我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
ネタバレですが、今回は本当に一言も喋ってないぞ、それどころか……大丈夫か主人公!? もっと話に絡めよ! 名ばかり主人公になってしまうぞ!!
……ま、まあ、色々と初々しい響ちゃんと共に、今しか味わえない(かもしれない)静かなひとときを味わっておけばいいのだと思います。たぶん……。
『おらおらぁっ!』
『ここから先、鼠一匹通れると思わないで!』
通信越しに聞こえてくる声。
山林に現れ市街地へと向かおうと移動を開始したノイズに対し、駆けつけた装者たち――奏と翼が己のアームドギアである槍と刀を振るい、次々に
そんな中――――
『うわわああぁぁあぁ~!? ちょ、ちょっとタイムぅ! って、ひゃぁん!!』
――――3人目のシンフォギア装者として二課に所属することとなった響君は、数体のノイズに追いかけ回され、跳んだり転がったりして不格好ながら逃げ回っていた。
『お~い。無理だって思ったら、いつでもこっちに来ていいぞー? あたしらがソイツらもぶっ倒すからさ』
『奏がそうやって甘やかすから、成長しないのよ。……せっかく人里離れた場所に出現して周囲を気にせず余裕を持てるんだから、今回こそちゃんと戦ってみせなさい』
背中合わせに立って離れた場所で走り回っている響君に向かって声をかける奏と翼。いい具合にアメとムチになりそうなふたりそれぞれのスタンスだが……。
『そ、そうなんですけど……ううぅっ!
「1ヶ月経っても、大きな進展は無し……か」
装者たちの戦いを映し出した映像を前にした俺の一言に、指令室にはなんとも言えない空気が漂った。
……いや、決してここにいる連中が響君に対して失望したなどと言うことでは無い。……むしろ、あれくらいが
あの日、突如現れた新たなシンフォギア装者、立花響君。
日を改めて行われた、彼女への説明やメディカルチェックの結果の報告。それらを終えてから、俺は改めて彼女へ特異災害対策機動部二課での対ノイズ作戦行動への協力を申し出た。
その答えは――
――――わたしのチカラで誰かを助けることが出来るなら!
――そう。彼女は共に戦うことを選んでくれたのだ。
しかし、響君のノイズとの戦闘は上手くいっているとは言いがたいものだ。
こうしてノイズと相対するのは初めてでは無い。なのに逃げ回る……いや、
以前にも、ノイズに逃げ回るしかできないことがあり、帰還した際に前線から下がり戦わない道を選ぶことを勧めてみた事がある。しかし、彼女は頭を下げて「戦わせてください!」と頼み込んできた。その目には確かに強い意志が感じられた。
人命第一に考えれば、ノイズ相手に戦える人間は一人でも多い方がいいことはわかりきっている。故に、響君本人が「嫌だ」と言わない限り、力を貸して貰うことしか俺たちには選択肢は無い。だが……
「響君は他が為に己の危険も省みず一歩踏み出すことができる。それはある種の美徳であり尊ぶべき心ではある……だが、翼のように幼いころから戦闘訓練を受けてきたわけでもない彼女のような一般人が、戦場に出ることを恐れない……果たしてそれは正常なことなんだろうか?」
「もしくは2年前のアレに巻き込まれた結果、変わっちゃったとか?」
メディカルチェックの結果、響君がなぜ「ガングニール」のシンフォギアを纏えているのかという理由が判明すると共に、とある事実が浮き彫りとなった。
二年前の「ツヴァイウィング」のライブの最中起きた惨劇。
死者、行方不明者11,591人という多くの犠牲者が出た近年稀に見ぬノイズ災害。……いや、裏で操っていた何者かの存在が示唆される今、もはや「事件」と言うべきかもしれない。
響君がそのライブ会場にいた生き残りで、その際に砕け散ったカナデのシンフォギアの
しかし、「融合症例」が判明したのはつい先日。シンフォギアを纏ったのもこの前のが初めてだと言っていた。
そう、響君の今の
言い方は悪いが、その時精神的なリミッターがどこかが壊れてしまったか、性格そのもののどこかが歪んでしまったんだと考えられる。
