我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
「『非力な私を許してくれ』」
……なんだか、毎回言ってるような気がする。
本当に無能。
本編ですが、伏線っぽいのをちょっと回収してたり、増やしてたりして謎が謎を呼んでいます。
原作を知らない人は何が変かわからないだろうので大丈夫かと思いますが、適合者の方々のほうが首をかしげるかも知れません。伏線回収・判明するまで少々お待ちください。
あと、イヴちゃんの存在や内心以外がシリアス気味で、シリアルタグをどうしようか迷い中……。
XV9話感想は……一部を除いて風鳴はどっかおかしいって話ですね。
リディアンにて、
あの後、ワタシはシンジさんにつれられるがままにノイズ発生地点から最も近くの市街地の周辺で、ヒビキちゃんの代打として避難誘導
そんな、ワタシにとって久々な外での二課の一員としての活動なのだが……こう言ってはなんだがヒマである。
民間人の避難誘導が比較的スムーズであるため、ここまでそこまで苦労していないのだ。……まあ、ヒマがある一番の理由は「
カナデとツバサが出現し近くで防衛線を築く形を取りながら殲滅しているので、まだ肉眼で見える距離にはノイズが見当たらない。そのため、人々がパニックを起こしたりすることも無く避難できているのも余裕がある要因の一つだろう。
だがコレ、ここ最近のノイズの出現が多発していて民間人がノイズに対する危機感を持っているが故で、見える範囲にいなくても「見当たらないから私は大丈夫」みたいな慢心をすることが無いからで、素直に喜べることではない気もする。
……まあ、とにかくワタシとしては良くか悪くか余裕があるのだ。
だって、誘導しようと下手に声をあげようとするものなら、このワタシのお口はほぼ間違い無くいらないことを言うだろう。
だから、シンジさんや他のエージェントの方、表向きの実働部隊「一課」のみなさんの真似をして腕を振って避難先を示したり、時に肩を貸したり、子供をおんぶしてあげたり……そういった身体を使って誘導しようにも、この
だから、ワタシはもっぱらシンジさんのそばに居て避難誘導されている――ように見せかけて避難している集団の中でも常に「ノイズの発生した方向」に一番近い位置につき、万が一の時、真っ先に間に入れるようにしておくことにしたのだ。
順調そのものである避難誘導。
耳元の機械で常に本部と連絡が取れるシンジさんが、そう特別慌てた様子も無い事からして
……余裕ができ、色々と考えを巡らせることができるようになって気付いたのだが……果たしてカナデとツバサはワタシがこうして避難誘導の活動をしていることを知っているのだろうか?
特にツバサは、戦闘訓練のような安全性がある程度確保できているものでも、周りを巻き込んで絶対に参加させてくれなかったほどワタシが戦うことを嫌がっていたくらいだ。万が一の時にしか戦う予定は無いとはいえ、あんまり良い顔しそうにない気がするんだよね……。
ま、まあ、その辺のことはワタシが出動することを許可してくれたゲンジュウロウさんが何かしらの手をすでに打っている……と思うことにしておこう。
どちらにせよ、カナデとツバサから「心配いらなかった」とか「出撃させて良かった」と思って貰えるような仕事ができなければ、帰ってからが面倒なことになると考えられる。ならば、一生懸命取り組むだけ――――
――ん?
私たちが避難誘導している方向とは別の、市街地の路地の先……突き当りのガードレールの向こう側にうっそうとした雑木林のようなモノが見えているのだが、その林の中へと
ああっ、やっぱり気のせいじゃなかった!
この
あの林の奥に家があるのだろうか? それとも家への近道とか?
