我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

37 / 47
『懺悔の用意はできているか!』(自問自答)
いろんな意味で、最長で最低だった「僕だ!」です。実現できなかった予告を垂れ流したままにしてしまったりしたままズルズルと2週間も更新せずにいて、本当に申し訳ありません。

更新してない間にもUAや感想、お気に入り登録や評価をつけでくださった方々がいてありがたい限りだったというのに……不甲斐ないばかりです。

自分で考えて決めたシナリオで気が滅入ってすぐに墓地行きしてしまうクソ雑魚《ワイト》メンタルな「僕だ!」に、どうかお力を分けてください……。


……と、イヴちゃんの登場割合の問題で不足気味な遊戯王成分を地味に補給しつつ、ようやく今回更新することができた最新話でございます。

キネクリボーことクリスちゃん回! 途中第三者視点を交えながらも、主にクリスちゃん視点となっている今回のお話。
彼女の迷い、葛藤、心の闇、そして原作と異なる歩み出し……

その結果、過去最長よりも長くなり、普段の2倍近い文章量となってしまっています。「僕だ!」が思い描いていた通りに描写しきれているかはわかりませんが、お付き合いいただければ幸いです。


……あと、内容そのものには直接関係無いのですが、名前を意地でも呼ばないクリスちゃんに手を焼いています。特に彼女の視点内での表現には色々迷走していますので、何かあればよろしければご指摘お願いします。



2-13

「『いい加減にしろシェリー!!お前の親父さんは、そんなことのためにそのカードを託したのか!?』」

 

 

意を決して、アタシの胸の奥にあるモヤモヤのことを、そしてこれからのことを相談しようとした矢先のことだった。(ちび)が唐突にそんなことを言い放ったのは。

 

シェリー? 誰の事だ?

カード? 何の話だ?

 

謎の発言……アタシを無性にイラつかせた。

 

 

「わけわかんねぇこと言うだけならまだしも! テメェ……ッ!! 」

 

 

それは、意味不明だったからか、なんでもわかっているかのような物言いだったからか、それが父親(パパ)に関するものだったからか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

なんにせよ、その言葉はアタシに突き刺さりやがった。

 

 

「なんでお前がパパの……アタシの親のことを知ってるのかなんてことは聞かねぇよ」

 

(コイツ)は初対面からアタシの名前も何も知ってたんだ、アタシの素性とか親がどんな人だったか知っていたところで、そんなのいまさらだ。

 

「けどな、()()()んじゃねぇ……パパと、ママの思いをッ!」

 

気づけば、(ちび)の胸倉に掴みかかっていた。

 

()()()()()()

仮にアタシのパパとママが何をしていたのか――なんで死んだのかを(こいつ)が知っていたとしても、その言葉を気にすることなんて無かったはず。

 

そう、ただこの(ちび)が意味不明なこと言ってるだけだとシカトすればいいだけ……なのに、なんでこうもイライラする。なんで、パパとママの顔が――アタシが大嫌いな()()()歌を、みんなで歌っていた時の笑顔が思い浮かんで――――

 

 

――――ううん、アタシだってわかってる。じゃなきゃ、アタシ自身そもそもコイツに相談なんて持ちかけようとはしなかった。あのマスター(じいさん)(すす)められたとしても、だ。

 

コイツは、アタシが何か言うより前から全部わかってやがったんだ。さっき言った過去はもちろん、アタシが悩んでいることも、その理由――アタシが戦争(あらそい)の無い平和な世界をつくろうとやってきたことが、パパやママが喜ぶことじゃないということ――をわかっていた。だから、わけわかんない言葉を混ぜながらも、アタシを叱り、嗜めるようなことを言ってきたんだ。

 

 

だけど……いや、()()()()()、アタシはその言葉を無視することも、受け入れることも出来ない。

 

アタシを知っているから何だっ。パパたちの活動を知っていたから何だっ! 言われた言葉がアタシにぶっ刺さってるから何だッ!!

アタシとその周りの事情を知ってて、そこからパパたちの気持ちを推測できて……それで憐れんで、同情してきたとして、ただそれだけじゃないか!!

 

 

「お前に、何がわかるっていうんだよッ!?」

 

 

声だけじゃなく、胸ん中の衝動が――想いが、そんまま一緒に出てきやがって自然と声を張り上げてしまっていた。

 

アタシが掴みかかっている眼前の(コイツ)は、今にも泣きだしてしまいそうなくらい目にも涙が溜まっていて――――

 

 

 

 

「『ああ…わからねぇ…わからねぇさ! お前やハルトの憎しみも悲しみも!』」

 

 

 

 

――――それでも、視線をそらしたりせず力強くアタシに言葉を投げかけてきた。

 

また「ハルト」なんてアタシの知らない人の名前らしき単語が交じってはいたけど……その言葉に、胸がズキズキと痛み、アタシは悲しく……()()()

 

なんで…だよ…… アタシの(気持ち)が「わかるはずがない」、「理解されたくもない」とさえ考えていたってのに、(ちび)に「わからない」と断言されて……()()()……?

なんで、心のどっかで「理解してほしい」って思ってるんだよ、アタシは……ッ!?

 

 

『だけど俺はお前とデュエルした! デュエルを通じてお前を知っちまったんだ! デュエルは新しい仲間を…絆を作ってくれる』」*1

 

 

涙ながらに、けど力強く――――ん? 「デュエル」? どっかで聞いたことがあるような……?

 

あれは、いつのことだったか? あの融合症例も言っていた言葉……そうだ、あの「ツヴァイウィング」のライブがあっている裏で融合症例を捕らえるために動き――最終的に何も出来ずフィーネに捨てられるキッカケとなったあの時だ。

たしか融合症例(アイツ)は「デュエルをしよう」とか言って、結局は普通に殴り合い(たたかって)……「決闘(けっとう)」のことなのか? 「デュエル」って?

 

(コイツ)はアタシのことをその「デュエル」ってので知ったと言ってるけど……考えられるとすれば、始めてアタシと(コイツ)が出会ったあの夜か? あの時は、アタシが一方的に攻撃して(コイツ)は逃げ回ってばっかで――――

 

 

 

――――『何度でも受け止めてやる! 全部吐き出せ、お前の悲しみを!!』

 

 

 

「……!!」

 

あの夜の言葉が、蘇った。

胸倉を掴んでいた手が緩み、(ちび)は手元から逃れほんの一歩下がった……が、それだけだった。いきなり掴みかかって来たりしたアタシに対してそれ以上距離を取ったりすることも無く、何かを伝えようとしてか、まだアタシの目を強く強く見つめ続けてきてる。

 

名前を知ってたことといい、あの(とき)からすでにアタシのことは知ってたんだろう。

けど、それじゃあ足りないのだと、(コイツ)はアタシの苛立ち半ば八つ当たりじみた猛攻(ぼうりょく)の中から、確かに何かを感じ取ろうと……知ろうとして……!? んなこと有り得ねぇ!? 非効率的だし、何もあんなに傷だらけになるまで無抵抗でいる必要なんて……ッ!! そもそも、あんな戦いで相手のことを理解出来るはずがない。

 

……けど、説明がつかない。

捨てられ、路頭に迷ってたアタシを、全く害にはならないと断定するかのようにこうして二課に連れて行かずに匿っているのは、(こいつ)に確信があったから。そう、まるではなっから敵だと思ってすらいないような行動は……お人好しなんて言葉で済ませていいのか悩んでしまうくらいに、普通じゃあ有り得ない。

まるで、悩み揺れるアタシの心を理解しているかのようなその態度は――もしや、その「デュエル」とやらで本当にアタシの事を知ったから……なのか?

