我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

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自分で書き上げた内容を読んで「なんでみんなここまでイジメられてるの? なんなのこのシリアス……こんなの目指してたっけ?」ってガチ凹みする決闘者にあるまじきクソザコメンタルな奴がいるらしい……「僕だ!」。

なお、予定とは違って今回書く内容が増えたがためにイヴちゃんパートが無くなってメイ言・遊戯王語録が0。心情描写や明かされる謎など、地の文多めとなっています。
……シリアルどこいった? な、シリアス回です。

圧倒的遊戯王要素不足!!


それと、Twitterやあらすじで書いていますが、シンフォギア五期勢登場決定&「星遺物」ストーリー最新版適用に伴うプロット改変行いました。これまでのお話にはほとんど変化はありませんのでわざわざ読み返す必要もありません、ご安心ください。


Twitterでやってた更新予定の報告からも大きく遅れてしまいました、大変申し訳ありません。

……謝罪フェイズに移行しますが、なにかありますか?(優先権放棄の確認)


2-5

あの夜、風鳴翼(かたわれ)に不可解な技で動きを止められ、「絶唱」の一撃をお見舞いされたアタシだったけど、生き残ることが出来た。

 

「ネフシュタンの鎧」の持つ能力(チカラ)のおかげっていうのは間違いないが、それだけだったらきっとヤバかっただろう。なんせ真正面からの避けられない痛烈な攻撃だったんだから。

 

それでも何とかなったのは、身体の自由がなかなかきかない中、ノイズを出現させそれを操ることの出来る完全聖遺物「ソロモンの杖」をなんとか使えたから。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そして()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それらによって、アタシが受けたダメージは本来想定してたのよりも何倍もマシになった……つっても、それでも「ネフシュタンの鎧」無しじゃあほぼ間違い無くおっちんじまってただろう損傷を負ったんだけどな……。

 

 

 

そうしてなんとか生き残ったものの、その代償は決して小さなものじゃなかった。

本来なら、どんだけ甘く見積もっても死ぬくらいのダメージを受けたが、それを「ネフシュタンの鎧」の再生能力によって生き永らえた……けどそれはその分、自分の身体が「ネフシュタンの鎧」に浸食されたってことだった。

 

「死ぬよりはマシ」それは間違ってない。でも、浸食によって感じられる鈍痛と「自分じゃない何かに置き換わっていく」違和感……これ以上の再生は危険だという確信を得てしまった。

融合症例(ターゲット)」も、シンフォギア装者も、あのむかつく葵ってガキのことも全部捨て置いて……アタシはすぐさま逃走した。

 

 

 

 

そして――――

 

 

 

 

「うわぁあああぁあぁぁーーーーッ!!」

 

 

()()

 

拠点の洋館の一角に設置された装置に身を委ねた(拘束された)アタシは全身を駆け巡る電気の痛みに身体を蹂躙されていた。

 

そう、これこそがフィーネが用意した「ネフシュタンの鎧」の浸食に対抗するための手段。

体組織に入り込んできた「ネフシュタンの鎧」を電撃によって一時的に休眠状態にし取り除く……その最中だ。

 

これもまた「死ぬよりはマシ」……死ぬほどの身体的ダメージを再生した「ネフシュタンの鎧」、その代償の浸食を電撃を耐えて帳消しにする。痛くて苦しい、それでも生きるためなら……目的のためなら耐えられるものだ。

 

 

 

()()

 

 

 

そうだ。痛みよりも何よりも、フィーネの言葉が……その態度がアタシには耐えがたいものだった。

 

 

――――なんだ、その(ザマ)は。

 

アタシと葵との戦いに割って入って来た装者の「絶唱」のせいで……。

でもっ! あの「ツヴァイウィング(人気者)」が来るまでは、確かにアタシは(アレ)を圧倒していた。邪魔が入りさえしなければ間違い無く勝っていたんだ……!

 

 

――――勝ち負けなんぞ、どうでもいい。「融合症例」はどうした?

