我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
色々と言いたいことはあるけれど……それらはまた別の機会に!!
さあさあ、やっぱりなったよ! シリアスに!!
ちゃんと仕事しようぜ、イヴちゃんよぉ? 一応は主人公なんだろう?
というわけでイヴちゃんの活躍の場、装者たちへのカウンセリングへと突入していきます!!
『待たせたな、俺がキングだ!!』
後頭部……背中……私は、今、寝ている……?
暗い? いえ、これは
聞こえてこない。特に、何も……時折聞こえていた
足音も聞こえない。息づかいも自分のモノ以外は。
もちろん、近くからは誰の気配も感じられない。
だけれど――
この感覚には、覚えがあった。
「……緒川さん?」
重たい瞼を持ちあげながら、その思い浮かんが人の名前をなんとか口にでき……すると、寝ている私の枕元近くに急に気配が感じられるようになった。
次第にハッキリとしてきた視界。天井を見上げていたその端では私の想像した通りの人が。
「おはようございます、翼さん。調子はいかがですか?」
いつもの爽やかな笑みを私に向けながらのその問いかけに、私はゆっくりと上体を起こしながら答える。
「そう悪くはありません。……ただ、多少の違和感が身体にありますが、それもおそらくずっと寝たままだったせいかと。動けば治ると思います」
手を握って開いてを数回繰り返したり、軽く肩を回してみたりしたけれど、痛みなどの異常は感じられずそう問題無く動かせた。
ダルさはある程度あるものの……うん、大丈夫そうだ。
「そういう緒川さんは、何故ここに?」
「仕事の合間を縫って、つい先日目を覚ましたばかりの奏さんの様子を見に来て、そのままこちらにも来たんですよ。まさか、目覚めるちょうどその時に立ち会えるとは思いませんでしたが」
……ああ、そうだ。私はあの夜「絶唱」を歌って……。
私があの場所に――奏が「ネフシュタンの鎧」を纏った少女と戦っていた場所に――たどり着くまでの出来事は断片的にしか知らない。だけど、激しい戦いが行われていたのは知っていて、そこで少なからず傷を負っていたのは間違い無いだろう。
「あの、奏の様子は……?」
「筋をいくつか痛めているほか、左腕の骨折が大小2か所と肩の脱臼。ですが、安静にしていれば何の問題も無く治る程度です。奏さん本人の様子は……ギプスをうっとおしそうにしてましたね」
「それ以外は至って元気でしたよ」と言う緒川さん。
……だけど、気のせいだろうか? その表情が一瞬固くなったように思えたのだけど……
それを問い質す――より先に、あることを思い出した。
奏が負傷し、私も出動は難しい……となれば、二課はノイズを撃破するには厳しい状態なはず。果たして大丈夫なのだろうか? 場合によっては多少無理をしてでも私が出るべきじゃあ……?
「緒川さんっ、ノイズへの対策は――」
「心配いりませんよ。こんな時だからこそ、皆、可能な限りの備えをしています。それに、響さんが至らない所はありながらも一生懸命に協力してくれてますから。あれから一度だけノイズが少々出現したのですが、彼女の頑張りもあり人的被害は0で済みましたよ」
嘘は言っていない様子……ですが、言葉の端々からいろいろと気遣いが見受けられます。
言葉通り、
ノイズと戦えるのは私たち装者しかいない。
そうしておかなければ、また……
「葵さんも元気ですよ」
「え?」
緒川さんの唐突な一言に、私は首をかしげる。
いったい何を言っているんでしょう?
「むしろ元気過ぎるくらいで、一番の重傷であるにも関わらず余裕そうで、随分と暇を持て余している様子でした……実際、絶対安静にもかかわらず医務室から脱走を試みようとしてましたし」
「未然に防ぎましたけどね?」と付け加える緒川さん。
元気でジッとせずに自由奔放な葵というのは想像しやすいのですが……今、気になる言葉が聞こえました。
「葵は、本部に――医務室にいるんですか?」
本部にいるというのはまだわかる。
奏が大きな負傷を負ったのであれば、入院やら何やらで家で過ごすことは出来ないだろう。わたしもこうして政府の息が掛かった医療施設に入院している……となれば、葵をひとりで生活させるわけにはいかない以上
しかし、何故、医務室に?
