我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
足りないフォニックゲインは錬金術由来で何とか……って、考えたら、あの炎みたいなエフェクトは……!って思ったけど、よくよく考えたらそれ「AXZ」で出来なかった奴だった件。
「あ゛……あ゛お゛ぃ゛……?」
そんな凄い声を出しているカナデのお腹には、
Q.《(無言の腹パン)》の誘発効果は、任意効果ではなく強制効果なのですか?*1
誰か、助けて……!?
事の始まりは、
そもそも、全く動けないとなればワタシだっておとなしくしていた。だが、何故だか知らないが回復力がもの凄く高いらしく一番重傷だったのに真っ先に快復しそうな勢いで治っていき、ちょっとした支えさえあれば歩き回れる状態にまでなってしまったのが悪い。
そんなこんなでたまたま立ち寄ったトレーニングルームに、ゲンジュウロウさんとリョーコさん、そしてカナデがいた。
「なにしてるんだろ~?」なんて感じに軽く聞き耳をたて覗いたら……修羅場というか、もの凄く剣呑な空気でした。主にカナデが。
詳しいことは知らないけど、どう考えても摂取量には注意が必要そうなお薬――確かリンカーとかいうシンフォギアを使うためのブーストアイテムみたいなの――を「沢山使ってやる!」みたいなこと言っているカナデがいたのだ。なんか、シンフォギアが纏えないとか何とかそんなこと言ってたし、けっこう切羽詰まった様子だった。
だからといって、カナデに無茶をして欲しいとはワタシは全く思わない。
シリアスな場面にメイ言をブッこんでしまうリスクや、羞恥心を捨てることなど……ある種の覚悟を決めて、《
その結果が、この腹パンである。
――――彼女は瑠璃なのか?『彼女は瑠璃ではない』
いやまあ、確かに止まるだろうよ? カナデの動きはさ。
でも、もっとやりようあるだろうっ!?
思えば、口だけでなく表情や仕草に名言・迷言の影響が出ていることはこれまでにもあった。腹パンだって、あのライブの一件で一回死んでから最初に目覚めた後に『彼女は
しかし、今回は言い訳が出来ないくらいガチで入ってしまっているので、どうしようもない……。
あっ、ようやく拳を引いた。
って、あ、アレ? 拳を引いたのはいいんだけど、その腕は脱力するどころか、むしろギュッと筋繊維が縮こまって力を溜めてる感じっていうか……もしかしなくても、もう一発ヤル気っ!?
ちょ、まッ!! 止ま――――
「『キサマがどうすべきか教えてやると言ってるんだ!』」
――――おおっと!
今度の拳は、今度は先の腹パンで若干身体をくの字に曲げていたカナデの
そのアッパーカットは吸い込まれるように顎に命中し、元々よろけていたカナデの身体は浮きあがり、後方へ――
ハハハハハッ……現実逃避、ダメですか? もうやだぁ……なんでとまんないのぉ……!?
シンッと静まった空間に苦しそうにむせるカナデの息だけが響く。
そんな中一番最初に動いたのは――――
「……なっ! なにをしているんだ、葵君っ!?」
我らが
でかした! けど、止めるのもっと早くても良かったよ!? 具体的には最初の腹パンした時点!!
ワタシの視線の先では、苦しそうに肩で息をして目を白黒させながらもワタシの方を見てくるカナデが。
そして、カナデに駆け寄るアオイさん……それと、ノンビリと歩きながら近づきつつも、カナデだけではなくワタシのこともチラチラと見ているリョーコさん。
「久々の奇行かしら……? それにしては突発的過ぎるし、自分自身じゃなくて周りを傷付けるのも初めてだし……ちょっと気になるわねぇ」
「了子君!? 冷静なのは結構だが、そんなことを言っている場合では――」
「『なんだその目はっ!?』」
何をしようとしているのか、ワタシの体は羽交い締めにされながらももがき続けている。
そして、当然の様にいうこときかないお口も……
「『そんな捨てられた飼い犬のような目をしているから、鬼柳に敗北したんだ!!』」*5*6
……うん。わかったぞ、このいうこときかないお口の意図は。
あれだろ? 心身共にボロボロっぽい色々と心配なカナデを叱咤激励して状態改善を図りたい……そういうことだろう?