 

 

「まさか、そんなバカなこと……」、「第一、あの(とき)のアタシと、捨てられてからのアタシの気持ちが一緒とは……」なんて言葉が頭を駆け巡るアタシ。

眼前で、涙を拭った(ちび)。その視線()が再びアタシを向き――その力強さに、色々考えていたアタシの思考も自然と目の前の現実へと引き戻される。

そして――

 

 

「『お前の魂はまだここに囚われたまま。だが、そこから脱出する道の見つけ方もお前はわかっていないようだ。……お前に道は見つからない!』」*2*3*4

 

 

またわけのわからないことを――――と、切り捨てることはやっぱり出来そうもなかった。

さっきから(コイツ)の言葉は、どっかズレているはずなのに嫌というほどアタシに何度もぶっ刺さってきやがって……。というか、(コイツ)は知っているっていうのかよ。これまでやってきてしまった事、これからどうすべきか悩んでいるアタシが求めてる答えを――進むべき「道」を。

 

 

「……なら、教えてくれよ。何もかも失って地獄を見て、勝手な大人どもに振り回され、好き勝手されて……ようやくそこから抜け出した先で手に入れたチカラ、それをくれたヤツの言った「世界から争いを無くす方法」を信じ(すが)ることしかできなかったアタシは……そのせいで沢山の人の命を奪って不幸にしてきたアタシはどうすりゃいい!? 何ができるっ!! 今更(いまさら)どんな顔して「歌で世界を平和に」なんて言うんだ!? とんだ道化……いや、パパとママの想いを冒涜(ぼうとく)までしたんだっ、道化(それ)以下の何かじゃねぇか!!」

 

 

滲む視界。頬を伝う()()()

……気づけば、今度はアタシが涙を溜め、そして流していた。

 

もう、十分だ。否定したくても……イラついているこの気持ちといい、今嫌と言うほど自覚したモノが、目を逸らしてはいけないんだってアタシの中の良心が、アタシ自身に訴えかけてきてるから。

 

アタシがやらかしてきたことは、例え本当にその先に「平和」という大義があったとしても許されることじゃない悪いことだってことは。だからこそ、一度誰かにちゃんと怒られた方が、この苦しみから解放されるんじゃないかと……ならば、アタシのことをわかっているだろう(コイツ)に。

そして、教えてほしいんだ。アタシはどうすれば…どうしたらよかったのかを――――

 

 

「『情けなくはない。そして謝る必要もない』」

 

 

(ちび)の口から出てきた言葉は、アタシの予想を大きく外れたものだった。

 

求めていた、叱りつけるわけでもなく……かといって許すような言葉でも、怒りをぶつけてくるようなものでもない。

 

 

「『旅立った人達はお前の人生から完全に消えたわけではない。先の場所に行っただけだ。私はそう信じている。……ただ、私は彼らのもとへ行く時それに恥じぬよう生きていくだけだ。お前とは違う』」*5*6

 

もしも、本当に「あの世」なんてものがありでもすれば、確かにいつか会うことになるだろう。

果たしてその時、アタシはパパとママに恥じることなく顔向けできるだろうか?……なら、どうすれば――――「()()()()()()」?

 

最後に付け加えるように言われた言葉がアタシの中で反響する。そして――頭に血が昇り熱くなっていくのが、アタシ自身よくわかった。

こうも頭に血が昇る理由も、(ちび)がそう言ってきた理由も……わかっている。だけど、声を荒げずにはいられそうにはないっ!!

 

「なんだよっ、今のアタシは恥じるべき存在だって言うのかッ!!」

 

 

「『少なくとも今のお前はな』」*7

 

 

間髪入れずに帰ってきた答えに、アタシは一瞬息を飲んでしまった。

 

「わかって、るよ……」

 

何か言い返したい、でも言い返せない。わかっているから。

けれど、認めてしまうのが恐ろしくて、歯を食いしばり、唇を噛み、痛むほど両手で拳を握りしめ……俯いてしまう。

 

考えが、想いが、思い出が頭ん中をグルグル回る。

 

 

「じゃあ……なんだよ。今の世界がおかしいって思っても「仕方ないことだ」って何もしないで泣き寝入りしときゃよかったのか……あのまま何にも考えずフィーネの言いなりになってりゃよかったのか? ……あんなことあった後でも「パパとママの遺志を継いで歌で世界を平和にする」って言って、現実見えねぇ頭ん中お花畑なロマンチストでい続けりゃよかったってのかッ!?」

 

そういれたならよかったかもしれない。どれも楽だ、こんな重圧も苦しみも無かっただろうから。特に、あの夢を追い続けられれば、パパとママを感じ続けて寂しさも紛らわせ、かつ、あの世で胸を張って会えただろう。

でも――――

 

「そうさ……アタシは最初(はな)っから、パパとママみたいにはなれやしなかったんだ!!」

 

――――実際そうはいかなかった。見たくも無い(せかい)を見続けた。……夢見がちな子供のままじゃあいられなくなった。

そして、戦場を離れても、アタシにあのころの日常が戻ってくるはずも無く、アタシは別の闇を――アタシん中の闇を見た。

 

 

「アタシの歌は、人を殺すだけの兵器――ノイズを解放するためのもんになったッ!」

 

 

目的の為にと、フィーネに言われるがままに嫌っていた歌を何度も歌い、やっとの思いで完全起動させた「ソロモンの杖」。

対人において、一方的に蹂躙できる兵器は、本来のアタシの計画……「戦う意思とチカラを持ったヤツを片っ端からぶっ潰す」において、敵だと判断していた戦争(あらそい)を起こそうとする「力を持ったヤツ」だけじゃなく、数多くの無関係な力を持たない人たちの命を奪い……家族を奪われ、アタシのように孤独(ひとり)になる人をだしてしまってる。

 

 

「歌ったこの手に握らされたのは、あの地獄(せんじょう)で嫌ってほど見た銃で、強く想って歌えば今度はガトリングにミサイル、兵器様々(さまさま)だ! アタシの歌が生み出せんのは、人を殺すためのモンにそれが引き起こすこと、あの時パパとママの命を奪った爆発――全部全部何かをぶっ壊すためのものだった! 世界を平和にする歌なんかじゃなかったんだッ!!」

 

 

今でも思い出せる。フィーネの所で「イチイバル(シンフォギア)」を纏った、あの時を。

出てくるアームドギアは「イチイバル」の原典である弓じゃなく、むしろ拳銃なんかに近いクロスボウ。そして、変形する先は銃火器・兵器。それを知り、その目で、手で感じたアタシは震え、呼吸も乱れた。……今だって、その恐怖が薄れているわけじゃない。イラつくもんを「ぶっ壊す」って衝動に変えて、恐怖を抑え込む――いや、見て見ぬふりをしてるだけに過ぎない。

 

 

(お前)がアタシだったら、何かできたのかよっ!? 何ができるってんだよッ!? 教えてくれよ……アタシは……!!」

 

 

「『泣き言を言う暇があるなら私を倒してみろ!お前の魂を燃やしたデュエルで!』」*8

 

 

(ちび)のセリフに、アタシの手は自然と首から下げていたペンダント(シンフォギア)へと動いていた。戦争、人売り、好き勝手やる大人たちへか、目の前の相手か、自分自身か……この誰へと向かっているかもわからない怒りを全部全部ぶっぱなすためにっ!!