「ええ、負傷の度合や彼女の特殊な事情も考えて、以前と同じく
「葵が怪我を!? ――――あっ」
驚き、「何故!?」と考えようとして――すぐに思い当たった。
そうだ、あの夜ノイズとの戦闘中に奏を「ネフシュタンの鎧」の少女の下へと先に向かわせたのは、他でもない、葵が襲撃を受け戦っているという報告を受けたからだった。奏でさえ傷を負わされる相手なのだ、葵が無傷だと思う方が難しい。
しかし……何故私は今の今まで、葵は何ともないと思っていたんだろう?
はっ……!?
あの出来事があったからに違いない。
「翼さん? どうかしましたか?」
「いえ、実は……不思議な体験というか、夢らしきものを見たんです」
不思議そうにする緒川さんに、ポツリポツリと思い出しながら、何時ごろ見たのかも正確にはわからない……幽体離脱して眺めたかのように見たあの光景のことを話した。
病室で眠る私を。そのそばで泣く葵を……。
「――ということがあって、場所も
「なるほど。それで怪我をして本部で絶対安静で療養をしていると聞いて驚いたんですね」
緒川さんの言葉に私は頷いてみせ……その後すぐ首をかしげてしまった。
「しかし……今にして思えばおかしなところが多かったですし、本当にただの夢だったんでしょう。……けど、何故あんな夢だったのかしら?」
「おかしなところ、ですか?」
「あ、はい。葵の着ていた服が一番最初に「皆神山」で発見した時と同じ、あの独特の意匠の服だったんです。あと、結局あんなに泣いている理由も聞けずじまいでしたし……」
こうして今、思い返しながら話したことでようやく気付いたけれど……あの光景を現実であった実際の
やはり、あれは私が見た夢……にしても、やっぱり引っかかる部分があるのだけど……。
私の話を聞き、あごに指を当て「ふむ……?」と考えるような仕草をとっていた緒川さんが、数秒の間を置いてから口を開きました。
「服装についてはわかりそうもありませんが、泣いていた理由についてはおおよそ見当がつきますね」
「本当ですか!? 教えてください!」
「そんなに難しいことではありませんが……翼さんの見た夢というだけあって、答えは案外身近なところにあるのでは?」
……はて? それはつまり……どういうことなんでしょうか?
「その葵さんが、翼さんだったんですよ」
……?
…………??
「……緒川さん、私の話をちゃんと聞いてましたか? ベッドに寝ていたのが私なんですよ?」
「聞いてましたよ」
「えっ、じゃあ……なぞなぞ、ですか?」
そう言うと、あろうことか緒川さんは小さく「ふふっ」と笑ったではありませんか。
そのことを非難するよりも先に、緒川さんが軽く頭を下げてきました。
「意地悪をしてすみません。ですが、僕はなるべく翼さん自身の
「?……は、はあ」
「翼さんなら大丈夫です。だって、あなたは――――」
何かを言いかけた緒川さんでしたが、唐突に「おや、いけませんね……もうこんな時間ですか」と言い出し、後は最低限のやりとりをしただけで病室を出ていってしまった。
いやしかし、きっとあの戦闘の事後処理や私と奏のアーティスト活動の方の対応もしてくれていて忙しいんだろう。むしろ、先程の話す時間をとってくれたことに感謝しなければ。
緒川さんからの連絡を聞いてその顔を見せに来るだろう叔父様に、何をどう話すべきか考えをまとめようとしながらも……頭の中では、どうしてもさっきの緒川さんの言っていた「
「いや、そんなはずは……風鳴として、防人としての使命を果たすべく研ぎ澄まされた私とは違い、葵はあんなにも可愛いのだから。……そ、それに、私なんかとは違って女子力も高いし……」
思い出されるのは、葵とひとつ屋根の下、寝食を共にする日々。
くっ! 炊事・洗濯・家事全般、それら全てが葵の足元にも及ばないどころか、ことごとく葵の仕事を増やす結果になったあの時のショックは忘れられない……!
