我が手には星遺物(誤字にあらず)   作:僕だ!

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※脚注による補足、元ネタの簡易解説完了(仮)


クロスオーバーしている両作品用語やネタが多いため行っていましたアンケート「あとがき等での本編登場元ネタの簡単解説の有無」の結果ですが、「(シンフォギア・遊戯王)両方」が6割ほどだったので、次回の更新までに各話編集する予定です。
……が! 正直にいいますと、どこからどこまで解説すればいいか迷っております。遊戯王のルールとか「モンスターカード」等のカードの種類関係はいらない……ですよね?(自信無し)
また、あくまで「簡単解説」ですので、そこまで公式設定のように詳しくは書く予定はありませんあらかじめご了承ください。



そして、予想以上に長くなってしまった今回。
でも、早く原作突入しないといろんな意味で保たないのでガンガン進めていきたい……。


1-2

 

 

あたしの一日は、(あおい)の寝顔を(なが)めることから始まるようになっていた。

 

眺めに眺めある程度気がすんだところで、葵を起こさないように気を付けてベッドから出て簡単に身支度を整えてから朝飯の準備にとりかかる。

 

んで、色々準備してたらそのうち葵が起きてくる。日にもよるけど、6時30分くらい。前日にあたしが明日は早い事を伝えると葵も合わせるかのように早く起きる。

そこからは流れだ。洗面台に連れてって、髪やら顔やら歯なんかも軽ーくキレイにしてから、ダーッと朝飯へGO。そんで食べ終わったら片づけをして改めてふたり揃って身支度をする。……このあたりは、最初のころこそあたしが手を貸してたけど、最近は葵一人でも出来るように。でもまだ、ちょっと危なっかしい部分があるからいちおうは近くで見守っておく。

身支度の時には葵の健康状態の確認をついでにしておく。素人に毛が生えたくらいの知識だし、定期的に特機部二(とっきぶつ)でメディカルチェックうけてるから、本当に簡単に外傷の有無や体温あとは単純に葵が元気かどうかっていうその調子を確認。

 

そして、そこからはその日その時々によって準備をしたり、ゴロゴロしたり、絵本を読み聞かせたり……まあ、そんな感じだ。

 

 

 

 

 

さてさて。

でもって、今日はといえば午後からしか予定が入ってないから午前中は葵とゆっくりゴロゴロとするか、翼を誘って葵の服でも見に行こうかー……って、考えはとっくに吹っ飛んでた。

 

 

理由? 当然、葵だ。

とにかく、翼に一本連絡入れといてから葵を()()()あたしは一目散に特機部二(とっきぶつ)のあるリディアン音楽院目指して出発した。

 

特機部二(とっきぶつ)の本部では、先に到着してて慌てた様子で待ってた翼に葵を預けて、あたしだけで指令室へと突入する。

そう。考えてた予定とかをほっぽりだして葵を連れてここまで来たのは、葵の健康状態が悪そうだったからとか葵の持ってる聖遺物が何か変だったとかそういうのじゃなかった。

その理由は――

 

 

「旦那ぁ! 弦十郎の旦那はどこだぁっ!!」

 

「ぬおぉっ!? 奏か。どうしたんだ、いきなり大声を張り上げて」

 

「どーしたも、こーしたもねーってば! (あおい)に何したんだ!? 昨日は一緒にいたんだろ!?」

 

 

――葵の体調()()()()、様子が変だったから。

 

 

気付いたのは、今朝だった。

けど、「なんか違うなー?」って思ったのは昨日歌の仕事を終えて日が暮れた帰り際に葵を引き取った時から。まあ、まだまだ子供だし疲れて体力の限界が近づけばそんな風にもなるかと思って特には気にせず、やった事と言えば、普段よりも早めに寝かしつけたくらい。

いや、だってさ、オフだった弦十郎の旦那が世話してたってことは聞いてた。だから、安全面では安心してたけど、あのパワフルさに疲れちゃうんじゃないかとは最初から思っていたんで、迎えに行ったその日には「ああ、疲れてんだろーな」くらいにしか思わなかった。

 

でもって、今朝。

寝起きの顔は「まだちょっと眠いのかな?」くらい。で、洗面台の前であたしが手を貸すまでボーッとしてた時には「ん?」と疑問には思った。朝飯で咀嚼(もぐもぐ)するのがいつもより少し遅かったことで「何か変じゃね?」と気付いた。そして、その原因で思い当たることをピックアップ。

