我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

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遅くなりましたが、更新! 大体注釈で遊び過ぎたせい!
感想返信も遅れてしまっていますが、まとめて変身しますので少々お待ちください!
つまり「僕だ!」――じゃなくて、ドンなんちゃらのせいなんだ!!(いつもの)


今回……ものすっごく不親切というか、わかり辛い表現になっている部分があります。
というのも、今回()()()視点での話で、その子からすればあたり前というか「そういうもの」な部分をそのまま表現しようとしていますので、けっこう他のキャラのセリフと地の文との間にズレが生じてしまっています。
大変申し訳ありません、ご了承ください。

………え? ズレがあるのはいつものことだ、って?
『まぁな!』



そして、以前にもこの子が登場した回に指摘されたのですが、この作品では結構原作と他人の呼称が変わっているキャラがいたりします。主に(イヴ)ちゃんの地味ぃーな影響からなんですが……そこについては、いずれ触れるかもしれませんのでとりあえず現段階では「そういうもの」だと思っていただければ幸いです。


2-8

「えーっと? コレがアッチだから……コッチの道ね」

 

あたし、板場(いたば)弓美(ゆみ)()()()()からのメールを確認しながら、普段は通らない道を歩いていた――――なんてモノローグがついちゃったら、まるでアニメかその原作になったりするラノベみたいじゃない?

……まあ、ノイズはびこるこの現実は、下手なアニメよりもスリリングでデンジャラスなんだけどね……?

 

 

そうそう、そのメールの相手はあたしのちょっと変わった友達・(あおい)ちゃん。

 

 

一時期……数日間連絡が取れない状態だったんだけど、少し前から返信が返ってくるようになった。

それによれば、なんやかんやあったらしく返信どころかケイタイ等にも触れられなかったらしい。具体的に何があったかは教えてはくれなかった……けどまあ、メールの文面と電話ごしだけの確認しかできてないけど、とりあえずは元気そうで一安心。

 

――なんだけど、なーんか引っかかるのよねぇ?

なんというか、こう、言葉の端々から不安感というかそんな雰囲気があるの。連絡が取れない間なにかあったのは間違い無いだろうけど、それを引きずっちゃってるんじゃないかって気がして、あたしの方がドンドン心配になってきちゃった。

 

というか、その()()()()()()()()()()の直前に、あたしが響と未来ちゃんの関係が心配で葵ちゃんに相談したことがあるから「もしかして、あの時あたしがお願いしたせいで無茶しちゃったり!?」って予感がしてしまってて余計に不安になっちゃってたりする。

うーん、学校で会ってる響と未来ちゃんはいつも通り……いや、むしろ最近は今まで以上に密接になってる気さえするくらいなんだけど、もの凄く落ち込んでたりはしないからきっと一緒の所にいる葵ちゃんもそこまでヤバイ状態にはなって無いはず。もしも何かあったなら、それこそ後日お礼をひとりで言いに来た未来ちゃんが何か言ってきたはずだしね……今思えば、あの時未来ちゃんに何か知らないか聞けばよかったかな?

 

 

大丈夫だとは思う、けどやっぱり気になる。

 

そんなわけであたしは友達として「今度、時間ある時に会わない~?」って気軽に誘ってみることに。

その結果は、思ってた以上にすんなりと葵ちゃんが「OK」を出したってだけで「あたしの気にし過ぎだったのかなー」って思うくらい。

でもねぇ?

 

出された条件――というかそこでの雑談混じりの話を要約すると「この日の昼前からでいい?」、「朝からある特訓が終わった後にー」ってことだったの。

位置情報とは別に送られてきたデータ――画像(しゃしん)には、沢山の木に囲まれた場所にあるそこそこ大きそうな滝、他にもその特訓とやらで使う場所なのか少しひらけた広場(?)などなど――――

 

 

「小さめとはいっても、山で特訓だなんてそれこそアニメか何かじゃない」

 

 

――――結論。別の意味で気になってきた。

 

 

 

まぁ、そんなこんなで山道に入っていったわけだけど……うん、虫対策を用意しといてよかった。

 

さて、ここから先はケイタイ端末のネット上のマップには詳細が描かれてないのよね? とりあえず道なりに歩いていれば、画像の場所や何のかは知らないけど訓練をしてるっていう葵ちゃんの痕跡が見つかるかしら?