 

 

っ!? そ、それは……

 

 

――――()()()()()()。目的を履き違えるな、と言っておいたにもかかわらずお前が勝手なことをしたことはな

 

 

 

「うう……! ぅあがああぁぁああぁー!!」

 

 

 

そもそも、あのまま邪魔が入らなかったとして、アタシは本当に(あいつ)に勝てたんだろうか?

何度も立ち上がり続け、その力強い眼差しを決して逸らしてこなかった(あいつ)に……アタシは心のどこかで恐れを抱いてしまっていたんじゃないだろうか?

アタシは本当にフィーネの力に――――

 

 

 

 

――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「…………ーっ!?」

 

 

電撃による痛みと共に、あの時感じた胸を締め付けられ首を握りつぶされ息もままならないような感覚が、アタシの中に蘇ってきた。

 

フィーネがアタシの――雪音(ゆきね)クリスの中で認めているのは、聖遺物の起動やその力を引き出すために必要な「フォニックゲイン」、それを生成・上昇させるための歌の力だけだと言いやがったんだ。

 

……よりにもよってアタシの嫌いな歌がフィーネには認められている。

だから素直に喜べないって言うのもあるが、それ以外はまるであって無いようなもの……いや、むしろ邪魔だとすら思われているんじゃないかという不安がアタシの中のイヤな気持ちをより一層濃くしてる。

 

 

 

「……はぁ……はぁ」

 

 

 

いつの間にか、アタシの視界に雷電は見えなくなっていた。

けれど、「ネフシュタンの鎧」を一時休眠状態にするための電撃(工程)が終わったんだと気付くまでに、少なくとも十数秒の時間を必要としてしまった。

 

()()()()()()

電撃はこなくなってるはずなのに、アタシの身体の奥底のあたりが……まるで何かでえぐり取られたままそこにナイフがぶっ刺されてるような痛みが、全然治まりやがらない。電撃も、何もされていないはずなのに……。

 

 

 

足音がする。

しかし、それは遠ざかっていくように、アタシには聞こえた。

つまり……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!!

 

 

 

「ふぃー……ね……っ!」

 

 

 

手を伸ばそうとしてもそれは叶わず、何とかつなぎとめていた意識も段々とアタシの手からこぼれ落ちていく。

 

遠のく意識、暗転していく視界に映ったのは、振り返ってアタシ(こっち)を見てきているフィーネの姿だった。

 

……都合のいい妄想(幻視)じゃないだろう。もしそうなら、フィーネは優しい目でアタシを見て手も取ってくれるはずだ。

だからきっと、アタシが見たもんは現実……でも、気のせいであって欲しい。

 

 

フィーネがこっちに向けた目が、本当にアタシを見ているのかと思うくらい冷ややかなものだったから……。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか「シンフォギア」が解除されてて、何故か未来に肩を貸してもらってたわたし。

 

離れているのに感じられる、トンデモない光と衝撃波に何とか耐えて……回復した視界に見えたのは信じられないほど抉られた地面と消えた鎧の女の子。顔から血を流し肩で息をする翼さん。そしてそれよりも向こうに見える、倒れ伏している奏さん。

その光景に呆然としちゃっていると、いつの間にか人影が増えていた。

 

 

それは風鳴司令と緒川さんだった。

駆けつけた風鳴司令が奏さんと翼さんの方へ行き、緒川さんがわたしたちの方に来て……色々とお話をしてくれたはずなんだけど、いろんなことがあり過ぎた後であんまりよく憶えていない。

それにすぐハッとなって、緒川さんに後ろにいる葵ちゃんをなんとか助けてほしいって言って、頷いた緒川さんのソッチの処置をそばで見ていただけだったし……。

 

それからあんまり経たずに沢山の人が来て、奏さんと翼さん、そして葵ちゃんをタンカに乗せて車に運び込んで……わたしも別の車に乗せられた。未来も、緒川さんや周りの救護の人に頼み込んでわたしと一緒の車に乗りこんでた。

 

 

未来はずっとわたしの体のこと心配してたっけ? 「何処も痛くない?」とか「本当に我慢してない……?」とか言って、何回も聞いてきたんだ。

 

