我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

19 / 47
諸々の事情でXV最新話をまだ観てない「僕だ!」です!

話が、進まない!!


待たせたな、俺がキングだ!

太陽がお空のてっぺんあたりで輝いている――はずの――時間。まぁ、地下だからそれはわからないのだが、時計の針が指し示す時間は間違って無いはずだ。

 

そう、今、地下――特機部二(トッキブツ)の本部にワタシはいる。

本部のとある一室で、カナデとツバサと一緒に()()()()を囲んでいた。

 

空っぽになった()()……まあ、いわゆるお弁当である。学生がお昼に食べる一般的なお弁当としてはデカすぎるだろうが、こうして三人で食べるにはちょうどいいくらいの大きさだ。

 

 

「ったぁ~! 食った食った」

 

「もう、奏ったら……」

 

らしいと言えばらしいのだが、食後のお茶を一杯飲んだカナデが大きく息をついてからどっしりと背もたれに体重を預け、お腹をポンポンと軽く叩いた。

その様子に「はしたない」と言いたげにため息をついたツバサだけど、見ればわかるが呆れきっているというわけではなく、むしろ微笑ましそうにしている。ボロボロだったカナデを知っているために元気なその姿が嬉しいのか、はたまた……まぁ、二人揃って楽しそうだからなんだっていいか。

 

 

そんな二人を見ながらも、ワタシは手を動かす。

何と言うことは無い。ただ、空っぽになった重箱を重ねたり箸をまとめたりと片付けをしているだけだ。()()()()()()()()()片付けまでちゃんとしたい、そうワタシが思ったからこそのわがまま。これまでにカナデたちに「しなくていい」と言われても意地でもやり続けてきたことだ。おかげで今ではお弁当作りや片付けはワタシの仕事になった。

 

さて、この洗い物たちはウチに持って帰ってから――いや、まだ時間はあるし、後で本部内にある洗い場を借りて洗ってしまったほうが良いか。

なら、まとめるだけまとめて、ひとまず置いておくとしよう。

 

重箱をテーブルの端に置き、座り直してワタシの前あたりに置いておいたお茶の入った湯呑を手に取る。うん、いい感じに色の出ているお茶だ。

ツバサも、そしてカナデも追加でもう一杯注いでいたようで、また湯呑に口をつけ傾けていた。三人そろって食後のお茶タイムである。

 

「最近はあたしはほとんど見てるだけで作っちゃうようになったんだから、葵ってば本当にあっという間に料理が上手くなったよな」

 

「ええ、そうね。今日のはより一層美味しかった気がするわ……少し複雑ではあるのだけど」

 

ふたりに褒められて、嬉しい限りだ。

 

 

「『俺もいるぞ!』」*1

 

 

うん、ワタシのお口は通常営業である。

 

だが、ワタシが思うにカナデの料理の腕も初めのころ――正確にはワタシが出会ったころ――から随分と上手くなったと思う。それこそ、ワタシの作ったものがまだまだだと思えるくらいに。それに、ワタシは好きだぞ? カナデの作った料理。

 

あと、小さく呟いてるツバサは……まずはおにぎりから始めようか。

作っているのは見たこと無いが、おにぎり(それ)すらちゃんと作れそうにないんだよね、ツバサは……お米を炊くのはもちろんのこと、仮にご飯を用意したとしても米と米とがくっつき一纏まりになるほど握り込まれたり、塩加減を間違えてもの凄くしょっぱくなる未来が容易に想像できてしまう。流石に塩と砂糖とを間違えるなんていうベタなことはしないだろうとは思うが……とにかく、まずはそのレベルから始めよう?

 

 

「……さて、名残惜しいけれど、そろそろ教室に戻らないと」

 

「おぉ、もうこんな時間か。あたしも今日は緒川さん達と仕事のことで打ち合わせや下見があるからなぁ。んで、その後は学校終わった翼と合流して撮影……っかー、考えるだけで今から疲れちまいそうだ」

 

立ち上がるツバサ。続いてカナデも立ち上がり、大きく伸びをした。

 

 

「そういえば、葵の今日の予定は?」

 

 

「なら、サ店に行くぜ!!」*2

 

 

ツバサからの問いに答える、ワタシの言うこときかないお口。

その通りなのだが、ちょっと気が早い。

 