その上、そこに快復し復帰した奏が加わってからというもの、台所で二人仲良く並び一緒に料理しているのを他所から眺める時の疎外感といったらそれはもう……。それに耐えられず、並び立てるようにと一人で料理の特訓をしようとして……案の定失敗してしまい緒川さんに迷惑をかけてしまったりもした。
「と、とにかく、葵は私とはまるで違うんだ……なら?」
可能性としては、そもそも緒川さんの言ってたことが間違っているっていうことも考えられなくも無い。
けど、あの緒川さんがそんな見当はずれなことを言うとは思えない。
もう一度、一から考えよう。
そう思い、目をつむり、あの夢で見た光景を頭の中でつくってみる。
ひとつの病室に、ベッドとイスがひとつずつ。
ベッドに
……これでいい。
ここからだ。葵は
イスに座っているのを葵から
するとどうだろう、椅子で座っている
「――えっ」
そんな声が、口からこぼれ出していた。
イスに座る
そう、いつの間にかベッドに寝ていたのは奏になっていた。
――――いや、違う。
私は知っているんだ、こんな光景を。
あの「ツヴァイウィング」のライブの後、葵の持つ聖遺物のチカラによって一命をとりとめながらも中々目を覚まさず、このまま眠るように亡くなってしまうんじゃないかと思うくらいの状態の奏。その奏が眠るベッドのそばに居続けた私。
あの時だけじゃない。もっと前にもこんなことがあった。
奏が家族の仇・ノイズへの復讐に燃え、そのための手段「シンフォギア」を得るために、自らを適合指数を上げるための薬・Linkerの被検体としてその身を差し出し、文字通り血反吐を吐きながらも適合しようと何度も試行錯誤を繰り返し、時に倒れた奏の手を取ったあの時も……多少の違いはあれど、この光景に通じるところはあった。
あぁ! そうか……そういうことなのね……!!
緒川さんの言葉の意味は、あの葵の涙の理由は――――
―――――――――
――――だって、あなたは心が通わぬ道具などではないんですから。
伝え損ねた……いえ、やはり僕の口から何から何まで伝えるのは、それは違うでしょう。
さて。
「ツヴァイウィング」休養に関しての情報操作や、仕事先への挨拶周りなどを済ませた僕は今、とある方々の護衛に付いています。
「ほーら、響。あともうちょっとだよ」
「はぁふぅ……お、おー……!」
そう。ノイズを操り、過去に奪われた「ネフシュタンの鎧」を身に纏う少女。その彼女が標的としていた響さんと、襲われた場にも居た友人の未来さんの影ながらの護衛。それが、「ツヴァイウィング」のおふたりの休養中僕に課された任務の一つです。
あの夜、戦闘のあった現場から逃走した痕跡がわずかながらに見つかり潜伏場所こそ発見できませんでしたが、少女の生存を確信できました。故に、あの少女……もしくはいるであろう彼女の仲間が、いつ何時襲撃してくるかわかりません。ですので、こうして僕や他のエージェントが交代で陰ながら護衛をするよう手配をしているのです。
そんな護衛対象のおふたりが何をしているのかといえば、自由な時間を利用した自主トレーニング……基礎補強の長距離走です。
元々の基礎的な身体能力は高かった響さんですが、こういったトレーニングを常日頃からやること自体は間違ってはいません。事実、ここ数日間の護衛中観察しただけでも以前よりもグッと伸びているということがわかります。単純な身体能力だけで言えば対ノイズ戦闘には問題の無いレベルでしょう。
しかし、彼女にはまだ足りません。決定的なものが。
体は出来上がってきています。
心も……ここ最近の成長速度からしても、一皮むけた上にどこかカッチリとはまったように感じられました。
問題は
「師事を仰げる相手がいなかった……ということですか」