おかしいよね? だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

でも、お胸とおへその間あたりのお腹を触られて、わたしは痛みに顔を歪めちゃった。

すぐさま未来に服をめくり上げられ――上手く覗きこめなかったし鏡も無かったから私からは見えなかったけど――未来曰くそこには数センチ幅の青ジミがあったそうだ。

「内臓や骨が~」なんて話も聞こえてきたけど、わたしとしては、そもそも何でそんな怪我がわたしのお腹にあるんだろうって疑問が――――

 

 

 

――知ってる――

 

――だけど、知らないふりをした――

 

――嘘だと思いたかった――

 

 

 

……あぁ、そうだ……わたし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

思い出したら、いつの間にかボロボロと涙がこぼれだしていた。

その涙の意味もわからず、ただ衝動のままにわたしは未来の温もりにすがりつき――抱きついて、抑えきれない涙と嗚咽をあふれさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな夜が明けた翌日、わたしは未来と一緒に事情聴取を受けることに。

日が昇るまでは怪我のチェックや処置、未来とふたりで過ごしたりする時間を貰えたけど、日が昇ってちょっとしたら呼び出しを受けたんだ。

 

未来は不満そうな顔を――わたしに対しては不安そうな顔を――してたけど、でも仕方ないことだと思う。状況が状況なだけに、司令たちも少しでも早く正確な情報が欲しかったんだろう。

 

 

とは言っても、事情聴取の前にわたしから司令へと問いかけをしたんだけどね……。

内容はもちろん――――

 

 

 

「司令、奏さんたちの容体は……?」

 

「……全員命に別状は無い。ただ、何の問題も無いわけではない、軽く見積もって1,2週間は安静を余儀なくされるだろう。葵君だけはもう少しかかるだろうが……それでも時間が解決してくれる程度だ」

 

わたしなんかよりも沢山痛い思いをしただろうみんなは、とりあえずは大丈夫らしい。

特に葵ちゃんは、傷だらけで血もいっぱい流してたから凄く心配だったんだけど、それなら一安心……なのかな?

 

 

「さて、周囲の状況や大体の事の流れはおおよそ掴んではいるが……出来る限り正確に、詳しく知りたい。当時のことを詳しく教えてもらってもいいか?」

 

 

不安が残りつつも始まった、テーブルを挟んで風鳴司令とわたしたち…1対2での事情聴取――なんだけど、わたしなんかより未来がシャキシャキと答えていってくれたから、何も難しいことはなかったんだけどね?

いや、むしろわたしとしては、話を聞きながらほんの少しだけど度々変化を見せる司令の表情が気になって気になって……特にわたしがふたりを止めようと声を上げてからの出来事について「奏さんが響をノイズごと吹き飛ばして……!」って未来が言った時には、目に見えて凄く複雑そうな顔をしてたから……。

 

 

 

事の流れを話した後、例の変な鎧を身に着けた女の子のことなどいくつか質問されて……。

そして……司令がひと息ついたから「終わりかな?」って思ったら、イスから立ち上がった司令が――

 

 

「先程話に出た奏の行動も、これまで対ノイズを強いてきたことも含め、ここで謝罪させてほしい。本当に申し訳なかった……ッ」

 

 

――つむじが見えるくらい、キッチリカッチリ90度で深々と頭を下げてきた。

 

「うぇええっ!? そんな頭を下げられても……!? そ、それに司令が悪かったわけじゃなくて、わたしや状況が悪くって――――あっ」

 

「だからいいんです」って言うよりも前に、()()()()がわたしの頭によぎった。

だから、一旦言いかけてたことをひっこめてから……改めて口を開いた。

 

「あの、謝罪がいらない代わり――って言うと何か変な気もしますけど、お願いしたいことがあるんです」

 

「なんだ? 俺が出来る範囲であれば……」

 

顔を上げた風鳴司令のことを見ながら、わたしはその()()()を言ってみる。

 

「さっき、わたしが奏さんと女の子を止めようとしてノイズごと吹き飛ばされた時のことを話してた時、司令の表情が気になって……理由があるんですよね? 知りたいんです。奏さんが何の理由も無くあんなことするとは思えませんから」

 

その言葉の奥底には「そう思いたい」という気持ちもあるけど……それは口には出さずに「お願いします」って、今度はわたしのほうから頭を下げた。

 

「……関わりが無い、とは言い切れんが」

 

なんとなく迷っている様な司令の声色。続いて「しかし……だが……」って呟きも聞こえてきた……司令にしては珍しい気がするんだけど、かなり迷っているみたい。

そんな司令の表情を見てみたい気もする。だけど、頼んでいる手前、今、頭を上げるわけにはいかない……!