そして、それが戦場に赴くことを望んでも、最後の一歩で引いてしまい逃げるほか無い状態になる原因にも……いや、いくら炭素化が防げるとは言っても、武器が――アームドギア無しでノイズと戦わなければならないという状態では、精神的に後向きになってしまうのも当然。
「その可能性は捨てきれない。だが、了子くん。そのことには極力触れないようにしてほしい。……特に、奏と翼の前ではな」
俺たちや他の大人たちの思惑等々あってのライブとその裏の聖遺物起動実験だったが、自分たちのライブで起こってしまった惨劇にふたりが何も感じないはずが無い。さらには誰かの心をこうも蝕む原因になったのではないかと考えれば、なおさらだ。
もちろん、
「それは別にいいけど……でも、たぶんもう気づいてると思うわよ?」
「仮にそうであっても、だ」
「わかったわ」
了子君が頷くのを確認してから改めて現場の映像へと目を向ける。
「しかし、どうしたものか……」
響君の心は前に進もうとしていても、戦闘技術と身体が追いつけていないのが実状。ただ、戦闘技術の習得や身体作りなどは、訓練を積んでいけばおのずと出来上がっていくもので時間の問題であると言える。
しかし、響君が抱えている一番の問題は、やはり先にも述べたようにシンフォギアでの戦闘に置いて
一応はシンフォギアの基礎性能を用いれば殴ったりするだけでも、ノイズを一方的に炭素化させることは可能だが……やはり武器の有無は戦う者への精神負担へと直結するのも事実だ。
そして、ソレとは別の懸念も……。
責任感が強ければ強いほど、上手く力が伸ばせず時間だけが過ぎて行けば行くほどプレッシャーに押しつぶされてしまいやすくなる。心が折れてしまえば、再び立ち上がることは……。
だからと言って、俺たちが何かヒントをくれてやれるわけでもないからな……。現状で、俺たちに出来ることはそれこそノイズ出現時のサポートや彼女の生活環境を極力整える程度のことだけだ。
……なんとも、もどかしいものだな。
「戦場のことは、先輩装者であるふたりに任せるしかない……か」
実際にノイズが出現した時もそうだ。
いくらガタイがデカかろうが、腕っぷしに自信があろうが、俺たち大人は無力だ。シンフォギアを纏うことの出来る――まだ子供である彼女たちに頼らざるを得ない。そうしなければ、俺たちは人っこ一人すら守り通すことができないのだから。しかし、それは心に少なからず傷を持つ彼女たちに戦うことを強いてしまっていることに他ならないのだ。
画面越しに見える、ノイズを全て排除し終えた現場。
肩を落とす響君と、その頭を軽く撫でて笑い慰めようとしている奏。そして、少し離れた位置で額に片手を当ててため息を吐いている翼。
三者三様の装者の姿を、俺はジッと見つめ……彼女たちの行く末が少しでも良いものになるよう尽力せねばと、改めて自分の胸の内で誓うのだった。
―――――――――
授業の全てが終り、夕暮れの赤くなりだす陽の光に照らされ始めた教室。
いつの間にかひとり残ってしまってたわたしは、力なく机に突っ伏した。
「つ、疲れたー……やっと終わったよぉ~」
ここ最近、学校・特訓・ノイズ退治と忙しいからなぁ……。
ノイズと戦うことのできる唯一の手段。了子さんの「櫻井理論」でつくりあげたっていうシンフォギアシステムによる装備「シンフォギア」。
それは、伝承や神話に出てくる物のカケラを中に入れたペンダントのような形で普段は持ち歩いてるらしくって、奏さんと翼さんにその現物を見せて貰ったりもした。
たしか、今の技術では作れない「せいいぶつ」って物を「トクテーシンプクのハドー」……つまりは歌で起動してその力をエネルギーに変換して鎧に再構成したのが「シンフォギア」ってことらしい。了子さんがそんな風に教えてくれた。
ただわたしの場合、2年前のライブでの一件で胸に刺さり、摘出できなかったシンフォギアのカケラがその役割の代わりとなっているとか。
まさか、そんなチカラがわたしの中で眠っていたなんて……。
それなら、もっと早くに目覚めてれば救えていた人が何人もいたんじゃないかな?
……ううん、今のわたしを見ればわかる。思ったように身体を動かせない、戦うこともできない、奏さん達はすぐに出せたっていう「アームドギア」を出せない……そんなので、誰かを救えていたかな……?
