我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

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大変お待たせしました!
お盆は休みだけど休みじゃ無い、「僕だ!」です。



放置していたTwitterを使って、更新予定や更新報告、その他シンフォギア諸々の呟きをちょこっとつぶやいていく予定です。
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そして今回、更新期間が空いた割には……短いです!だいたい、遊戯王成分が少ないせい。
原作主人公・立花響ちゃん視点で、原作の通りのような色々と違う部分が見え隠れしているような……そんなお話となっています。


原作・一期
2-1


リディアン音楽院、その高等部。

その校内にある食堂で、わたしは友達と一緒にお昼を食べていた。

 

 

「CD~CD~♪ 「ツヴァイウィング」CDの発売日~♪」

 

 

ゴハンの途中でもそんな言葉がついつい出てしまうくらい、今日のわたしはハイテンション!

 

 

「ツヴァイウィング」。天羽奏さんと風鳴翼さん、二人一組のアーティスト。人気は国内有数だっていうのは、もう言うまでも無いかな?

わたし、立花(たちばな)(ひびき)にとってイチオシのアーティストでもあるんだっ♪

 

 

2年前、「ツヴァイウィング」のライブ会場に偶然にも特異災害「ノイズ」が出現して、多数の死者・行方不明者がでた事件があった。それをきっかけに「ツヴァイウィング」は活動を休止してたんだけど……少し前からまたアーティストとしての活動を再開して、それからは休止前の勢いを取り戻して――ううん、それ以上の勢いで人気爆発中なんだよね!

 

 

 

 

「立花さんってば、今日は一段と賑やかですわね」

 

そんな言葉に反応して目を向けてみると、斜め前に座ってる寺島(てらしま)詩織(しおり)ちゃんが、なんていうか、こう……微笑ましそうにして、わたしのことを見てきてた。

 

「ビッキーが「ツヴァイウィング」のファンってことは知ってたけど、まさかここまでとはねぇ」

 

いつからか独特なあだ名でわたしを呼ぶようになってた安藤(あんどう)創世(くりよ)ちゃんも、ちょっとニヤニヤしながら見てきてる。……なんでだろ?

 

 

「もうっ響ってば、朝からこんな調子なんだから」

 

「だって発売日なんだよ!? 初回特典つきのやつなんて、凄くて凄くてそれはもう……売り切れ必至だよ!」

 

幼馴染の小日向(こひなた)未来(みく)が呆れた様子でわたしのことを見てくるけど……好きなんだから、仕方ないよね!

 

 

「うーん……響がリディアン(ここ)に進学してきた理由って、もしかして……いや、まさかね?」

 

板場(いたば)弓美(ゆみ)ちゃんが何だか濁して言ってる……けど、まあ大体内容はわかっちゃうし、その上で完全否定は出来ないよ! もちろん、ソレだけが理由なわけじゃないんだけど……。

 

 

そう。何を隠そう、わたしがこの春から通っているこの「リディアン音楽院」の高等部には「ツヴァイウィング」のひとり・翼さんが在籍してるんだ! ……アーティストのお仕事でいない時がけっこうあるらしいけど。

ちょっと前までは奏さんも「リディアン(ここ)」にいたっていうんだから、当時この学校に通ってた人たちが羨ましいよぉ。

 

でも、そういえば……

 

 

「翼さんのこと、この食堂で一回も見たこと無いんだよねぇ? アーティスト活動があるのは知ってるけど、こうも会えないのは……それだけ、忙しいってことかな?」

 

「確かに、言われてみれば……食堂(ここ)はどの学年も使うんだから、見かけるくらいしてもいいような気がするけど……?」

 

「翼さんは、お昼になると何処かへ行ってしまわれるとか。噂では他所にいる奏さんに会いに行っているのではないかと言われてましたわね」

 

わたしの疑問に頷いてくれた未来に続いて詩織ちゃんがそんなことを言った。

なるほど。打ち合わせとかがあるのかもしれないし、そうじゃなくてもお昼休みだけでも一緒にいるっていうのは有り得るかも? 雑誌の特集記事とかでも仲がすっごく良い感じだったし。

 

 

「噂と言えばこの学校、入学直前に亡くなっちゃった髪の長い女の子の幽霊が度々現れる話が……」

 

「学校に幽霊だなんて、そんなベタな……アニメじゃないんだから」

 

 

こんな感じに、お友達と一緒にお昼休みを賑やかに過ごした。

 

あー、でも、早く放課後にならないかなぁ~?