 

「わかった、話そう……ただし、他者には決して話さない事を約束できるか? そして君たちにはしてもらわなければいけない、奏の――いや、奏だけでなく、翼と葵君も抱える傷に踏み込む覚悟を」

 

なんで奏さんだけじゃなく葵ちゃんも?

疑問には思ったけど、退くわけにはいかない……わたしは下げていた頭を跳ね上げて、その勢いのまま大きく返事をする。

 

「……はいっ!」

 

「聞かせてください、奏さん達になにがあったのか」

 

わたしだけじゃない。未来も同じ気持ちだったみたい。

自然と伸ばし、ギュッと繋いだ手で未来(陽だまり)の温もりを感じて……改めて、覚悟を決めて司令へと視線を向けた。

 

 

「まずは、奏が二課(ここ)に所属する経緯からだ――――」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

わたしたちは聴いた

 

 

「皆神山」で起きたノイズ襲撃事件を

奏さんとその家族を襲った惨劇を

 

国を守るため鍛えられてきた翼さんを

文字通り血反吐を吐いてノイズへの復讐に燃えた奏さんを

ふたりが手を取り合うまでの決して平坦ではない道を

 

因縁の「皆神山」に突如現れた謎の少女(葵ちゃん)のことを

心に傷を負い、声を出すことすらできなかった葵ちゃんを

葵ちゃんと少しずつ心を交わしていく「ツヴァイウィング」を

いつしか心を開き、周りの人たちのために行動するようになった葵ちゃんを

 

「ツヴァイウィング」ライブの惨劇……そしてその裏側を

 

暴走し、さらには騒ぎの最中盗まれた完全聖遺物「ネフシュタンの鎧」のことを

何者かによって操られ襲撃して来たとしか思えないノイズの行動を

さらには近場で起きた謎の遺跡の襲撃と、その絶妙過ぎるタイミングを

 

 

そして、わたしも知っていたこと……奏さんと翼さんが戦い、遅れて()()()()()()()()()()()葵ちゃんが駆けつけたことも

 

 

惨劇の中歌われた「絶唱」と、その反動(フィードバック)によって死を迎えようとした奏さんのことを

 

奏さんを聖遺物のチカラで助け――身代わりとなって散った葵ちゃんを

 

そんな葵ちゃんが別の聖遺物のチカラで離れた場所で復活をしたことを

 

でもそれの副作用によって、葵ちゃんの言語能力がおかしくなってしまったことを

 

 

 

葵ちゃんは狂った自分に苦しみ自分を傷つけ

 

自分の「絶唱」のせいで葵ちゃんの未来をうばったと奏さんが悔み

 

翼さんがそんな状況を作ってしまった無力な自分を責めた

 

 

 

出会う前の3人のことを

わたしたちは聴いたんだ

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

隣にいる未来の手を握ってる手が震えていた。

 

本当に、未来がいてくれて良かった。

じゃなきゃ、わたし一人の心じゃあ覚悟はすぐに折れてしまっていただろうから。

 

 

 

 

自分の家族をノイズで奪い(ころし)……

あの沢山の犠牲者を出したライブの惨劇を引き起こし……

そしてまた、家族と呼べるほどの存在を――葵ちゃんを奪おう(ころそう)とした。

 

そんな存在を目の前にしたからこそ、奏さんはあんなに殺気立っていたんだ。

 

 

――――奏さん、言ってましたよね!? シンフォギアでノイズからみんなを……街の人達を守ってるんだって! なのに、そのシンフォギアで人を殺すだなんて、そんなの……っ!!