ラ・ジーン T8(例のカフェ)」に行く予定はあるが、それはカナデとツバサの二人が合流するのと時を同じくするだろう、リディアン学生の放課後である時間帯にだ。今からじゃあない。昼を食べたばかりで行ったりなどは流石にしないさ。

それまでは……いつも通り、本部でノンビリとしておくかな。

 

誤解を与えないためにも、一緒にカフェに行く約束をしている相手から来た連絡の文面の画面をケイタイに映してふたりへとさし出してみせる。

 

 

「なになに? 連絡相手は……板場(いたば)弓美(ゆみ)、か。ああ、こないだも一緒に遊びに行った()だっけ? 旦那も素性に問題無いって言ってたし、まぁ大丈夫か」

 

そう。カフェに一緒に行くのは板場(イタバ)弓美(ユミ)。ほどほどの長さの髪を両サイドちょっと上あたりで結んだ、無類のアニメ好きでそのためか口癖のように「アニメじゃないんだから~」やそれと類似した言葉を言う、やや小さ目な女の子だ。

 

 

――――――

 

 

初めて会ったのは……闇リョーコさんから、あのおつかいと言う名のテストに出され街中でノイズと追いかけっこをしたあの時……そう! あの時、曲がり角でぶつかって、それから一緒に逃げたちょっと年上っぽい女の子がユミだったのだ。

――今思えばあの時のノイズって、自然発生ではなくワタシへのテストのために闇リョーコさんが発生させたものだったんだろうな。

 

あの時は、二人揃ってシンジさんに回収されて逃げ終えた後、お礼を言われたりとちょっと話しただけで――ユミは機密保持のための同意とかその関係で、ワタシはカナデとツバサに確保され――すぐに別れ、互いに名前も知らないまま日常に戻ったのだが…………何の偶然か、後に街中で再会することとなったのだ。

 

確かアレは、おつかいの一件から約1年。ノイズによるライブ襲撃があってからだと……小刻みに思い起こすのも面倒なので、端的に言えば今から約8か月前だ。

ある時期からパッタリと例の追跡者の痕跡も、ワタシが視線を感じることも無くなったのと……あと、ゲンジュウロウさんを中心とした大人たちが何やら話し合った結果、色々と条件・制約ありではあるもののワタシ独りでの外出が認められるようになったのだ。流石のワタシも「大丈夫か?」と思いはしたが、正直に言って、カナデたちがいないと家か本部かで待機がほとんどだったワタシは制限のかかっていた生活が窮屈で退屈になってきていたので、なんだかんだで嬉しかった。

そうして週に1、2回、ひとり(時々シンジさんやエージェントが陰ながら同伴)で街中へ出歩くようになったのだが、その3回目に立ち寄った店――もともと嫌いではなかったがゲンジュウロウさんの影響もあってはまり気味なアニメ映画を求めて入ったレンタルビデオ店でたまたま会ったのだ。

 

ユミが先に「あっ!」と声を出してしまい、ワタシがそれで気付いた……といった感じだった。

まあ、例の機密保持の件で、ノイズに襲われた際のことやシンフォギアのこと、その他諸々二課のことは他人(ヒト)には話してはいけないことになっているので、その時のユミからしてみれば「これって普通に話しかけてもいいのかな……?」といった風だったんだろう。

ワタシからしてみれば、数少ない顔見知り、それも歳も比較的近い――比較対象の身近な人がカナデとツバサを除けばほぼ二十歳(ハタチ)以上なのが大きな理由だが――事もあって、会えたこと自体が嬉しくて「別に二課関連のことを話さなかったらOKでしょ」なノリでコッチから近づき話しかけたのだが――

 

 

「『やられたらやり返す! それが孤高なる鮫の流儀だ!』」*3

 

 

――と、時期的に既に《星遺物(せいいぶつ)―『星杯(せいはい)』》とついでに《星遺物(せいいぶつ)―『星鎧(せいがい)』》を起動&回収済みだったため、例の如くメイ言ぶっぱなしだったわけだが。

迷言をユミが真に受けたり、自己紹介さえままならなかったりと、()()()()()()()()()()()()()()()であったのだが、中々の混沌(カオス)な雰囲気となることに。まあ、最終的には「連絡用に」とカナデがちゃんと設定していてくれたワタシのケイタイの某連絡用アプリのプロフィール的な画面を見せることで、とりあえず最低限の自己紹介が出来たのだ。