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、特典♪ はぁ、はぁ、CD♪ はぁ、はぁ、特典♪ はぁ、はぁ、CD♪」

 

学校が終わってすぐの放課後。同じ部屋に住んでる未来には先に帰ってもらって、わたしは「ツヴァイウィング」の新CDを買いにCD屋さんにむかってた。

 

初回特典付きのCDを求め、呼吸にちょっとした掛け声を入り混ぜながらわたしは歩道をひた駆ける! ……とは言っても、軽いジョギングくらいなんだけどね。

さぁ、この曲がり角を曲がったこの通りに、目的地であるCD屋さんが――

 

 

「はぁ、はぁ……ふぅ……。CD屋さんまだあと少し――……えっ?」

 

あちこちのガラスが割れている、曲がり角すぐにあるコンビニ。

黒い煤の塊が、あちらこちらに……そのうちのいくつかは、まだ五体(ヒトのカタチ)がわかる。

 

 

「これ、まさか……ノイズのっ!?」

 

間違い無い。

こんな状況を作りだせるのはノイズ以外には有り得ないんだから。

 

じゃあ、そのノイズたちはどこに?

 

ノイズは、人を炭素化させる時に自分(ノイズ)自身も炭素化するっていう――――ここで炭素分解された(亡くなった)人と同数のノイズしか出現してなかった? もしくは、詳しくは知らないけど一定時間で自壊するっていうから、それで……?

()()

ノイズは人間()()を狙うらしい。……もしも、ここの人たちを黒い煤の塊(こんなふう)にしてしまったノイズがまだいたとして、次の獲物を探してこの場から離れたのだとしたら? わたしが出遭(であ)わなかったのはただの偶然――ううん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!

 

 

 

「きゃあああああああああっ!」

 

 

 

「っ!?」

 

聞こえてきた悲鳴。その聞こえ方からして、場所はそんなに遠くないみたい。

そう判断する()()()()、わたしはもう走り出していた。

 

 

「さっきの声、確かこっちのほうから……あっ!」

 

「やあぁぁぁ……」

 

壁を背に、ノイズたちに迫られている女の子が。涙をにじませて今にも泣き出しちゃいそうな顔をしてるのが、遠目でもわかる。

 

けど、まだだ。

 

運の良いことにノイズたちとの距離がそこそこある。諦めるには、まだ早い!

 

「こっちに――ううん、今行くからね!」

 

一見したところだと怪我とかは無さそうだけど、実際はどうかはわからない。仮に本当に無かったとしても、状況が状況だけに、腰を抜かしちゃったりしてて満足に動けるとも限らない。それに、あの女の子がわたしの方に走ってくるよりも、わたしがあの子の方へと走った方が合流は絶対早い。ノイズとの距離は詰まってしまうかもしれないけど仕方のないことっ、なんとしてもあの子を助けるんだ!

 

「もう大丈夫! 走れる? さあ、お姉ちゃんの手を掴んでっ!」

 

「でも、ママが……」

 

全速力で駆け寄って声をかける。そうしたら、顔をあげた女の子がわたしに言ってきたのはそんな言葉だった。

 

聞いてすぐに理解(わかっ)た。ノイズが出現してパニックになり、みんながみんな避難シェルターへと向かって我先にと逃げ出す。その人の流れの中で、誰かと手を繋いでいたとしても――ましてやそれがこの子みたいな幼い子供だったら――もみくちゃになって、その手は簡単に離れてしまう。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はぐれちゃったんだね? ……わかった、逃げながら探そう! だから、ノイズが来る前に……っ!」

 

「う、うん!」

 

迫ってくるノイズ。

「もしかしたら、この子のお母さんは…」っていう、イヤな考えと不安な気持ちに「そんなはずない!」って言葉でフタをして、しっかりと……けど、痛くないように気を付けて女の子の手を握ってあげて走り出す。

必ず、この子をお母さんのもとへ連れて帰ってあげなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走る、走る、走る……。

 

ノイズとの距離は縮まらなかった。でも、一生懸命走ってるはずなのに広がりもしなくて、それどころかシェルター目指して曲がろうとした十字路や脇道の先からわたしたちを追って来てたのとは別のノイズたちがコッチに来てたりして、結果的に追いかけてくるノイズがドンドン増えていくばかりだった。……他に襲う獲物(ひと)がそばにいなかったのか、わたしたちに何かノイズに狙われるような理由があるのかな?