 

 

あの時、わたしが言った言葉……奏さんはどう思ったんだろう?

……ううん、その答えがあの時の一撃だったんだ。()()()()()()()()()()()

 

でも――――

 

 

――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「響君」

 

司令の力強い声に意識が引き戻される。

 

「君の考えていることは、おおよそ見当がつく。……どちらが悪いなどと言い切るのは難しい話だ。奏もわかっているはずだ、人と人が手を取り合い平和に過ごせるほうが良いに決まっている事なんて。だが、感情の話は別だ。家族の……自分の人生を歪めた相手かもしれん相手とわかり合おうなんてそうそう思えんさ」

 

「実際にあの少女がそうだとは断言しきれない部分もあるのだがな」と付け加えて言う風鳴司令。

何故そういう考えに至ったのか、それを聞く暇も――わたし自身そんな余裕も無くて、わたしが何か言うよりも早く司令が諭すように言ってきた。

 

「改めて言っておくが、決して響君の考えや想いが間違っているわけではない。ただ、物事はそれだけでは丸く収まってはくれんということだ」

 

「……はい」

 

……「そんなことは無い」そう言いたかった。

人間(ひと)人間(ひと)が争うなんて……傷つけあうだなんて間違っているって……互いに事情があったとしても、手を取り合えることが一番でそれを目指すことは間違ってなんていないって。

 

でも、言えない。

あの(とき)、口ばっかりで何も出来なかったから……それもあるけど、それ以上に、目の前で言い聞かせるように言っている風鳴司令の表情(かお)がとても辛そうだった……さっきの言葉はいろんな想いがある中から司令がなんとか紡いだ言葉なんだと理解(わか)ったんだ。

 

 

 

 

スッキリとしないまま、わたしたちの間に言葉が行き来しない時間がほんの少しだけだけど流れた。

 

それを変えたのは、風鳴司令の「さて」という切り替えの一言からだった。

 

 

「これからの君の活動についてだ。……響君はどうしたい?」

 

「えっ」

 

どうしたいか……?

そんなの決まってる。今度こそちゃんと、ノイズからみんなを守るために……()()()

 

「これから先、またあの少女と――いや、俺の見立てでは、あの少女以外の人間とも戦わなければいけない事態に陥ると考えている。その時、響君は戦えるか?」

 

そうだ。どうしてか詳しくはわかんないけど、あの鎧の子は「融合症例」のわたしを(さら)うのが目的らしかった。その鎧の子の安否は不明らしいけど……また襲ってくる可能性は高い。

それに、もしかするとあの子だけじゃなくて、他の誰かと戦うような場面にであってしまうかも……。

 

 

「狙われているとわかっている以上無関係ではいられんだろう。だが、君がこのまま装者として戦い続けなければいけないわけではない。……君の優しさは美徳ではある。だが、そんな君にとって戦場(いくさば)は唯々辛いだけじゃないか?」

 

……確かに、司令の言う通りかもしれない。

今回のことでわかった。わたしの理想が、必ずしも他の誰かにとっても望ましいことではないということが。そして、わたしは相手と向き合って話す――そんなスタートラインに立つ資格すらないってことも……。

 

こんな事間違っていると説得することが出来ず、守りたいものすら守れず……かといって、()()()()の様にどこまでも自分の意思を押し通そうとする意地さえも無い。そんなわたしが、いったい何ができるっていうんだろう……。

 

「わたしは……わたしは――――」

 

でも……諦めたくない。心の奥底には、どうしても諦めきれそうにもない()()が燃え続けてた。

だから、それ以上の言葉は出すことが出来なかった……。

 

 

 

 

「なに、いますぐ答えを出さなくてもいい……というよりも、今、答えを出してもらったとしても……その望み通りに出来るとは限らんのだ。情けないことに、な」

 

「えっ、えっ? わたしなんかがいなくなっても問題無い気が……?」

 

司令の言ってることがよくわかんなくって首をかしげるわたしに、隣に座っている未来が「もうっ」って不満そうにほっぺを膨らませてこっちを見て口を開いた。

 

