我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
ただ、一週間が一日くらいというか、時間の感覚がおかしく思えるほど忙しなく暮らしています。
と、そんな中で本編もそこそこに書いてしまっていたクリスマス・イヴのお話です。
タイミング的には、挿入されている部分の通り原作開始前の……え?「もうとっくにクリスマス・イヴは過ぎてる」?
……クリスマスのイヴちゃんなんで、「クリスマス・イブ」です《大寒波》
【メモリアEP】ある年のクリスマス・イヴ
冬も深まり空気は一層肌寒く、陽は短くなる。
街では、緑が活気を消し寂しくなっていた街路樹のいくつかが、木の葉の代わりに
そういえば、今朝見たテレビ番組ではちょっと贅沢なスイーツや面白おかしいパーティーグッズ、小洒落た小物など、ナウなヤングにバカウケしそうな情報が取り上げられていたっけ?
ふと視線を移してみれば、街を行き交う人たちも
そして、思う。
――――遊戯王年末放送恒例、落下回の時期か……*1
年末なんて、受験生とかがピリピリしていたり、お祝いムードだったりする中で落ちたり亡くなったりと、縁起でもないことだが……遊戯王だから仕方ない。
まぁ、恒例とは言っても、実際のところは主に「5D`s」とそれ以降の作品で一部で言われているレベルのものなんだけどね……。*2
「……なぁ、翼。葵のやつ、なんかいつもに増してボケーッとしてないか?」
「言われてみれば……何か考え事かしら?」
と、そんなことを言ったのは、ワタシの左右に並んで一緒に歩いているカナデとツバサ。ワタシと手を繋いでいるのとは逆の手でそれぞれ先程買った食材が入った買い物袋を持っている。……つまるところ、ああだこうだ考えながらワタシが街中を歩いていたのは、カナデたちとの晩ゴハンの食糧調達帰りだったというわけだ。
「もしかして、この街の雰囲気に呑まれて驚いてるんじゃないかしら?」
「ああ、なるほど――――って、ん? ……あー……そっか。そういえば、葵ってクリスマスのこと知らないかもしれない可能性もあるのか」
ん? 《オルフェゴール・クリマクス》*3がどうしたって?
……違うって? うん、知ってる。
クリスマスだろう? クリスマス。
デュエルして、ケーキ食べて……デュエルする。それが決闘者のクリスマス。……カップルタッグデュエルとか、トナカイかソリに乗ってライディングデュエルとかやり出すのかもしれないけど、それはあくまで上級…いや、超級者の悪ふざけだろう。
つまりは、ワタシにとってはやはりケーキを食べる日程度のものだ。
「ってことは、葵はサンタさんからのプレゼントは何もお願いしてないわけか……」
「それはそうでしょうけど、それ以前にサンタクロースのこともよく知らないでしょ。帰ったら一度ちゃんと教えてあげるべきじゃないかしら?」
「そうだなー。あと、せっかくだし、葵の為にもあたしたちで準備でもしてみようか」
《サタンクロース》*4? アイツの時代は、来る前に終わったよ……。
色々と独特なモンスターで、彼と《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》*5、《洗脳解除》*6を入れたデッキを昔組んだこともあるが……今どきは「壊獣」*7のほうが強力でサポートカードも多いから日の目を見ないんだよね《サタンクロース》って。それこそクリスマス時期にちょっと話題に上がるくらいかな?
「葵の好きな「トリシューラプリン」とか? でも、プレゼントが食べ物ってのもなんかイマイチな気がするしなぁ……いや、ケーキをあのカフェで買うってのは普通にアリだな」
「参考になりそうなのは……小さい頃、叔父様が私にくれたプレゼントかしら? 山ほど貰ったけれど……」
なにはともあれ、カナデとツバサはなにやら考えてくれているみたいだ。
ワタシもふたりに何かしてあげられないか、考えてみようかなぁ……。
―――――――――
「奏、翼。すまないが、今月の24日は予定をあけといてくれないか?」
クリスマスのことをふたりが相談していたのが昨日のこと。
カナデとツバサの
色々と予定やら準備を考えていたんだろうふたり――特にカナデは不満そうに眉を顰めているのがワタシの視界の端に見えている。
「なんでだよ、旦那ぁ。あたしたちに仕事とかは入ってなかったし、入る予定も当分なかったはずだろ?」
というのも、例のライブで色々あってからというものの、カナデたち「ツヴァイウィング」の活動は一時休止となっていてそのままなのだ。
絶唱の影響でカナデが大怪我を負っていたのも理由の一つ、それは少し前に全快したんだけど……それ以前に、喪に服すというほどでもないものの、ライブでのノイズ被害のことを考えての活動自粛がまだとられている。
活動再開は、確か来年の春先ごろからの予定だったはず。けど、何か理由があって前倒しにするんだろうか?
