──海──
レジャースポットといえば山派、海派に分かれるであろうレジャースポット。
夏になると多くの人が餌に群がる虫のように集まる場。
まぁ、実際は足に付いた砂が離れる事をうざったらしく拒み、焼かれた肌は長期に渡り人体を苦しめ、その他要素含めて何が楽しいのか全くもって理解不能なリア充専用フィールド。
だが、そんな忌々しいスポットも状況が変われば話も変わる。
「ふぅ……しゃーわせ♡」
パラソルの下、草で編まれたベッドにグラス片手の空。
両脇には、巫女の従者らしき獣人種が大きな葉で空を扇ぐ。
「この日差しの中空殿、いいご身分ですな」
「うむ、ジブリールお手製の光精配合つー日焼け止めのお陰でな♪」
「ジブちゃんに感謝しろよにゃ」
冷めた声をかけるいのに平然な空、感謝を要求するアズリール。
空達と一緒にいるアズリールはちゃんと空指定の水着を着てる。
とはいっても、ビキニではあるがボトムがショートパンツであり腰には変わらず布が巻かれている。
「あー、なんつーかアズリール、俺が言うのもなんだがあんまし変わんねーな。
いや、綺麗ではあるぜ?」
「うちなんかどうでもいいにゃ!
それより空!ジブちゃんのはちゃんとしてる水着だよにゃ!?」
「お、おう、流石にもう懲りてるから安心しろ…」
「ならよし!あ〜、めっちゃ楽しみにゃ〜♪早く見たいにゃ〜♪」
「……こいつ、本当は男だったって言われても受け入れられるぞ…」
「それには同意しますな」
見た目は少女でも中身はいくら経っても変わらぬ男のままなので、合ってるといえば合ってる。
まだかまだかとわくわく気分な天翼種はさておき、先程から空といのの叫び、舌打ち、皮肉──ほぼ空だが──が聞こえてたが今はいづなが着替え終わっていた。
「……着てやったぞ、です」
「流石いづな、何を着てもかわいいのぉ。
空殿が指定した水着と聞いて心配しましたが」
「浅はかだなじじい、まずッ!幼女には『スク水』と決まっている!!」
「おぉー、かわいいにゃー、よしよし」
「おい、てめぇ欠陥兵器!何いづなのことを触ってやがんだ、あぁッ!?」
「撫でる位別によくないかにゃ?」
「チッ……しかし、本当に露出は抑えたのですな」
「何度でも言おう浅はかなじじいよ。文化を加味せずどうして浪漫を語れよう!」
スク水に前が開けた半纏のような振袖を羽織ったいづな。
これこそが空の出した答えだった。
「こんなんでいいか、です」
「あぁ、パーフェクトだ。こりゃ文化遺産レベルだな」
「…意味は分かりませんが、孫に下品さを求めなかったのは評価しましょう」
「あ、あのぉ……着替え終わりましたわ…」
「おぉ、ステフか。いやー本当にいい仕事した──」
恥ずかしそうなステフの声に反応し、振り向き礼を言おうとし、固まった。
普段着のイメージをそのままに半透明な素材のフリルやパレオをセパレートの水着に付け、もじもじと顔を紅潮し視線を泳がせていた。
だが、空が固まった理由はそこではなく、豊満な『それ』に。
「──バカな…。八十九、五十八、八十九……戦闘力五十万だと!?」
「な、何で知って…って違いますわよ!何の話ですのよぉ!!」
「ステフのくせに、何としたレベル高さか…!」
「えっ、あ、そ、そうですの?そんなでも…ない、ですわよ……」
満更でもないステフに、もう一言二言掛けようとし口を開くが。
「申し訳ありません、遅れました。ご希望通りの姿を編むのに手間取りました」
「かっかっか、えーてえーて。待人焦らすんのも、ええ女の礼儀やで?」
その声に、一同が振り向き。
アズリール、空、そしていの。
何かを思うより早く、本能のままに。
そして──そこにいたのは『二柱の女神』。
二柱の女神──その一柱、巫女
金色の髪と耳と尾、そして白い肌が陽の光に照らされる様はさしずめ──後光。
幾分慎ましやかなラインはまさしく──至高。
普段は和服に包まれているその柔肌を、例にも漏れず半纏のような水着が包む。
夜の蝶を思わせる着崩しに、なよやかに覗かせた肩は、艶やかで。
その顔に浮かぶ妖艶な笑みは、永遠を生き、神へ至る妖狐──頂点たる天狐の実在を確信させる。
二柱の女神──その一柱、ジブリール
光を乱反射し色を変えるその長い髪は、海の日差しと風に揺れ、とても鮮やかに。
どんな彫刻師の心も一目で折るだろう、巫女を至高と言うならば、ジブリールは──究極。
その芸術品たる身体を覆う水着は。
普段から露出が高いがあえてと選ぶ腹部が紐で編まれたワンピース。
大きめのストールをパレオのように巻き、腰から伸びるは、淡く輝く翼。
頭上を廻りし光輪は、ここへ来て神々しさを加速させ。
疑う余地など正しくなき、天から舞い降りたとされる、問答無用なまでの圧倒的美しさ。
その光景に、地に伏せる者達の頬には、涙が伝った。
「…この初瀬いの、正しく生まれてきた意味を、ついに知るに至りましたぞぉお──!!!」
「あぁ神よッ!どこのどなたかは存じねぇが、この天地にジブリールと巫女さんを創りたもうたとんでもねぇセンスしやがった神よ──弟子にしてください」
「…あぁ、そっか。うちって、この為にこうして居るんだ。…あぁ、どうしよう、もう…死んでもいいや…にゃはは」バタン
一名血を出しながら倒れてしまったが、貴重シーンを目撃したステフといづなは。
「確かに比べたら仕方ないですけど……違いすぎじゃないですの…?」
「…?みんな砂、目ぇ入ったのか、です?」
ステフは地に伏せる三人を見て、いづなは首を傾げる。
「ちょっ、アズ!?大丈夫ですか、凄い血の量ですけど!?起きてください!!?」
「んむ、苦しゅうないえ、あての水着を見られる幸福を噛み締めるとええ」
普通に焦って空の事を完全に忘れ、人間なら出血多量で死んでもおかしくないアズリールを膝枕し、心配そうな顔で見守る。
安心させるようにジブリールの頭を撫で、鼻から血が流れる顔をにへらと笑ってみせる。
いのと忘れ去られた空はおそるおそる、立ち上がり、揃って天を見あげた。
「……なんか、もう十分すぎるくらいに堪能したな」
「……さようですな。やり遂げた感で胸が満ちておりますな」
「……もう、帰ろっか」
「……珍しく意見が一致しましたな、空殿」
「……天翼種じゃなかったらふっつーに死んでたにゃ。
…………ジブちゃん…最高、万歳、感謝、我が生涯に一片の悔い無し………」