我が手には星遺物(誤字にあらず) 作:僕だ!
過去最長!(だいたいイヴちゃんのせい)
超展開!(遊戯王ではよくあること)
イヴちゃんがおかしい!(いつものこと)
俺ルール!(遊戯王ではよくあること)
書きたかったことを表現しきれてるか不安!(ドルべ有能、「僕だ!」無能)
プロットはあるけど半分くらい勢いで書きました! 勢いで呼んでくれぇ……!
そして、今回のお話ですが、構成の都合途中に第三者視点での文が入っています。
「『僕だ!』」
なーに言ってるんだ、この
……
…………
………………
冗談だ、他でもない《
いや、その、違うんですよ。
「またなにかやらかすんだろうなー。その前に彼女の目的くらい特定して対策なり説得なりできればいいなー」程度に考えて、この言うこときかないお口のせいで上手くいかずにそのままだったフィーネこと闇リョーコさん。そんなフィーネが街でノイズを大量発生させるどころか地下にトッキブツの本部があるリディアンまでも襲撃しだした。で、それに対して文句の1つ2つ言ってやろうじゃんか、ってワタシの中ではそうなってたはずなのに……どうしてこうなった。
「…………え…………?」
ほらみろ、いきなり名乗り出たりするからヒビキが「何言ってるの?」って顔で振り向いてきちゃって――――うん? にしては、ワタシの予想とは違う
それに、ヒビキ以外のみんなもギギギッと軋むような音が聞こえそうな感じで振り返ってきて、まるで信じられないモノでも見るような顔をワタシに向けてきてる。
いったい、どうしたっていうんだろう?
「まさか、葵が……
「ははは……違うだろ? ほら、いつもの「思った通りのことが言えない」ってやつなんだろ? そうなんだろ……だから、そんな目をしないでくれよ、葵ぃッ!!」
え……あっ!?
そ、そうだ! 学生としてではないけど何度も通っていてなんだかんだで愛着のあったリディアンの校舎が跡形も無くボロボロになってたのがショックで、ちょっと呆然として話を半分くらい頭に入ってきてなかったけど――ワタシが『僕だ!』っていう前にみんながしてた話は「ココに私の手駒がいるけど、
そこに颯爽と『僕だ!』と宣言する人物が、身内にいた。
味方陣営に入り込んで友好を深めて……で、ここぞって時に敵としての正体を現す……ほぼ完ぺきに今のワタシの状況にピッタリ合致しちゃってるじゃん。これで『ジャンジャジャーン! 今明かされる、衝撃の真実ぅ~』とか『楽しかったぜぇ、お前との友情ごっこ~!!』*3とか言いだした時には、もう役満だろう。
決闘者としては
というか、フィーネとは前からの知り合いではあるけど、手駒とかじゃないから!! ……でも一部事実があるから、完全に否定はしきれないのがツライっ! 仲間や知り合いというか、元・上司と部下というか、もっと正確に言えば研究者と
「このちびが、フィーネの手下だったってのかっ……はっ!? だから、アタシの名前を知ってやがったのか……!!」
クリスちゃんは続けて「でも、じゃぁなんであの時……」なんて言ってるけど――その「あの時」が何のことかはイマイチわかんないが、とにかくきっとどっかですれ違いをおこしちゃってるから! ワタシが
それに、ワタシの方へと振り向いてるせいでわかってないみたいだけど……「
というか、今気づいたけどあの
……って、今、そんなことはどうでもいいじゃない!?
とにかく、一刻も早く誤解を解かないと!
今さっきの『僕だ!』発言が、さっきカナデが言ってたみたいに毎度おなじみの「思ったこととは別の言葉が口から出てきてる」ってヤツだったってことを理解してもらう為に……
いやいやっ!? まぁ知った仲ではあったけど、別にそんな「これから一緒にトッキブツを内部からズタボロにしようぜ!」みたいなノリする仲良しじゃなかったから! むしろ、昔から痛めつけられたりしてたし、最近だって熱いコーヒーブン投げてぶっかけられたりしたし!