 

 

「―――! ―――!」

 

 

と、数分歩いたところで、さっそく威勢のいい声が聞こえてきた。きっと特訓とやらの掛け声か何かでしょうねぇ。

 

そう思い、道なりに進み――脇道との分岐点に差し掛かったあたりで、その声は脇道の先の方から聞こえてきている気がしたから、ソッチへと進んでみることに……って、()()

歩きながらも、耳を澄ませる……

 

 

「―――! ―――!」

 

 

聞こえてくる掛け声(?)だけど……コレ、葵ちゃんの声じゃないような?

特訓としか聞いてなかったし、他に誰か一緒にしてるかどうかって話は聞いてなかったけど……他の人がいるなら乱入しちゃあ悪い気もする。

 

 

「―――! ―――!」

 

 

……でも、気のせいかしら? この声、葵ちゃんの声じゃないんだけど、どこかで聞き覚えが……?

 

バシャバシャと勢い良く水が流れ落ちる音とせせらぎのような音とが聞こえてきた。きっと、例の滝が近づいてきてるんだろう。この脇道の先に滝が?

……ってことは、滝の音に負けない大きくよく通る声だったのね、この掛け声は……。

 

 

 

と、道の両脇にずっと続いてた林が数メートル先のあたりで途切れてることに今更気付いた。そしてアタシが歩いてるこの道の先に十数メートル木の無いスペースがあって、真っ直ぐ先(つきあたり)には3階建ての建物くらいの高さの絶壁が……きっと、あのあたりに例の滝があるんだろう。

 

「特訓の邪魔しちゃ悪いし、少なくとも一段落つくまではコッソリ様子見かしら?」ってわけで、林の境界線にある木の一つの陰に隠れて、そこからそろーりと特訓している誰かさんを覗いてみる。

 

そこにいたのは――――

 

 

 

 

「ドロー! っドロー!」

 

 

 

滝つぼの、滝の前あたりに不自然なほど自然にど真ん中にそびえる岩に立ち、肩幅ほど足を広げた体勢で掛け声と共に右手を滝の中へと横薙ぎに振るう人影。

見覚えのある白いリボンで、いつもと違い少し高い位置で髪を一纏めに結んでいるジャージ姿の()()()()()が――――

 

「――いや、なんで?」

 

なんで未来ちゃんがここに? 何してるの? もしかして、葵ちゃんと一緒に特訓してたのって未来ちゃんなの? だとすれば……あたしが葵ちゃんに未来ちゃんと響の関係のこと話して頼んでから、何かあって――いやいやっ! なにがあったらこうなるのよ!?

 

そして、あたしの気のせいじゃなければ、そこそこの大きさがありそうな滝の流れに、未来ちゃんが腕を振ったその一瞬だけど確かに切れ間ができて滝の向こう側の地肌が見えた気が……!?

 

 

「ぐるるぅ、クゥン」

 

「いやいや、一週間そこらじゃあんなになるわけ……え?」

 

「グゥ?」

 

 

聞こえてきた声に振り向いてみれば、下手にガタイの良い大人よりも大きそうな()が、まるで「どうしたん?」とでも言いたげに首をかしげて――

 

――って、え?

 

 

「くまぁっ!?」

 

 

あたしが声をあげる。

っと、熊の顔つきが変わった。まるで敵を睨めつけるかのような鋭い眼光が――あ、あれ? よくよく見てみれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?

 

 

「グゥルルルゥ……!」

 

 

「はぁあああーーーーっ!!」

 

 

聞き覚えのある声が近づいて――離れてく。

それと共に、あたしのすぐそばを風が通り過ぎた。

 

 

 

「熊を一頭伏せて! タァーーーーンエンドッ!!」

 

 

 

地響き。それはまるで地震が起きたのかと思ってしまうほどの。

 

「で、できた! ……じゃなくって!?」

 

それを起こした――あたしの後ろにいた熊を投げ飛ばした――張本人は、投げ飛ばすために腰を低くしていたその体勢を戻して、コッチに勢いよく振り向いた。

 

「大丈夫ですか! 怪我は――――って、あれ? 弓美ちゃん!?」

 

「どうしたの響――え、弓美ちゃん? どうしてここに……って、もしかして?」

 

熊を伏せてターンエンドした人は、あたしもよく知るクラスメイト・響だった。

 

そして、騒ぎを聞きつけ遅れるようにそばへ駆け寄ってきた未来ちゃん。

しかもその未来ちゃん、足元が濡れている様子がまるで無い。つまりは、あの滝つぼのど真ん中の岩から川岸まで余裕でひとっ跳びだったってことで…………あ、いや、滝を切り裂くのに比べたら全然常識の範疇なんじゃないかしら?