どちらにせよ、今はノイズ発生中の緊急時。万が一のことも考えてシェルターへと避難してもらわねば。
シンジさんは……いつの間にか、ちょっと離れた所で何やら大きな荷物を持って来てしまっているおばあちゃんの対応に当たっている。他の人達も、
ここはワタシが、チョチョイっと行って声をかけて……それでも(言語能力的に)無理だろうから、最終手段で力ずくで引っ張って避難させればいいだろう。
《
思い立ったが吉日……かはわからないが、とにかく木々の隙間から後ろ姿がチラ見えするあの子を見失ってしまわないうちに、パッと行ってパパッと連れて来よう。
そう考え、ワタシは走り出した……。
―――――――――
「チッ! ノイズを追加しても出現させた場所の周囲どころか、避難している連中のほうにも居やがらねぇ、どうなってやがるんだ……!?」
いら立っている様子で何やらブツクサ言っている女の子。
「こんなんじゃあ、計画が……それ以前に、本当に
何、意味わかんないこと言ってるんだろう? ……ってことじゃないぞ? それは特大ブーメランだって流石のワタシもわかってる。
近づくにつれてわかったが、随分と
カナデたち装者の格好にも似ているような気もするが、アレ以上に上半身が鎧のようにゴテゴテしているというか……肩周りから前方へ向かって並んでいるっぽいピンク寄りの紫色の大きなトゲたち。それに、大きなトゲと同色で、左右に長く伸びているトゲ付き紐――
逆に下半身は……多少の模様や靴っぽい装甲がありはするが、質感に違いはあるがほとんど「白タイツ」っぽい何かというか。シンフォギアのピチピチボディスーツとはまたちょっと違って……何か貧弱そうである。
とはいえ、今のは追いかけているワタシから見た――後ろから見た――感想。正面などのデザインを見たらまた印象が変わるかもしれない。
いや、しかしあの鎧の女の子は本当に何者なのだろうか?
その格好ももちろんだが、それとは別に一つ気になるのが、先程彼女が言っていた「ノイズを追加しても発生させた場所の~」という言葉。
あの子が日本語が残念な子でない限り、彼女も闇リョーコさんと同じく「ノイズを発生させ操る能力」を持っていることになる。なぜそんなことが出来るのかは不明だが、倫理的に考えてそんなことをする人は一般社会的には正義の味方ではない、おそらくはワタシたちにとっては敵の立場の……あれ? でも、闇リョーコさんは
とにかく、民間人と一緒に避難させていい
「っ! 誰だ!?」
気付かれた!?
「いやっ誰だよ!?」
おっしゃる通りです。
しかし、こちらへと振り返ってきて見えた正面側も、やはりと言うべきか変わった見た目だな。
鼻上からおでこ辺りまでは半透明のバイザーのようなモノで隠れており、その上部や両サイドは、上半身の鎧部分と似た質感の装甲が展開されており、見方を変えれば、顔から上半分を覆い正体を隠すための仮面のようにも見えなくもない。
そして、背後からも確認できたように、肩から半円状に前方へと伸びる装甲からは大きな桃紫色のトゲが数本伸びていて、正面からだとその刺々しさがよく感じられる。
あと……鎧の胸部は形状が独特で、何故か脇あたりと下ち――もとい南半球が見えるようになってる。作った人の趣味だろうか?
「なんで、こんなところに子供が……森を抜けたあっちの方に避難してる奴らがいるからソッチに――」
「は、ハァッ!? こいつ、いきなり何言って――ドコ見てんだよ!」
そりゃあもちろん、あなたがチラ見せしてきているそのたわわな「
言っておくが、やましい気持ちなんて無い。むしろ、ある種のコンプレックスだ。
歳相応と言えばそうなのかもしれないが、今の
だがしかし、まだ
そのため、これでもかと見せつけられると何とも言えない気持ちになるのだ。
つまり、ワタシが悪いんじゃなくて、その「オッP」を見せつけるような鎧のデザインが……これ見よがしにそんな鎧を身に着けてくる目の前の女の子が悪いんだと思う。
「アタシが悪いって言いたいのか!?
「坊や」って、何の話だ? ワタシが言うのもなんだが、この子、何かおかしくないか?
あっ、そうでもないみたい。表情が変わった……自分が変なこと言ったってきっと気付けたんだろう。
ハッと目を見開いて――――
「
――――ゑ?
「『ゑ?』」*11
何言ってるんだ、この子は?
ん? 「
まさかとは思うが、「《クリボー》」を「くり
となると、この子はくりちゃん? もしくは、下の名前じゃなくて苗字が「クリハラ」とかであだ名で「くりちゃん」みたいな呼ばれかたをしてたとか……でも、それって「名前を知ってる」とか言えるほどのレベルじゃないよね? もしかして、この子は頭が残念なのだろうか? それとも頭に血が昇って思考回路が変になってるとか?