でなければ、あんな中途半端なものにはならないでしょう。
出来るのであれば、僕が手ほどきをするというのもなくは無いのですが……響さんの身体的に――それ以上に精神的に
風鳴司令は
ここは、いっそのこと二課のエージェントを中心に、その手の政府関係者が会得している護身術を教え、そこから発展させていく形で……いえ、流石に僕が勝手に決めていい話ではありませんね。本部に戻った時に、司令に相談することにしましょう。
それにしても――――
「か、完走~っ……へふぅー」
「お疲れ様。はいっ、このタオル使って」
「あっ、ありがと未来~」
――――響さんの特訓に同伴している未来さん。当り前の様に特訓に付き合っていますが、大した息切れも見られず……彼女も大概並の域を超えているような気がしますね。
―――――――――
「「デュランダル」護送任務……か」
ここ最近、あまりにも頻発しているノイズの発生は、この特機部二本部の深層にて厳重保管されている完全聖遺物「デュランダル」*1を何者かが狙っていて起こしているものではないかという疑念があったが、それが今回の襲撃により、政府の上層部が実際に移そうと考えたんだろう。
良くも悪くも日本にとって数少ない完全聖遺物、大きな
政府が保管先に選んだ永田町最深部の特別電算室……通称「記憶の遺跡」が
今いる人員で可能な限り最善で安全な「デュランダル」輸送法を考えなければならない。
――なのだが、そこに難色を示したのがつい先日目覚めたばかりの奏だった。その左腕にはギプスが付けられて吊るされている。
「だからって、なんでアイツが――
「それはもちろん、これまでのようなノイズの夜襲撃が予想されているからだ。
「んなこたぁねえ! 利き手は十分使えるんだ、あたしが出ればいいだろ!?」
「う~ん? 常識的に考えて無理があるわね。片腕以外にもいっぱい傷を負ってるんだし、本当に片手だけで戦えるのか……輸送する「デュランダル」の事を考えたらなおのこと不可能じゃないかしら?」
了子君の言う通り、いくら何でも無理がある。
奏の負った傷の中で、目立った怪我は腕の骨折だ。だが、戦闘の中でその他にも沢山の傷を負っている。正直に言えば、「絶唱」を放った翼の方がまだ何倍もマシな状態だ。
それにしても……響君や未来君から話を聞いた時からそんな気はしていたが、奏の中で響君という存在は中々に複雑なものとなっているようだ……。できることなら、それをなんとかしてやりたいが……確実性も無ければ、今はそんな余裕も無い。立場もあって。目の前の問題をなんとかすることを優先せねばならん。
だが、しかし……こうも難色を示す奏を諫めるには、どうすればいいのやら。上から押さえつけることもできなくは無かろうが……それでいいのかと思う俺がいる。
「なら、こうしましょう? シミュレーターを使った特訓で実際に戦ってみせて……実際に片腕でも問題無く戦えたのであれば作戦を奏ちゃん中心で組み上げるわ。それでいいでしょう?」
「ああっ! 判り易いし、それで問題無いな!」
と、俺が考え込んでいるうちに、何時の間にか勝手に話が進んでいた。
そして、俺が止めるよりも先に、奏はトレーニングルームへと足早に行ってしまうのだった……。
「了子君!? 今のはあまりにも……」
「仕方ないでしょう? あの様子だと口で言い聞かせても素直に聞いてはくれないだろうし……作戦本番に勝手に出動されたりして下手にひっかきまわされるよりも、ここでちゃんとした理由を作っておいて止めた方がいいじゃない?」
「それはそうだが……」
「それに、あの体調じゃあいくら奏ちゃんでも満足に戦えないわよ。そんな心配しなくってもいいって~」
本当に、そうなのだろうか……?