 

 

「どうしても、こうしても葵ちゃんが……だいいち、アニメでもこんなトンデモ特訓は……」

 

と、葉っぱが揺れる音と共に、上から――きっと数あるの木のうちのひとつの上からだと思う――誰かがあたしのすぐそばに跳んで降りてきた。

まあ、その「誰か」っていうのはあたしが探してた葵ちゃんなんだけど……

 

 

「『なぁ、王様。お前弱くね?』」*1*2

 

 

「確かに、あるような気もするけど「頻繁に(よく)」は無いでしょうがっ!?」

 

あたしのツッコミに葵ちゃんは笑うばかりで、響と未来ちゃんは首をかしげてた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

特訓の予定は一通り終わっていたらしく、ひらけた場所の芝生の上に広げられたレジャーシートの上に揃って座ることになった。

そして、なんであたしがここに来たのか……というか、あたしと葵ちゃんの関係とその出会いについて一通り話したんだけど……。

 

 

「へー、弓美ちゃんと葵ちゃんって結構前からお友達だったんだー! 初めて知ったよ……はむっ!」

 

「そうそう。で、今日お昼に誘っても葵ちゃんが首を振ったのは弓美ちゃんとの約束があったから……ってことみたい」

 

「……フライングで一人で食べだしちゃってるじゃないの。そのお昼」

 

そう言いながらあたしが目をやるのは、響が手に持つおにぎり。その出所は未来ちゃんが膝の上に置くようにして持っているバスケットの中。

ご丁寧に準備よく手を洗うための水と布巾(ふきん)も用意してあって、話を始めるのとほぼ同時に手洗いを済ませて、響は食べ始めたのだ。

 

「んくっ! それは違うよ! これは運動の後の塩分補給、お昼じゃなくて……そうっ、いわゆるブランチってやつだと思うから!」

 

「だと思う」って、そこはせめて断言しときなさいよ。ちゃんと理解せずに言ってるのがわかってアホの子感が溢れ出しちゃってるじゃない。ほら、隣の未来ちゃんが苦笑いしちゃってるし。

 

「それにこのおにぎりは塩分とエネルギー補給ができるだけじゃなくって、未来の愛情たっぷりで凄く美味しいんだよ!」

 

「も、もうっ響ったら、そんなこと言って~……!」

 

苦笑いから一転、恥ずかしそうに顔を赤くしながらもどこか嬉しそうに笑う未来ちゃん。

……うん、何かのアニメで見たような光景だ。主にラブコメ系で。

 

 

 

「と、まあこんな感じに未来のおかげで特訓が順調なのはいいんだけど、アームドギアは未だに全然出せそうにないんだよねぇ? 身体を動かせるようになる特訓が大切なのはわかるけど、アームドギアを出すための特訓もしたほうが良いんじゃ……?」

 

 

「『甘ったれるな!』」*3

 

 

「うぇえ!?」

 

「響? そもそも、葵ちゃんは翼さんたちみたいな装者じゃないんだから、アームドギアのことはわからないんじゃないかな?」

 

「あっ、それもそっか。うーん? どうすれば……なんとなくフワァーとしたチカラが出てくるのは判るんだけどなぁ? あー……んっ!」

 

そう言って半分ほどの大きさまでなったおにぎりを一口でほおばった後、目を瞑って腕を組んで考え込むような仕草をする響。……もちろん、口は閉じてはいるけどモグモグと動いてる。

 

あたしからすれば、微妙に話が噛み合ってない気もするんだけど……それ以上に、あたしみたいな部外者が聞いていいのかわかんない話になってきてたりするんだけど……?

よくわかんない単語とか、何故かここで出てくる知ってる有名人の名前とか……。

 

でも、響はモグモグしてるけど内容自体はそこそこ真面目そうな話をしてるし、あたしが横槍を入れちゃって止めてしまっても悪いし、このままちょっと黙っておいたほうがいいかなぁ?