そこからはババッと手早く準備を始めた。外傷がないか確認のために脱がせるついで着替えさせ、それら身支度と並行して「痛い所は無いか?」とか「気分が悪かったりしないか?」とか聞いた。……首を振ったり頷いたりして葵が出した返答は「痛い所は()()、気分も()()()()、何かあったのかには()()()()()()」というもの、

 

「こりゃ、あたしの知らない間に何かあったな」と。同時に原因は弦十郎の旦那以外ありえないという半ば確信に近いものもあった。

 

だから、こうして朝一から特機部二本部に突撃をかましたわけだ。

 

 

 

 

「なぁに~? 朝から賑やかねぇ」

 

「了子君」

 

と、弦十郎の旦那に詰め寄ってたら、旦那の背の陰からひょっこりと了子さんが顔を出してきた。

さっきまで指令室(ここ)にはいなかったように見えたんだけど……いつの間に? あたしが旦那を問い詰めることに夢中で気付かなかっただけか?

 

それはさておき、「実は――」って昨日から今朝にかけて葵の様子が変って言うか異様に落ち込んでいることについて、そして、昨日は丸一日オフだった弦十郎の旦那が何か知っているに違いない――というか、原因なんじゃないか?――ってことで問い詰めてたんだと了子さんに説明した。

 

「昨日? 弦十郎君が街に連れ出して、レンタルショップで映画を借りた後そのまま鑑賞会をするとか言ってなかった? あっ、もしかして何か変なモノでも見せたりしたんじゃないの?」

 

「そんなことはない。俺の趣味関係無しに子供向け作品か子供から大人まで楽しめる名作しか選ばなかった。具体的に言えばデ〇○○ーやジ〇リ……」

 

「それ、本当に大丈夫だったのか? 「も〇の〇姫」みたいにホラーというか恐い描写がある作品だっていくつもあるだろ? どっちも家族や身近な存在と()()()()()()引き離されたりするし……あたしくらいになれば色々整理もつけられるうえ、作品と現実をキッパリ分けて考えられる。けど、まだ葵くらいの歳だとその辺りは難しいところじゃないか!」

 

未だに葵は心を開いてはくれてない。

頷いたり、首を横に振ったりして反応を示してくれはするけど、一向に話してはくれない。何度か、口を開けてパクパクと動かしてまるで喋ろうかどうか迷うような仕草をみせたこともあったけど、結局は口を閉じちまって喋らないままだった。

色々と不満に思うところもあるけど、方向性が多少違うけど他人とロクに口をきかなかった時期のあるあたしとしては、話すことを強要したりする気にもなれずとにかく待つことを個人的に決めたりもしたからそこを葵自身にどうこう言う気は無い。

 

ただ、別の問題というか心配事がある。それはもちろん葵がそうなった原因。

 

葵がそんな風になってしまった原因は、これまでの足取りがまるで判明してないから全然わからないんだけど、推測は立てられる。その手に持つ謎の完全聖遺物、それが絡んだゴタゴタに巻き込まれた結果に違いない。戸籍無し・個人情報不明の身元だからどこでどうなったかはわからないけど、十中八九、そこで家族などといった身近な人間(ヒト)との別れだって経験してしまっているはず。その経験がトラウマになってるんじゃないかって不安があるわけだ。

だから、そこを変に刺激を与えてしまうようなことは避けるべきだと思う。

 

 

……ってわけで、弦十郎の旦那にそのあたりを確認して、もしもの事態も考えて――半分くらい決めつけみたいに――非難の目を向けてみたんだが、まるで心当たりが無い様子で首をかしげるばっかりだった。

 

「そのあたりも大丈夫だったと思うんだがなぁ……。というより、その様子だと奏はタイトルを確認していないのか。家や休憩室でいつでも観れるようにと葵君に持たせて送り届けたはずだが?」

 

「んんっ? そういや、袋のほうは見たような……?」

 

あのレンタルした時にDVDを入れてくれる手提げ袋。確かに旦那の言う通り、その袋は昨日迎えに行った時に持ってて……うん、ちゃんと葵が持って帰ってた気がする。確か、今はテレビのそばの棚の上に置かれてるはず。

 

 

でも、そうやって旦那が「大丈夫だ」と判断した作品(モノ)なら、葵がああなった原因は映画じゃあない可能性が高い。

となると……

 

「旦那と借りた映画関連じゃなかったら一体何が葵をあんな風にさせてるんだ? どこか痛むのか聞いても首振るばっかりだったしあたしも一通り見たから、怪我とか病気とかのせいじゃないとは思うんだけどなぁ……?」

 

「今日は予定に無かったけど、メディカルチェックしてみる?」

 

了子さんもそう申し出てくれてるわけだし、お願いするかなぁ?