大っ嫌いな歌を、口ずさむ――――

 

 

 

 

「そこまでだよ」

 

 

 

 

――――突如、目の前に掌が現れた。

 

驚き、口をつぐんでしまう。

その手の持ち主は、マスター(じいさん)だった。

 

 

「流石に困るからね、店内で暴れられるのは」

 

 

……そうだっ。(コイツ)とのやり取りにいつの間にか集中してしまってて忘れてたけど、今アタシがいるのはなりゆきで世話になっているカフェの店内。客こそいないものの、マスターのじいさんも店員の女もいる。いや、むしろ今の今まで口を挟んでこなかったことが……よかったのか、わるかったのか。

 

店でこんな色々と機密に関わりそうな言い合いをしてたことを不覚に思いながらも、アタシのイライラと熱さは収まらず――むしろ、いっそう強くなっていく。

 

 

「……ッ!」

 

 

この苛立ちを……そして、その奥にある「何か」をどうしていいかわからず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「……なんでだ」

 

アタシの口からこぼれた呟き。

それは、ついさっきまで店内()でやっていた(ちび)とのやり取りやそこでの言葉への疑問()()()()

 

今の、ワタシだ。

貸し与えられたこの二階の一室。そこにあるベッドの上で、膝を抱える体勢で毛布に包まって座っているワタシ自身。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

今いるこの部屋は二階だし窓はあるから、もしも今(アイツ)が追って来てもそこから逃げることは出来るだろう……が、どう考えても、窓以外に逃走経路は無い追い詰められるようなところだ。対して、一階の店内からは当然出入り口から容易に外へ飛び出せるし、逃走先なんて――安全云々はおいておけば――それこそ無数にある。

つまり、さっきのアタシの行動に、合理性なんて無い。

 

 

……でも、こうしてゆっくりと考えてみると、理由はわかってきた。

 

パパとママが死んで、攫われて、異国の戦場で転々としてきた。そんな時間が何年もあったってのに、孤独(ひとり)なんて慣れていたはずなのに……孤独(ひとり)になるのが恐くなっていたんだ、アタシは。

 

それは元々の(さが)だったのか?

いつからかなんて詳しくは思い出せない。けど、フィーネのところにいた時にも似たような感情があった気もする……つまりはフィーネに拾われてからの時間がそうしたという可能性もある。そして「ラ・ジーン T8(ここ)」に来てから、なおその想いが強くなってしまっていたのかも……。

 

 

ふと思い浮かんだのは、(ここ)の人、ふたり。マスター(じいさん)はなんだかんだメシとか用意してくれたり身の回りの事を色々してくれてはいるものの、アタシ自身に関しては無関心に近くて(ちび)第一。んで、店員の女のほうは不愛想――まぁ愛想なんてアタシが他人(ひと)に言えたもんじゃないけど――ではあるものの、何かと気に掛けてきて、そのくせ意識してか一線を引いていて距離感はそう近くは感じないほど良い感じ……アタシとしては接しやすい相手(ひと)だった。

 

「……つーか、ほんの数日だけで(ほだ)され過ぎだろ、アタシ……」

 

「そういう線引きの基準はひとそれぞれ、そう気にする必要はないんじゃないかしら?」

 

ここのふたりのことが嫌いじゃなかったからというのもあるかもしれない。それ以上に、やっぱりアタシは自分で思っていた以上に寂しがり屋だってこと――んん?

 

ウダウダ考えながらの独り言に誰かの声が。予想外で反応が遅れてしまったけど顔を上げて周りを見渡す。

あの店員の女がいつの間にか、両手にマグカップを持ってこの部屋の扉んとこに立って……って!!

 

 

「なっ! なんで勝手に入ってきてんだよ!? 」

 

「何故と言われても……鍵が開いていたから、むしろ入ってきてほしいのかと思ったんだけど?」

 

「……!?」

 

言われて思い返してみれば、確かに駆けこんで多少乱暴に扉を閉めたのは覚えはあったけど、鍵は……どうだったか、記憶に無い。

でも、アタシは別に誰かに追いかけて入ってきてほしかったとかそういう理由(わけ)で開けていたわけじゃ……!! ……そう否定するにも、さっき考えてた内容のせいでアタシ自身断言が出来ず、言葉にならずに口がパクパクと動くだけだった。

 

どう返せばいいか、なおかつなんというか恥ずかしさがどこからか湧きあがってきて、結局のところ俯くことしかできなかった。きっとアタシの顔は真っ赤になってるなぁ。

 

そんなアタシに気付かなかったのか――あるいは、気付いたうえでスルーしてくれたのか、女は「カプチーノよ」と手に持つマグカップのうちの片方をワタシにさし出してくる。……ちょっと迷ったけど、拒否する理由も無かったから「ん」と一言だけ反応を返しながら受け取った。

で、女はといえば、そのままベッドに座るワタシの隣に並ぶように座った……店員の女(このひと)にしては、グイグイ寄ってきてる気がする。

 

 

 

「……アイツは?」

 

香る湯気がたつカフェオレにひとつ口をつけてから一言、アタシは問いかける。

 

「5分くらい前に帰ったわ。予定が他にもあったんじゃないかしら? 二階に上がった貴女の事は気にしてはいたけれど、私と店長に挨拶をしてから出ていったの」

 

「そっか……」

 

今、アタシが飛び出してからどれくらいの時間が経っているのか知らないから、(アイツ)がどれくらい居座っていた(まっていた)かはわからないけど……この(ひと)の言いようからしてそこそこの時間はいたのかもしれない。

 

 

「色々と思うところはあったんでしょうけど、あの子の言ってたことは話半分程度で受け止めておくといいんじゃないかしら」

 

もう一口カプチーノに口をつけたところで、店員の女の人がそんなことを呟くように言った。

 

この人や店長(じいさん)は一般人のはず。アタシのやってたことや過去、(あのちび)のこと、その裏にいる二課やシンフォギア装者・シンフォギアのことは知らないはず。だから、「変なことを言われても気にするな」って意味合いで言った……かと思ったけど、それにしても言い回しが遠回しというか妙な違和感を感じる。

いったい、どうしたっていうんだ?

 

「詳しくは知らないけど、あの子は言葉が……言語能力がおかしくなっているらしい」

 

「言語……が?」

 

「ええ。あの子と一緒に店に来てた人物が話していたことを偶然耳にしたのよ。「思った通りに言葉が出せないだ」とか、「杖のせい」だとか」

 

(ちび)と一緒に来店(いた)っていう奴は、十中八九、二課の人間――おそらくは一緒に暮らしてるっていう「ツヴァイウィング(人気者)」のどちらかか、あるいは両方+αだろう。……大丈夫なのか? 情報漏洩とかそのあたり。

 

いやっ、二課(よそ)の心配とかの前に、色々と気になる情報ではある。

言葉の方の問題はもちろんだけど、それ以上に「()()()()」っていうのが……心当たりがある。

 

完全聖遺物「ネフシュタンの鎧」。完全聖遺物ゆえの攻撃・防御性能の高さ以上に特徴的なのは装備者に付与される「再生能力」。ただし、その驚異的な能力には、再生するたびに()()()()()()()()()()()()()()()()()()という代償(デメリット)がある。

つまり、あの夜、アタシと戦った時なんかにも(あのちび)が持っていた「杖」の聖遺物も、何かしらの能力の代わりに「言語能力の不備」という代償がつきまとっていたんじゃ? ネフシュタンの浸食のように命に関わりかねないレベルの代償に比べればマシかもしれないけど、あの「杖」も問題のある聖遺物だったってわけか?

 

 

――にしては、ずいぶんと的確にアタシに色々と言ってきてた気がするが……?

 

 

「なぁ、思ったように言葉が出ないって、結局はどんくらいのものなのかわかるか?」

 

「私には判断しかねるわ……ただ、店長曰く「(へこ)んだり自傷に走っていなければ、言葉遣いとか以外はそのままで受け止めてもいいと思うよ」らしい。……実際のところ、経験則では「かなり意訳すれば、ギリギリ本来の内容に掠る」程度だが」

 

「じしょ…自傷!? って、つまりッ!?」

 

今日(アイツ)が話してた時にはんなことする様子は無かったけど、そんなことも……そうか! 「思ってたことと言ったことが違う」ってことは、おかしいのは言語能力つーか口のほうで、頭ん中は普通……変なこと口走ってるってわかるわけだ! なら、錯乱したり、極端なこと言えば気が狂ってしまいそうな事態にもなるのかっ!?