……だからって、フィーネをぶっ飛ばしたいとか思ってるわけでもないからなぁ……。以前にも言ったけど、フィーネっていうのは先史文明期の巫女さんらしい。そして、ワタシの知識から導き出される印象として「巫女」ってのはロクな目にあわない。《
……それじゃあ、ワタシって結局どっちの味方なんだろう?
なんかもやもやするが、今は目の前の現状をなんとかするのが先じゃないか? 前後の話の流れを完全無視した意味不明なことを言いまくって、頭おかしい子判定受けることによって話を有耶無耶にするしか……! そんな上手く事が運ぶ保証はないし、できるかなんてわかんないけど、何にもしないわけにはいかない!
さあ、言おう! 大きく口を開けて意味不明なことを――あっ、さっきの『友情ごっこ』とか真ゲス関連はノーサンキューだから。言うなよ? 絶対言うなよ、ワタシのお口っ!!
「なんでダンマリなんだよ……応えてくれっ、嘘だって言ってくれよ葵っ!!」
…………。
「言うなよ」とは思ったけど、本当になんにも言わないなんてどうかと思うんですけど!?
なんかおかしくない? ワタシのお口。いやっ、おかしいの前からだけどもっ!! それに、さっきの『僕だ!』の時だって、なんか違和感があったし……
「葵ぃ、どうして――」
「ハァン。なに、単純なことだ。貴様らの言葉にわざわざ応えてやる必要もないと判断されたのさ。そう、そもそも「
自分の身体のことを、あーだこーだ考えていると、いまだにワタシに呼びかけるカナデに、その姿を嘲笑うかのような調子でフィーネが何か語りかけてる。
ワタシはちゃんと応えようと思ってるよ? いうこときかないお口がいつも以上にいうこときかないだけで。
それに、間違い無く
「……ウソだ」
「嘘であるものか。コイツは最初から櫻井了子がフィーネであることを――アメリカと繋がりのあるスパイであり、ノイズを出現させ操っていることを知っていた。それを密告していない時点で……答えは明白だろう?」
「葵は、葵はそんなやつじゃぁ……!」
え、あ、うん……その辺りは弁解のしようがない。
思った通りのことを
それが今、この状況を作り上げる要因になってしまったことは反省して謝るべきだ……その前に、やれることをやるのが先だろう。でもそれ自体が、やっぱりお口のせいで難しいってトコに巡り巡って戻ってきやがったよ……。
「本当の名も知らず、いつまでそうやって「葵」と呼び続ける? いい加減、あの時ノイズに消された妹の幻想から目を覚ましたらどうだぁ?」
「違う! あたしは葵をあいつとはっ――――本当の名……?」
「
「「「――!!」」」
フィーネではなく、櫻井了子としての彼女と接点があったカナデ、ツバサ、ヒビキが息を呑んだのがわかった。
そして、フィーネの発言はワタシにとっても驚きのものだった。
確かに、最初のころはちょっと納得いってなかった部分もあったけど、もう今更だし、正直なところ「
そんな軽い感じのワタシとは違い、周りのみんなは主に精神的な意味で深刻な状態のように見えた。
……教えたくないわけじゃない、というかむしろ知ってて欲しい。だから今すぐにでも「イヴ」って名前を伝えたいんだけど……言えるかどうかが問題だ。頑張って口を動かそうとしてみる。
と、ショックを受けながらもツバサが、ワタシを睨みつけ――にしては弱々しい目で――口を開いた。
「何故……何故なの? 素性を、本心を隠し続けて……私達は、奏は! あなた自身を打ち明けるには
「な……」
ようやくお口が動いたかと思えば、なんでそんな心にもない
ツバサなんて、正に絶句といった様子で一瞬固まってしまってる。
いくばくかの時を経て復活したツバサが、キュッと一度唇を噛んでからまた何かを言おうと口を動かし――――その前に、ガッと一歩ワタシの方へと踏み出してきた
「アタシだけじゃない……仲間のコイツらも、カフェの二人も……みんなずっと騙し続けてたってのか! そんな真似して、お前は何とも思わないのかよ!?」
「な……!? なんで……アタシは、お前を……信じたコッチが…馬鹿だって、いうのかよ……――ッ!!」
ギリッっという奥歯を噛み締める音がここまで聞こえてきそうなほど歯を食いしばるような顔をして、ワタシを睨んだ
―――って、なんでさっきから、変に会話が成立するようなセリフばっかり出てくるんだ!?!?