「待てよ? その長い髪、バットケース――テメェがあの葵か……! なるほど、どおりで……アイツが言ってたがタダモンじゃねぇな」
あの葵がどの葵かは知らないが、バットケースを常日頃から持ち歩いている女の子なんてそういないだろうから、きっとワタシで間違い無いだろう。
だって、しかたないもん。「鍵杖」をそのまま持ち歩くわけにはいかないし、一定距離離れたりちょっと意識するだけで手元に瞬間移動しちゃうんだから。だったら、やっぱり何かしらの
「アタシはお前なんぞに負けやしねぇ! アイツに……
ヒシヒシと感じられるプレッシャーからして、この鎧の子、《
―――先史文明期の巫女―――
―リーンカーネーション―――己の因子を持つ者の意識を喰らい蘇る―
―――アメリカ―――集められたフィーネの器―無表情―――
―無関心―――温もり―仲間―苦しみ―叫び声―家族―――――
―――白い歯―赤いベニ―――薄い笑―――愉悦―
―人―――茶色―誰―――眼鏡―痛い―白衣―――
―――フィーネは
―眠り―――完全聖遺物「ネフィリム」―――起動―
―――歌―閃光―炎上―――熱い―家族―焼ける―――歌―
衝撃。
地面が、木々が、葉たちの合間から覗く空が――ワタシの視界の中でグルングルンと回り回る。いや、ワタシが吹き飛ばされ、転がり回っているのか。
背中から木に――バットケースが半ば木にめり込みながら――ぶつかり止まった。あちこちが痛い……。だが、こんなところで寝る趣味は無い。体勢を整えながらめり込んだバットケースを掴み、それを引き抜き支えにしながらなんとか立とうとする。
「――? ―――――!」
鎧の女の子が、近づいてくるのが見える。何か言っているが……よくわからない…………。
……あぁそうだ、そうだった。あの時、崩れゆく「皆神山」内部でリョーコさんに感じた感情は――――
こちらを睨み歯を食いしばっている鎧の女の子が、桃紫の茨を握った右手を振るうのが見えた。
―――――――――
今わたしがいるのは、ノイズが出現したらしい場所からも、その周囲の避難区域からも離れた場所。
二課の人たちが戦っているんだろう戦闘音っぽい音が、時折凄く遠くのほうからギリギリ聞こえる気がする程度だ。
住宅地から離れた自然公園のような場所。
このあたりには人工の光が少なくて、夜になると道のりは暗いけどその分邪魔な光が少なくて空の星が良くハッキリと見えるスポット――って、ここに来るまでの道中に未来が教えてくれた。きっと、今日こうして流れ星を見に行くって決めた時から、良い場所が無いか探して調べてくれたんだと思う。
その情報通りなんだろう。確かに部屋の窓から見る夜空とは星の輝きが違うように思える。
雲がところどころにあるけど、その雲の影がわかるくらいには月と星の光があたりを照らしている。それだけ輝いてるってことは十分に天体観測
なのに――
「響ったら、心ここにあらずって感じね」
「うええっ!? そんなこと――」
「私には言わなくていいよ。嘘も、本当のことも」
「えっ?」
どういうことなのかわたしが聞くよりも先に、ビニールシートを敷いた芝生でわたしの隣に腰を降ろしていた未来がわたしの右手を左手でとり――手を繋いだ。
「対抗手段、そんな話はテレビでもネットでも見かけない。被害も出続けてる……あったとしても、難しかったり少なかったりすんじゃないかな? そんなモノの存在を公表はいろんな意味で難しいだろうね。……それが理由なんじゃないかって、私が勝手に思っておくから」
え? あ、あれ? わたしがノイズと戦ってることを……それに、シンフォギアのことを知って――――んん?
よくよく思い返してみると、「シンフォギア」はもちろん、「ノイズ」とも一言も言ってない――二課やシンフォギアのことは機密だから未来は意識して言わないようにしてる? けど、わたしがそうだったように、聞く人が聞けばすぐにわかるような内容になってる気がする。
「響は……だから――ううん、私の知ってるままの響なら「自分と同じような思いをする人が一人でも少なくなるように」って人助けをするって……戦うってわかってる」
いやいや、だからなんで未来がそのことを知ってるの!?
だって、今日の夕方、リディアンにいたころはまだ知らなかったはずだし…………ああっ!!
そうだ! 葵ちゃんに色々言われた時にわたしってば「ワタシもノイズから誰かを――みんなを救いたいんだっ!!」とか「そのためのチカラをわたしは持ってるんだよねっ!」 って未来のいる前で言っちゃてた!?
「大丈夫、大丈夫」って言ってたけど、実はそこそこ危ないことしてたって未来にしられちゃってた!? ……あれ? でも、未来が今話してることからしてそこはセーフなのかな?