「響は「なんか」じゃないの! それに、よく考えてみて、響? もしも今、ノイズが出現したらどうなると思う?」

 

「どうなるって、それは当然、いつものように一課の自衛隊の人たちが街の人達の避難誘導をしたり、ノイズの進路を誘導したりして……その間に奏さんや翼さんが――――あっ」

 

鎧の子から重い一撃を受けてしまった奏さん。「絶唱」を歌ってその反動を受けた翼さん。あれからまだ一度も会えてないけど、さっき司令から聞いた怪我の容態からして、あの二人が昨日の今日で満足に動けるほど――ノイズと戦えるほど――回復しているとは到底思えない。

加えて、完全聖遺物っていうものを持ってて戦える葵ちゃんも、満身創痍って言ってもいいんじゃないかってくらい血だらけで怪我だらけだったし、戦えるはずが無い。

 

 

ああ、色々あり過ぎた上に自分の気持ち(こと)で一杯一杯だったから、うっかり忘れちゃってたけど……

今、ノイズが発生したら戦える人がいない……いや、()()()()()()()()()()

 

 

「本来ならば、響君の意思に関わらず一旦出動を禁じ戦線から離れて話し合う時間や考える時間を作るつもりだったんだが……情けないことに、君たち装者の力を借りなければノイズから十分に人命救助もできんのが二課の実態だ」

 

眉間のシワが深まる司令の険しい表情。握っているその拳からは血が滲むほどに強く強く握り込まれてて……司令の想いが、これでもかというほど伝わってくる。

 

 

「あんなことがあった翌日に頼むようなことではないのはわかっている……だが、奏や翼が復帰するまでの間だけでいい、頼む! 力を貸してくれ……!!」

 

 

風鳴司令がまた頭を下げた。それも、さっきよりも一層深く深く下げられていて……。

 

 

今、わたしにしか出来ない役割(こと)

 

でもそれは、本当にわたしに出来ることなのかな?

いろんな不安があるし、相変わらず「アームドギア」は出てこないし、一人じゃ恐いっていうのもある。それに、やっぱり人と戦うなんてことは出来ないししたくない。

 

……だけど、このまま逃げたいとは思えなかった。

 

せめて、奏さんや翼さん、葵ちゃんが元気になるまで、町を…町の人たちを守りたい……!

そして、その時が来たら――――!!

 

 

 

「はい……! こちらこそ、みんなを助けるための協力をさせてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

事情聴取を終え、響君とその友人である未来君の帰りの案内を緒川に任せ、俺は本部の通路をひとりで歩いていた。

 

 

「対ノイズ行動ができなくなるという最悪の事態は避けられた、か」

 

汚い手にもほどがある。しかし、背に腹は代えられんというのも事実。

選択肢があるようでほぼ無いと言える選択を迫り、協力をこぎつける……言ってしまえば、そんな脅迫にも近い手段を取ってまでしなければノイズから人々を護れない。

 

子供たちを護らねばならん大人という立場でありながら、俺はなんと無力なんだろうか……。もしも、この拳でノイズを殴ることが出来るのであれば、彼女たちにあんな辛い思いをさせなくて済んだだろうに……。

 

「実戦はもちろん、シミュレーターなどの訓練環境のサポートをこれまで以上に……だがしかし、私生活への配慮もより一層慎重にせねばな。それに、精神面は……ううん、そこは未来君にも支えてもらうしか他あるまい」

 

小日向(こひなた)未来(みく)君。響君の親友であり今現在ルームメイトでもある彼女は、響君にとってかけがえのない存在のようだ。

少し前から感じられていた響君の不調も、彼女への隠し事やすれ違いによる精神的な部分が大きかったそうだ。……今後の事も考え、特別に「外部協力者」という形で一時的にでも二課(こちら)へ入ってもらうべきかもしれんな。

 

 

「しかし、未来君(彼女)もあのライブの生き残り……それも、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()を知ったのはつい先程。

事情聴取を終え、別れようとした際に未来君ひとりだけ残って俺にしてきた問いかけから判明したことだ。

 

 

――――あの、この二課ではライブの来場とか、あの現場にいた事を隠蔽操作したりすることは出来たんですか? ……したりはしなかったんですか?