 

 

でもそうなると、アタシにぶっ刺さってたあの言葉たちはいったいどれくらいが(アイツ)の考えていた通りの言葉だったんだろう?

そして……あのやりとりの中でアタシの中に生まれた()()()()は、どうしたらいいんだろう?

 

 

……ん? 待てよ?

 

「今の話からして、店長(じいさん)(アイツ)の言ってることがわかってるのか?」

 

「……らしい。正直、彼の言っていることも話半分……いや、それ以上に疑ってかからなければいけないもの。信憑性は高いとは言い難いわ」

 

「疑ってかかるって……どんな親子関係だよ」

 

いやまぁ、パパとママに対してはモチロンふたりの夢にも散々なこと言ったりやったりしてきたアタシが言うのも変だけど――

 

「え?」

 

「? どうかしたか?」

 

「ん?」と隣に座る互いの顔を見合わせて……数秒後、女のほうが先に「ああっ!」と声を上げた。

 

 

「なるほど。()()店長の姿を見て、私と彼を歳の離れた父娘(おやこ)と勘違いしたのね」

 

「あっ」

 

言われて気付いた。確かに、さっき、アタシはそんな風なことを言ってた。

でも、普段はそんなこと考えたりはしたこと無かったんだけど……だって、じいさんがやったことに容赦なくツッコミというか物投げたり叩いたりしてるし……なら、なんでだ? 無意識……って、そんな関係が感じられる場面なんて遭遇したこと無かったんだって! 後は……アタシがそんな関係を求めてい――――いやいや、違う違うっ! んなわけない!!

 

とにかくっ! この女の人と店長(じいさん)は親子とかそんなのじゃないってことだなっ!!

 

「わ、悪い……」

 

「気にしないで。確かに、店長(あんな)のが父親なんて願い下げだけれども……実際の父親の立ち位置のヤツと比べれば、同じ()()()()でも店長の方がまだマシだから……願い下げだけど」

 

二回言った……。

散々な評価の店長もアレだけど……それ以上なこの人の父親っていったい……?

 

気にはなる。けど、その疑問を口にはしない。

だって、この(ひと)は自分から話したりしてきてないし……店長以下の扱いをし「人でなし」だという父親のことをわざわざ話したいとは思えない。聞かないほうが賢明だろう。

 

 

 

ちびちび飲んでいた手に持つマグカップの中身(カプチーノ)が半分を切ったあたり……不意に、ベッドで隣に座ってる女がまた喋りだした。

 

「……私は、貴女のご両親のことをほとんど知らない。それこそ、先の言い合いの中で断片的に出てきた部分くらいだ」

 

「なんだよ、いきなり……」

 

「貴女の今の状況も含め、ご両親がやってきたこととその結果の全てを手放しで褒められるものではないかもしれない。けれど、()()()()()()()ある(しゅ)の尊敬の意を抱いているわ」

 

隣のアタシ(こっち)へ目を向けることも無く紡がれる女の言葉に、これまでにも幾度と無く感じてきたイライラと――それとは別に、フワフワとした()()を感じていた。

「ある種の」って言い回しが多少引っかかりはしたけど……それ以上に、これだけで終るとは思えない店員の女(このひと)の言葉の続きが気になってしまっていた。

 

「……これは、私の無責任で身勝手な願望。他人には……特に貴女には本来聞かせるべきじゃない独り言よ」

 

呟くようにそう付け加えてから、改めて口を開こうとしている店員の女。それをアタシが何かを言って遮ってしまうのが心惜しかったから、何も言わずに……言えずにいた。

 

 

「ご両親の成してきたことをそばで見、ふたりの夢をよく知る貴女にはその遺志を何かしらの形で継いで欲しい。良かった部分、そうではなかった部分、その中で出来ることと出来ないこと……それらを貴女なりに考え、形にし、目指し、成し遂げていってほしい」

 

 

けど、不思議と聴き入ってしまっていた。

 

「貴女の目指すと決めた(モノ)に、している行動(こと)に正しさがあれば……同じ想いを抱く者が、共感してくれる者が現れて貴女の手を取ってくれる。そして力を貸し合い、共に歩んでいくことができる。だから……今からでも遅くない、見つけなさい、貴女が進みたい道を」

 

「そんなの……本当かよ?」

 

「さぁ、どうかしら? 私の経験則だから、どこまで信用できるものかは判断しかねるわね」

 

「……はっ、本当に無責任だな」

 

――でも、何故かイラつきはしてなかった。

 

それは、隣に座る(ひと)の横顔が、笑みを浮かべながらもどこか悲しげだったからか……あるいは、アタシの頭ん中で、思い出されて思い浮かんだ光景があったからか。

そうだ、パパとママの「歌で世界を平和に」なんてそんな夢見がちで鼻で笑われてしまいそうな活動に、支援をしてくれたり一緒になって活動をしている人たちがいた。奏でる音楽に心をひとつにし、一緒に歌っていた人たちがいて――パパとママの「夢」のひとかけらが、あの場所には確かにあったんだ。

……あの時の活動は、物資に紛れ込むように入ってきた爆弾によってパパとママが死に――他の人たちも、戦禍に巻き込まれ今何処(どこ)で何をしているかも生きているかさえわからない、そんな状況(こと)になってしまったけど――()()()()()()()()()()()()()()()()、他でもない()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!

 

 

ついさっきは突っぱねてしまった(アイツ)の言葉も――どこまでがアイツの本心だったかは置いといて――今なら、素直に受け止められる気がする。

 

 

 

そうっ。アタシが進むべき(進みたい)「道」が、わずかに、だけど確かに見えた気がした。

 

 

 

何かを掴むことができた。そのきっかけをくれた隣に座る店員の女へと改めて視線を向け――ふと、今更なことに気付く。

呼ぶべきこの人の名前、それをアタシは知らなかったということを。

 

いや、何日も居座る気も、ましてやこんなふうに会話をするようなことになるとは思いもしなかったんだ。そんな名前を憶えることも、ましてや呼ぶことなんて無いと決めつけてしまってたんだから、知るわけも無い。

 

 

聞こうと思い口を開きかけ……それをつぐんだ。

 

今のアタシには、この(ひと)の名前を聞く、そんなちょっとしたことがなんとなく躊躇われてしまう。この街で度々起きているノイズの発生およびそれに伴う被害、そこに関わってきた後ろめたさがアタシをそうさせているんだと思う。

 

聞く時が来るとすれば――それは(あいつ)が叱咤しながらも見つけだせないと言った「道」を、この(ひと)が言った無責任で身勝手な願望を成すための「道」を、ちゃんと歩みだせてからだ。少なくとも、そのくらいでなければこの(ひと)たちに顔向けできない。

そうやって、少しずつ踏み外してしまっていた道を正していくことが……きっと、いつかパパとママのトコロへ行った時に、恥じずに胸を張っていられるようにするための「道」だと思うから……。

 

 

「……なぁ」

 

「ん? どうかしたかしら?」

 

「あー……っと……なんでもない」

 

 

「アンタにも夢を理解し力を貸してくれる一人でいてほしい」とか「またいつか心から楽しんで歌えるようになったら聴いてほしい」なんてことは、勢いに任せるにしても恥ずかし過ぎて口には出せなかった。

 