 

 

と、口に入ってた分のおにぎりを食べ終えた響が「それに……」って話を続けた。

 

 

「もしかしたら……だけど、さ。これって――アームドギアを出せないのって、わたしのせいかもしれないんだ」

 

 

 

そこから響が話しだしたのは、「デュランダル」とかいう物の輸送任務で戦えず、逃げ回ってたーって話だった。

そして結局は、逃げきれなくって、でも上手く戦えなくって……最後はその「デュランダル」とかいう物を意図せずに使ってしまい、()()()()()()()()()()()()、「全部壊したい」「邪魔だ」とグワワーッ!ってなって気付いたら辺り一帯を壊してしまってた……という話だった。

 

って、だ・か・ら! コレってあたしが聞いていい話なの!?

 

 

 

「――――で、そんなことがあって、わたしは改めて――ううん、初めて自覚したのかな? わたしは助けを求めてる人の手を握りたいんであって、なんでも壊せる…壊せてしまう武器(こんなもの)を握りたいんじゃないって。握らないと、力が無いと守れないものもあるってことも、使う人の気持ち次第だってわかってるはずなんだけど……でも、やっぱり嫌だって思っちゃってるんだ心のどこかで、さ」

 

――――恐いんだ、誰かを傷付けることが。

 

アニメじゃないんだけど、そんな声が聞こえたような気がした。

だらんと伸ばした右腕を抑えるように左手で持つ響のその両腕は、どちらがとは言いきれないけど確かに小さく震えているように見える。

 

……と、話を聞いてた葵ちゃんの口が動いた。

 

 

「『それがお前の心の闇か』」*4*5

 

 

「えっ……わたし、の……闇?」

 

「……ううん、それは違うよ。アレはデュランダルによって引き起こされた暴走だって了子さんが言ってたでしょう?」

 

 

……あれ? なんだか変な気がするけど……気のせいかしら?

 

と、とにかく!

考え込むように黙ってしまった響と、その肩に手をそえてあげ優しく声をかける未来ちゃん。

そして、葵ちゃんはと言えば―――

 

 

 

「『3つだよ3つ。考えることを忘れないで。生きるための3つのこと。帰るための3つのこと。敵を倒す3つのこと。考えることでキミはまだ生きられる』」*6

 

 

 

――――立ち上がって、人差し指を1本だけピンッと立ててから響のことを見て喋りだした。

 

 

「『お前が言った仲間同士で争うだけが人間の姿じゃねぇ。自分の思いを…魂を仲間に託してともに戦うこともできる。人はそれを絆と呼ぶんだ』」*7*8

 

 

「え? ちょ、わたしそんなこと言ったっけっ!?」

 

「ううん、言ってないよ? きっと葵ちゃんの()()()()なんじゃないかな?」

 

アレって何さ?

未来ちゃんが言ってることはよくわからないけど……? 響も響で何でそんな慌てたように驚いてるのかしら?

 

 

と、そんなふたりの様子を知ってか知らずか、葵ちゃんは折り曲げていた中指も立ててまた口を開いた。

 

 

「『オレを勝利に導いてくれたのは……「見えるけど見えないもの」だぜ!』」*9*10

 

 

「えーっと……どういうこと?」

 

「さ、さあ?」

 

揃いも揃って首をかしげるふたり。

 

葵ちゃんが、けっこう勝負の核心をついてそうなこと言ってるのに……ここはあたしが口出ししたほうが? いや、でもやっぱり、あの政府組織のなんとかって所に所属してないあたしが聞いていい話っぽくないし、半端にしか知らないわけだから……。

 

 

そんなことを迷ってるうちに、葵ちゃんが薬指まで立てて「3」をつくり示して、また喋りだす。

 

 

「『かっとビングだ、オレっ!』」*11

 

 

「あっ、それはわかるよ! 勇気をもって一歩踏み出し、どんなピンチでも諦めず、あらゆる困難にチャレンジする……そう、かっとビング!!」

 

「気のせいかな? なんだか勢いに誤魔化されてるような……?」

 

うん、()()()()()()()()()()()、ちゃんと通じてないせいか葵ちゃんがどこかやけっぱちになってる雰囲気が言葉の端々から感じられる。そのあたりは未来ちゃんの言う通り。

でも、響の様子からして葵ちゃんが伝えたいことはだいたい伝わっているっぽくもあるのよねぇ?