 

 

最初聞いた時は何故そんなことを言うのかがわからなかったが……詳しく聞いてみれば、おかしなことが起きていたことがわかった。

 

 

 

曰く、未来君は響君と共にあの「ツヴァイウィング」ライブに来ていた。

爆発とノイズ発生でふたり手を繋いで避難しようとした……が、人混みに揉まれて途中で離れ離れになってしまった。

迷いながらも他の人たちとなんとか逃げたはいいが、正面出入り口から離れた建物内部へ行ってしまったうえに、響君がどこにいるのか……ちゃんと逃げられているかどうかがわからなくなった。

そんな中、壁に穴が一直線にいくつも開き外へと続く道となって、どこにいるかもわからなくなってしまった響君を心配しながらも周りの人に手を引かれて外へと避難した。

その途中、すれ違う形で()()()()()()()を見かけた……。

 

後に響君が会場の中で大怪我を負った状態で救助されたことを知ったという。

 

そして、不可解なことに気付いたのは入院していた響君が退院してからだそうだ。

正確には違和感自体はそれまでにも感じていたそうだが……クラスメイトを中心に悪質なイジメへと発展していった。いや、クラスメイトだけではなく周りの多くの人間が響君へと言葉の――それだけでは終わらない悪意をぶつけていったのだという。

 

 

ライブ生存者に対する「()()()()()」。

 

理不尽な災害である「ノイズ」。「ツヴァイウィング」のライブでそれに襲われながら生き残った者たちへと向けられた悪意。

 

原因はいくつかあっただろう。

あのライブでの死者はノイズによるものだけではなく、正面の出口などの一か所に人がなだれ込むことによって発生したドミノ倒しによる圧死や、避難経路を我先にと行こうとする者たちによっておこされた暴力行為によるものなど、人による死因(もの)が多々あった。……そのため、一部から「生存者=他人を踏み台として生き残った人殺し」といった意見が出てからそれが一気に広がったこと。

上のこともあり被災者やその遺族に政府からの補償金がいったことでさらに過熱。周囲から「税金泥棒」として認識・揶揄されてしまったこと。

そして……自分の友人や家族が死んだにもかかわらず存在する生存者……「なんでアイツが死んでコイツが生きているんだ」という、ノイズという「災害」に向けることの出来ない矛先を、収めることの出来ない感情(矛先)の行方は生存者に向けるしか他無いという意識。

 

それらがまとまり、広く伝染・拡大した結果できた大きすぎる流れが、ライブを生き残った者たちを呑み込んでしまったのだ。

その結果、生存者たちの置かれる環境は……人の世の地獄とでも言うべきものだった。

 

 

政府もその社会の流れに気付きはしたが、遅かった。その上、下手に手を出したところで止めるどころか火に油を注ぎかねないと上層部も対応に困った出来事だ。

そもそも彼らが「税金泥棒」などという誹謗中傷をされる原因が政府からの補償金……それが間違いだったわけではないが、同様に生存者たちへのヘイトをより高めてしまいかねない可能性が高かったのも事実。

だからと言って何もできないことの言い訳にしてはならんのだが……規模が大きすぎて被害者加害者含め全体像を把握しきれなかった事もあり、俺たちに出来た事は地道な情報操作による勢いの衰退くらいだった。

 

 

 

 

それが、響君の周りで起きてしまったのだ。

 

そう、()()()()()()()()

 

未来君は響君を助けようとした、守ろうとした。

そして「私もライブ会場にいたんだ」と明かしたんだという。

 

だが、()()()()()()()()()()()()()()

 

未来君はクラスメイトから「そんな嘘つかなくていいよ」「ライブの時、親戚の所に行ってたのは知ってるんだから」と言われたそうだ。

また、マスコミがどこかから入手した情報や、何の正義感からかネット上で情報を拡散していた者たちが出した情報にも……ライブの生存者たちの名前の中に「小日向未来」の名前はどこにもなかったのだという。