俺の脳裏には、片腕だけでも十分に
しかし、トレーニングルームでの出来事は、俺たちの予想の斜め上をいくものだった――――
「なんで……! 歌が、浮かんでこねぇ……!?」
―――――――――
「「ガングニール」のシンフォギアには異常無し。奏のメディカルチェックも同じく……か」
「おそらくは心理的な問題によるものなんでしょうけど……これと言った前例も無いわけだから、解決策はパッとは思い浮かばないわね」
……トレーニングルームのすぐわきにある一室。あたしもそこにいて、そのそばで弦十郎の旦那と了子さんが何か言ってるけど、あたしの耳には上手く入ってこなかった。
あの
――――知っていた。
あの時……
時限式ゆえの活動限界を超えて負荷のことなんか考えずに暴れ続けた一時的な反動だと思ってた……けど、それは数日経った今でも解消されてなかった。
その感覚に、憶えはあった。
だって、それがあたしにとっては当たり前だったから。家族を奪ったノイズに復讐したいとチカラを求めて
その
なんでだよ……? 原因がわからない。
まだ復讐は終わってなんかないのに……むしろ、やっとその黒幕が見えてきたってところだっていうのに……!
まだ、まだ……ヤルべきことが……ッ!!
「…………そうだ」
「奏?」
「奏ちゃん?」
「
「……いいえ、奏ちゃん。Linkerは正常に効力を発揮してたわ。問題はもっと別の所に――」
了子さんに言われなくてもわかってる。
Linkerがいつも通りのものだったってことくらい、この身で嫌と言うほどこの薬と付き合ってきたあたしには――それがどうして違うのかとかいう薬の調合の違いはわからなくたって――別の
でも――
「だったら、もっとLinkerをよこせよっ! 濃度上げるなり、量を多くするなりすれば上がった適合指数頼りで無理矢理にでも……ッ!!」
「落ち着け、奏っ! そんなことをすればお前は――いや、そんな事をしたところで」
「だったら指咥えて諦めろっていうのかよ!? あたしは「ガングニール」の装者だ! ノイズを……それを操る胸糞悪い奴らを全部ッ全部! ぶっ潰さなきゃらんねーんだよッ!!」
こうなったら、了子さんのすぐそばにある机の上のLinkerを奪ってでも……!!
弦十郎の旦那によって力尽くで止められるかもしれないけど、隙さえつければ全然可能性はある!
タイミングを見計らおうとふたりを観察しようとし……気付いた。
この部屋に、左手、左足にギプスが巻かれ、その他にもあちこちに包帯を巻いた葵が入って来たことに。その後ろにはオペレーターの友里さんがいる……旦那たちにようがあったのか、ただ単に散歩か何かなのか……。
弦十郎の旦那と了子さんは、その立ち位置のせいか、アタシに神経を向けているせいか葵たちには気づいていないみたい。
松葉杖を突きながら一人でコッチに向かってくる葵。こんな戦えなくなった情けない姿を知られるのは嫌だけど……背に腹は代えられない。
旦那たちが葵に気づけば……気が反れ、隙が出来るだろう。なら、アタシが声を上げてやれば……!!
――――今は大事な話をしてるんだ出ていっててくれ、葵っ!!
その言葉はあたしの口からは出てこなかった。
変わりに
違和感
息苦しさ
痛み
そうだ、こう……一気に肺の中の空気が押し出されてたんだ。
いつの間にか、身体が密接するほどの距離まで来ていた葵。視界の下の方にギリギリ頭頂部が見える程度だ。
ピョン!と跳び付かれて一気に距離が縮まったのか?
その衝撃で息が詰まったのか?
眼前の、突然の葵の登場に驚いてか、大きく目を見開いている旦那と了子さんから目を離し……葵へと目を向けた。
「あ゛……あ゛お゛ぃ゛……?」
痛い。苦しい。うまく声が出ない。
その理由を――――知った。
シリアスに割って入る、カウンセリング(物理)。
……と言うのは冗談で、ついにフィーネに鞍替えして暴れる気になったのかな?