 

それ以降、幾度となく交流を続けてきて、今では互いに友達だと思えるほどになった。

 

これほどまでの間柄になれたのはワタシから接触していったというのもあるだろうが、それ以上にユミがワタシのメイ言やアセンブラテキストなメールにも引かず、また折れずに真正面から向き合い続けてくれたからだろう。今では、メイ言に関しては以心伝心には程遠いものの、どういうことかワタシの想いと言葉とのズレの有無を瞬時に判断できるようになっており、彼女(ユミ)に限ってはワタシの言葉を間違ったように受け取られることは無くなっているのだ。

何故判断できるのかは「……なんとなく?」とのこと。変な間があったのは気にはなるが、彼女が現時点でのワタシの一番の理解者なのかもしれない。

 

……ついでにだが、再会した当時のユミはワタシのことを「頭のおかしな子」……ではなく「日本語が喋れなかったけど、サブカルチャーで独特な言葉ばかりおぼえてしまった残念な異国の美少女」という認識で見ていたらしい。

うーん、ある意味間違ってない気がしなくも無いなぁ。

 

 

――――――

 

 

と、まぁそんなこんなでユミと友達となったワタシ。共通の話題は、もっぱらアニメである。

 

 

そんなユミから先日「相談があるの、会えないかな?」と連絡があり都合をつけたというわけだ。

 

 

「……なるほど、約束をしていたのね。あのカフェに行くのはいいけど、お小遣いは使い過ぎないように。もちろん、夕食を食べれなくなるほど食べちゃダメよ? あとそれと――」

 

「まぁ、ツバサが言うほどキッチリカッチリしなくていいけど、何事もほどほどに、な? そんでもって、しっかりと楽しんできなよ」

 

ワタシの頭をワシャワシャと一通り撫でた後、「んじゃ、行くか」と声をかけてから、本部の外へと向かう為にエレベーターのある方へ共に歩き出すカナデとツバサ。

 

その後ろ姿を手を振りながら見送るワタシ。

さて、見送り終えたらさっそく洗い物を済ませるとするか。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「他が為に力を振るう、か……ん? 貴様、どうかしたか?」

 

用があって洗い終わった重箱を手に訪れた研究室(ラボ)。そこで声をかけてかきたのはこの部屋の主であるリョーコさん……いや、この感じは「闇リョーコさん」のほうだな。

 

どうかしたというか、預けていた「鍵杖」と普段それを入れてるバットケースを回収しに来ただけだ。

 

ここ1年ほどで判明したことだが、ワタシの「鍵杖」は「イヴちゃん(ワタシ)が意識する」もしくは「一定距離(はな)れる」ことでワタシの手元へと来るようになっているらしい。つまりだ、ワタシが頑張って「鍵杖」のことを忘れておき本部内にいれば研究所(ラボ)に置いておくこともできるのだ。

とは言ってもそれを理解しているのはワタシだけで、周りの人たちはいつトンでくか気が気じゃないとか。リョーコさんも預ける度に「時間との勝負」と言わんばかりに何かしらの作業に取り掛かるのだ。……今日はもう終わっているようだが。

 

「なんだ、荷物を取りに来ただけか。ほら、とっとと持って行け」

 

言われずとも、そうするつもりだ。

そもそも「鍵杖」だけであれば、別に研究所(ラボ)に直接くる必要は無かった。

ちょっと念じてしまえば勝手に持って行けるが「鍵杖(これ)」をそのまま持ち歩くのは流石に目立つので、バットケースが必要。それを回収するためにはわざわざ……あれ? それってつまり、「鍵杖」だけを渡してバットケースはワタシが持ってれば……いや、勝手に持って行くなとか、結局文句言われるか。

 

闇リョーコさんから受け取った「鍵杖」を研究室(ラボ)の脇に置かれていたバットケースの中にしまいこみ、いつものように斜めがけにして背負う。

 

さて、これで準備完了。洗い終えた重箱を一旦家に持って帰り、その後そのままカフェへとGO(ゴー)――

 

 

「待て」

 

 

――と、思ったら闇リョーコさんに引き止められた。

何用だろう?