あっでも、風鳴司令や了子さんに、未来
未来は「勝手に思っておくから」とかちょっと変な言い回しをして聞かなかったことにしようとしてくれてるけど……だけど、こういうのはちゃんと伝えて謝らないといけないよね?
と、そんなことを考えてたわたしの手を、未来がギュッと握った。
「たしかに、響には足りないモノがたくさんあったのかもしれない。でもね、響の「誰かを助けたい」って気持ちは間違ってなんかない……これまで響のおかげで救われた人たちが――その命が間違いだなんてことは、誰にも言えないんだもん。だからそれを疑ったりしなくていいんだよ」
未来……。
「えーっと、もしかしてわたしが何を考えてたか――」
「わかってるよ? 上の空だった理由……葵ちゃんに言われたことでしょ?」
「あはははっ、未来は凄いなぁ」
「なんていったって、響の幼馴染なんだから」
そう言って微笑む未来に「かなわないなぁ」って思っちゃいながら、観念して今のわたしの本心を吐き出してしまうことにした。
「わたしを休ませるための演技だったみたいだけど……それでも、葵ちゃんの言葉は確かにわたしに突き刺さったんだ。弱い意志で、半端な気持ちで、その上自分の中の理由に押し潰されてて……それを否定したくっても、できなかった」
葵ちゃんのあの気迫。わたしよりも小さくて全然年下なはずなのに、その存在感に気圧された……って言うのもあったけど、その言葉にわたしは言い返せなくなってしまったんだ。
「助けようとしてたはずなのにいつも奏さんや翼さんに助けられて。今度こそちゃんと戦おうと思ったはずがずっと逃げてばっかり。みんながサポートしてくれて、訓練だって時間を作って親身に教えてくれてたのに、わたしは全然成長できなくて足引っ張ってた……その罪悪感がいつの間にかわたしの中でプレッシャーになってた」
いっこうに発現できない「アームドギア」。それもあって、戦うことは本当にままならなかった。それは沢山訓練を積んできた今でも変わらない。きっと、今ノイズの前に立っても逃げ回ることが精一杯だろう。
でも――――
「でも、もう少し――――ううん、もっと頑張れる。わたしは未熟で、他の人に迷惑だってかけちゃう。でも……誰かを皆をノイズから救うことは間違いなんかじゃない! 今できないからって諦めることが――今だけじゃなくて
どこからどこまでが演技だったかはわからない。だから、もしかしたらあの言葉は葵ちゃんの本心……わたしへの素直な感想だったかもしれない。
だから、だからこそ、伝えないと。
わたしはまだ頑張れる。奏さんたちみたいにノイズからみんなを守ることを諦めないんだって!
「その意気だよ、響。私には、それこそそばに居てあげることくらいしか出来ないけど……あっ、葵ちゃんに伝えに行く時、私もついていこっか?」
「えー……うーん? ど、どうしよう?」
そばにいてほしいっていうのもあるけど、未来がわたしのポカのせいで色々知っちゃってることを謝ったり、万が一の事を考えて未来の身を守る方法が無いかとか風鳴司令に相談もしてみたい……だから、葵ちゃんに会ってからそのまま二課に未来を紹介するっていうのも、こうなってしまった以上ありなのかもしれないよね。
「あっ!」
突然、未来が出した声にちょっとビックリしてしまう。
いったい何が――
「流れ星っ!」
「ええっ!? どこ? どこどこ!?」
未来が指差す先の夜空へと視線を移す。
ああっ、もう消えてしまったみたい。でも――――
「「わぁ…………!」」
――――未来が見たのとは別の新たな流れ星が走っていった。
ひとつふたつじゃない。時に連続で、時に数秒の間をあけて……次から次へと、夜空で流れ星が輝く。
ふたりで見上げる夜空をゆく、いくつもの流れ星。
その握った手に未来の――わたしの陽だまりの温もりを感じながら、輝く星たちを見る。
暗い闇の中を確かに光る星の輝かしさが、わたしたちの
どれだけの時間――短かったような、長かったような――流れ星に見入っていると、ふっとあたりが薄暗くなった。
「あっ」
「月が隠れちゃったね」
見れば、一塊の雲がちょうど夜を照らしていた月に被ってしまってた。
でも、雲で隠れたのは月の周りだけ。流れ星は、より暗くなったことでよく見えるようになったり――――