そんな天性のドローセンスはいらないからっ! いやっ、ドロー運は欲しいけど、こんな時に発揮してくれないでいいよ!?
「そんな……嘘だよ……!」
そんな声が聞こえてきて、ハッとし反射的にソッチを見た。
そこにはワタシのほうをしっかりと見て、なんとか笑おうとした強張った笑顔を浮かべたヒビキが。それが、今にも泣きだしてしまいそうなのを我慢した精一杯の顔だっていうことは――決壊寸前だってことは、すぐにわかる。
「だって、わたしたちのことを敵だったなら、なんであのライブの日、わたしを…わたしを護ってた奏さんを助けたの……? なんで二課のみんなのお手伝いをしてたのっ? なんで戦い方を教えてくれたのっ、あんなに一緒になって修行をつけてくれたの!?」
「『希望を与えられ、それを奪われる。その瞬間こそ人間は一番美しい顔をする……それを与えてやるのが俺のファンサービスさ!』」*8
「……そんな、笑って……っ!」
大仰に両腕を広げたりしながら語り、ニタニタ笑うワタシを見てついにポロポロと涙を零し始めてしまうヒビキ。
今、やっとわかった……
もしかして、コレがちょっと前に例のカフェで《
いやっ思い返してみれば、シンフォギアを纏えなくなったカナデに腹パンしたあたりも自由が利かずに勝手に動いてた節があるし、100%《
でも、原因が不明となると……というか、「どっちにしろ」っていったほうが正確かもだけど、現状の打開には全然繋がりそうにないんですけどー!?
「ふははははっ!! キサマらのその絶望に染まって苦しみ歪んでいく顔、なかなかの見せ物じゃないか!」
頭を抱えて転げまわったり、
「特に、出来そこないの装者である天羽奏……どちらか片割れが死ぬくらいがちょうどいいと考えていたライブ襲撃の際に生き延びたこと、そして歌えなくなったはずなのに今こうしてまたシンフォギアを纏っていること……予想外な部分はあるが、見逃しておいた価値はあったようだなぁ?」
ケラケラ笑うフィーネとワタシの間で挟まれ、絶望と怒りとか色々混じった
そんな中、嗚咽に交じって泣きながらこぼしたヒビキの言葉が耳に入ってきた。
「了子さん……葵ちゃん……!! なんで、こんなことを……」
「何故だと? そうだな……わざわざ教えてやる必要も無いが、冥土の土産に――――」
高々と挙げられたワタシの人差し指が指し占めすは、暗い
「……攻撃? 月を、ですって?」
「どういうことだ!?」
知らん、そんなことは俺の管轄外だ。
そうツバサとクリスちゃんにいいたかったが……今度は動いてくれなかった。
いやだって、このいうこときかないお口から勝手に出てきた言葉だもん。ワタシが知っているわけもない。そもそも王国編の俺ルールのように
「これまでで得てきた情報だけで私の意図をそこまで読み取り、確信に至るまでの予測を行うとは。やはり、頭の回りは尋常ではないようだな……もはや、どこまで理解しているのやら」
――――ゑ?
き、気のせいかな? フィーネがまるでワタシの「月を攻撃」発言を肯定するかのようなことを言いだした気がしたんだけど……?
「まぁいい、すでに準備は終えたのだ。じきにその目で直に見ることになる――
地響き。
フィーネの背後、瓦礫の山が勢い良く散った。その瓦礫の下から何かがせり上がってきて、ズンズンと空へと向かって伸び――――そびえ立った。
金、紅、その他諸々…色とりどりの原色で描かれた壁画。それで構成された天高くそびえる円錐と円柱の中間くらいのカタチの巨大な
まさかこれが「カ・ディンギル」!?