 

「…………何故あの時、私を助けた? お前には私を恨む理由こそあれど、助ける理由は無かったはずだ」

 

()()()? いつの話だ……。

いやまあ、ワタシなんかがリョーコさんを助けることが出来る機会なんてそうそうないから悩む必要も無いんだけど……十中八九、「皆神山」での不意の《星遺物(せいいぶつ)―『星鎧(せいがい)』》の起動と山の一部の崩壊、それに巻き込まれ《星杯神楽(せいはいかぐら)イヴ》の力技で脱出したあの時だろう。あの時、ワタシはリョーコさんの手を真っ先に取った。

 

……今思えば、()()()()()()()()()。「リョーコさん(このひと)を助けなければいけない」そう思うに至った根底にあった()()()()()

彼女が「お前には私を恨む理由こそあれど」と言っていたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? アレなのか? 「お前が憎い! だからこそ、お前はワタシの手で倒す!!」みたいな感覚で助けたとでも言うのだろうか? ――ツンデレかな? ワタシは。

 

第一、その感情は今前にいる……いわゆる「闇リョーコさん」に対するものか? そもそも「リョーコさん」と「闇リョーコさん」は、ワタシは区別しているが本来どこからどこまでと分けられる存在なのだろうか?

 

 

そんな感じにウンウン悩んでいれば、ワタシの身勝手なお口が考えがまとまるよりも先に動きだした。

 

 

「『とんだロマンチストだな!』」*4

 

この状況でそのセリフは、一歩間違えれば闇リョーコさんを怒らせてしまうと思うんだけど……。何してくれてるんだ、ワタシ。

 

えっ? 「遊戯王のメイ言は大抵そんなのばっかり」?

……そうだね。うん、その通りだ。全部が全部そうだとは言わないが、多いのは確かだ。

正直に言うと、ワタシは『関係ねぇよ! 妹と一緒に地獄に逝け!!』*5*6をカナデの前で言ってしまわないかがずっと心配で心配で……。だって、そんなことになったら死ぬよ? 奏の手でも、自害でも、二重に死んじゃうよ?

 

 

と、目の前にいる闇リョーコさんは、表情からしてさほど反応を示したようには見えなかった。いつもの戯言だと流してくれたのかもしれない。

 

「……ふんっ、馬鹿らしい。聞くだけ無駄だったか。常日頃から周りに流され、選択する際も保身か逃げかしか考えん、お前はそういうヤツだったな」

 

鼻で笑う。その矛先はワタシへか、それとも何かあると思いその疑問を口にした自分自身へか……ワタシへか、どう考えても。

 

しかし、ワタシがどのようなヤツかなど自分自身では判断しかねる。

流されるか、保身か、逃げか。もしも、闇リョーコさんの言った通りなのだとすれば……少し寂しい気がする。

 

「……勘違いするなよ。目撃者や証拠隠滅の手間が省けたのは事実だが、貴様が何もせずとも自分の(チカラ)で何とでもできたのだからな。礼は言わんぞ」

 

――――ツンデレかな?

ワタシではなく、闇リョーコさんにツンデレ疑惑が……ううん、それっぽい言葉であっても、ツンデレでもなんでもない本心な気もする。たぶんソッチが正解だろう。

 

 

 

しかし……本当にどうしたんだろう?

事があったすぐ後にではなく、何故今になってリョーコさんは「皆神山」でのことを聞いてきたんだろう?

心の変化か、環境の変化か。はたまた、ただの気まぐれか……。

 

そんな疑問を持ちながら、ワタシは「鍵杖(けんじょう)」の入ったバットケースを背負い、ラボを後にするのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「いらっしゃい、よく来たねぇ」

 

 

少なくとも週に一回は来店するようになったカフェ「ラ・ジーン T8」。

アゴから口周りにかけて生えている整えられた銀色のお髭がチャーミングなマスターが、カウンターの奥からいつものセリフで出迎えてくる。

 

 

「『僕はナム、よろしくね!』」*7

 

「あぁ。待ち合わせの相手ならもう先に来ているよ」

 

ツッコミ不在。

 