「って、あれ? 流れ星も終わっちゃった!?」
「偶然じゃないかな? 流星群ってその時々によるらしいけど、何回かに分かれて流れたりするらしいし……むしろ、さっきみたいに一気に沢山流れるほうが珍しいらしいよ?」
「イメージの問題なのかな? ……どっちにしても、さっきのが見れたのはラッキーだったんだね!」
「誰かの日頃の行いのおかげかも。それじゃあ、また流れないかもう少し待ってみよう?」
微笑みながらの未来の提案に「うんっ!」と頷き返す。
そうして再び一緒に空を見上げる――
月が隠れた薄暗闇の中、不意に、見上げているわたしたちの前を
「「……!?」」
その影が通り過ぎたのとほぼ当時に、わたしの
触れたそれはまるで雨みたいだったんだけど……あの影は、雲にしてはいくら何でも速すぎるしそんな遠くのもののようには思えなかった。そもそも、その影は私たちの上を通り過ぎた後、
わたしは反射的に立ち上がって、その影と未来との間に割り込んだ。
「離れないで!」
「響っ、い、今のって、もしかして……!?」
「わかんない。けど――」
――何かいる。
わたしと一緒でいつの間にか立ち上がってて、背後で震え気味で声をかけてくる未来。その未来を守るためにも、わたしは考える。
影は、野生動物なのか……はたまた、ノイズなのか。
距離は、10メートルくらい。もし跳びかかって来たら、わたしは対応できるだろうか? 万が一を考えて、シンフォギアを纏っていたほうがいいかもしれない。
考えがまとまりきって動き出そうとしたその時、雲に隠れていた月が徐々に顔を覗かせてきたみたいで、その雲が落としていた影による暗闇が段々と引いていきだした。
未だに動かない影にも、徐々に月明かりが当たってきて、その姿が――――えっ
「あおい、ちゃん……!?」
少し前に会ったばかりの、小さいながらに凄みのある青く長い髪が綺麗な女の子。
その髪は乱れ、土や泥、葉っぱや折れた枝なんかが付いてしまってて……。
夕方着ていたのと同じ服は所々が斬られてたり、破れてたり……そこから見える素肌の体のあちこちに内出血をしたような打撲の痕。それだけじゃなくて腕や顔に擦り傷、切り傷……他にも何かが刺さったような怪我まで……!? 赤い、赤い血が溢れ
「あぁ、ああっ……!!」
「いやぁあああぁあぁぁーーーーッ!!」
混乱、わからなくなりそう。
でも、未来の悲鳴が寸前のところでわたしを踏みとどまらせた。
葵ちゃんを助ける。未来を守る。
病院? 二課の司令たちに連絡?
それもそうだけど、葵ちゃんの安否確認と、安全の確保だ。
駆け寄ってしゃがみ込み、断片的な知識で息と脈を確認する。
……うん、まだ生きてる! 応急処置を、いや、その前に連絡を――
ふと、固まる。
葵ちゃんは何かと戦って傷ついたんだろう。それは間違い無い。
でも、
けど、もしかしたらノイズ以外と? そんな、
「チッ、こんなところにまだ人が……ずいぶん呑気なヤツもいるもんだな。いや、アタシらがいつの間にか区域外に出ちまってたのか」
「っ!?」
声が聞こえてきたのは後ろのほう、影が――葵ちゃんが飛んできた方向から。
振り向くと、そこにはたぶんわたしとそう歳の変わらなそうな女の子が。わたしたちがここに来るために歩いた道とは違う、道の無い自然公園の森のほうから白い何かを着てコッチへ歩いてきてた。
「んなこと、どうでもいいか。お前ら、怪我したくなけりゃ家に帰りな。巻き込まれても知らねぇからな」
そう言って着ている鎧から伸びるピンク色のトゲトゲしたムチを半ばから持ち、風切音をさせながらクルクルと軽く振るう女の子。
「なんで……なんで葵ちゃんをこんな目に! 葵ちゃんがあなたに何かしたの!?」
「はぁ、知り合いだったのか? 別に戦う理由なんて、わざわざ教えてやる必要はねぇだろ?」
「そんなことないよっ! 二人の間で何かあったとしても……こんな怪我させなくても、何か誤解が、すれ違いがあっただけかもしれないじゃない!ノイズじゃない、わたしたちは人間なんだ! ちゃんと話し合えば分かり合えるはずだよ!?」
「オイオイ、戦場でなに生ぬるいこと言ってやがる……ん? その顔よく見てみりゃぁ
っ!? なんでわたしが「ガングニール」の融合症例だってことを知って……!?