いや、二課に来るのが早まり訓練も早く受けられるようになってて、そうしたら今頃は――――
――――けど、そうなってたら、わたしの生活はどうなってたんだろう?
今よりも……それとも……?
「――き?」
「ひーびーきー?」
「ぅ、ふわぁ!?」
「み、未来っ!? いきなりなにさぁ?」
「いきなり何って、響が、放課後になってもボーっとしてるからどうかしたのかと思って……それで何回も呼びかけたんだけど、全然反応してくれないんだもん」
「ご、ごめん……」
まさかそんなに深く考えこんじゃってたとは。未来に悪いことしちゃったなーって思って、わたしは頭を下げる。
わたしの謝罪に未来は許すわけでも、怒るわけでもなく……わたしの顔をのぞき込んできた。
「響、疲れてるんじゃない? ただでさえ新しい生活が始まってそんなに経ってないのに、いつもの人助けだったり、「大事な用事があるから」って毎日のように出かけて行って……」
そう。実は最近、わたしは頻繁に未来とは別行動で余所へと出掛けてる。
まぁ、その行き先って言うのは二課なんだけどね?
奏さんや翼さんの予定を聞いて時間の有る時を確認して、シュミレーションルームで特訓をつけてもらえるようにお願いしたりして鍛えてる。ふたりともアーティストとしての仕事があって忙しいのに――特に奏さんはよく――付き合ってくれる。
わたしはまだまだ弱い。でも、少しでも早く強くなって――――
「って、ああっ!? もうこんな時間! 早くしないと……!!」
そうだった!!
今日も放課後に、奏さんに訓練をつけてくれるように頼んでたんだった!!
シンフォギアの戦闘において欠かせない「アームドギア」。使われている聖遺物や使用者の心情によって姿形を変える、対ノイズ戦闘の要になる武器のことだ。
奏さんと同じ「ガングニール」っていう聖遺物のシンフォギアなんだし、きっと似たような槍を出せてもおかしくないはずなんだけど……だから、そのイメージとか感覚を掴むために奏さんと一緒に訓練してもらえるように頼んでたんだ。
早くシンフォギアを使いこなせるようになって、皆の力になれるようにならないといけないんだから!
そうやって飛び起きたわたしの目に、不満そうな未来の顔が映った。
「また、大事な用事……?」
「……うん」
そんなわたしの答えに、未来は数秒の間を空けてからため息を吐いた。
「……あんまり遅くなっちゃダメだよ」
「わかった。それじゃあ――」
「あと……無茶はしないでね?」
未来の表情がさっきまでとは少し変わった。
ノイズと戦う際に必要な知識や戦闘技術を得るための基礎訓練。さっき言ったように、「アームドギア」を使えるようになるための個人的な特訓……それに加えて、ノイズが出現した時の緊急の出動。
それを「用事があるから」ってだけの嘘で隠し続けていれば、そりゃあ未来だって不満があるだろう……だけど、そんなわたしのことを心配をしてくれてる。
だからこそ、後ろめたさがより一層強くなっちゃう……。
でも――――
――――シンフォギアのこと、そしてあなたがその装者であることは、極力他人に話しちゃダメよ?
――――機密の保持以上に、人命を守らねばならないんだ。シンフォギアやその技術を目的に、君や君の周囲の人間の身柄が狙われかねない。そうなれば……。
考えたくはない。だけど、了子さんや司令が言おうとすることはわかってしまった。
だから、未来には嘘をつき続けることにした。未来を騙すことは心苦しいけど、そうすべきだと思ったんだ。
そう、未来には
「ごめん……行ってくるねっ」
―――――――――
「響……」
慌てた様子で教室を出ていった幼馴染の姿を見送っていたら、いつの間にか自分でも気付かないうちにため息を吐いてしまってた。
わかってる、響が何か隠し事をしていることは。
でも、聞けない。響だって聞かれたくないから、隠してるんだってことも私はわかってるんだから。
けど、だからと言って、このまま知らないままでいいなんて思ってなんてない。
本人が「趣味だ」って公言してる「人助け」で、何か危ないことに首をツッコんでるんじゃ無いだろうか?