ワタシの知ってる「
「なっ、あの模様……地下の二課本部へのエレベーターが通っている空間の壁に描かれていた壁画――――まさかっ! 「カ・ディンギル」はそのまま塔として建造せずに地下に隠して……それも、こちらの懐に!?」
「んなっバカな……!!」
予想外の展開に、ツバサとカナデが声を上げる。
見れば、さっきまで泣いていたヒビキもあまりのことに涙が引っ込んでしまったようで、でも状況についていけずに疑問符を浮かべてワタワタと慌ててる。
「これが「カ・ディンギル」! 失われた相互理解、人類の不和の元凶である「バラルの呪詛」、その発生源である月を
高らかに、そう告げるフィーネ。
その言葉に連動してかどうかはわからないが、「カ・ディンギル」出現の際とはまた違う低い地鳴りが辺りに響いた。
なんというか、こう……徐々に強まっていってるような振動……。
「バラルの……呪詛?」
聞いた言葉を理解できず、反芻するかのように呟くヒビキ。
ワタシも、どこかで聞いたような気がするその言葉が少し引っかかっていた。
そして、そことは少し別の個所にくいついたのは、
「人類の不和の元凶だって……? どういう意味だよっ、それじゃあまるで世界で起きてる戦争とかが全部ソレのせいって話になるぞ!?」
「その通りだ。先史文明期、存在した「統一言語」が突如失われ――――いや、
「ノイズもだと!?」
ノイズに対し並々ならぬ感情があるだろうカナデが特に強い反応を示した。
そして、その言葉を聞きながらワタシは思い出していた。
「バラルの呪詛」。その言葉を聞いたのが、例のカフェにてワタシのお口が何か言ってそれを聞いてた
確か「バラルの呪詛のもたらしたモノがどーいったものかも知らないくせに~」みたいな感じだった気がする。そしてなるほど、と納得してしまう。フィーネは知っているというか嫌と言うほど直に感じたんだろう、相互理解を失った人類が殺し合うその様を。
ワタシのお口があの時何を言ってしまったのかが今ひとつ思い出せないが……そのあたりの事を不用意につっついてしまったんだろう。
そりゃぁワタシに切れてしまうのも当然だし、「バラルの呪詛」を毛嫌いするのも仕方な――――
「月を穿つ……まさかっ! 「
――――いけど、それとは別に、コレはやり過ぎじゃない?
さっき「天変地異」がどうたらこうたら言ってたし、呪いとやらが解けたとしても、ロクなこと起きないよね? どうするつもりさ、この地球を。
そしてなんでわかったんだクリスちゃん!?
あれだろうか? 銃とかマシンガンとかミサイルとか……銃火器をシンフォギアで使うから「カ・ディンギル」の構造を見てキャノン砲みたいなモノだって理解できたのだろうか?
――――って、
「ふん、今頃気付いたか。今アレには二課の深層部で保管されていた完全聖遺物「デュランダル」が生み出す無限大のエネルギーを元にしたエネルギー砲。そして、この無駄話をしている間にもエネルギーの充填が進んでいき――――もうすぐ、射出に至る! もはや、誰にも止めることはできない!!」
どういう……ことだ……
―――――――――
人類の不和の元凶である呪いを、月を撃ち抜き消し去る。
それはおそらく「世界平和」を目指すクリスにとって他には無いだろう夢を叶えるための手段だろう。
だが、クリスにとってはとても喜べるものじゃなかった。
フィーネの言葉の端々から多大な犠牲が起きることを察し、両親から受け継ぐべき「夢」とは――想いとは違う、過ちだとわかってしまったから。
だから迷い――――しかし、彼女は決心する。「なんとしても砲撃を止めなければならない」と。
単純明快な阻止方法は「カ・ディンギル」の破壊だが、「ネフシュタンの鎧」を纏ったフィーネは、クリスたち装者と「カ・ディンギル」との中間位置に立ちふさがっている。直に壊しに行った場合、邪魔をしてくるだろうフィーネに勝てるかどうか以前に、エネルギーチャージ完了が目の前である今、先に砲撃が発射されてしまうことは目に見えている。
迅速で、確実な一撃。それをフィーネの届かない範囲で。それがクリスがすベきこと。
彼女が導き出した答え。それはシンフォギアのチカラによって生み出した人よりも一回り大きいくらいのミサイルに飛び乗って天辺へ、その先の上空を目指して飛び、そこで全身全霊の「絶唱」を放ち、「カ・ディンギル」の砲撃を相殺――あるいは砲撃を逸らす――すること。
どこまで思い通りにいくかなんてわからない。けど、それしかないとクリスは直感していた。
フィーネの意表をつけるのは、ミサイルに乗って飛ぶという荒業を初めて見せるその時だけだろう。
つまり、奇策としても、時間的にも一度きりのチャンス。
――――お前の思い通りに、させてたまるかよっ!!