いや、考え自体は悪くはないと思うけど……手をあげたらアウトでしょ!? というか、ヒビキちゃんをミクちゃんとの約束の流星群を見に行かせる時もそうだったけど、ワタシのお口、随分と刺激的過ぎやしないか? もうちょっと思いやりとか優しさとかがあってもいいんじゃない?
そして、
「誰?」って思われるならまだいいけど……今の話の流れ的に、もしかするとあのクリボー(仮)ちゃんが「
それに、今思い出したけどこのセリフ、死んだ鬼柳が恨んだだのなんだのってセリフが続くはずだ。となると、「あの子も死んで生き帰ったのか!?」とか「えっ、昔からの知り合いだったの!?」的な勘違いが加速するから、このお口をなんとか止めたいんだが……体は、ゲンジュウロウさんが押さえてくれてるからいいけど、お口は自由だしなぁ。
ま、まあ! 過程はともあれ、身体への負荷とか考えないお薬ぶっぱを止めることが出来たから良しとしよう(震え声)。
代償として、ワタシが完全にヤバイ人だけど……そもそも変なことばっかり口走ってたから、元からヤバイ人みたいなもんだし些細な
だから、さ? ノイズに奪われた家族のためにも戦いたいのはわからなくはないけど、一回冷静になって考えよう?
それが本当に家族のためになるのか、例え自己満足だったとしても他にもっとやりようがあるんじゃないか……とかさ。そんな生き急ぐ必要はないんだから、この機会に一回立ち止まって考えてみよう?
もう本当に、前の話と繋がらない意味わからないこと言うのはデフォってやつだね。今のは、個人的にはジャックのセリフの続きがこなかっただけで安心できたん――――
「……れよ」
――――だけどね……ん? 今、カナデが何か言ったような……?
まあ、おおよそ予想はつく。殴りかかったことに対する文句だろう。いきなりあんなにやられて何も言わないわけがない。もしも逆の立場だったら、ワタシだって……いや、まず叱るか。一応
なんにせよ、いらんことやらかしたのには間違い無いんだから、ワタシには真摯に受け止めるしかない。
真摯に受け止めると言って、コレである。やっぱり一番の敵は自分自身(のお口)じゃないか!
というか、自分の口から出てきた言葉に噴き出しかけてしまった!
嫌だぞ、そんな自分の言ったギャグに自分ひとりで爆笑する酔っ払いのようなヤツになるのは! ……でも、しかたないじゃない。登場シーンをはじめとしたあのキモイルカ*11*12が脳裏に浮かんできたんだから。やばいんだよ、破壊力が――――
「やめてくれよっ!」
…………っ!?
か、カナデ……? 何言ってるの?
ゲンジュウロウさんが止めてくれたから、もう殴ってないよ?
なのになんで、そんなにボロボロ泣いてるのさ……!?
「やめてくれっ……わけのわかんないこと言わないでくれ! わかる、わかってるんだッあたしのせいでっ!! あたしが憎いんだろ、ぶん殴りたくなるほど……文句だって恨みだって山ほどあるはずだ、だったらそういう態度でいいんだ……っ! 響もそうだ。無理して隠さなくっていい……戦ってくれなくていいんだよ! あたしが壊しちまったもんを、なんで自分達でさらに壊そうとするんだよぅ!!」
え、うん……?
あっ。なんか前後の繋がりがおかしいけど、なんとなくはわかった! わかったけど、どうしてそうなるの……っ!?
今更かもしれないけど……「シンフォギア」纏うためのお薬云々抜きにしても、奏の精神状態、危ういんじゃない?
え? なにそれ、何時から? 実は内心ずっとこんな感じだったとか? 「無理して隠さなくっていい」って、隠してたのはどっちだ!?