……いやまぁ、カフェ(ここ)に限らず、いろんな場所でよくあることなのだが。

仕方ないね、突っ込んだところで返ってくる言葉も大抵が状況に合っていないメイ言(ツッコミどころだらけの言葉)なんだから、ツッコミ出したらキリが無いんだもの。

 

 

とまあ、そんなやりとりがあってから、適当なモノを注文して受け取ってから……指し示されたユミが待つ、カフェの店内でも一番奥にある席へと向かった。

 

ふむ。約束の時間通りだったはずだけれど、どうやらユミの方が先に来ていて待ちぼうけをくらわせてしまったようだ。何とも申し訳ない。

 

 

「『待たせたな、俺がキングだ!』」*8

 

 

「いやいや、あたしが終わってすぐに走ってきちゃっただけだから、気にしないでってば。それにしても、元気そうでなりよりね、葵っ♪」

 

うん、ワタシの引きが良かったのもあるだろうが、意思疎通に問題無し。

ユミも元気そうでなによりだ。

 

それにしても、放課後すぐに走ってきていたとは……そこまで楽しみにしていてくれたのであれば、ワタシは嬉しい。

 

 

「どうしよう、見栄張っちゃった……!」

 

 

……と思ったのだが、ユミの雰囲気が一気に沈んだ。

 

そう言えば、元々今日会うようになったのはユミから「相談がある」って言ったからだった。ということは、走ってきたのはそれだけ急いで何とかしたい問題だったからなのだろう。

……別に、落ち込んでなどいない。「ワタシに会うのがそんなに楽しみだったのか」などと、ちょっと勘違いしたのが恥ずかしかっただけである。

 

 

何はともあれ、まずはその相談とやらを聞くとしよう。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

ふん……ふん……フゥン

……なるほど。

 

 

周りのことも配慮して機密事項に関する個人名や専門用語を避けた分かり辛い会話ではあったが、聞いた話をまとめると――

 

凄く仲が良い友達ふたりがなんだか上手くいってないみたいで、聞いてみればどうにもその内の片割れが用事だとか何とか言って急にどこかへ消えてしまうって話。でもそんなことがありそうなのって対ノイズである二課しかないんじゃ? タイミングも聞いた限りじゃあノイズが発生した時と被ってることが多いし……。 (知り合い)もいるし何とかなるだろうから、じゃああたしが何とかしてあげる……と言ってしまった。

 

――的なことらしい。

 

 

確かに安請け合いだ。

話を聞いている途中で、そのいきなりいなくなる人物が、クラスメイトに「ビッキー」という名のあだ名をつけられたこと。またその外見的特徴。その上、今年リディアン音楽院に入ったということで、ワタシの知っている装者のヒビキちゃんであることは判ったのだが……もしも、二課関連ではなかったらどうするつもりだったのだろう?

 

また、ワタシに話をしたところで解決に直結するとは限らないのだから……うん、やっぱり安請け合いである。

ヒビキちゃんが忙しい理由も、ノイズ発生の緊急出動があるのは事実。だが、総合的な時間で見ればシンフォギアの扱いおよびその戦闘が上手くいかないが故のトレーニングが一番だ。そしてそれを望んでいるのは他でもないヒビキちゃん。ゲンジュウロウさん等の上の人間を動かして時間や緊急出動に制限をかけたところで、ヒビキちゃん自身の気持ちの問題をどうにかしないと精神的ストレスで結局は異常をきたすだろう。

 

 

 

 

「最初は「アニメだったらこういう時どうするんだっけ?」程度だったんだけど、内容はだいたい予想がついたし、ちょっとくらいだったらふたりの力になってあげられるかなーって感じで……。でも、未来ちゃんと話してたら雰囲気に酔ったというか、ノリにノッちゃって……本当にごめんね」

 

 

「ホントはちょっと相談に乗るくらいのつもりだったのに~」とやや落ち込み気味に言うユミ。

機密に関わることは本当に喋っていないようだけど、ほんとちょっとした拍子に喋っちゃうんじゃないかと思える境界を歩いてるな、ユミは。逆にいうと、テンションが上がってもそのラインで留まれるということなのかもしれないが。

 

そうだ。

シンフォギア関連の……特機部二(トッキブツ)のことは色々と機密事項だ。ノイズの出現現場等で装者のことを見たとしても二課のエージェントに一時的に拘束されて()()()()()()機密保持制約に同意させられるくらいには、大事なのだ。それがいくらシンフォギア装者に親しい人物であろうと当然ながら話すことはそう簡単には許されない。