息を潜めてから、クリスは心で叫びながらミサイルを出現させ――飛び乗る。
完璧なタイミング。
クリスの視界の端には、一瞬遅れて「何事か」と気付いたフィーネの目を丸くした顔が見えていた。
「…………ぇ?」
瓦礫の上に尻餅をつく形で倒れ込んだ身体――その腰回りに、
ミサイルの出現から始まるいきなりのことに困惑していた周りも、そしてクリス自身も――――杖を放り捨て飛びついてきた
クリスを乗せることなく飛んでいったミサイルは、予定通りの軌道で「カ・ディンギル」の上を通り過ぎていってしまう。
真っ先に困惑から回復し状況を理解して口を開いたのは、口角を釣り上げ嗤うフィーネだった。
「はっはっはっはっは!! 捨て身の突進か、何をしようとしていたかは知らないが――――無駄になるか否か以前に、何も為せないとは! 笑いがとまらんなぁ!!」
呆然としていたクリスは、そのフィーネの笑い声を聞いて、ようやく砲撃の阻止を失敗したことを理解した。
その原因が他でもない、つい数分前まで信じていた相手であり……実際は敵の手駒だった
そして遂に「カ・ディンギル」からの砲撃が発射される、その時が来てしまった。
「そうやって地に這いつくばり見るといい! 月を、呪いを穿つその瞬か――あっ?」
空を見上げたフィーネが――彼女につられて見上げていた装者たちが――固まる。
否、それは欠落ではなく
地球と月との間に、いつの間にか現れ、落下してくる
その
月を穿たんと発射された「カ・ディンギル」の高エネルギーのレーザー砲の
遠く上空から飛来してきているためその巨大さと形を正確に捉えることは困難だが、地上へ向かっているほうの先端は細く尖っていて、逆に上空の方の先端は極端に膨らんでいるように見えた。
全容を
むしろ砲撃を――高エネルギーの奔流を、弾き、掻き分けるようにして、速度は減少してしまいながらも壊れることも無く、ほんの少しずつだが落下を続けてる。
謎の巨物に弾かれた砲撃はといえば、一部は霧散し、一部は逸れ……結局は、そのほんの一部が月の端あたりを抉るだけに留まった。
その月の損害は、どう見てもフィーネが本来期待していた結果からは遠く離れていた。
そして、遂に「カ・ディンギル」から放出されていたエネルギーが収まる。落下を妨げるものが無くなった巨物は、ゆっくりと落下を続け――――ほどなくして、地響きを立てて止まった。
「カ・ディンギル」の砲身の先端から、色の無い闇のような巨大な宝玉が埋め込まれている膨らんだ巨物の先端が顔を出すかのような形で地上に落ちた謎の巨物。
その意味不明な展開と目の前の異様な光景に、「カ・ディンギル」の周りにいた誰もが呆然としていた。
ただひとり、冷や汗を流しながら目を泳がせている「
―――――――――
なんでこのタイミングで《星遺物―『
OCGの登場順というか、「星遺物」ストーリー内での登場準的に考えて「
それともあれか?
「カ・ディンギル」からバベル……前に話した事もある*12「
いやまぁ、あのあたりの話って、カードイラストの時系列の前後関係がいまいち不明なところもあって、《星遺物―『
仮にそうだったとしても、今の状況、もしも《星遺物―『
そして、ついさっきまでワタシが腰に抱きついていた
みんなよりも先に上空に何かあることに――そして、知識があったからその正体に気付いたワタシが、さらになんか飛び出そうとしていた
とにかく!