 

 

数を増やしたノイズたちから逃げているわたしの背中には、あの女の子がいる。()()()()()()()」ってやつ。それをしてわたしはノイズから走ってる。

 

 

そうなったのはノイズから逃げてる最中、女の子が足をもつれさせてこけてしまったから。

わたしが手を握ってあげてたから、血が出ちゃうような擦り傷ができるほど盛大にはこけなかったけど、それでも足が一回完全に止まってしまった。

 

 

「お、おねえちゃん……! もう、にげられないよ……」

 

こけた時、女の子はそんなことを言ってた。

息が苦しくて、体のあちこちが痛くなって……それでも、グッとこらえて走ってきた。だけど、一度転んで止まってしまった足は、もう思うように動かせなくて……それで、弱音を吐いちゃったんだ。

 

でも、だからって諦めない。見捨てたりなんて絶対しない!

 

「大丈夫……お姉ちゃんがおんぶしてあげるから! ――さあっ!」

 

 

 

――――というわけで、今は女の子をおんぶして走ってるわけだけど……どうしよう、()()()()()()()

 

もちろん女の子をおんぶしたことがじゃない。重さはそんなに気にならないし、それがあってもなくても息も足もいつかは限界がくるんだから、今更どうこうなるわけじゃない。それに、こうしてこの子を助けたことに後悔なんて全く無いんだから。

問題なのは、今走っている方向が避難シェルターから離れていく方向……海岸沿いの工業地帯に突入しちゃってることだ。……よくよく考えてみると、偶然なのかわかんないけど、シェルターの方へと行こうとするとその道にノイズが見えて結局は別方向に行かなきゃならなくなってばっかりで、これまでにまともに避難シェルターの方にいけてたことが無かったような……?

 

 

……あっ!?

 

 

そんなことを考えながら走ってたからか、それとも限界ギリギリでも鞭打って無理させてきた身体が悲鳴をあげたのか、今度はわたしがさっきの女の子みたいにこけてしまった。

 

「きゃあ!?」

 

わたしがこけちゃったから、背中からしがみついてた女の子も一緒になって倒れちゃうわけで……地べたとの間にはわたしがいるけど、勢いとか衝撃とかはあったのか、わたしから手が離れてちょっとずり落ちてしまったみたいだ。

でも、怪我とかはしてないみたいで――ついでに、おんぶされてる間に体力がいくらか回復してたのか――わたしの上から避けて立ち上がってくのが、背中の感覚でなんとなくわかった。

 

わたしも急いで立ち上がって、顔をあげる。

 

「い、いたた……だ、大丈夫? ごめんね、怪我はしてない?――っ!?」

 

顔をあげて見えたのは、方向からしてわたしたちを追って来てたのとは別のノイズたち。

それに気づいたわたしは、限界なんてとっくに超えてる身体をなんとか動かし、急いで立ち上がった。そして、ヤツラがいるのとは別方向への逃げ道を探して――――固まる。

 

気付かないうちに、工業地帯の一角で挟み撃ち――いや、袋小路に追い詰められてた。

後ろから追ってきてたノイズなんて、もうあんなところまで……!

 

 

こんなの……もう……

 

 

「……おねえちゃん。わたしたち……しんじゃうの……?」

 

 

わたしが漏らしちゃった不安を感じ取ってか、女の子がそんなことを言った。

こっちを見上げてくるその目には涙が溜まってた。その小さな体は震えてた――それだけじゃない。わたしの体も、疲労とは別の何かで震えてしまってた。

 

死ぬ……? 死んじゃう……? わたしたち、ここでノイズに――

 

 

 

 

 

 

―――――――――――!

 

 

――――生きるのを諦めるなっ!

 

 

 

 

「…………っ!!」

 

 

あの日、あの時――突然の出来事に逃げることすらできなかったわたしを、目の前でみんなが散って(しんで)いくのを見て呆然としてたわたしを、建物の崩壊に巻き込まれて足を怪我して満足に走れなかったわたしを――守ってくれた背中が、ノイズに果敢に戦う背中が、一瞬見えた気がした。

 

ノイズに震えて動けなかったわたしに力をくれた声が――痛みで、熱さで、冷たさで、意識も何もかも手放してしまいそうだったわたしを引き戻してくれた声が、聞こえてきたような気がした。

 

 

そうだ、わたしはあの人たちに救われたんだ。

絶望と言う名がふさわしい、あの惨劇の最中で。あの時、わたしを救ってくれたあの人は、とても優しくて、力強い歌を口ずさんていた……。

わたしは……わたしは、あの人のように凄い人間じゃない。ただただ他人の為に頑張ることしかできない、小さな小さな存在だ。だから、きっと出来ることなんて限られてる。

 

 

それでも、わたしがしなきゃいけない……――何か出来ることが、きっとあるはずだっ!