だから、その「ミクチャン」って人の「響が何をしているのか」という不安を拭ってあげることは出来ない。むしろ、その子、知ってしまったほうが暴走するんじゃないだろうか、とワタシは懸念してしまっていたりもする。

 

じゃあ、ヒビキちゃんの私的な時間をどうにか守ることができるかと問われれば、先にも述べた通り、今のヒビキちゃんが抱えている問題をなんとかしないといけない。しかし、その解決策なんてポンと出てくるのであれば、ヒビキちゃんが悩むこと自体無かっただろう。

ついでに言えば、ゲンジュウロウさんあたりに説明して協力を仰げば、頷いてもらえさえすればいくらかは強制的にヒビキちゃんの活動時間をおさえられるだろう。だが、そもそもこのワタシのいうこときかないお口が交渉やら進言ができるかどうかは怪しい所である。厳しいだろうな、きっと。

 

 

だが、ユミが後悔している「ノリにノッちゃってちょっと見栄張っちゃった」というのは……あーうん、そういうのはわからんでもない。

だから、呆れて物も言えなくなり協力もしないなんてことは絶対無い。

 

ワタシもその昔、デュエルで熱くなってアニメみたいに「コイツで()()にダイレクトアタックだ!」って部活の先輩をお前呼びしちゃって、すぐハッとなって肝が冷えた時があったりしたんだから。

あっ、それで別に怒られたりはしなかったよ? アレだ、なんだかんだで先輩も結構なデュエル脳だったのだ。

 

 

ユミも何かとアニメ好きだし、現実とアニメを混同はしないが、ワタシとユミが知り合うきっかけとなったあの()()()――1年ちょっと前のおつかいに出た際にノイズに襲われ途中から一緒に逃げたあの出来事――もあってか「現実は時にアニメみたいな……ううん、アニメ以上にわけわかんないことになったりする。だからあたしも普段からアニメくらい頑張れてないといざって時に何もできないわね」って言うくらいには、アニメ以上に現実でも全力でいこうとしてる人である。

その結果が、今回の暴走気味空回りなわけだが……一概には否定できない。

 

まあ、それ抜きに考えても、友達であるユミのお願いは聞いてあげたいし、それが二課の仲間であるヒビキちゃんのためのことであるので、なおさら無下にする理由が無い。

しかし、なぁ……?

 

 

 

「……で、響のスケジュールとかそのあたりのこと、どうにかなりそう? やっぱり無理?」

 

 

無理寄りの無理……黒に近いグレーだろう。

 

一に、特機部二(トッキブツ)において、ワタシにはそんなに発言権は無い。良く言っても「協力者」。実際はほとんど「保護対象」のようなものなのだ。……まあ、人の良いゲンジュウロウさんは多少のワガママも聞いてくれるだろうし、イヴちゃん(ワタシ)のようなちびっ子の意見にも耳を傾けてくれるとは思うが、それだけだ。今のワタシにそれ以上のことは判断しかねる。

二に、根底にある問題を解決できない限り、ヒビキちゃんと「ミクチャン」なる人との関係改善が期待できない。その根底にある問題――ヒビキちゃんの戦闘能力の改善、「アームドギア」の発現、ついでにここ最近頻繁に現れるノイズ――も、現時点では具体的な解決案も無いので、どうしようもない状態だ。

 

故に、難しい。

それがワタシの答えだ。

 

 

「『権力ってヤツか…』」*9

 

 

「ああ、なるほど。確かに上の偉い人がいないこの場で結論は出せないよね。それに、響自身の気持ちの問題もあるし」

 

何故伝わった?

 

大体合ってる。

言ってる本人であるはずのワタシが言うのもおかしいだろうが、今のでその内容を理解するのは無理があるだろう。「権力」で「上の偉い人」を連想できたとしても「響自身の気持ち」あたりはどこから出てきたんだ!?