なんで「星杖」が降ってきたのかとかわからないことは色々あるけど、偶然にも「カ・ディンギル」の砲撃から月を守ることができた上に、砲身に栓をしてしまったから
そのフィーネはといえば――――
「どういう……ことだ……」
――――この様である。
ココにいるみんなの気持ちの代弁、ありがとうございます。
仕方ないよね、
「なんだアレは……? 何で出来ている? ……わからない。カ・ディンギルの砲撃に耐えて……なぜそんなモノが今ココにピンポイントで……っ! いや、
《
「キサマの仕業かぁッ!! どういうつもりだぁあ!?」
どうしてそうなった!?
違うから! ワタシ、じゃない!!
ワタシが《
「『素晴らしい……美しいよ、その苦しみにゆがんだ
なんで今日のワタシのお口はトコトン煽っていくスタイルなんですかねぇ……!?
「ふざけたマネをぉーーーーッ!!」
フィーネが腕を振り抜き――――衝撃!!
一瞬遅れて理解する。
ついさっきまでそばにいたはずの
つまり、ワタシはフィーネによって「ネフシュタンの鎧」の茨を巻きつけられ、投げられその勢いのまま学院の校舎の瓦礫の上に叩きつけられたんだろう。
「まさか、米国との決別を察し
「『違う、絆を選んだんだ! 俺たちの絆が運命を超えて行く!』」*17
どこからか響いてくる振動で、さらに身体中が痛みながらもワタシの口から出てくるカッコイイセリフ……
それは
「くくくっ、くははははぁはははっ!!」
ほら、フィーネもありえないことが馬鹿らしくって、ワタシの拘束を解いてあんなに笑ってる――――
「ふふふっ、感じるか? この振動を。「カ・ディンギル」は既にすでに
――――ゑ?
「なっ!?」
「なんですって!?」
「そんな……!」
「はぁ!?」
「誰も一撃だけなどとは言っていないだろう?」
そう言って笑うフィーネ。
それはそうだけど、あんな極太レーザーみたいなのをそう何発も撃てるはずが――あっ、そういえば「カ・ディンギル」のエネルギーの
なら、充填時間さえあれば何発でも……あれ?
「しかし、今、「カ・ディンギル」は
「なっ!? そんなことになったら、アタシらや……フィーネ、お前もっ!!」
「ああ、
フィーネが愉快そうに――しかし、目には怒気を灯らせ――
「キサマの言う「絆」とは、そいつらに「カ・ディンギルと心中してくれ」と頼むことなのかぁ? それは随分と滑稽なものだな!」
……徐々に強くなってく振動が、エネルギーの充填が進み暴発の時間が刻一刻と近づいていることを告げている。
第二射があるというだけでキツイものがあるというのに、《
そんな極限状態――――それ以前に、ワタシの過去のことやいうこときかないお口のせいもあって精神的に追い詰められていた装者のみんなに、冷静な状況分析、迅速な対応ができるだろうか?
むしろ、誰が敵か味方かわからない上に常識外れでどうしようもない事態に絶望しても仕方ないだろう。
だが、しかし…………
「大丈夫」――ワタシはそう、伝えるために口を動かす。
「え……?」
――――え?
「『君たちと過ごした時間は最高に楽しかったよ』」*20
……なんか、消えることを目前とした人が言いそうなことを、ワタシのお口が口走っちゃってるんですが……真剣に考え、シリアスな感じではあったけどちょっとなんかズレてない?
いちおうそんな
まぁそれ以前にお口が……ね。
ワタシは
その姿は当然、ここに来るまでノイズと戦っていたこともあって《
《星杯神楽イヴ》は、《
それは正しい。
ならば、《星杯神楽イヴ》は「他人が受ける破壊効果の身代わりとなる」能力を持っているか?
いや、
それはあくまでOCGカードの効果であり、「星遺物」ストーリー内でそういった描写は見受けられなかった。
であれば、カナデの身代わりとなったことのある《
それはどうかな?
