかしげてしまったが、すぐに思い当たる
「そうそう! 欧州に突如出現してユーラシア大陸中心へ向かって進行したって言うアレよ」
了子くんの言葉は当然ながら俺だけでなく指令室にいた他の面々の耳にも入る。
その中でも、情報を観る機会があったのかオペレーターのふたりが反応を示す。
「私たちの耳にも入ってきてます。特異災害の一種ではないかと言われてますね」
「けど、通常兵器を扱う軍隊によって迎撃・鎮圧したって話でしたし、ノイズとはまた別のモノなんじゃないですか?」
「一般人たちの間では「政府が秘密裏に開発した生物兵器」や「宇宙からの侵略者」なんていう噂まで出てきてる始末だ。俺たちからしてみれば、何かしらの聖遺物が関わっているか、そもそもそれ自体が聖遺物か……。どちらにせよ、情報統制が行き届かないほどの規模な出来事でネット上を中心に情報が拡散している状況、他国のことだが他人事としてみてられんな」
もし仮に、その出来事が欧州ではなく日本で起きていたとすれば……あまり考えたくないな。
「それで、撃退されたっていう「
「無理だな。あくまで俺たちは日本政府直属の機関だ。よそまではおいそれと手を伸ばせん……了子くん、わかって言ってるだろう?」
「まぁ、そうだけど……ちぇ~、だ」
……しかし、今回の欧州での出来事、俺としても気になるモノではある。
ネット上で得られる目撃情報だけで不確かな部分はあるが、機械のような蟲たちの進行ルートは確かにユーラシア大陸の中心付近に向かっていたらしい。……だが、そのルートの延長線上には
そして、情報からおおよその出現時間を割り出し、時差などを計算すると……虫型機械が出現したのは、
しかし、ここまで物理的に離れた距離では関連性も何も……俺の考え過ぎなのか?
「本当に……偶然、なのか?」
―――――――――
「欧州……まさか
「いや、だとしても今回のようなことを起こし
「ようやくまとまってきた策、その邪魔さえしてこなければいいのだが……」
適合者「欧州、だと……!?」
決闘者「『分かるように説明しろ』」
適合者兼決闘者「それは常在戦場の意志の体現『だって当然だろ?
この作品の一般読者「『どういう…ことだ…』言ってること、全然分かりません。でも