そんなカナデがなんやかんやあったうえにワタシが
いやまぁ、ワタシがしたくってしたわけじゃなくて、お口と同じで体が勝手にやらかしただけだし(震え声)。どれもこれも《星杯の精霊リース》ってやつとドン・サウザンドのせい――――なんて他人のせいにしてる場合じゃない! なんとか……なんとかしないと!!
まずは、ヒビキちゃんの時と同じく土下座から……って、ゲンジュウロウさんに羽交い締めにされてるから出来ないじゃないか!? どうしてこんな状況に……うん、それもワタシが原因だね! 本当にどうするの!?
いや頭を下げたところで勘違いが進むだけになりかねないから、まず根本的な問題である誤解を解かなきゃ! ちゃんと伝えて……それが出来れば苦労してないよっ!? だったら、今できることは……!?
「恨んでるっていうならいくらでも殴ってくれよ! 嫌いだっていうなら、なんで笑いかけてくるんだよ!? あの時も、今回だって、あたしのせいなんだぞ!? 死にぞこないだって、情けない奴ならそうだって罵ってくれよ!! 侮辱しろよ!! そばに寄り添ったりしないでくれ!! なんで何もあたしを――馬鹿かっ! 言えないんだっ、それも、言葉もあたしが奪ったんだ。だからこんなに…………
お腹を抱えるように前のめりにうずくまっていくカナデ。
もう、聞こえてくるのは小さくか細い嗚咽だけになっていた……
――と、ワタシの視界がグルッと変わり、カナデたちが見えなくなった。
身体が勝手に動いた……のではなく、ワタシを羽交い締めにしていたゲンジュウロウさんが反転したのだ。
「……ふたりは奏を頼む」
「は、はいっ」
「りょうかーい。こっちは任せといて~」
アオイさんとリョーコさんの声が背後から聞こえる中、足をぷらーんとしたままワタシは運ばれ、部屋の外へと出てしまう。
このまま残ってたところで何が出来たかわかったもんじゃなかったし、これでいいのかもしれない……が、やっぱりスッキリしないし、何もできなくともそばにいたい。
……いや、カナデを苦しめているのは他でもない
部屋から出て数歩出たところで、自動で扉が閉まった。
そこでゲンジュウロウさんは羽交い締めを緩め、ヒョイっとワタシを持ち替えた。いわゆる「お姫様抱っこ」……いや、足ではなく腰ごと持たれているから横抱きか?
いや、そんなことしてくれるくらいなら、いっそのことワタシがカナデにしたみたいに、殴るなり投げるなりして壁にぶつけてほしいんですけど……。
「すまない」
……? こっちが謝るべきことはあっても、ゲンジュウロウさんがワタシに謝ることなんて無いだろう?
むしろ、ワタシが謝るべきだ。ゲンジュウロウさん達に……他でもないカナデに。上手くは喋れないけど、それでも……。
「奏も言っていた例の言語障害の影響もあってか言葉や言い方はアレだったが、キミの伝えたい気持ちはわかった……だが、今の奏には、君の想いは届きそうもない」
ワタシの想いが届きそうにもない……? これは、アレだな。ワタシのこのいうこときかないお口が言った事を、なんか変な風に受け止めれ変換し勘違いしちゃってる感じだな、きっと。
となると……はて、ワタシは誰のどんなセリフを言っていただろうか?
確か、そう「喋らないで」って……ああ、いや、違う。それはカナデがワタシに言ったことであって、ワタシが言った事じゃない。
「そいつは俺の台詞だ。大人であり、なおかつ自身の能力が高いと自負しておきながらも……対ノイズ戦闘も出来ず、サポートもこの通り……てんでダメだ」
小さくため息をついたゲンジュウロウさんは、それを最後にキュッと口を閉じた。
「……そんな俺だが、ここはどうか任せてくれないか?」
長い沈黙の後、ゲンジュウロウさんがそう言ったのは……ワタシを例の医務室のベッドに下ろした後だった。
いったい何の……いや、今の状況からしてカナデのことだろうか?