 

「……あー、心当たりならあるにはあるんだが、なぁ?」

 

あごに手を当てて考え込んでいた旦那が、珍しく踏ん切りの悪い感じで口を開いた。

言い方からしても、あんまり自信が無いのかもしれない。

 

 

 

「レンタルビデオ店の帰り道にカードショップにも寄ってな。色々と触ってみてもらったんだが、段々とテンションが下がっていってな」

 

「それじゃんかっ!!」

 

むしろ、それしかないじゃん。

ていうか旦那、自分でもテンション下がってるってわかってたんなら、葵の不調の話をふった時点でそのこと話そう? 借りたもののこと聞いたり悩んだ時間はなんだったんだよ……。

 

「弦十郎君。カードゲームを少しかじってるのは知ってたわ。別に、貴方の好きなアニメーション映画やそのカードゲームとやらを否定するわけじゃないわよ? それらにだって山ほど良い所はあるもの。けど、「イヤ」と言えそうにないからってそれを押し付けるのは、ちょーっとどうかと思うわよ?」

 

「誤解だっ! そもそもカードショップに立ち寄ったのは、葵君が店を覗きこんで興味を示したからであってだな……」

 

あぁ、よかった。了子さん的にも流石にダメだって判定が出てくれた。

旦那には旦那の言い分があるっぽいけど、あたしはもちろん了子さん側の立場だわ。他人(ひと)の趣味にどうこう言うつもりも無いし、旦那の大好きなアニメーション映画だって種類にもよるけどあたしだって好きだけど。

だけど、それとこれとは別だ。

 

 

「あの時の俺の、どこが悪かったんだか……いや、理由は定かではないが彼女の気を損ねてしまったのも紛れも無い事実。ここは、ちゃんと謝罪をするのが筋ってもんだな」

 

「んー。理由もわかってないまま謝るっていうのは、逆に怒らせちゃうかもよ?」

 

 

まぁ、怒鳴り込んじまったりしたけど、旦那は子供っぽい所もあるけど締めるところはしっかり締める出来る大人だってのは、あたしだってこれまでの付き合いで解ってる。了子さんの言うような不安も解るけど……うん。旦那ならそれでも頑なに頭を下げてくだろう。

だとするとあたしは……葵が拒絶するようなことも考えて二人の間に入る仲介役でいようかな。もちろん、いらないって言われたって、意地でも割って入るつもりだけど。

 

 

 

 

 

「怖い悪役・ダークヒーロー系やホラー系は避けて、第一にマスコット系、次にかわいいキラキラした美少女系、それでもダメならイケメンキャラだと思ったんだがなぁ……?」

 

 

……大丈夫だよな?

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

朝、奏から「翼、一大事なんだ! 特機部二に来てくれ!」と連絡を受けて急いで支度して本部へと向かった。

通信機による緊急の無線連絡ではなかったからノイズ出現による出動のような緊急性のある事案(もの)ではないとはわかっていた。でも、奏が慌てた様子で私に助けを求めているということは間違い無く、それは私が急ぐには十分すぎる理由だった。

 

 

そして、今――

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

――私は、本部の通路脇の一角にある休憩スペースのベンチに、タオルケットに(くる)まった(あおい)と並んで座ってる。

 

 

どういう状況……なのかしら?

 

 

当事者であるはずの私が疑問に思うって、自分で言ってておかしいのはわかってる。

けど、しかたないの。なんで奏が慌てて特機部二(ここ)に来たのかとか、葵がこうなってる理由その他諸々、聞かされないうちに二人っきりになってしまったんだから。

 

 

「……ね、ねぇ?」

 

「…………」

 

沈黙による静寂に耐えられなくって隣にいる葵に声をかけて見るけど、当然と言うべきでしょうけど返事は無かった。……それどころか、私の方へと視線を向けることすらしてくれてない。

 

本当にどうすれば……!?