結果的に言えば、生存者である響君を庇い関わり続けたことによって未来君も周囲から少なからず嫌がらせを受けるようになった。しかし、決して「生存者に対する行為」ではなかったそうだ。

 

 

わけがわからなくなった未来君に追い討ちをかけた事がある。

未来君が嫌がらせを受けるようになってから、自分のいない所で響君が「自分は一人でライブに行ってた」ということを態と言ってまわってたということ。

さらには、親戚の所には行ってなどいないことを知っている未来君の家族が「いつか事実を知られてしまい、自分たちも誹謗中傷を受けてしまうのではないか」と恐れて引っ越しを決めたこと。

それらが、未来君を苦しめた。自分が守ろうとして何もしてあげられなかった親友に逆に気を遣われ守られていたことが……その上、またあのライブ会場の時の様に、自分だけ逃げ出して無事でいられてしまうことが……。

 

 

 

 

その後も()()()()()()そうだが……。

そんなことがあり、ずっと疑問に思っていたのが「何故小日向未来(自分)はライブ会場に行っていないことになっているのか」ということだったらしい。

 

そして、今、それが出来そうな組織……俺たち特機部二に話を聞きたかったそうだ。

 

 

結論から言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()、だ。

つまりは、結局謎だけが宙ぶらりんのままだ。

 

 

 

「しかし、仮に人為的に誰かが情報を改変したとして――未来君がライブ会場にいなかったことにして、それが誰の何の得になるというんだ?」

 

仮に存在しているものとする「犯人X」の意図が掴めない。

 

ライブの襲撃にも少なからず関わりがあるだろうあの鎧の少女――もしくは、他にもいるかもしれないその仲間たちの仕業だと仮定しても……やはり、そんなことをする理由は無い様に思える。

 

「あの夜に、緒川や俺の救援の進行妨害をした者といい……俺たちの観測できていない(知らない)範囲での謎が多いが……どうしたものか」

 

 

そしてもう一つ、気になることが俺にはあった…………

 

 

 

「未来君の話が本当なら、葵君はライブ会場の建物の外にいたことになるが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

沢山のモノを護れず、かけがえのない片翼(あいぼう)を失いかけ、守るべき妹分の命を散らせてしまった……。

 

 

私は無力だった。

 

 

しかし、今は違う。

 

 

完全に守り切ることは出来なかった。

 

しかし、それでも自分ひとりだけでノイズを引き受けて奏を行かせたことで、最悪の事態を防ぐことが出来た。

 

自分ひとりでノイズたちを倒しきった後に現場へ駆けつけ、地に伏せた奏を追撃から護ることが出来た。

 

あの時は迷い歌えなかった「絶唱」で敵を撃退し、奏を、葵を、そして立花たちもみんな護ることが出来た!

 

 

 

――――どうして?

 

 

 

暗闇の中から見えてきたのは……おそらくはどこかの病室だろう。

 

そこのベッドに、()()()()()()()()()()()()

 

フンワリと浮かんで自分の周りの景色を眺める……幽体離脱というやつだろうか? それとも……ただの夢?

 

 

いや、そんなことより――――

 

 

 

――――なんで、葵が泣いているの?

 

 

 

()の横たわるベッドのそばに置かれたイスに座る葵は、私を見つめながら、時々鼻をスンとすすりつつその目から涙を流し続けてる。

 

 

――泣かないで。

 

そう言って涙を拭ってあげたい……だけど、ベッドにいる()は動かない。

 

 

――何があったの?

 

そう問いかけ寄り添ってあげたい……だけど、上から見ているだけの私はそばにいけない。

 

 

 

――――どうしてなの……!?

 

 

 

そんな私の疑問に答える人はいなかった。

けど、葵の口が動いた。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――― ―――~♪ ――――――――― ―――~♪ 」

 

 

 

歌が……

聴いたことの無い歌が聞こえてきた――――




次回、今度こそ本当の本当にイヴちゃん回。

イヴちゃんが何を考えていたのか
記憶を取り戻した結果どうするのか
そして、フィーネに対しては……

もちろん、遊戯王ネタ盛り沢山です! 明日更新!
お楽しみに!!
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