「父親代わりなんてことは口が裂けても言えないが、これまでそこそこの期間、上司としてだけではなく
「あそこまで気に病んでいると気付けず、何もしてやれてなかった俺が言うのもおかしいかもしれないがな……」とも、小さく呟いたゲンジュウロウさん。見上げたその顔は、あからさまには歪んではいなかったものの、どこか怒りにも似たものが感じられた。その対象はきっとゲンジュウロウさん自身……悔しさや不甲斐なさといったものだろうか……?
というか、ワタシには決定権も拒否権もないだろう。頷く他無い。……というか、ワタシのことなんてどうでもいいから、カナデのことをお願いします。
「それはそうと……殴るのは、流石にどうかと思うぞ?」
あっ、はい。
―――――――――
ワタシは、その驚異的な回復力で全快とはいかずとも一般生活にはほぼ支障が出ないレベルまで回復していた。
数日だけで骨もほぼ完ぺきに元通りというありさまに、ゲンジュウロウさんやリョーコさん&
その他にも外で色々あったらしく、何やら慌ただしくしていたが……ワタシはよく知らない。
あんまり関わってないっていうのもあるけど、あんまり意識できなかった。率直に言うと、
あれから本部をウロチョロ散歩したりもしたが、
あの時、
……カナデは元気にしているだろうか?
彼女は随分と自分自身を責めてた。自虐……自罰的と言うかなんでもかんでも自分のせいにして背負いこんでしまってる感があって心配なのだが、何かしてあげられないものか?
そもそも、ワタシの喋りが
とはいっても、もはやワタシとはまともに口きいてくれる気はしないんだけど……
ううん、カナデのことはゲンジュウロウさんに任せておこう。
本人がそう言ってたんだ。それに、あの時やらかしたことでよーくわかったが、平常時ならまだしも切羽詰まった状態なんかにワタシが入っていくのは、
けど、場合によっては――――ゲンジュウロウさんがダメっぽかったら、
……しかし、やることが無いとなると少し困るな。
というか、このまま全快した場合、ワタシはどうなるんだろう?
やっぱり、このまま本部暮らし続行か? となると、やれることは本部の雑務のお手伝いするくらいだろうか? それはそれで、別にいいけれど……何より、本部ならばほぼ間違い無くどこかしらのタイミングでカナデに会えるだろうし。
と、そんな時、病室のドアが開いた。
「カナデかな?」って思ったけど、入って来たのはヒビキちゃんとミクちゃんだった。
「やぁ! 葵ちゃん、久しぶりー!」
「おじゃまします」
……そういえば、ヒビキちゃんやミクちゃんと会うのもなにげに
でも、話には聞いてはいた。確か、昨日か一昨日かに聞いた話じゃあ、作戦の要だとかどうとか言ってたっけ?
あと、今朝というか昨晩というか……未明?
あの時はボケーッと聞いてて「フィーネ嬉しそうだなー……カナデ、ちゃんとご飯たべたかなー?」なんて思ってたけど、今更ながら「暴走」ってロクでもなさそうな響きだな。あれだろ? 味方だったはずの奴らがウイルス感染し暴走、一転して敵側にっていう。*15
でも、ヒビキちゃんは見たところ何の問題もなさそうな様子。「暴走」とやらも大きな問題にはならなかったんだろう。
隣にいるミクちゃんも……あれ? なんで一般人のはずのミクちゃんが
「いや~、追加で出されたレポートに手間取っちゃって、こんなじかんになっちゃってさぁー」
「響っ、そういう話は後でもいいでしょ? 今はあの用事の方を優先しないとでしょ?」
「ああっ! そうだった!!」
ふむ。ミクちゃんがなんでいるかは分かんないけど、何やら用事があるらしい。
「ええっと、それで用事って言うのは、その……――――」
一歩
いきなりなんだろう……って、ああっ!