ただ奏を待ってるだけでいいなら、このまま静かに待ってればいい気もするけれど、以前奏に「私にも手伝わせて」みたいなことを言った手前、じっと待っておくなんてほとんど何もして無いような状態でいることは避けたいわ。

というか、せめてこの子を預けてく時に奏が何があったのか教えてくれてれば、何かしらできたのに……。

 

 

「ううぅ……奏は意地悪だわっ……!」

 

 

そもそもの問題として、これまでにあった葵と私との接する機会が間に奏がいる場面(じょうきょう)しかなかったのが問題じゃないかしら。

私はもちろんだけれど、葵のほうも相手との距離感を測れずにいる。その結果、さっきのように話しかけても互いにどうしていいかわからずに、コミュニケーションがとれないという結果になるわけで……決して、決して無視されたとか眼中に無いとかそういうのではない……はず!

 

 

そう。何か共通の話題を出してみたら……?

ひとつ思ったのだけど、こんな風に何も喋らない葵だけど、客観的に見て奏とは不思議と通じ合っているように見える。……厳密には、奏が察しが良すぎるように思える。

 

そう見えるだけで通じ合っているというのは私の勘違いか、()しくは、奏が勝手に想像して葵はソレに流されてるだけで実はすれ違いが起こってる……なんてことも、あってしまうんじゃないかしら?

 

「奏とは上手くやっていけてる?」

 

「…………」

 

「何でもないわ」

 

私の言葉に反応してこちらを見た葵の表情(かお)は、まるで……そう、「何を言ってるの、この人?」と言わんばかりのしかめっ面だった。そんな顔をされては、すぐさま言葉を取り消すしかない。

 

くっ! こんなはずでは……!

 

でも、冷静に考えてみれば、葵のほうに多少なりと問題があるとはいえ相手は他でもない奏。()()()ならともかく、今の奏にはあんな心配は無用に決まってる。

……()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まるで私が奏と葵の間ですれ違いがあって欲しいかのようで……。

 

「……変なこと聞いて、ごめんなさい。私、なんだか少しおかしいみたい」

 

「…………」

 

謝る私に向けられる視線は、咎められてるようにも呆れてるようにも感じられ……それを一身に受け止めるのは、私には難しかった。

故に、隣の葵へと向けてた視線を正面に戻して……それでも落ち着けず、(まぶた)を閉じてしまう。周りの情報を一旦拒絶でき、そこで深呼吸をすれば少しは気も落ち着けるはずだ。

 

あぁそれにしても、いっそのこと最初のように無関心でいてくれる方が私には…………反応されなかったのが嫌なはずだったのに、何言ってるのかしら。何というか、奏と葵のことを考えてると、こう……モヤモヤするというか、その――――

 

……不意に、肩に何かがフワッと触れたのがわかった。

目を瞑ってしまっていた事もあって、少しビックリしてしまった私は、ハッと目を見開いて自身の肩へと目を向ける。そこには見覚えのあるタオルケットがかけられてて……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そこへ、私の脚への軽い衝撃と重さ。

決して重いわけではなく、しかしそこにあるふんわりとした重量感。釣られるように正面を向くと、視界の下半分くらいが青い何かに占められてて――

 

「えっ」

 

――具体的に言えば、葵が私の膝の上に座ってた。

奏と葵が一緒にいる時に時々している体勢、それにそっくりで、さっき私の肩からかけられたタオルケットの両端は葵の両手によって前方に持っていかれてて……そう。私と葵、二人を包み込むような形になってた。

 

 

「――って、ちょっ、ま待って!? こういうのは奏の役目で!」

 

「…………?」

 

「っ!」

 

振り返りながら首をかしげるその姿は、「ダメ?」と甘えてくる幼子(おさなご)そのもの。そんなの、断れるはずが無い。

それに……これまで年下の子と接する機会が少なかったということもあるけれど、こうして甘えられるのも、その、悪くない気がするわ……!