と、考えたんだけど、どうやら
そして、その理由を話しだすゲンジュウロウさん……ではなく、彼の後ろからピョンと顔を出したリョーコさん。
「二課でクリスマスパーティーを開催しよっかって話になってねー。それで、何かダミーの予定を入れてからの当日サプライズも考えたんだけど、せっかくなら準備から楽しんでもらおうってことでこうして予定を開けてもらううことにしたの」
「なるほど、それでですか……。しかし、その時期は皆今以上に忙しくなるのでは……」
「暇と言えばウソになるが、そんなに余裕が無いほど切羽詰まっているわけじゃぁない。それに、忙しいからといって仕事を詰め込んでいてはむしろ効率は悪くなる。時には気を休ませる時間もあるべきだろう」
なるほど……どうやら、トッキブツ内でのクリスマスパーティーへのご招待のお話だったらしい。
その話を聞いていたカナデとツバサは、仕事などでは無い事に安心した様子で……いや、むしろパーティーにはノリ気なようで興味深そうに、そして期待に目を輝かせながらゲンジュウロウさんたちと話を続けた。
ワタシはといえば、カナデとツバサについていくつもりなのでクリスマスの予定に関してはふたりの意思におまかせすることに。というわけで、なんとなくで聞きつつも会話に参加せずに、そのなりゆきを見守るだけとなった。
………………。
…………。
……。
話をまとめると……今、話し合っている面々に加え、「ツヴァイウィング」のマネージャーも務めているシンジさん、アオイさんや
あとは、パーティー内でプレゼント交換を行うから、各自プレゼントをひとつ用意しておくように……とのことだ。そのプレゼントに関する制限は「高すぎるモノは禁止」だけとのこと。ワタシのような子供が参加しているのもあるだろうし、そもそも高いモノだと遠慮や自分のと比べた際に……と言う理由で設けられた制限なのだろう。
そして――――
「それと、今後のことも考えて、葵君には色々と経験してほしくてな。まずは見知った
――――そんなゲンジュウロウさんの言葉が聞こえ、ワタシは申し訳無さ以上に「今度のクリスマスパーティー、しっかりと楽しまないと!」というある種の使命感を覚えるのだった……。
手始めに、準備からだ。
そうだなぁ。ワタシもプレゼント交換に参加するわけだから、そのプレゼントの選択から全力で挑むべきだ。きっとパーティー当日までに、カナデとツバサのどちらかが……あるいはふたり揃ってワタシをプレゼント選びの買い物に誘って連れ出してくれることだろう。
だけど、それでいいんだろうか?
以前から月々お小遣いをもらっている。色々と使ってはいるもののある程度は貯まってるし余裕はある。……ここは、自分ひとりで考えて買いに行くなり、素材を買って自分の手で用意すべきではないだろうか?
そんな考えに至ったワタシは、買うにしろ手作りにしろとにかく「クリスマスのプレゼント交換に適したプレゼントとは何だろうか?」と考え……ハッと思いつく。
―――――――――
「いらっしゃい、よく来たねぇ」
「『俺のことを忘れたか!?』」*8
「? どうしたんだい、そんな興奮した様子で……」
「『さん、だ!』」*9
「ほう……なるほど。作りたいんだね、
「『シビれるぅ~!』」*10
「もちろん手を貸すさ。準備しておくよ、必要な機材と素材を。そうしたら、描こうか……君のイメージ通りに」
―――――――――
プレゼントの準備を終えて、ついに迎えたクリスマスパーティー当日。
ワタシは「これか?」「これもいいんじゃ…」「こっちもカワイイじゃんか!」とカナデとツバサに着せ替え人形にされた末に選ばれたサンタ風コスチュームを着て行ったんだけど……パッと見はただの大きめなサンタコートなのだが、その下はヘソ出しサンタ服というものだった。
「可愛いけれど、さすがに寒そうね」だとか「なんでか似合ってる気がする……けど、露出が多い気が……」とか言われた結果サンタコートを羽織っているのだが……実を言うと《
そんなワタシの格好はさておき、始まったクリスマスパーティー。特にハプニングが起きたりすることも無く、問題無く皆楽しそうに盛り上がって進行していった。
そして、プレゼント交換も問題無く…………
テーブルをグルッと囲んで並び、用意したプレゼントを隣へ隣へとグルグル回していって途中で止める。って
その方法の性質上、ひとりが自分以外のプレゼントになったのなら必然的に全員自分以外のプレゼントが手元にいくのだが――――
「これは……ほうっ、マグカップか! このあいだひとつ取っ手を折ってしまっていたからちょうどいいな」
「おっ、あたしのは弦十郎の旦那のところにいってたかぁ! 葵は……って、
「どうしたの、奏――あら? そのプレゼント……
――――そう、どういうわけか、ワタシの用意したプレゼントだけはワタシの手元へと来ていたのだ。
ツバサの発言に、それぞれ自分の手元のプレゼントを見ていた参加者たちの視線がワタシへと向き、同時に漏れた「え?」という声が重なった。予想外の出来事に驚いているようだ。
……まぁ、どうしてこうなったかっていう理由は