ヒビキちゃんのことだから「わたしが未来と流れ星を見に行ったせいで、巻き込んで怪我させちゃってゴメン!!」とか、そんな感じにあの夜のことを謝ろうとしてるんだろう。
あれは、ワタシの勝手で軽率な思い付きによる行動と、追いかけたのが本当に偶々ノイズ事件の裏にいたクリボー(仮)ちゃんだったからであって、ヒビキちゃんがあやまることではない。むしろ巻き込んじゃったのってワタシの方だし……だから、そんな頭下げなくてもいいんだけどなぁ?
「葵ちゃん、
いーよいーよ、そんな気にしないで。ヒビキちゃんのせいじゃなくって、間が悪かったというか、ワタシが……ゑっ?
「お願いします!」
…………どういう…ことだ…!?
い、いいい、一旦落ち着こう? ねっ?
ほら、ベッド脇のテーブルに置かれたこの「ブルーアイズマウンテン」コクが違うだろぅ……って、これはちょっと前に様子を見に来てくれたアオイさんが持って来てくれた
「『半端な気持ちで入ってくるなよ……デュエルの世界によぉ!!』」
んん? なんか聞き覚えがあるのは決闘者として当然なんだけど、なんか
って、落ち着くどころかケンカ腰だよ。やめようぜ、カナデの時の二の舞になったら……イヴちゃんの身体だから心苦しいけど、流石のワタシも自分で自分の口を縫い付けちまうよ?
「うん、半端な気持ちかもしれない……だって、あの鎧の子と戦う決心なんてついてない。昨日だって、逃げるので精いっぱいだった。起動した「デュランダル」で一応なんとかなったけど、でもそれも……わたしの望んだものじゃなかった」
下げていた頭を少しだけあげ俯き気味な体勢になったヒビキちゃん。
その影の落ちた顔は悲しそうで、そして悔しそうで……つらそうだった。
だけど――――
「――でも……だとしても!」
――――その目には、燃えるかのように熱く……そして強い意志が感じられた。
「悔んでばっかりじゃいられない、戦えるように……強く、もっと強くならなきゃいけないんだ。わたしは立ち止まってなんてられない……前に進んでいきたいんだ! だって、誰かを救うことはきっと間違いなんかじゃないから!!」
それは、ワタシが眺めるばかりの、視線の先にいるだけだった伝説の――本当の
「『そうだ、オレにチカラなどない!』」
そうだ、ワタシは
それに乗っかって、なんとなく思ったように……時に成り行き任せに過ごしているだけで、ワタシ自身が何か成したことなんて、無い。
「『誰かを助けることなどできるはずもない!』」
助けたものだって、きっと、ワタシがしなくたってカナデやツバサが……他の人が助けることができたばかりで、そこに出しゃばって良い所取りでかすめ取っていった功績に過ぎない。
その時のチカラだって、ワタシのチカラじゃなくってあくまでもただの借り物のチカラ……
「『ただ俺は傷ついていく仲間から目をそらすことはできないだけだ!』」
そのくせ、自分の感情を優先で勝手なことして……結果、それがみんなを悩ませ、苦しめて……
そうだ。カナデがそうだったように、あのライブの時や今回の事だって……ワタシの行動や言葉がかえってみんなに辛い思いをさせてしまうような状況を作ってしまってる気がするんだ。だけど、だからって……
「『仲間が救われることをただ願うことしかできないんだ!』」*16*17
……こんな
他の人は案外どうでもよくて、身内には生きていて欲しい。出来る限り、笑顔でいてほしい。
カナデも、ツバサも、ゲンジュウロウさんも、アオイさんも、ユミも、ヒビキちゃんも、ミクちゃんも……どこかで元気にしていると信じている、
そんな無茶を押し通そうにも、ワタシに出来ることなんて限られてて……だから、このままじゃあ無理だってわかる。
ワタシの出来ることなんて、MAXで借り物のチカラで打算的に動くくらい。でも、それさえも、自分を傷つける行為になりかねない……そうなれば、優しさが過ぎるみんなを苦しめてしまうだろう。……でも、きっと押し通そうとするだろう、ワタシは、ワタシの出来る限りを超えて。
そんな雑魚以下の足を引っ張る厄介者でしかないワタシが、主人公のような輝きを持ってるヒビキちゃんに教えることなんて……いや、そもそも、戦おうとする……ココにいること自体が…………
「だからだよ」
ッ!?