いや、それより今は、この子をなんとか止めないと!
「なんで……こんなことするのっ!?」
「さっきから、何度も何度も……邪魔だったからっつーものあるけど、ただの暇潰しさ。攫うターゲットのお前がどこにもいなかったから、代わりに完全聖遺物を持ってるっていうそいつを叩き潰してたんだよ」
「わたしの……代わりに……!?」
葵ちゃんがこんなボロボロになったのは、わたしのせい……?
痛めつけられて、血だらけになって、息も絶え絶えになってるのは……わたしが、わたしがっ!!
ううんっ、後悔するのは後でいい! 今は、
そして、わたしが助かる方法も! そうじゃなきゃ――――!!
だったら……どうする!?
わたしは、いちおう持ち歩いていた通信機を取り出してそれを未来へと投げ渡す。
「えっ、これって……」
「未来っ! 葵ちゃんを連れて離れて、
「でもっ!?」
「わかんないことだらけだと思うけど、お願い! わたしは……この子に集中しなきゃいけないからっ!!」
「嫌! また響を置いて逃げるなんて、わたしには――」
「
「っ!!」
わたしが守りたいもの――未来を守る。
だけど、それだけじゃなくて、わたしも無事に帰れなくちゃならない。だって、未来と約束したんだもん。わたしの「ただいま」に未来が「おかえり」って返す……それだけの、だけど大切な約束。
未来が葵ちゃんの腕をとって、肩を貸すようにして歩き出すのを確認してから、わたしは改めて未来たちと謎の女の子との間に立ち、相手を見据える。
そして……シンフォギアを纏うために、歌をくちずさむ。
「Balwisyall Nescell gungnir tron……」
「へぇ~ヤル気かよ、融合症例?」
女の子は隠れていないその口元に笑みを浮かべてる。
……「アームドギア」が無い、持つ物のない手を一応はそれっぽく構えては見るが、ちょっとでも気を抜けば今にも震えだしてしまいそうなこの身体。もちろん、ノイズでもない誰かを倒す覚悟なんてできてるわけがない。
だけど、わたしは立ち向かう。
勝つことも、戦うこともできないわたし……だけど、
そんな危険をおかしてでも……わたしには、守りたいものがあるんだっ!!
「お前に、コレを受けきれるとは思えねぇけどなっ!」
そう言って女の子は、着ている鎧から伸びてるピンク色のトゲトゲのムチを叩き付けるように――ではなく、まるで鋭く尖った先端を突き刺してくるかのように、真っ直ぐ勢い良く伸ばした。
――きたっ!!
あの子の言う通り、正面から受け止めるなんて出来ない。
けど、僅かにでも身体をズラしてから横から力を加えれば……シンフォギア腕部の装甲を活かして何とか耐えつつ
わたしにギリギリ当たらない……狙いが外れた? それともワザと当てないように? 本当は戦いたくないとか……。
違う、これは――――
「避けて、未来ーーーーっ!!」
振り返りながら力の限り叫ぶわたしの視界には、世界はまるでスローモーションのように見えた。
葵ちゃんに肩を貸しながら歩いて行ってた未来の顔が振り向き……目を見開いた。きっとまっすぐ迫ってくるトゲのムチが見えたんだ。
とっさに身体を捻って避けつつ倒れ込んでしまおうとした未来だったけど、それよりも早く女の子の振るったムチが叩き込まれる。
2メートルくらい地面を転がる未来――――それだけでまだマシだったんだ。
そう、ムチを叩きつけられたのは葵ちゃん。未来は肩を貸していたために半ば引っ張られるような形で倒れてしまったのだ。
今すぐ駆け寄りたい。でも、それはできない。
この女の子を止められるのは、この場にわたししかいないんだから。だから――――衝動のままに、女の子に跳びかかって……両腕を捕まえてから勢いのまま地面へと押し倒す。
「なんで……! わたしが狙いだったんじゃ……!?」
「そうさ。お前が今回のターゲットだ。けど、それ以上にあいつが邪魔なんだ、アタシを舐め腐ったあいつを叩き潰さねぇと気が済まねぇんだ、よっと!!」
「ぐぅ!?」
わたしの下にいた女の子が脚を跳ね上げてきて、わたしは蹴り上げられ数メートル飛ばされてしまう。
体勢を立て直したわたしが目にしたのは、一足先に立ち上がってたんだろう女の子が、
「それに、お前程度を捕らえるのなんて楽過ぎんだよ!