照れ隠しで傾けたマグカップ――だったけど、気づけばいつの間にか飲みきってしまっていたみたいで中身はカラッポ、口には何も流れ込んではこない。

……けど、アタシの身体も胸の奥の方も温かくなってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

――――翌日の日が昇り出すより少しだけ前の早朝。

洗濯されてしまわれていたカフェ(ここ)に来る前から着ていた服とシンフォギアのペンダントだけの身なりで、アタシは極力音を立てないように扉を開け店から脱出していた。

 

激流に呑まれ、迷い、踏み外してしまったアタシにようやく見えてきた「道」を進む、そのための第一歩。

 

……けど、部屋に手短に書置きは残しておいたものの、やっぱり何も言わずに勝手に出ていくのは気が引けた。

前に進むためにやるべきことを考えた上で、いつまでもこんな風に世話になっていてはいけない……そう判断しての行動。すべきことがわかったから、カフェ(ここ)で立ち止まっているわけにはいかなくなったから、だから行く。

 

 

一歩、二歩と歩み……足を止めてしまう。

 

 

数日間だけだとはいえ、やっぱり名残惜しく思えてしまって……「これで最後、振り返って一回だけお辞儀を」と自分に言い聞かせて、振り返り改めて店とその上にある住居スペースを見た――――

 

 

「っ!?」

 

 

――――大きく目を見開かざるを得なかった。

だって、ついさっきアタシが出てきたばかりの扉の前に、マスター(じいさん)がスマホ片手にこっちを見て立っていたんだから。

 

「ああ、遠慮しないで行ってくれて構わないよ」

 

レンズのあたりで光がチカつきだしたスマホを構えたままのじいさんが、そんなことを言いながら小さく手を振っている。

 

 

「……止めないのかよ。つーか、何してんだよ、それ」

 

「僕が追いだしたんじゃなくて、君が自発的に出ていったんだってことの証拠映像を撮ってるだけさ。恐いからね、後で彼女にドヤされるのは」

 

じいさんが言う「彼女」ってのは、アタシのことを匿うように頼んでいた(アイツ)のことだろう。

 

「はぁ……なんていうか相変わらずだな、アンタは」

 

保身的というか、(アイツ)に対してやけに気を遣っている――どころか、恐れてる気さえしてくるじいさんに、アタシは心底呆れてしまう。……そんな様子になんか安心してしまってるアタシがいるのも事実だけど。

 

 

「まぁ、止めねぇなら何だっていいよ」

 

店へと振り返っていた身体を改めて前へと向けてから、軽く手を挙げ振りながら「じゃあな」と言い残して、アタシは歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

「また来るといい。歓迎するよ、客でも居候(いそうろう)でも」

 

 

「……っ!?」

 

不意に背後からかけられた言葉に、アタシの足も何もかもが止まった。

悪くはしてこなかったけど、アタシのことなんて(アイツ)への点数稼ぎか何かとしか思っていないように感じられたこれまでのマスター(じいさん)。けど、今聞こえてきた声は、聞いたことが無い――それこそ(アイツ)と喋ってる時にも出てきてなかった気してくるほどの、優しい声だった。

 

驚きと困惑と……「また来てもいい」という喜び。それらが混じりに混ざって、ついまた振り返ってしまいそうになった――けど、その衝動をあと一歩のところで押し留めた。……ここで振り返ったら、またズルズルとカフェに居座ってしまいそうな気がしたから。

 

 

それでも、何か言葉を返したい。

だけど、こんな時なにを言えばいいかわからない。

 

 

……ふと思い浮かび、口に出ていたのは、マスター(じいさん)と初めて会ったあの日のワンシーン。それに関わるものだった。

 

 

 

「なら、アンタはそれまでこの店続けといてくれよ……今度は自分で引いてやるからな、()()()()……ッ!」

 

 

 

言い切ってすぐに、アタシはその場から駆け出していた。

 

 

ああ、そうだ。きっとまたアタシはあのカフェに行くんだ。ヘンテコなマスターと愛想が悪い店員さんに見られながら「ドローパン」なんかを食べたりして……ふたりに「食べるのが下手だな」とか言われてアタシが頬を膨らませて――――でも、結局はなんだかんだで皆で笑うんだ。

 

そのためにも、ノイズを――「ソロモンの杖」をなんとかしないといけない……! フィーネと、これまでアタシがやってきたこととも向き合わなきゃいけないんだッ!!

 

 

身体にいっそう力が入り、人影の無い早朝の街をアタシは強く地面を蹴って駆けて行く――――フィーネの活動拠点となっている邸宅を目指して。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「今更のことだからね、()()の一人や二人増えたところで」

 

 

駆けて行ったクリスの背中が見えなくなったところで、店の扉の前に立っていたマスターが独りポツリと呟いた。

 

 

「むしろ、今は増えてくれた方が彼女が……」

 

 

彼は(ひげ)で半ば隠れた口を弧に歪ませ、クックッと小さく笑う。

 

 

「今度彼女が来た時のために、「ドローパン」の母数を増やして「黄金のタマゴパン(大当たり)」の確率を下げてあげようかな。……それで引けたら――――うん、楽しみだね、それはそれで……」

 

 

そんな風に独り言を呟きながら、マスターは店内へと戻っていく。その足取りは、こころなしか軽やかなものだった…………。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

「なんだよ…これ……!?」

 

 

日が完全に地平線から顔を出しきったころたどり着いたフィーネの邸宅。

その邸宅のある敷地内に入ったアタシがまず真っ先に感じたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、次に目にしたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

――コイツら、どこかの兵隊か?

ゴーグルやマスクをしている奴が多かったり、その他服装面からして、どこかの国の特殊部隊か何か……だと思う。兵種の区分や特徴などその辺りに詳しくないあたしには、軍人は軍人としてしか区別できないから曖昧で断言はしきれないけど、とにかく兵士だということはわかった。

 

倒れている連中の中でも、比較的出血が少ないひとりに駆け寄る。

望み薄なことはわかっている。けど、そう動かずにはいられなかった。

うつ伏せだった体をなるべく優しくと意識しつつ、その重さに負けないように頑張りながらなんとかあお向けに変え、手袋を外させ、服の袖部分を半ば強引にまくり上げ、脈を計る。それと同時進行で、顔の方の装備も外して――――唇をかみしめた。

 

「……くそッ」

 

見えたのは虚ろな目。(まぶた)は上がったままで眼球やその奥の瞳孔に動きは見られない、当然息もして無くて、確認しようとしてた脈も……。

 

どこの国かはわからないけど、もうすでに息を引き取っていたその異国顔の男性――その瞼を下ろしてやって、脈を計るために手に取っていた腕ともう片方の腕を仰向けに横たわる男の胸元へと持っていき、その両手を胸の上で重ね合わせた。

……この男の人がどこの何を信じている人間なのかはわからない、けど、これが今のアタシがしてやれる最大限のことだ。例え、この人が、アタシの忌み嫌う戦争(たたかい)の中で人を殺し殺される軍人で、あまり良い感情を持たないとはいっても、フィーネの――ましてや今のアタシの敵とも味方ともわからない者であっても……目の前で亡くなっている姿を見せられては、このくらいはしてやりたかった。

 

 

アタシは立ち上がって、眠る男を――周囲で倒れている、もう助からないと一目見てわかる量の血を流している人たちを一瞥してから、駆け出した。

 

一つ分かった事があった。

この人の体はまだ冷えきってはいなかった。おそらくは……アタシがカフェを出る前、昨晩から今日未明にかけて邸宅(ここ)であった何かで、命を落としたんだろう。

つまりは、言うほど時間はたっていないのかもしれないわけだ。さっきの人は手遅れだったけれど、まだ助かる見込みのある人がいるかもしれない。……甘ったれた希望的観測だけど、それでも全滅したと断言してしまうには早いはず。

 

そして、やっぱり気掛かりなのは……ここにいるはずのフィーネはどうしているのか。あと、この軍人たちがフィーネの敵であり、彼らを殺めたのがフィーネだった場合……「ソロモンの杖」を持っているはずのフィーネは、何故ノイズを使わずにこの人たちを殺したか……。可能性としては、二課にノイズ発生を検知され場所を特定されることを避けたかったからだろうか?