……ヒビキちゃんが、ベッドに寝てたワタシの手を取って、その両手で包み込むようにしてギュッと握ってきた。
「わたしは奏さんに救われた、翼さんに守ってもらった。そして――
……違うよ、ヒビキちゃん。そんなのは、決闘者たちの言葉に印象を引っ張られた
あの
顔を逸らす……が、ワタシの手を握ってた内の片手が放され、それがワタシの頬に当てられてクイッと再びヒビキちゃんの方へと視線を戻された。
「恐いんだよね。またあの子に届かないかもしれないって思ったら。それに、凄くいたかったんだから恐がっても仕方ないよ。……つい最近までわたしは勘違いしちゃってたけど、奏さんも翼さんも、葵ちゃんだって普通の子なんだもん。ワタシの知らない辛い思いもして、色々背負って……それでも頑張って戦ってるだけで、わたしが勝手に思ってたようなヒーローなんかじゃない」
「だから、さ」と、優しく言い聞かせるかのようにヒビキちゃんが言葉を続ける……。
「わたしに葵ちゃんの人助けのお手伝いをさせて? 色々教えてもらってもすぐには上手く出来ないかもしれないけど……それでもきっと、届くよ! 1人よりも、2人なら! 絶対に!!」
何度でも言う、それは、勘違いだよ……!
そりゃあ、フィーネと関係のあるっぽいクリボー(仮)のことも放ってはおけないよ? 『何度でも受け止めてやる! 全部吐き出せ、お前の悲しみを!』ってセリフに反応したあの子の顔は、救いを求めることも忘れたかのような、苦しそうな顔だった。
事情なんて知らないけど、何とかしてあげたい。でも、出来るか出来ないかとは話は別だ! 話を聞いて、なんとか気持ちを理解できたカナデにすらかけられる言葉の無い今のワタシには――――!!
「「かっとビング」だよっ!」
――――それは……ッ!!
「あのライブの時に、葵ちゃんがわたしにくれた言葉……辛いリハビリや行き場の無い怒りに苦しんだ時、頑張ってもダメかもしれない、何をしても変わらないんじゃないか……そんな時に、ノイズに立ち向かっていく葵ちゃんの姿と一緒に思い浮かんで、不思議と勇気をくれる言葉なんだ…………なーんて、言葉の意味がわかんないから、本当はこんな時に使っていいものなのかはかわかんないけど――――」
困ったように笑う
嬉しいからじゃないし、困ってるヒビキにじゃない……自分に対して、だ。
「『それは勇気をもって一歩踏み出すこと……』」
「葵ちゃんっ」
ワタシが
「『それはどんなピンチでも決して諦めないこと……!』」
「うん!」
デュエリストたるもの、最後の最後まで諦めないものだっていうのに……!!
「『それはあらゆる困難にチャレンジすること!』」
「うんっ!!」
ワタシは、デュエリスト失格だ!
――――今は、そうだとしてもっ!!
――――――――――
「良い雰囲気なところに水はさせないけど……響ってば、葵ちゃんの言うことがズレたり変になったりすること忘れて……ううん、きっと大丈夫だね。だって――――」
「「かっとビングだよっ!
「――――ふたりとも、あんなに笑ってるんだからっ」
イヴちゃんが活躍するカウンセリング回といったな……間違ってはいないだろう!?
……折れてからの復帰が早いのも決闘者ならでは。なお、それが連続して成長がみられなかったら色々ヤバイ。なので、きっとイヴちゃんは成長してくれる……はず!!
あっ、あと奏の内心や歌えない理由とか、「デュランダル」のこととか、未来さんのこととかは、それぞれの視点で補完というか掘り下げられていきますので、少々お待ちください。