 

 

そんな驚異的な超理解を発揮したユミだが、ちょっと悩むような素振りをした後に改めてワタシへと顔を向け口を開いた。

 

 

「ここで結論を出せないっていうのはわかった。なら……葵ちゃんに響のことをお願いしてもいい? 今のところはその返事だけでいいわ。葵ちゃんにも都合があるのも、自由が利かない部分があるのも承知で言っちゃうけど……少しだけでも気に掛けてあげられない?」

 

それには断る理由も無い。

同じ特機部二(トッキブツ)に身を置く者同士。入った順番的には後輩であるヒビキちゃんのことを気に掛けてあげるのは当然のこと。さらに言えば「ミクチャン」とやらのことは知らないが、ヒビキちゃんが悩んでいる雰囲気だったしそのせいか最近は空元気感があったのはわかっててちょびっと心配だった。お願いを承諾するには十分すぎる理由が集まっている。

ユミに頼まれたとなれば、今までよりもより一層力を入れるというだけだ。

 

 

「風を掴め、Playmaker!!」*10*11

 

 

「うんっ! それだけの返事を貰えたら、あたしとしては十分、安心できるわ」

 

どうしてこれで安心できるんだ!?

 

もし、これで本当にワタシの意思が伝わっているのならば、もはやエスパー……いや、もうユミが決闘者(デュエリスト)なんじゃないかな?

 

 

 

しかし、ヒビキちゃんを気に掛けてあげるかぁ。

……さて、ワタシなんかに出来ることがあるだろうか?

 

 

 

 

 

「……あとはあたしが未来ちゃんを説得して落ち着かせるだけ、かぁ……」

 

……ん? どういうことだろう?

 

「あたしが放課後に例の事情知ってるっぽい知り合いに会いに行くって知ったとたん「私も一緒に行く! 直接会って話をしたいの!」って言い出して追いかけてきたんだから。流石に機密ギリギリの話に混ぜるわけにもいかないし仕方なかったけど……アニメじゃないんだから、塀を跳び越えたりして逃げるなんてことするわけ――――ないんだけど、やっちゃったんだよねぇ、あたし」

 

あっ、走って来た理由って「ミクチャン」に追いかけられたからだったのか。

……そうまでしないと逃げきれないって、どういうことさ。

 

 

「はぁ~……明日の学校、気が進まないわー……」

 

理由があったとはいえ、そんな逃走劇があった後だから当然か。

まっ、ワタシには関係の無い話だ。ワタシは諸々の事情で学校には通ってないし、そもそも今のイヴちゃんの年齢的にリディアンの高等部には入れないからね。

 

 

「『知らん、そんなことは俺の管轄外だ』」*12

 

 

「え~、ちょっとヒドくなーい?」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

その後は、時間の許す限りユミと駄弁った。

……ま、まあ、実際はちょっと遅めになっちゃって、カナデとツバサに叱られちゃったんだけどね?

 

 

 

*1
「遊戯王GX」の…………誰かのセリフだった気がする。みさ……?

*2
「遊戯王」闇遊戯。以前にサブタイトルにて使用、同話まえがきにて解説済み。闇遊戯が言い放ったナウでヤングなセリフ

*3
「漫画版遊戯王ZEXAL」神代凌牙(シャークさん)。相手モンスターの攻撃に対して発動した罠カード、その一連の効果によって相手モンスターを破壊する際に、何故かプレイヤーであるシャークが光の剣を持ち破壊する相手モンスターを叩き切った際のセリフ。なぜ剣? なぜプレイヤーが? 孤高なる鮫って? ……ツッコミどころあふれる鮫推しシャークさん。アオリ文の「スカッとするぜ!」や、次話で対戦相手・八雲が放つ「ふざけるな凌牙!!」も絡めたネタにされやすい

*4
「遊戯王ZEXAL」天城カイト。原文では「俺がミスだと?」が前に付く。対戦相手であるシャークが自身のデュエルに対し「プレイングミスだったな!」と言ってきたことへの返しのセリフである。その言葉通り、カイトは勝利し、ナンバーズ回収のためにシャークから魂を奪いフカヒレ(俗称)にしてしまう……のだが、実は持っている風に言っていただけでシャークはナンバーズカードを持っていなかったりとドジっ子扱いされたりもした。そして、ネット上で一番言われるのは「お前が言うな」や「ブーメラン」等である。そう、何を隠そう天城カイト自身が自身の行動が決闘者たちからロマンチスト判定を受けているのである。本当にロマンチストかどうかは……判断基準次第といったところ