 

 

しっかし、響にとってさっきの言葉がそれほど気に入るものだったのかしら?

ふんすっ!ふんすっ!と鼻息を荒くする響がまるで小学生くらいの子供の様に「はいはい、はーい!」って手を上げて葵ちゃんへと質問を投げかける。

 

 

「言ってること半分くらいわかんなかったけど、その3つをしっかりすればもっと強くなれますか!?」

 

 

葵ちゃんは3本指を伸ばしていた手を解いた。そして、()()()未来ちゃんのもとまで行ってその膝の上のバスケットからおにぎりをひとつ取り出し、それを響へと投げ渡した。

 

 

「『デュエルとは、モンスターだけでは勝てない。(トラップ)だけでも魔法(マジック)だけでも勝てはしない。全てが一体となってこそ意味をなす。そして、その勝利を築きあげる為に最も大切なものは――ここにある』」*12

 

 

そう言って、今度はおにぎりを投げた右手を胸元へと動かしつつ、ピンと立てた親指で自分の胸をトンと指し示す葵ちゃん。

 

……()()

最初こそ「そんなこと聞かれても」っていったのに、普通に口に出てる言葉が案外まともになってきてるというか、今さっきの言葉は――――いや、でも、なんかおかしい……?

 

あっ、そうだ、()()()()()()()()()()()()() 。ってことは、葵ちゃんは一体何を考えているのかがわかんないや。んん? 待って。それってむしろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

普段はそう気にしてないからか一瞬わかんなかったけど……これって副音声になれちゃってたせい?

 

 

うん、まぁどっちにせよ、葵ちゃんは勿体ぶって言いがちなのよね。

格好つけたがると言うか、遠回しすぎるっていうか、ね? そりゃ誤解もうんじゃうわよ。

 

 

 

葵ちゃんの真っ直ぐな眼差しを受け止めてた響。

が、数秒の間をあけて首をコテンッとかしげてしまった。

 

 

「えっと……そもそも、デュエルって言葉は葵ちゃんからよく聞くけど、何なのかは一度も教えてもらってないんだけど……?」

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

ふたり――とついでに未来ちゃんとあたし――の間に、何とも言えない空気と沈黙が流れて……それをぶっ壊したのは、葵ちゃんの威勢の良い声だった。

 

 

「『デュエル開始の宣言をしろ! 磯野!』」*13*14

 

 

「え、行くの!? そんないきなり……!」

 

「用は済んだ」と、いきなり走り出す葵ちゃん。

用が済んだっていうよりは、恥ずかしさを紛らわせようとしているようにしか思えないんだけど、そこをツッコんだら葵ちゃんがより一層暴走しちゃいそうだから黙っとこうっ。

 

とにかく、あたしは葵ちゃんを見失わないよう、後を追いかけていくことに。

っと、その前に……

 

 

「あーっと、なにがなんだかわかんないけど、無理しない程度に頑張ってね~響ぃ~! 未来ちゃんも~!」

 

 

ふたりにそう言いながら大きく手を振ってから、改めてあたしは葵ちゃんを追いかけだした。

 

 

 

 

 

 

 

走ってく葵ちゃんがようやく止まったのは、小山を下りきったあたりだった……。

 

 

「『だが、切れ味は受けてもらう!』」*15

 

「え? 別に用ってほどの用は無くて、単純に最近会えてなかったなーって思って。……後はまぁ、電話ごしの声がなんとなく元気が無いような気がして……あたしの思い過ごしだったみたいだけど?」

 

「『俺は飢えている、渇いている、勝利にッ!!』」*16

 

「えっ、ちょ待って! 何があったのよ!?」

 

「『ファンサービスは僕のモットーですから』」*17

 

「はぁ!? 奏さんを殴ったぁ!? そんなのあたしじゃあどうしようも……ああん、もうっ! わかったからそんな顔しないでってば~!?」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

走り去るふたりの背中を見送る響と未来。

 

 

その姿が見えなくなったあたりで、響が彼女としては珍しく大きなため息と共に頭を抱えた。

 

「葵ちゃんが言ってた3つのやつ、「かっとビング」以外って結局どういうことなの~!? 未来ぅ~教えて~!!」

 

「いや、そんな学校の宿題じゃないんだから、私にだってわかんないよ!? それに、これってアレかもしれないでしょ?」

 

縋りつく響に待ったをかける未来。

 