かかげられた何かが光を放って、その光から
光の中から現れた異形の存在。
見たこと無い形だけど、まさかこれって……!
「そんな!?
まるでフラミンゴとか首の長い鳥の首から上だけのものに短い足がついたかのようなフォルム。
女の子がノイズを操った事への衝撃と、初めて見るタイプのノイズに驚いて硬直してしまっていたその隙に、ノイズのくちばしのような部位から
「うわぁ!? ……な、なにコレ!? 取れないし……うご、けないぃ……!?」
ネバネバしながらも強度のあるその「トリモチ」みたいな白いソレは、わたしと地面、そしてノイズのくちばしとを繋げる形で固定されてしまった。
あの女の子が言っていたように、わたしはいとも簡単に捕らえられてしまったのだ。
「フンッ、そこでおとなしく指咥えてな」
「未来っ、葵ちゃん! 逃げて!!」
「誰が逃がすかよっ!」
なんとかまた葵ちゃんを支えて歩き出そうとしていた未来だったけど、そこに向かってまたムチの一撃が叩き込まれた。
聞こえてきた音は、さっきとは違って、堅いもの同士がぶつかるような音だった。
何故なら……
「逃げてばっかりだったが、ようやく戦う気になったかよ! 随分とスロースターターだな、テメェは」
「『一見正しいように見えた攻撃……しかし、それは大いなる間違い!!』」*12
「そうか、よぉっ!!」
その言葉を皮切りに、葵ちゃんと女の子の戦いが始まってしまった。
「やめてーっ!!」
止めようにも、言葉だけじゃあ止まらない。
動こうにも、拘束されてるから腕をちょっと動かすくらいしかできなくて、どうにも……いや、「アームドギア」があればあるいは……!?
そう、せめてそこそこのリーチのある武器が手にあれば、拘束しているノイズに攻撃が届く! そうなればノイズは倒せるし、結果拘束も解けるはず!
出てきて!!
そう念じて手を開いたり握ったりする……けど、ウンともスンとも言わなかった。
「どうしてっ! どうして出てこないの、わたしの「アームドギア」!? 出て来いよぉ!!」
出ろっ! 出ろっ!! 出ろ、出ろ、出ろ、出ろぉッ!!
今出なくて……戦えなくって、守れなくってどうするって言うんだ! むしろ、
わたしがこうしている間にも、葵ちゃんは一人で女の子と戦ってた。
いや、あれは戦いなんて言えない……!
「どうしたどうしたっ! 同じ完全聖遺物同士でも随分と差があるみてぇだなぁ!?」
「アタシの「ネフシュタンの鎧」が強いってだけじぇねぇ! アタシとテメェ、所持者の力量差がこの結果だぁーッ!!」
めいいっぱいの力で振るわれたんだろう水平に撃ち込まれたムチに、ついに葵ちゃんは浮きあがり、ノイズに捕らえられてしまっているわたしのすぐそばまで飛び転がってきた。
まだ、その息づかいは聞こえている……けど、もう立ち上がるほどの力が残っていないのか、倒れ伏したまま。
「最後まで自分からはかかってこなかったな……いや、防戦一方になるしか無かったんだから当然か」
「なんで、なんで……!」
「いちいちピーピーと五月蠅い……ちょうどいいか。そいつにトドメをさすついでに、お前にもちょいと眠っててもらうぜ? 騒がしいと運ぶには手間だからな」
女の子が着てる鎧の両肩あたりから生えてるいくつかのピンクのトゲやムチがほのかに光り出し……それが収束していく。
大きくなるにつれ、激しく音を立てながら。
「これで、終いだっー!!」
ひと一人なんて簡単に丸々入ってしまいそうな大きさの光球……内部でバチバチとはじけているのがわかるそのエネルギーの塊を、女の子はムチを振り下ろすような動作でそれをわたしたちのほうへと撃ち放ってきた。
拘束されてるわたしも、倒れてる葵ちゃんも、逃げることなんて出来るはずも無い一撃。
「ダメェええぇぇー!!」
「――えっ」
「なぁ!?」
エネルギーの塊との間に割って入って来たのは――未来。
大きく手を広げ「大の字」で立ち塞がろうとしてる。けど、あんなの、生身の人が受けたらひとたまりもない、そもそも防ぐことなんて……!!