確かにOCG効果は持っている。だが、それならばワタシは《
だが、ワタシが《星杯神楽イヴ》と成ることができるようになったのは、偶然《星遺物―『星杯』》を起動し手に入れてから……それ以前から出来てもおかしくないような気がするが、実際はそうはなっていない。ならばOCG仕様ではない……?
ならば、こう考えてはどうだろうか?
そして――《
デュエリストとしての記憶を思い返す。
アニメにおいて……「GX」等で登場するデュエルモンスターズの「精霊世界」ではデュエルでなくともモンスターを召喚し、チカラを借りることが出来ていた。そして、「GX」の主人公・十代や一部デュエリスト、「5D‘s」のサイコデュエリスト*21などなど、彼・彼女らはデュエル外でも現実にモンスターを呼び出していた。それも、
ならば、《
それならばOCG仕様の「種族と属性が異なるモンスター2体」という条件と、「「星杯」を手に入れるまで
そう、ワタシはモンスターを、手に入れた星遺物を、チカラだけでなく何かしらの形で呼び出すことが出来る……間違い無い(確信)。
当然だろ? デュエリストなら*22
そして、最後のピース。
つい先程、《星遺物―『星杖』》が「カ・ディンギル」の砲撃をものともせず、壊れることも無かった事実。
――――勝利の方程式は完成した*23
「カ・ディンギル」へと突進するワタシに、当然フィーネは反応してくる。しかし、そこには迷いが見られる。
これまでの会話・得られた情報からして、フィーネとしても「カ・ディンギル」の破壊は避けたい事態なんだろう。しかし、あんなに巨大なモノ……どうしようもない状況ならば――といった心情の際が今、この状況だろう。
なんとかして「
だからといって、もしも「カ・ディンギル」が破壊されるだけで他が――装者たちが無事というのは許せざる事態。
ならばならばと、やはりこのままなのも最善とは言い難い……そんなところだろう。
だからこそ、動いてもすぐさまワタシを止め、トドメを刺してこようなんてことはしてこない。見極めようとする、ワタシのしようとすることを。
それが明確な隙。
その隙を逃すこと無く、さらに畳み掛けるっ!
迷いを見せるフィーネが何かするよりも先に、ワタシは
《
「んなっ――――!?」
絶句するフィーネが、カナデたちのいる瓦礫の広がる地面が、ワタシの足元から一気に離れていく。
そんな中、ワタシは両膝を曲げ足に力を込めていた。
《
《
跳び上がり、勢い余って跳び越えかけたその時、「
光を放ち、《
「カ・ディンギル」から顔を出していた大きく膨らんだ先端部分に埋め込まれた宝玉。これまで暗い闇に染まっていたそれが本来の「
そして――これまで自らの手で手に入れてきた《星遺物―『星杯』》や《星遺物―『星鎧』》がそうだったように――起動した《
さぁ、こい! 《
思い出して欲しい。
先程、《
破壊耐性を持たない攻撃力500で守備力2500の《
そして、形状的に考えても、棒状の杖と比べて盾の形の方が防ぐことに適していることは最早議論の必要は無いだろう!
「カ・ディンギル」から射出されたエネルギーの奔流が、ワタシが地上へ向けて
その勢いからか、少し打ち上げられるような浮遊感を感じはしたが、『
何度も撃てるっていうなら、何度でも受け止めて――――
…………
え、ちょっ待って。なんで?
――――ワタシの思考は、時折エラーを起こしながらも、高速回転を始める……
いや、一定以上のステータスがあれば「戦闘破壊」「効果破壊」でもないことも《
というか、そもそも《
だから、もし仮に「カ・ディンギル」の砲撃の判定が「直線上にある
……ん?
いやいや、確かに地上のカナデたちからは離れたけど、少なくともそばに《
リンクモンスターである《
対して、《
前をリンクマーカーの上下左右、他斜めのどこに当てはめるのかと問われれば……おそらくは「上」。フィールドに出せばイメージが湧きやすいのだが、EXモンスターゾーン*25にリンクモンスターが召喚された場合、上および左右斜め上のリンクマーカーは相手のフィールドを指す。前に敵――「カ・ディンギル」やフィーネがいることを考えれば現状にも当てはま――――つまり、左右に誰もいない今の状態の《
でも、なんかおかしい気が……?