*5
「漫画版遊戯王ARC-V」ユーリ。「人質に取られた病気の妹がいるから僕は絶対勝たなきゃいけないんだ!」的なことを涙ながらに言う少年・素良に対して、迷いを見せデュエルに集中できなくなる主人公・遊矢。そんな中、突如遊矢の中に眠る別人格・ユーリが交代し表に出てきた際に言い放ったセリフ。Vジャンプ掲載時に付けられていたアオリ文「関係無かった――!」を含め「漫画版ARC-V」有数のメイセリフである

*6
補足すると、ユーリは素良の「病気の妹が~」云々の言葉を嘘だと暴いて「関係ねぇよ!」と言っているのである。決してユーリが血も涙もない冷徹な人格と言うわけではない……ただ、ちょっと遊矢のことが好きすぎるだけである。――――が、物語の後半に素良の言葉が「嘘だけど、嘘じゃなかった」という少々面倒な状況が判明するのだが……それはまた別の話

*7
「遊戯王」マリク・イシュタール。闇遊戯こと名も無きファラオを追い詰めるための策として、彼の仲間である城之内たちの身柄を確保するために作戦であり、正体を隠す目的を含めた前段階として自ら城之内たちに近づき交友関係を結び懐に入り込む……のだが、その際の自己紹介がこのセリフ。色々とやらかしているマリクが爽やかだったり、あからさまに怪しいこともあってか某動画サイトのMADを中心にネタ扱いを受けている……が、実際ネタである。何故偽名が「ナム」なのか……。余談ではあるが、同じ偽名では後の「5D`s」の不動遊星の扱った偽名も「ナム」ほどではないものの一部で語り草となっている

*8
「遊戯王5D`s」ジャック。ジャック専用Dホイール「ホイール・オブ・フォーチュン」に乗り疾走しながらの登場、その際にキングの登場に湧き立つ観客へと向けたエンターテイィ↑メントなセリフである。『キングは一人、この俺だ!』と同様、序盤のジャックの代表的なセリフ……それ以降? 負けてしまい数年後までキングではなくなってしまうため使われる機会は無い。もしかして……→「元キング」

*9
「遊戯王5D`s」不動遊星。警察機関セキュリティのDホイーラー・牛尾が《スピードワールド》を「強制発動」させ強制的に主人公・遊星をライディングデュエルに引き込んだ際に、決闘者たちから「クズアレルギー」と言われたり、権力に反抗的な雰囲気のある尖っていた最初期のころの遊星が発したセリフ。本来Dホイーラー同士が互いに《スピードワールド》を発動しなければライディングデュエルは始まらないのだが、セキュリティは「強制発動」することができ、相手の《スピードワールド》を勝手に発動させることができるのだ。メリットとしては、《スピードワールド》の影響下ではデュエル中に溜まる「スピードカウンター」がDホイールの速度に影響を与えるため速度が制限され、犯罪者の逃走を阻害することが出来る他、ライディングデュエルに負けたデュエリストのDホイールは基本は強制的に止まってしまうため、確保にも役立つ

*10
「遊戯王VRAINS」Ai(アイ)。主人公・遊作の電脳世界内でのアバター「Playmaker(プレイメイカー)」がスキル「ストームアクセス」発動時にAIのAiが発するセリフ。「VRAINS」でのお約束、ある種の決め台詞だろうと思われる。事実、ネタ的な言葉を除けば「3つの物事」

*11
スキル「ストームアクセス」。「遊戯王VRAINS」の目玉とも言える「スピードデュエル」。デュエルフィールドを縮めたデュエルなのだが、それ以外にも特徴としてプレイヤーが扱える多種多様な「スキル」というものがあり、そのスキルの使いどころがデュエルの勝敗を左右する。……スキルに格差があるとか、そんなことは言ってはいけない。主にPlaymakerが使う「ストームアクセス」は、電脳世界に時折発生(後に意図的に発生)するデータの風「データストーム」から「サイバース族」の「リンクモンスター」を新たに手に入れるというもの。一発逆転の一手を手に入れる強力なモノ――――なのだが、決闘者たちからは基本的に「サイバースリンクガチャ」などとガチャ扱いをされている

*12
「知ら管」




関係無い(フラグ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。