「どうして、なんでここにっ!?」
「あの時みたいに、響を置いて逃げるなんて――自分だけ安全な場所にいるなんて、絶対に、絶対に出来ない! そんなことしたら、わたしは響の親友を名乗れない!!」
「未来――逃げてぇー!!」
「くそっ!?」
女の子が何か焦ったかのように声をあげてる――けど、そんなことはどうでもいい。
だって、もう、バチバチと音を立てるエネルギーの塊がすぐそこまで……でも、わたしには動くことすらできない!!
もう、ダメ……!
そう思ってしまい、目をギュっと瞑ってしまった。
「なっ!?」
女の子の声はさっきの焦りとは違う感じの……
あ、あれ?
ついさっきまでエネルギーと言うか風の流れは感じられてたから、わたしの感覚がおかしくなっちゃったとか、そういうことじゃないはずだけど……じゃあ、なんで?
何がどうなってるのか確かめようと思うよりも先に開きだしたわたしの瞼。
そうしてその目に映ったのは――
「……ぅぁ……ぁっ!!」
――肩で息をしながらも両手で杖を地面と水平に構えて立つ、葵ちゃんの背中だった。
聞かなくてもわかるに決まってる。
相手の必殺の一撃を、瀕死になりながらも防いだんだ……わたしたちを守るために……!
「……あ、えっ……?
一瞬固まってた未来が何か言いながら、片膝をついてそのまま倒れそうなほどフラフラ揺れる葵ちゃんを支えようとその両肩を持ってあげて……でも、それ以上はどうしようもない様子だ。
「……癪だが、その丈夫さだけは認めてやるよ! けど、優れているのは……最後に立ってるのはアタシだぁ!! テメェはおとなしく地面と添い寝しときな!」
なおも声を荒らげる女の子。
それに反応したかのように、葵ちゃんも力無くも未来の手を払いのけて一歩前に出て……また、杖を構えた。
助けたい! でも、何もできない。
もう……見てられないっ!!
「ダメだっ! 葵ちゃん……お願いっ、逃げて! ううんっ、もう起き上がらなくてもいい、だからこれ以上は――――!!」
「何度でも受け止めてやる! 全部吐き出せ、お前の悲しみを!!」*13*14
「「……!!」」
聞こえてきた息を呑む音は、わたしから聞こえたのか、それとも前にいる未来から聞こえたのか……。
――違ったんだ。
倒そうとしたわけでも、そもそも戦おうともして無くて、わたしがしようとしたような時間稼ぎの囮でもない。
何かを感じ取った葵ちゃんは、最初からあの女の子の中にある悲しみと真剣に向かい合ってたんだ……! 自分が、どれだけボロボロになっても……ッ!!
「――だよっ……」
伏せるように下を向いていた女の子が――肩を震わせながら、勢い良くその顔を跳ね上げ、叫ぶ。
「なんだよっテメェはぁ!? 最初っから最後まで、アタシのことを
怒りを露わにした女の子の、ムチを突き刺すような鋭い一撃。
これまでの何よりも速く、葵ちゃんの喉元へと向かって伸び――――!
ドガァンッッッ!!
「な……アタシの一撃がッ!?」
あがった土煙がだんだんと晴れていく中、空から降ってきた赤い流れ星が――わたしと同じ「ガングニール」のシンフォギア装者である
「名前も、その目的も、聖遺物の入手経路も関係ねぇ――――」
わたしから見えるその背中は
燃えるような赤髪は風になびき、本当の炎の様に揺れ動く。
その声は、アーティストとして歌ってる時の
「――――今、ここで消えろ」
その周囲の3つの「遊星ギア」を止めに手分けして進む遊星たち。遊星と彼らを度々助けていた「謎のDホイーラー」がたどり着いた「太陽ギア」にはその守護者がいなかった……のだが、謎の光を受けた「謎のDホイーラー」はその失っていた記憶を取り戻しヘルメットに着いていたバイザー(兼サングラス?)を外しその素顔を遊星に明かす……そう、遊星たち「チーム5D‘s」の一員のメカニック、ブルーノの……アンチノミーの素顔を。その際のセリフである
1、ライブ事件の裏で盗まれた「ネフシュタンの鎧」所持
2、ノイズを召喚、操る(ありとあらゆる惨劇の黒幕の可能性)
3、
「『