 

 

「わ、わかったわ。少しだけだからね」

 

「…………♪」

 

どうして私の膝に座ってきた(こんなことをしてきた)のかはわからない。

けれど、私も悪い気はしなかったし、私の膝の上で足をユラユラ揺らしている葵もこころなしかご機嫌なように思える。感情表現があまり豊かとは言えない葵にしてはこう、わかりやすいというか……ええ、とにかく良いことじゃないかしら?

私は、自然と目の前の流れるように長い青髪を撫でていた。

 

 

 

 

 

どれほど経っただろう?

不意に葵の頭が動いた。後ろ()へ振り返ってくるのかと思ったけれど、そういうわけでもなさそうで……斜め横ほどで止まった。

 

「…………?」

 

「どうしたの?」

 

私もつられるようにそっちへと目を向け――

 

 

「へぇー」

 

「あらー?」

 

「ほうっ」

 

 

――通路の曲がり角から顔を覗かせている人達と目が合った。

 

「えっ」

 

本部内ということもあって、当然私の見知った顔ばかりではあった。

 

ニヤニヤと笑う奏。

頬に手をそえて微笑む櫻井了子(櫻井女史)

感慨深そうな顔をした風鳴司令(叔父様)

 

そう、見知った顔。見知った顔だからこそ、私は足の先から髪の先まで熱くなって……!

 

 

「ちょっと目離してた間に、なんか随分仲良くなってないかー?」

 

「違うの、奏っ!? これは、その……!!」

 

「わーってるわーってる。葵があたしの膝に乗っかってる時、隣でジーッて見てたもんな」

 

っ!? そ、そんな! 見られてたっていうか、そのあたりもバレてたの!?

もっともっと恥ずかしくなってきて、ますます顔が燃えるように熱くなってしまう。

 

そんな私をよそに、奏は腕を組んでうんうんと頷いてる。

 

「羨ましかったんだろー? だからって、あたしのいない時に隠れるようにやらなくたっていいじゃんかー」

 

「違うわっ! 羨ましかったのは、むしろこの子がであって……って、そうじゃなくて! これはこの子のほうから乗ってきたのっ!」

 

「何それ!? 羨ましい!」

 

「奏ぇ!?」

 

「だって、あたしの時はこっちから抱き寄せないと全然乗ってくれないのに~!」

 

そ、そうだったかしら?

……でも、思い返してみれば、確かにいつも奏が葵を脇から抱えあげて膝の上に乗せていたような……?ということは、葵が自発的に膝の上に乗ったのは私が最初?

それは、奏に申し訳ない気が……するけれど、心のどこかに喜んでいる私がいる。

 

 

すると、自分でも気付かないうちに自然とまた葵の頭へと手が伸びてしまってて、さっきまでと同じように髪を撫でていた。

 

と、こんどは櫻井女史が少しかがんで、座ってる私たちの顔を覗きこむようにして来た。そして私と葵を何度か見比べてから、その微笑みを一層朗らかにした。

 

「あらあら、そうしてるのを見るとふたりは姉妹のようにも見えるわね」

 

「私とこの子がですか? ……ハッ!?」

 

指摘され意識してみると、こう、胸の奥になんとも言えない感覚が……。

それが何なのかと考えようとした思考は、唐突に打ち切られた。不意に視線を強く感じ、そっちへ目を向けると……そこには唇を尖らせた奏の姿が。

 

「つーん」

 

「奏。お前の気持ちは察せなくもない。だが、俺が言うのもおこがましいかもしれんが、その反応はいささか大人(おとな)げないんじゃあないか?」

 

「別にーそんなこと無いって。大丈夫問題なーし。あたしは、旦那をことごとく拒否って不機嫌になった葵を慰めて、そこで友好を深めるから」

 

「待て。俺が許されないことは確定済みなのか!?」

 

不満げな奏に叔父様が何やら言っているけれど……いったい何のことなのかしら? もしかして、奏が特機部二(ここ)に来た理由と何か関係が……?