 

 

なんにせよ、アタシはここを探索し、フィーネを探し出さなければならない。

駆けるアタシは、邸宅の中へと足を踏み込んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここも、か……」

 

戦闘痕やその影響でか一部が崩れた邸宅の中。その状況は外とは大差のないものだった。いや、地面に血がしみこまない分、見た目や臭いは数段悪いかもしれない。

 

邸宅内でも、何人かそれほど血を流していない奴もいた――――けど、確認をしてみれば、やはりというべきか誰も彼もすでに手遅れだった。

 

 

そう、この比較的大きなホールである一室に倒れていたこの男も、すでに……。

「夢」への「道」を見出し、これまでの過ちをなんとか少しでも正していこうとした矢先に突きつけられる現実に、アタシの胸は否応無しに痛む。

 

 

 

……まだだ、この広いホールの全てを確認できたわけじゃない。人も物も、まだなにかあるかもしれない。フィーネ自身やその研究関連の物もごっそり無くなっているが……そっちもまだ断言しきれない。

 

 

そう考え、動こうとしたアタシの耳に、複数人の足音が聞こえてきた。

……いや、すでにそこそこ大きな足音になっている。つまりは、もう結構近くまでその何者かわからないやつらは来ているということだ。目の前の事に気を取られ過ぎていて、意識が向かず気付けなかったか……っ!?

 

 

隠れたり、どうするか考えがまとまるよりも先に、その足音の主たちはアタシのいる部屋に入ってくる。

幾人もの黒服サングラスの男たち……その先頭に立って入ってきたガタイの良い赤みがかった髪の男が、固まり目を見開いた。

 

「……!? (きみ)は……!」

 

「なっ、ち、違う! アタシじゃないッ! やったのは……」

 

赤みがかった髪の男の驚いた顔とその声に、とっさにそんな弁解の言葉が口から出てきていた。……正直、アタシのやらかしてきたことはここの惨状以上だろう。けど、それでもここのことは否定していたかった。

 

そんなアタシに対して、男は制止するように掌を突き出し、その上で軽く首を振ってきた。

 

「……いや、勘違いさせてすまない。ここの事を君がやったなどと疑ってはいないよ。雪音(ゆきね)クリス(くん)

 

「なっ」

 

コイツ、なんでアタシの名前を……!?

 

と、ここでふと気付いた。先頭に立つこの男の顔に見覚えがあることに。

 

ああ、そうだ! 前に、フィーネから見せられた資料、その中にあったデータの二課の総司令官・風鳴(かざなり)弦十郎(げんじゅうろう)ってオッサンの顔がコイツと一緒……つまり、アタシの視線の先にいるコイツがあの……?

そして、アタシの名前を知っていたのは……まさか、あの(ちび)が? いや、前に立花響(融合症例)と戦った時に自分の名前を口走ってしまっていたか。なら、その時に……?

 

部下なんだろう黒服たちに指示をとばしてから、改めてコッチに向きなおったオッサンを見ながら、そんな風に考えてたんだけど――――

 

「バイオリン奏者の雪音雅律(まさのり)と、声楽家のソネット・M・ユキネが難民救済の活動中に戦火に巻き込まれ死亡したのが8年前……残されたひとり娘は行方不明になったが、介入した国連軍により保護され、日本に移送されることとなった」

 

――――オッサンが言ったことからして……どうやらアタシの予想以上に、このオッサンはアタシの事を知っていたようだ。

 

「ふんっ、よく調べているじゃねぇか……」

 

「なに、当時ちょっとばかり関わってたのさ。帰国直後に消息不明になった際に、捜査員の一員として参加していただけのこと――とはいえ、その件に関わった多くの者が死亡・行方不明という結末での幕引きとなったから、このあたりのことを詳しく知っている者はほとんどいないがな」

 

オッサンの語った内容に思うところ――その死亡・行方不明にフィーネが関わっているんじゃないかとか――は少なからずあったけど、問いかけるのは止めておいた。なぜなら、それよりも今は、目の前の状況とこれからのことを優先して考えるべきだと判断したから。

 

「んで? そんな出自だから悪い奴じゃねえだろうって、疑わなかったりこんな呑気にお喋りしてんのかよ? これまで何度もあんたの所の奴を襲ったりしたのにか?」

 

「なに、そこだけで判断したわけじゃないさ。……単純な話だ。この惨状の下手人なら、わざわざ脈を取って生死確認をせずに頭や首に一撃かますだけだからな」

 

「ゆえに、君は違う」と言い切ったオッサンに、アタシは目を見開き……その後、細める。

 

「……見てたのか?」

 

「いや、ここにたどり着くまでの数人の遺体の状態と、その君の手を見て推測できただけだ」

 

言われてアタシは視線を下ろし、自分の手へと向ける。……ベッタリとではないものの少なからず血に濡れていた。

アタシが触れてきたのは、生きてそうな見込みのある出血の少ない奴だけだったが、それでも体勢を整えさせるためや脈を計るために袖やら腕やらを触ったりした。その時についてしまっていたんだろう。……今の今まで気付かなかったな。

 

「……アタシは何も出来てねぇよ。むしろ、これ以上に、染みつくほどアタシの手は……」

 

下ろした視線の先にあるアタシの両手。これまでやらかしてきたことを考えれば、この両手はきっともっとドス黒く汚れてしまっているだろう。

だから……何とも言えない気持ちになってしまって……。

 

「君は……」

 

そんなアタシへ、オッサンは何かを言おうとし――

 

 

 

「風鳴司令ッ! こんなものがっ」

 

――他所から声が聞こえ、オッサンもアタシも自然とソッチへと視線が動いた。

見れば、十数メートル先にいる黒服が、倒れている兵士に付いた何か――アレは紙…か?――を持って――――

 

「イカンッ! それに触れるなッ!!」

 

「――っ!?」

 

オッサンが大声をあげた――――そのすぐ後、轟音と共に爆発、一帯が揺れた。

閃光と音からとっさに身を守るべく行動したものの、視覚と聴覚とが一時的に馬鹿になりやがる。

 

そんな中、ふいに違和感を感じ……いや、第六感とでも言ったらいいのか何かでアタシは上を見上げた。

そこには、崩れてくる天井がっ!? でも、不意の事で身体は思うように動かず――

 

 

「え……」

 

 

――気づけば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「どうなってんだよ、こいつは……!?」

 

「なに、君を抱えて瓦礫から避けただけだ。なにぶん急だったが身体のどこかが痛んだりはしていないか?」

 

「いや、そういうことじゃねぇよ!?」

 

爆発物だと気付いたこととか、その後の高速移動とか……!?

 

しかも、アタシだけじゃなくて、黒服も抱えてるぞ、このオッサン!? 単純計算で人間ふたり抱えて高速移動したんだぞ!?