「アレ? さっきも言ってたけど……アレってなに?」

 

「風鳴司令が言ってたよね? 聖遺物による言語能力への影響……言ってることと思ってることとのズレが生まれるって話」

 

「憶えてる?」と聞かれ頷く響――だったが、「でも……」と言葉を続けた。

 

「さっきの葵ちゃん、自分の言ってることが変になってるって感じには見えなかったんだけどなぁ? わたしがそう思ってただけだったのかな? ……ん? んんんっ?」

 

「どうしたの、響?」

 

「あのさ、弓美ちゃんって葵ちゃんの言葉のズレ(そのあたり)のことをわかってはいるはずでしょ? それで、どうやってああなってるのかなーって今更ながら思って……」

 

それは当然の疑問だった。

何故なら、彼女らがこうして特訓してるのだって(イヴ)が自由にできる首の動きでの「YES」「NO」ではどうしても伝えきれない部分がある。例えば、集合場所やその時間など……。響と未来(ふたり)が勝手がわかってきた今でこそ、時間を(イヴ)に示してから頷いたり横に振ったり、時に指し示したりして決めることが出来るようになっているが、それ以前――それこそ一番最初の特訓の時など、ふたりの住んでいる寮室に葵が突撃し何も言わずに手を引き先導することで特訓場所まで連れて行ったくらいである。

 

だからこそ、今回、(イヴ)との約束をとりつけたり、特訓をしている事やこの特訓場所の情報を得ていた弓美のことを、響は不思議に思ったのだ。

もしも言葉と意識のズレのことを知らなければ、弓美はここにはたどり着けなかっただろう。

 

その疑問に「確かに」と頷きながらも、未来の頭にはあることが浮かんでいて……その可能性について響に伝える。

 

 

「それは――ほら、アニメとかである「チュウニビョウ」とかいうので変な喋りをしてる人がいたりするじゃない? 弓美ちゃんはそれを理解してそうだし、その延長で葵ちゃんの喋りもわかってたり……むしろ気にならなかったりするのかも?」

 

「あぁー……なるほど!」

 

 

本人たちの与り知らぬところで新たな勘違いが発生してしまった。

 

 

果たして、本当に勘違いをしているのは誰なのやら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

()()にいたのね、奏」

 

 

()()()()のはずれの高台にある見晴台。

そこにいた夕日に照らされなお炎のように赤く染まる髪がなびく背中に、その声はかけられた。

 

 

「……ひとりか?」

 

「ええ」

 

「そっか」

 

街を眺めるラフな格好をした赤髪の娘と、フルフェイスのヘルメットを小脇に抱え赤髪の娘の隣に歩み寄るライダースーツの青髪の娘。

目を合わせることも無く、短く淡々としたやりとりだった。

 

 

「久しぶり、ってほどではないかしら。葵とは違って、本部で何度か顔を合わせて――――「翼」……なに、奏?」

 

「こうして、今日だけじゃなくって何回も考えてきたんだけどさ……」

 

 

 

視線の先には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その周りには、あの日とは違い至って穏やかな日常を過ごす人々がいる。

 

 

 

 

 

「あたしは――――「ツヴァイウィング」は、ここまでみたいだ」

 

 

 

 

 

あの惨劇の日と同じ夕焼けの(もと)、あの日とは違う別れの言葉が二人の間で交わされようとしていた。

 

*1
「遊戯王GX」遊城十代。デュエルの神と呼ばれた無敗伝説の残る古代のファラオ・アビドス三世。そのアビドス三世がセブンスターズの一員として蘇り、刺客として主人公・十代の前に現れ十代は神とさえ呼ばれた彼にデュエルを挑むこととなるのだが……出てきたモンスターは低レベルの効果を持たないモンスター、ならば攻撃を誘って罠があるのかと思えば普通に攻撃が通るわ、キーカードだろうと判断できる《第一の棺》を破壊しようとしてきた十代に驚き慌てふためき果てには怒ったり……とお世辞にも強いとは言えなかった。そんなアビドス三世に十代が言ったセリフ。肩すかしもいいところな無敗伝説だが、実際は「王に勝つわけにはいかない。ワザと負けているとも気付かれないようにして機嫌を取らねば」という家来たちの行動が発端となったモノであり所謂八百長のようなものだった。当のアビドス三世も生前どこか不信感はあったらしく、本編中の描写的にも……