 

私は膝の上で気ままに体を揺らし「我関せず」といった様子の葵のことはひとまず置いておき、事の成り行きを見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

外で用事を済ませ、徒歩で本部へと帰る道中に俺は頭を悩ませていた。

 

というのも、俺のせいで何やら調子がおかしくなっていた(あおい)君に、俺は誠心誠意謝罪をしたのだが、その返答――というか反応――があまり著しくなかったのだ。

しかしそれは、俺の謝罪が悪かったというよりは、葵君自身が自分の感情(気持ち)に整理が付けられていないという感じだった。

 

「申し訳なかった」と頭を下げてれば、葵君はむしろ困り慌てふためいた。

「俺が何か悲しませることをしてしまっただろう?」と問えば、首を横に振り否定した。

「怪我や体調不良ではないんだろう?」と問えば、しっかり頷いた。

「何か気に障ることがあったのか?」と問えば、反応を返さなかった。

「俺たちには話せないことなのか?」と問えば、小さく首を振ったのちに首をかしげた。

 

結果、葵君自身でも自分の感情(気持ち)に整理が付けられていないという結論に収まり、経過観察という形になった。

 

 

 

 

()()()()()()、奏(いわ)く「日常生活は普段通りに戻った」という報告を受けた。が、やはりどことなく気落ちしているように見えた。奏の表情からして、彼女もひっかかりを感じているのは間違いなさそうだ。

そこになにも思わないほど俺は無関心ではいられない……のだが、だからと言って何かしらの解決策を見いだせるわけでもない。

 

簡単に思いつくことと言えば、プレゼントか何か、なにかしらを与えて喜んでもらうとかそのくらい。しかし、それはそれで問題がある。

 

「まいったな。あのくらいの子に何をやれば喜んでもらえるかなんて、わかったもんじゃないぞ」

 

参考になりそうな身近にいた子供といえば……まあ、真っ先に思い浮かぶのは戸籍的には姪にあたる翼だろう。しかし、参考になるかどうか改めて考えると……素直には頷けそうには無かった。

 

どうしたものか……。

 

 

そんな事を考えながら歩いていた最中、ふと道沿いにあったある店が俺の目に留まる。

 

「ラ・ジーンT8?」

 

店の看板にはそう書かれていた。「T8」の意味はよくわからんが……まあ、店名は気にしたところであまり意味は無いだろう。

ガラス越しに見える店内は、少し小洒落(こじゃれ)た喫茶店と言う印象を抱く。おそらくは、その見た目通りコーヒーや紅茶などといった飲み物と軽食や甘味(スイーツ)を楽しめる店なのだろう。

 

 

「ん? ああ、なるほど。あのショーケースからして、持ち帰りもあるのか」

 

そこで俺はピンと閃いた。

女子には甘いもの。特に子供となれば、基本的に甘いものが好きな傾向は強いという認識がある。アレルギーに関してもこれまで報告は受けていないので、食事関係では出ていない……つまりは大丈夫なはずだ。

 

「我ながら安直だと思うが……」

 

謝罪の意を込めて……そして言い方がアレかもしれんがご機嫌取りに甘いものを手土産に持って帰ってみるのは悪くはないんじゃないか?

ついでに、普段がんばってくれている皆への差し入れも買ってみるとするか。

 

 

 

 

 

「いらっしゃい。よく来たねぇ」

 

店内で俺を迎え入れたのは、独特の雰囲気を醸し出すマスター。銀髪と、それと年齢不詳感を煽る同色の(ヒゲ)。あとは、いかにも喫茶店の店員といった服装をしていた。

そんなマスターを含め、悪い雰囲気ではない喫茶店だった。時間が時間なら、客は少なからず入っているだろう。

 

 

ショーケースの前に立って商品を見渡し、葵君への手土産と皆への差し入れを吟味する。

 

「ぬぉお!? こ、()()は……!?」

 

と、そこで目に留まるモノが……留まらざるを得ないモノがあった。

 

「ああ、()()かい? ウチで一番人気のスイーツさ」

 

()()がか!? この値段で……いや、それだけ材料を厳選した一品というわけか」

 

ショーケースに並べられているケーキをはじめとした甘味(スイーツ)

その中で一つだけ異彩を放つモノが……主に見た目と値段が他とは違う。

 

しかし、悪くない!

なによりも、その見た目からしてインパクトが強く、一目で見て凄いとわかるのがいい! あと、個人的には名前も()()()()()()()()!!

 

「マスター! ()()を、この最後の一つを買わせてもらう! あと、こちらを――」

 

 

 

 

あとがき等での本編登場元ネタの簡単解説の有無

  • シンフォギア関連のみ
  • 遊戯王関連のみ
  • 両方
  • 必要ない
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