そもそも、それも爆発のトリガーになった何かがあったであろう場所――このオッサンが抱えている黒服が元々いた場所に行った後、改めてアタシんところまで戻ってきて瓦礫から逃げたんだからトンデモないスピード……爆発から倒壊までのタイムラグがあったとはいえ、それでも身体能力やら判断力もおかしい……。

 

気を失っている様子の黒服と、アタシをゆっくりと下ろす。

よくよく見てみれば、黒服を抱えていた方の腕の(そで)は所々破けたり焦げたりしていて、その下の腕も少しだけではあるけど傷が見える。

 

「しっかし、最近デスクワークが多かったからか……少し鈍ってるな。ヘタすりゃギリギリ間に合わんほうになってしまっていたかもな」

 

「ギリギリじゃなくて、全然間に合わないだろ、フツーは!?」

 

「そうか? アニメでなくともアクション映画なんかでもよくあることだ、爆発や倒壊の際に、良くも悪くもギリギリなことは」

 

「何の話だよッ!?」

 

(アイツ)とは別の意味で意味不明なことを言うオッサンに困惑と共にツッコミを入れるが、当の本人は何も気にした様子も何も無い。

 

 

「そもそも、なんでギアを纏えない奴が、アタシを守ってんだよ!」

 

シンフォギアはなにもノイズへと有効打を与えられるけだけじゃない。鎧としての防護性能、そして微量ではあるものの単純に身体能力の補助なんかもある。少女だって、下手な大人よりは丈夫だし強くなるものだ。

だから、本来はシンフォギアを纏えるアタシが、このオッサンや周りの黒服共を守るべき立場だったはず……。

 

そういう考えの下、アタシが言ったことに目の前のオッサンは首を振って言ってくる。

 

「俺が君を守るのは、ギアの有る無しじゃなくて、君より俺の方が少しばかり大人だからだ」

 

「なんだよ、それ……大人ってのは、そんな立派な奴じゃないだろ。利益に、力に呑まれて自分勝手にする奴らだろ。そのせいで、パパとママは……その「夢」は……」

 

「世の中の全部の大人が……俺が目指している「格好いい大人」ってのが、()()じゃないって話さ。それは、理解していたんだろう? そして、君はもう……」

 

「……ああ、そうかもな」

 

オッサンの言いたいことが大体わかって、アタシは曖昧ながらも頷き返す。

だからといって、今さっきの高速移動が大人が出来るものなのかといえば、そうじゃないだろってアタシは否定するけどな?

 

 

 

「――そうだ。アンタにも一応おしえておくけど、アタシが見た限り、研究機材やらなんやらココにあったはずの物はほとんど無くなってる。フィーネはとっくにどっかへ行っちまってるみたいだ」

 

「やはり、すでに放棄されていたか」

 

「アタシとしてもハズレだった……もうココに用は無い」

 

「その様子だと、一緒に来ることはできないか?」

 

「……ああ」

 

引き止められるかと思ったけれど、予想外にもオッサンは「そうか」と言うだけだった。だたし、その表情(かお)を見ればわかるけど……スッキリとはしてない様子ではあった。

そんな、オッサンが何か自分自身の中で決めたのか何なのか知らないが、一度大きく頷いてから、アタシにまた語りかけてくる。

 

「君は、君が思っているほどひとりぼっちじゃない。お前がひとり道を往くとしても、その道は遠からず俺たちの道と交わる」

 

「アタシの目指してるもんもソッチに近いのかもしれない……けど、こんなアタシの手じゃあアンタら正義の味方の手を――」

 

「なに、そうとも限らん。人ってのは、自分で思っているほど自分の事を客観的には見れんものだ。君の評価も、君の考えているほどのものではない。それに……どんな手だろうが、手を取り合ってはいけない理由にはならんさ」

 

気休めにもならない、ただただ都合のいい優しい言葉。

……でも、そんな真っ直ぐな目で見つめられ、大真面目で真剣な表情で断言されてしまったら……「もしかしたら」と思ってしまう。

 

 

「なんだよっ……アンタも、あのちびも、あの融合症例も。とんだお人好し集団じゃねぇか。いや、二課だけじゃなくて()()()()()もそう、か……アタシの運が良いのか、これまで悪すぎたのか……なんだんだろうな」

 

 

熱くなってしまった目頭を隠すように……そして覚られないようにオッサンに背を向け、枠も窓ガラスも割れて意味をなしていない窓の外を見る。

 

……と、ふと思い出した事があり、それを口にした。

 

「――そうだっ、『カ・ディンギル』! アタシが追い出されるより少し前にフィーネが言ってた言葉だ。それが完成目前で、完成すれば計画の最終段階に移れるとか……それ以上は、アタシも知らないけどな」

 

「そうか……だが、十分に有用な情報だ。感謝する」

 

「気にすんな。借りを少しだけ返しただけだ」

 

 

そう言って、アタシは壊れた窓から外へと飛び出し、その場を離れていく。

 

行先は……この邸宅以外のフィーネが行きそうな場所。

アタシは走り出す…………。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

去って行ったクリスの背を見送った弦十郎は、手元に取っておいた紙へと視線を移した。

 

 

――――「I Love You SAYONARA(サヨナラ)

 

 

そう書かれた紙は、先程の爆発のトリガーとなった仕掛けの一部……書いたのは、おそらくは「フィーネ」と名乗った女性。

その正体が()()()()だと当たりをつけていた弦十郎は、その文面を見て目を細め……折りたたみ、ポケットへとしまった。

 

 

「フィーネの残した『カ・ディンギル』という言葉……おそらくは、兵器か何かだろうと思うが……」

 

やっと掴んだ数少ないフィーネとその目的の手掛かり、逃すわけにはいかない。

ノイズを出現させ操る「ソロモンの杖」、十二分な攻撃性能と防御性能そして再生能力を持つ「ネフシュタンの鎧」……などといった完全聖遺物。そして今はクリス君が持つ「イチイバル」を元としたシンフォギアをも所持していたことを考えると……必然的に『カ・ディンギル』も聖遺物が関連していることは予測できる。

だが……情報不足は否めない。

 

となると、やはり『カ・ディンギル』という単語から情報を絞っていく他無いだろう。もしかすると、名前がそのまま『カ・ディンギル』という聖遺物が――あるいはそれに関連する聖遺物があるのかもしれない。

 

「……気はすすまんが、了子君に聞いてみるか」

 

()()()()()()、その『カ・ディンギル』とやらの準備は完了間近、あるいは既に完了していると考えられる。ならば、こちらから動いていかなければどうにもならないだろう。

そう考えて、了子に聞くことも含め、弦十郎は次の行動を検討する……。

 

 

 

 

それにしても、だ。

 

弦十郎には引っかったことがあった。雪音クリスの、弦十郎や彼が所属する二課への態度が思っていた以上に軟化していることだ。

最後にクリス(彼女)と会いその状況や様子を報告したのは、フィーネに捨てられる場面を見た響と翼のふたり。特に、そこで長く戦ったり以前にも相対したことがあった響の報告からして……弦十郎は、一回目の接触ではクリスとは落ち着いて会話できるかすら望み薄だと判断していたくらいに、敵対心ないし警戒心が強いと思っていた。

 

だが、実際はどうだっただろう?

心を開いているかと問われれば否だろうが、弦十郎の言葉を素直に聞く程度には落ち着いていたし、噛みついてきたりはしなかった。それどころか、どこか一本芯が通っている様な様子さえあった。

二課が雪音クリスの所在を見失っていた間に、彼女に何かしらの好転があった……といえば良いことではあるが、はたしてそれだけで響たちや二課に向けていた敵対心がこうも消え去るだろうか?

 

 

「可能性があるとすれば……()()

 

 

先程の会話の中で不意に出てきた「あのちび」という言葉。

それが指すのは――弦十郎や響と連ねられたことを加味すれば――十中八九、二課で保護していることになっている葵のことだろう。

 

 

葵とクリスとの接触は、奏がシンフォギアを纏えなくなった境であり、翼が「絶唱」を使ったあの夜だけ。その時、クリスは過剰に痛めつけるほど葵に対して強い敵対心を持っていたはず……ならば、何故その葵を「お人好し」とするのか?