と、同じくその理由に気付いたらしいシンジさんが「そういえば…」とそのことについて喋りだす。
「思い返してみれば、葵さんの座っている位置がいつの間にか違う場所へと移っていますね……その影響でこの状況になったのでは……?」
そう。ワタシは最初プレゼント交換のためにテーブル周りに並んで座っていた時とは違う位置に移動してしまっていたのだ。それがワタシだけが自分の用意したプレゼントが手元に来た原因だ。
他所に準備しておいていたプレゼントを取りに行ってる人を待っている間、カナデやツバサ、アオイさんの膝の上を行ったり来たり……で、なんやかんやあってみんな集まってきた時には、ワタシの座った場所はズレており、目の前には最初に座った時に一旦テーブルの上に置いていた自分が用意したプレゼントとは別のプレゼントがあった……おそらく、他にも目の前に別のモノがあって「あれ?」と思った人が1,2人いるはずだが……おそらくはワタシと同じく「まあいっか」とプレゼント交換を始めてしまったんだろう。
で、グルッとプレゼントを回した結果、何の偶然かワタシだけ自分の手元に自分のプレゼントが……という結果になってしまったわけだ。
まぁ、冷静に考えればこれで良かった気がする。
というのも、あのプレゼントを考えている時のワタシは気負い過ぎ――というよりは変にハイテンションになってしまっていたらしく、今思えばプレゼントの選択が尖り過ぎていた気がしたのだ。
今の気持ちは、なんていうか……こう……「ワタシ以外が貰っても喜びそうにないし、これで良かったんじゃね?」といった気持ち。諦めとかそういうのじゃなくて、これが最もいい結果なんじゃないかと思えるくらいには、我ながら一般向けではないプレゼントチョイスだったと今更ながら反省している。
そんなわけで……気にせず、カナデやツバサが止めたり「私のと交換しよう」なんて言い出す前に、包装紙を開けて自分で用意したプレゼントを広げてしまう。
「
「ええっと……機械の、ゴリラ……かな? いやっ、なんで!?」
アオイさんとサクヤさんの言う通り、ワタシの用意したプレゼントは
……もしこの場に訓練された決闘者がこの場にいたのであれば、それが何なのか一目見て気付いたことだろう。
そう、描かれたその機械のゴリラは《スクラップ・コング》*11*12!
知っている人は知っている、遊戯王OCG界の芸人枠とでも言うべきモンスターカード。自虐芸や滑り芸……ではなく、
そもそも、「プレゼント交換」と聞いたワタシの頭の中に
魔法カード《プレゼント交換》*13*14と、そのイラスト内に描かれている《スクラップ・コング》のTシャツを思い出したのがいけなかった!!
例のカフェのマスターに頼んで、パソコンで描いた絵をアイロンで貼れるシートに印刷するために機材、道具一式をそろえて貰って自作した――絵はうまく描けなかったからマスターにも手伝ってもらったけど――Tシャツだけど、冷静に考えてみればこんな《スクラップ・コング》のTシャツが一般ウケするはずが無い!
……え? ワタシ?
ワタシは普通に嬉しいよ? このTシャツ。ヤケクソとかそんなの無しで、小躍りしてしまうくらいには嬉しい。
非決闘者にはシンプルに意味不明なデザインは別にワタシには問題無いし、遊戯王ネタが込み込みって点では、デュエルに飢えている
「『ふはははーー。スゴイぞーカッコいいぞー!! 』」*15
さっそく、広げて自身の身体に合わせてみる。
……うん、作ってた時からわかってたけど、ちびっ子ボディなワタシには少々大きいサイズだなぁ。でも、寒くない夏場とかの部屋着にはちょうどいいかもしれない。丈的にワタシが成長するまで、いっそのことTシャツじゃなくてワンピースのように着てしまってもいいかもしれない。
「うーん……なんだかすごく喜んでいるみたいだし、このままでいいんじゃないかしら~?」
「なんというか釈然としない部分もあるが、それもアリ、か。どちらにせよ、子供の葵君には別のプレゼントも用意しているしな」
「たしかに、嬉しそう……だな。「トリシューラプリン」の時といい、葵の好みのツボはイマイチわかんないなぁ……」
「そ、そうね。……ねぇ、奏。今回のコレはいいとしても、今のうちに――――」
「ああ、服の好みというかセンスは早いうちに矯正してたほうがいいよな? アレは……」
ふふんっ♪
なんだかんだで《
本当に、足りないものはデュエルくらいだなぁ~。
―――――――――
翌日。
カナデとツバサに挟まれて寝ていたワタシが目を覚ますと、その枕元には大小
ひとつ目は、
ふたつ目は、「ツヴァイウィング」の楽曲「逆光のフリューゲル」のサビのオルゴール。
一際大きな箱に入っていた3つ目は、立派なCDプレイヤー。
と、ついでにそのすぐそばに4つ目の小さな包み――近場のショッピングセンターに入っている洋服屋で使える商品券。
そして最後の5つ目は……千年パズルが描かれた黒いTシャツだった。
サンタクロース……いったい何者なんだ……っ!?
地味に存在する、明かされていない設定。
これをきっかけに、