ああ、そっか。
EXモンスターゾーンには融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・リンク等のモンスターを
《星杯神楽イヴ》と《星遺物―『星盾』》が縦に並ぶ状況って、《星杯神楽イヴ》がEXモンスターゾーンにいて、その
え? でも、実際のところ今《
どっちなの!?!?
遊戯王において位置関係関連のルールは、それこそ「遊戯王VRAINS」の開始と共にOCGでも新規参戦した「リンクモンスター」が登場するまで扱いは結構ザツだったよね!? デュエルフィールド無しでの野良デュエルでの惨劇を忘れたか!!*26
第一、リンクモンスターである《
というか、リンクモンスターをEXデッキから通常のモンスターゾーンに出す方法は「既に存在するリンクモンスターのマーカーの先に出す」だけしかないから、他のリンクモンスターが存在しないワタシは今回だけに限らず、最初からずーっと《
イヤイヤ、イヤイヤイヤッ!?
ありえないっ、そんなことないっ、だってそうでしょ!? そんなこと言い出したら、これまでや…そして今日もノイズと相対して
それに、あの約2年前にあったライブの惨劇の時にワタシがカナデのダメージを肩代わりして
もしそうだったとしたら、何故今はそんな扱いになってないのかとかいう疑問が増えるんですけど、そこのところはどうなって――!?
―――――この時の思考――時間にして、数秒足らず……
熱っ! あ、もうダ――――――――
「『ウワァーーーーッ!!』」*28
―――――――――
状況に思考が追い付かない……そんな中、
その後、星遺物を立て続けに召喚したことや『星杖』を起動し回収したことも――目の前で起きていることだというのに、奏には何一つ理解できなかった。
「『ウワァーーーーッ!!』」
「あお、い……?」
それでも、葵の叫び声は奏の耳に嫌と言うほど聞こえてきた。
それでも、その身を挺して砲撃を止めようとした少女が苦しんでいることを――その状況に胸の奥底が痛み、叫びたがっている自分がいることを――奏は頭での理解ではなく別の何かで「
「ああ……」
何をする間もなく、奏の視線の先で
果たして……「燈」色の輝きを持つ『
そのはるか上空に在る月もまた、第一射目での損傷以外に何か傷が増えた様子は無い。
だが、しかし……
少女が足場としていた大地から伸びた『
砲撃が終わり上空から徐々に落ちてき始めた『
――
奏の中に湧いてきた感情は、怒りか、悲しみか、後悔か、あるいは……しかし、それは彼女自身にもわからなかった。
叫びたくなる衝動を抑えて、奏はあたりを見渡し
「どこなんだ……どこにいるんだよ……」
憶えていたのだ。
「絶唱」を唄った自分の身代わりとなって消えた――光の粒子となって散ってしまったあの時、少女はそのすぐ後に
「お願いだ……いるなら返事をしてくれよっ、葵……!!」
自分たちの間にはこれしか知らないのだと、呼び続けていた名前を呼び……足場の悪い中を、少女を探して彷徨いだした。ただひとりの少女ことしか頭になくなった今の奏には、他の物も目には入らず、声も聞こえてはいなかった。
あたりの建物は「カ・ディンギル」以外全て瓦礫となり視界を遮るものはそれこそ「カ・ディンギル」しかない。
にもかかわらず、少女の姿は――少女と彼女が保有していた杖などの
「――――ぁあぁぁっ!!!!」
奏の中で、何かが外れるような音がした――――
途中から味方側に平常な精神状態の子がいなくなってしまった件。
そして何より
肉体的ダメージは現時点ではほぼゼロなのに壊滅的状況……『なにこれぇ?』
フィーネもフィーネであまりの事態にやけ気味……そんな彼女の詳しい心情云々は今後明らかに……!?
そして、今後の話の主人公はどうなる!?