 

答えは簡単、あれ以降、再びクリスと葵が出会っているからではないか?……そう弦十郎は推理したわけである。

 

その話が弦十郎のところまで来ていないのは、「問題無し」と判断された今現在、葵への監視が薄くなっていて行動を完全には把握していなかったから。そして、葵の言語能力の異常によって、出会ったことを伝えたくても伝えられなかったから……それが、弦十郎にとっての()()()()()

 

 

 

ならば、()()()()()は?

 

 

 

「考えたくはないが、その時は俺の手で…………奏や翼には、酷過ぎる」

 

 

その予想が外れていることを祈りつつ、弦十郎はエージェントたちへと改めて指示を出すのだった……。

*1
「遊戯王ZEXAL」九十九遊馬。大切な存在、弟・ハルトを連れ去られその行方を捜す天城カイト、主人公・遊馬は彼とと組んで敵とタッグデュエルをすることとなる。そのハルトが痛めつけられ苦しんでいる現状を知り、冷静を欠くカイトに遊馬が「落ち着け」と諭す。が、カイトはそんな遊馬にそれに激昂し「お前に俺たち兄弟の苦しみがわかるか!?」といい放つのだが……それに対する遊馬の返しがこのセリフである。原文では「そしてデュエルってのは新しい自分にかっとビングさせてくれる!決して恨みや憎しみをぶつける道具じゃねぇ!見せてやる!俺のかっとビングを!」と続き、その勢いのまま遊馬の反撃のターンが始まる。つまりは「いつもの遊戯王」

*2
「遊戯王VRAINS」リボルバー(鴻上(こうがみ)了見(りょうけん))。10年前に起きた「ロスト事件」の現場である研究所の施設を再現したヴァーチャル空間にて行われたデュエル。その最中にリボルバーが対戦相手であり、「ロスト事件」の被害者の一人…アバターネーム:ソウルバーナーこと穂村(ほむら)(たける)へといい放ったセリフ。事件で負った心の傷は完全には拭いきれず、行方不明になった自分を探している最中に交通事故に遭って死んでしまった両親のことを引きずり、自分を叱咤激励し背中を押してくれていた意思を持ったAI・不霊無(フレイム)は消えてしまって……主人公の仲間として戦いながらも、どこか宙ぶらりんになってしまい前に進めなくなっていたソウルバーナーを的確に突いた発言であった

*3
「ロスト事件」とは。人類の後継種の創造するために「意思を持ったAI(イグニス)」を作ることを目的とした「ハノイプロジェクト」…その為に6人の子供が拉致・監禁されAI作成のための学習としてデュエルを強要され続けた――その出来事の一部が世間一般で報道された際の名称。この時の6人の子供が主人公・藤木(ふじき)遊作(ゆうさく)や他の登場キャラだったり、メイン級のキャラの行動原理の主軸にこの事件や「ハノイプロジェクト」そこで生まれた「イグニス」が関係していたりと、「VRAINS」の物語の根本というか始まりとなる出来事である……何故、AI作成のための学習がデュエルなのかとかツッコんではいけない

*4
なお、「ロスト事件」「ハノイプロジェクト」の中心人物は了見(リボルバー)の父・鴻上(こうがみ)(きよし)博士であり、了見が色々あって「ロスト事件」解決(はんめい)のキッカケとなった通報を行ったりする他、その10年後の原作ストーリー時の行動原理が鴻上博士の意志やもっと言えばその尻拭いであったりと。遊戯王ではよく見る「父親よって(人生等々)歪んだ人物」である……が、この鴻上博士に関しては、他多数の人物の人生を狂わせているため、何とも言えない。博士本人に悪意が無かったり、罪意識が一部以外は薄かったり、多少(?)の被害・犠牲はいとわなかったり等々、細かい部分の説明をすると大変なことになるが、おそらくは「遊戯王」原作者が「ロクデナシ親父の品評会」と言っていた原作で登場する親父たちと別方向ではあるものの、彼らと並んでも遜色無いだろうクソ父親である

*5
「遊戯王VRAINS」リボルバーの一連のセリフ。ソウルバーナーこと尊が誘拐される前にささいなことで両親とケンカをしたまま別れ、両親は死に、二度と会えなくなってしまい……しかし、「ロスト事件」でのショックでそのケンカの内容が思い出せなくなって、謝ることも出来ずに後悔し続けているその心中を露わにした際にリボルバーが語った言葉である。なお、このシーンを別の場所から観ていた意思を持ったAI(イグニス)Ai(アイ)には「ハッ…なんだよ精神論か。それAIにも当てはまるの?」といわれていたりする

*6
余談だが、このセリフでリボルバーこと了見自身が「彼ら」の中に思い浮かべる中心人物はおそらく父・鴻上博士であろう。というのも、「ロスト事件」ののち鴻上博士は死亡したとされ――実際は電脳ウイルスで昏睡状態にされ、肉体は死を待つのみでありながら意識は電脳世界で復活・活動していた……のだが、一期の最後にリボルバーにチカラを貸す形で消滅・死亡し物語から退場たのである。……諸悪の根源と言っていい存在でありながら、デュエルをすることも無く、事件の被害者であり復讐者であった主人公・遊作にボコボコに負けるということも特に無く――昏睡状態の現実の肉体に限界がちかづいていた事も考えられるが――なんというか勝手にいなくなって、視聴していて「すっきりしない」と感じた決闘者もいたとか

*7
前のセリフのシーンの続き、「俺は恥ずかしく生きてるっていうのか!?」というソウルバーナーへのリボルバーの返答である

*8
上のセリフたちに続いて、同シーンでのリボルバーからソウルバーナーへのセリフ。自然とデュエルへと向かって行き、ここからデュエル再開となる。トラウマも悩みも人生も、やっぱりデュエルって有能だな(デュエル脳)




この作品、キネクリボーちゃんのサポートメンバーが多すぎて、原作での名シーンが……とお嘆きの適合者の皆様、大変申し訳ありません。……「僕だ!」も大好きですよ、原作のカッコイイOTONA。
今回の一件に限らず、色々と無くなったり改変されたイベントは有りますがね……防衛大臣殺害されちゃう一件が有耶無耶だったり、響ちゃんとクリスのやりとりの回数が減ったり……。

そして、登場している時間が少ないくせに当然のように加速する(イヴ)ちゃんへの勘違いと、多方面に立つフラグ、これでもかと追加される伏線……だ、大丈夫、だと思います……よ?



かなり前に集計したアンケートですので、読者の皆様は結果はすでに十二分にご存知かと思いますが、以前に実施したアンケート「雪音クリスに合う(聴かせたい)遊戯王OP・ED」の結果について書かせていただこうと思います。

投票参加、ご意見ありがとうございました!!
全320票の投票の結果結果……

遊戯王ZEXALの2つ目のED「切望のフリージア」が1位に選ばれました!!

横並びな2~4位と3倍以上の差をつけての堂々の1位でした。正直な話、ここまで一強になるのは「僕だ!」には予想外で少し驚きました。
それと、Twitterの方でいただいた意見の方もアンケート結果とは別に登場候補リストに入れていますので……アンケート上位も含め、お楽しみに!!


そして、次のアンケートですが……少し間が空いてから歌とは関係無いものを実施します。
具体的には、適合者の方々なら予想がつくであろう「出番が欲しい」あの子に関するアンケートになる予定です。

雪音クリスに合う(聴かせたい)遊戯王OP・ED。(ご意見は、感想欄ではなくTwitterへお願いします)

  • Shuffle(DM OP2)
  • あふれる感情が止まらない(DM ED4)
  • Closetoyou(5D`s ED4)
  • 切望のフリージア(ZEXAL ED2)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。