*2
このセリフの後、小学生レベルの言い争いをしてからなんやかんやあって「本気のデュエルをしよう!」と言って、アビドス三世は人生(もう終わっているが)で初めて本気のデュエルをすることとなり、互いに全力をぶつけ合った結果負けるのだが……アビドス三世は大満足し成仏する。その際、十代に「一緒に来ないか?」と勧誘するのだが「百年くらい待っててくれ」と言われることとなる。……GX全編視聴済みの決闘者ならわかるだろうが、十代の死後のあのキャラとの修羅場(?)……というか、そもそも百年であの十代が亡くなったりするのかという問題が湧いてくるのだが……え? 愛とかそもそもの力量差があり過ぎる?

*3
「遊戯王ZEXAL」アストラル。ナンバーズの中でも特に特異な存在《No.96ブラック・ミスト》と主人公の相棒・アストラルとがナンバーズの眠る遺跡でデュエルをしている最中、三日月型の刃物がついた巨大振り子の軌道上の円形の足場に取り残され人質となってしまっている自分がアストラルの脚を引っ張り本来のデュエルができていないのだと気付いた主人公・遊馬が弱音を吐きかけた際にアストラルが放った叱咤激励のセリフ。出会ってからこれまであくまで遊馬に追随する形で行動していることが多くあっても事実を指摘する程度でしかなかったアストラルが、厳しい言葉を遊馬に吐くようになったというある種の成長がみられるシーンである

*4
「遊戯王5D‘s」ルドガー。シティとサテライトとを分断することとなった、一般的には地殻変動の天災とされ、実際はモーメントの暴走で起きた人災であった「ゼロ・リバース」。その元凶がモーメント研究の第一人者であった自分の父親である不動博士のせいで、サテライトという最悪の環境を生み出した他、ジャックやクロウその他サテライトの仲間たちが両親など本来あって当然のものを多く失わせてしまっている事……しかし、それにもかかわらず彼らが自身を仲間と認め笑いかけてくれることへの負い目など、これまで見せてこなかった心中を吐露した遊星へとルドガーがかけたセリフ

*5
なお、このセリフの「心の闇」を指す部分……このセリフの直前に遊星が発した「答えてみろルドガー!」はネット上でなどとOCGの裁定等への返答を求める用途で使用されることがあり、その問いの答えにはこのセリフや、その後のクロウの「そいつは俺が答えるぜ遊星!」などというレスが返されることがある。……自身に関係ないことまで答えを強要されるあたり、ある意味なんでもかんでも自分のせいにされるドン・サウザンドに近い扱いである

*6
「遊戯王VRAINS」謎の声。閉鎖空間で強要されるデュエル。その勝ち負けによってはまともな食事も与えられないこともある極限状態の環境。そんな中で力無く倒れ伏した幼少期の主人公・遊作の耳に入ってきた、謎の人物のセリフ。その内容は、遊作に生きる希望と活力をあたえ、この拉致監禁事件が一段落し救出されるまで生き残るそのきっかけとなる。そんなこんなあったせいで、遊作は原作ストーリー開始時のころからこの「大切な3つのこと」や「~の理由が3つある」などと言い「1つ~」、「2つ~」、「3つ~」と説明するようなことが多い。……作中では、遊作と似たように「3つ」のことを頻繁に使う人物がいるのだが……また、あの過去に遊作に言葉を投げかけた謎の人物の正体とは?

*7
「遊戯王5D‘s」クロウ・ホーガン。シンクロモンスターに強い「シンクロキラー」の「機皇帝」によって奪われた一番手・ジャックの切り札《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》。その強大な力を利用し追い詰められるクロウに対戦相手の「チーム・ニューワールド」のリーダー・ホセが、この状況こそ同じ人同士争い互いに傷つけ合うという愚かな人間の構図そのものだと言われたクロウが、そのデュエルの終盤に見せた「1度目の攻撃のダメージで効果を発動、壁モンスターを出して2度目の攻撃のダメージを軽減する」のではなく「自分が最大火力を受け負けること前提で2度目の攻撃の後で効果を発動するし、自身の切り札《ブラック・フェザー・ドラゴン》をフィールドに残しラストホイーラの遊星へと託す」というプレイングをみせたの後にこぼしたセリフ