もしくは、悪い人達の嘘にコロッと騙されて何かさせられてるとか……。
「やっぱり、響が帰ってきたらちゃんと聞いた方が……」
「未来ちゃんっ♪」
いろいろ考えてた私の後から、不意に声をかけられた。
「え……あ、あれ? 弓美ちゃん?」
聞き覚えのある声に振り返ってみれば、そこにはクラスメイトである
「どうして
「あー、うん。そのつもりだったんだけど……ちょっとね」
弓美ちゃんは明後日の方向を向きながら、どこかわざとらしく人差し指を自分のあごに当てる仕草をした。
「実は、他でもない未来ちゃんに用があったの。できれば響もいれば確認も取れて手っ取り早かったんだけど……まあ、あの様子だとねぇ。色々と難しそうだし、先に未来ちゃんだけでも、ね?」
「私と……響にも? どういうこと?」
「良いタイミングで良い情報掴んでくる、お助けキャラみたいな? ……あっ、でもその表現だと一周回ってゲーム的過ぎるかしら?」
「うん、弓美ちゃんがいつも通りだってことはわかったかな……」
「それほどでも……うん、褒められてないじゃん! まあ別にいいんだけど」
「いやぁ~」って照れるように頭をかく仕草をしかけながらもツッコミを入れる、いわゆる「ノリツッコミ」をして……それがまるで何も無かったかのように切り替える弓美ちゃん。
「それで、用って?」
「響となんだか上手くいってない感じでしょ? そのことで、さっき言ったようにちょっとお助けしようかなって思って。で、その前に、一旦未来ちゃんと話したかったわけ」
「……っ! もしかして、何か知ってるの!?」
「うんと、そこはね「知ってる」というか「予想通りなら」ってことになるんだけど……」
「教えて! 響はどこで何をしてるの!? 危ないこととか、悪いこととかさせられてたりは……!?」
「そういう心配はいらないと思う……けど、そこを話すのは、あたしでも無理なんだよね。話す人が響からあたしに、話す相手が未来ちゃんから仮に変わったとしてもさ。だから、響が未来ちゃんの事が嫌いになったとかそういうことはないんじゃないかしら?」
そんな心配はしてない……とは、言い切れないかも。心の奥底では、そんなふうに響がわたしのことをどう思っているのか、悪い風に思われているんじゃないかって気にしてたかもしれない。
……そう、私には
「あっ、でも響が脅されてるとかそういうのじゃないからそこのところは安心していいと思うよ。むしろ、あそこの人たちって基本気遣いの出来る人ばっかりだし……むしろ、過保護気味でこんなに頻繁になってるのかも?」
聞く限りでは、響の「大事な用事」っていうのはそう心配することじゃないらしい。ソレを聞いて安心できるかって聞かれたら、全部不安がぬぐいきれるわけじゃないし、やっぱり心配なのは心配だけど……ちょっとだけ、心に余裕ができた気がした。
でも……弓美ちゃんは、なんでそんなことを知ってるんだろう?
そんな私の疑問を余所に、弓美ちゃんはペラペラとお喋りを続ける。
「
「うんっ。……うん? あの子?」
「えっと、なんて言えばいいのかな? その筋の知り合い……って言うと、悪い人みたいに聞こえちゃうわね。あたしの恩人
話を通せる……でも、弓美ちゃんが「あの子」って言うって事は年下か少なくとも同年代の子だよね?
響の「大事な用事」っていうのは結局よくわかんないままだけど、そんな子供の言うことが偉い人にまで届くっぽい環境は、安心できるような、不安になるような……?
「あと、あの子はちょっとおかしなところもあって勘違いされがちだけど、中身は凄いお人好しだから……言うなれば、響の「類友」な幽霊さんかな?」
その「あの子」って「類は友を呼ぶ」そんな間柄の……つまりは響みたいな人助けが趣味みたいな人なのかな?
なんというか、弓美ちゃんと話せて色々と知れたような、むしろわかんないことが増えてしまったような、そんな気がしてきた。
「その子とは近々会うことになったから、こっちのことは一旦あたしに任せてちょーだい! それじゃ、また明日!」
そう言いながら手を振ってかけだして行ってしまった弓美ちゃん。
それにしても……
「幽霊……?」
幽霊といえば、このあいだ
まさか……ね?
「あの子」とはいったい誰のことだ?
それに、あの前回の歌ってるぽかったあの事にはノータッチなのか?
「『いずれわかるさ、いずれな』」
ドルベ有能、「僕だ!」無能。