 

 

 

「お、おねえちゃ……」

 

 

そばで震える女の子を安心させる――――わたしを奮い立たせる言葉が、記憶(そこ)にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――かっとビングだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっと……びんぐ…?」

 

ポカンとした顔で聞き返してくる女の子に、わたしは目一杯の笑顔で頷いてみせる。

 

吹けば飛んでしまいそうなほど小柄で、ちょっとの衝撃で折れてしまいそうなほど細くて……わたしなんかよりも幼い青い髪の女の子が、勇ましくノイズへと跳びかかっていった時に言ってた謎の言葉。

意味なんて当然全然わからなかった。不安なんて無い、心配なんていらない、その力強い言葉は確かにわたしに何かをくれたんだ。

 

 

 

 

――――その歌は、わたしの口から自然と紡がれていた。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron……

 

 

 

 

 

光が、わたしの視界を塗りつぶして――――

 

 

 

 

―――――――――

 

 

特異災害対策機動部二課。通称「特機部二(とっきぶつ)

特異災害「ノイズ」を、櫻井理論を基に聖遺物の欠片で作られた「シンフォギア」を用いて駆逐する実働部隊である彼らの本部――リディアン音楽院の地下にある施設――の指令室は、複数個所に現れたノイズへの対応に追われて慌ただしい空気に包まれていた。

 

 

そんな中、新たなエネルギー反応を観測しそれの特定に着手したオペレーター2人が、その手を素早く動かしながら報告をしていく。

 

「反応、絞り込みました! 位置特定!」

 

「ノイズとは異なる高質量エネルギーを検知!」

 

「――まさかこれって、アウフヴァッヘン波形!?」

 

オペレーターの驚愕に染まった声に、指令室と通信先がにわかにザワつく。

 

 

『まさか、私たち以外のシンフォギア装者が……?』

 

 

静かに、しかし確かに困惑の色が見え隠れする声。予想外の出来事は、別の場所でノイズへの対応に追われていた風鳴翼にもだったようだ。

 

さらに、今観測された波形と過去に計測されたデータとが参照されていき……新たな事実が判明する。

 

 

 

「ガングニールだとっ!?」

 

 

 

特機部二司令官・風鳴弦十郎の声が、指令室内に響く。

 

 

『ガングニール!? なんだってあたしのと同じ聖遺物が……!?』

 

 

自身のシンフォギアと同じ聖遺物の反応を示したことに一番強い反応を見せたのは、翼と同じく別の場所でノイズと戦闘を行っていた天羽奏だった。

 

そして――――

 

 

 

 

『闇の扉が開かれた』*1

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

光に包まれた視界が晴れた時、わたしの格好は変なことになってた。

少しぴっちりとしたボディスーツになってて、その上から鎧?があちこちにくっついてて……でも、別段動きにくいとかそういうわけでもなく……?

 

「え……えええ? なんで!? わたし、どうなっちゃってるの!?」

 

この格好……全身が見えるわけじゃないけど、なんだか、あの時わたしを救ってくれた人の――奏さんの――格好に似てるような……?

それに、なんだろう? 胸の内側から、歌が浮かんでくる! 優しくて、それでいて力がこんなにも溢れて――

 

「おねえちゃん、かっこいい!」

 

さっきまで震えてた女の子が、目を輝かせてわたしのことを見てきてた。

そうだ……なんだかよくわからないけど、確かなのは、わたしがこの子を助けなきゃいけないってことだよねっ!

 

あの日の、奏さんや、()()()()()のように!!

*1
「初代遊戯王」闇遊戯。今現在続いているテレビ東京のアニメシリーズより前、東映にて放送されていたアニメ。「東映版遊戯王」とも呼ばれる。内容は基本的に原作「遊戯王」の初期のころのテイスト「遊戯の周囲に現れた悪人を様々な闇のゲームによってぶちのめす」といったもので、今現在のカードゲームアニメとしての遊戯王しか知らなかった場合、かなり驚いてしまうことだろう。また、闇遊戯もDMとは色々と違い、そのダークヒーロー系の悪人面やセリフ、悪人たちへの罰ゲームの内容等から「魔王様」などとも呼ばれていたり。今回のセリフは、作品内で闇のゲームで勝敗が決し敗者への罰ゲームが執行される際に使われるセリフである。




あの女の子とはいったい誰なんだ……?(節穴)

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