*8
ネタ的な話をすると、「DM」の「遊戯王と呼んだ(呼びません)」や「5D‘sと呼んだ(呼びません)」などと言うネタが多い中、その熱い展開からか(呼びません)ではなく(呼びます)や(呼ぶべき)などと書かれる例のあるネタである。……「OCGじゃできない」とか「ライフ・フィールド引継ぎの変則チームバトルだから――アニメだから許された演出」と言ってはいけない

*9
遊戯王の序盤「デュエルキングダム編」あたりまでで特によく見られた遊戯や城之内が使う言葉。有名どころは城之内くんの大事なもの「見えるけど見えないもの=友情」である。今回の台詞は「遊戯王デュエルリンクス」の城之内の勝利セリフから抜粋

*10
その解釈次第で答えが変わる曖昧さや自由度もあって、ネット上を中心に「見えるけど、見えないもの」の答えに関するネタがいくつか存在する。代表的なモノは、「背景キャラ」や「空気キャラ」と呼ばれる名前のある主要・サブメンバーなんだけど影の薄い存在=「見えるけど見えないもの」である

*11
「遊戯王ZEXAL」九十九遊馬その他多数。不屈のチャレンジ精神。落ち込みそうになった時でも、落ち込んでいる最中でも、特に関係の無い時でも使える汎用性の高いポジティブワード。ただし、過度な摂取・乱用は精神に異常をきたしたり周囲の人に不快感を与え「ウザいんだよ、目障りなんだよ! 君のいちいちがッ!!」とキレられるかもしれないので注意が必要。処方の際には専門の先生にご相談ください

*12
「遊戯王5D‘s」ジャック・アトラス。遊星の回想にて、自身を打ち負かしたジャックが自分に対して言ってきたセリフ。なお、「ここにある」と言ったその「大切なもの」をジャックは遊星に教えなかったらしい。また、この回想は、本編中では数少ない遊星が敗北した瞬間を明確に示した珍しいシーン。……ただ、この回想の始まりが「遊星、お前では俺に勝てない」「……キングだからか?」「そう……キングだからだ!」と言うやりとりからだったため、真面目に見ていいのか迷った決闘者もいたとかいなかったとか

*13
デュエル開始ぃーーーー!!

*14
「遊戯王DM」海馬瀬人。「バトルシティ」決勝トーナメントでの一戦、海馬VSイシズという対戦にて「未来を見ることの出来る千年タウク」のことやイシズが海馬に「バトルシティ」の開催をさせるようにしむけたことなどを長々と話した後での海馬のセリフである。磯野とは、海馬やモクバのそばにいることの多い黒服サングラスのことである。アニメ版である「DM」では原作漫画以上に出番や活躍があるのだが、基本的にはせこせこ仕事をしていたり、海馬社長に振り回されたりなどといったものばかりで苦労人な印象が強い人物である

*15
「遊戯王ZEXAL」闇川。モンスター自身の効果や魔法・罠の効果によって戦闘で負けてもモンスターが破壊されなくなった際に、それでも戦闘ダメージはプレイヤーに入るためそれを強調して使われるセリフ。類似セリフというか元ネタである「だが、ダメージは受けてもらう!」が一般的でシリーズを通して使用されているのだが、ネット上でのネタとしての使用率はどっこいどっこいな印象

*16
「遊戯王GX」丸藤亮。デュエルアカデミアで皇帝(カイザー)と呼ばれるほどだった亮だったが、エド・フェニックスとのデュエルをはじめ、プロリーグの洗礼を受け勝てず地下デュエルまで落ちていく。そこでの電撃デスマッチデュエルで窮地に立たされた中で「リスペクトデュエルさえできれば勝ち負けはどうでもいい」という気持ちとは別に自分の奥底に眠っていた「勝利への渇望」を自覚し解放する際に発したセリフ。この後かの有名な「グォレンダァ!」のシーンへと続く

*17
「遊戯王ZEXAL」(フォー)。黄色い声援を浴びファンに囲まれサインをねだられた極東エリアチャンピオンのⅣが笑顔で言ったセリフ。なお、この後、窓越しに因縁の相手であるシャークを見つけたことで「どけ! 邪魔なんだよ!」とわずか数秒で態度がひっくり返るのが笑いどころ。一変したその姿は一部で「即おち」などといわれるほどである




次回「ツヴァイウィング」

……なお、サブタイトルがこれになるというわけではない模様。
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