その後何考えてんだろうって頭抱えました。
深雪さんの続き考えてると頭の中が変態に染ってやばい。
『1-E八神テトさん、生徒会長がお呼びです。生徒会室に起こし下さい。繰り返し連絡致します。1-E八神―――』
レオたちと放課後ティータイムをした翌日。司波兄妹が生徒会長殿に呼ばれて戻ってくるまで暇していた所、オレを呼び出す放送がかかった。
「……八神くん、貴方何かやったの?」
「流石に早過ぎない?」
「OK、お前らの俺に対する印象はよーくわかった。後で覚えとけよ」
放課後ではあるもののまだクラス内にはある程度の生徒が残っており、クラスメイトの女子2人からそんなことを言われた。
まぁ、軽口であることは理解してる。だから仕返しは俺のカロリー爆弾ドーナツで勘弁してやるよ。……やっぱデジノワを粉末にした調味料が高カロリーなのか?
「さて、帰るか」
右手に自分のカバンを、左手には購買で買った菓子パンの入ったビニールを持って教室の出口へと向かう。別に向かってもいいんだが、シンプルに生徒会長殿と会いたくない。まだツマラナイ=モノも買ってないし。
「え、生徒会室行かないの?」
「行きたくないでござる。絶対に行きたくないでござる」
女子生徒からの言葉に返事をし、教室から出ようかとしたギリギリのところで、『ピンポンパンポーン』とまた放送が入った。
なんだよ。オレは何を言われようと向かう気は無いぞ、残念だったな!
『1-E八神テト、生徒会室に来ないならこっちにも考えがある』
「あれ、この声って司波くん?」
……すっげぇ嫌な予感がする。い、急いで昇降口に行かねば。そそそ、そもそも校内に居なかったなら理由も通るだろ。
『俺は今日から1週間工房に篭もる』
「今すぐ行かせて頂きまぁァァァァす!!」
オレは走った。それはもう音のように。なんか女子2人が言ってたようにも思ったがそれどころじゃねぇ。達也が工房に篭ったら深雪さんのストッパーが消える。そしたらオレが死ぬ。達也が2日いなくなっただけで深雪さん精力剤と媚薬入りの料理馬鹿みたいに作り始めたからな……。ほんとデジモンで良かったわ。深雪さんには絶対デジタルワールド式の調剤術は教えねぇって決めたよ。
……あ、走ってるのは廊下じゃなくてグラウンドだぞ?昨日の時点で深雪さんに生徒会室の位置は聞いてたからな。一旦外出た方が近いのよね。
さて、生徒会室は……アソコだったな。
〇●〇●〇●
「さて、深雪はそっちの窓を頼む。俺はこっちの窓を開ける」
「分かりました、お兄様」
「……えーと、達也くん?何をしてるのかしら」
七草は先程の放送後、達也と深雪さんの行動に疑問を投げかける。
「何って、窓を開けているだけですが」
「もしかして換気?深雪さんの健康を守ってるのかしら」
「いえ、健康を守っていると言うよりは財布を守っていると言った方が正しいです」
不可思議な言葉に、七草含む生徒会たちは首を傾げる。
そんな中、風紀委員長渡辺摩利ただ1人がこの後起こることを直感で理解したのか、こっそりと窓付近から移動していた。
「……そろそろか」
窓を解放し、元の席に戻った達也が時計をみて小さく呟く。
「え、達也くん何がそろそろな「ダイナミックお邪魔します!!」のォ!?!?」
達也が答えを言うよりも先に『答え』が2人の開けた窓から飛び込んできた。七草の頭上スレスレを飛び越え、そのまま壁へとぶつかる寸前に空中で回転。クルクルと回って向きを調整し、達也が両手でキャッチして彼の膝上へ綺麗に収まった。
「お待たせしました生徒会長殿。1-E八神テトただいま参上です」
「あー、うー、……はい、ご苦労さまです」
「いやそれで流してはいけないでしょう!?」
理解を放棄した七草に、生徒会副会長である服部刑部少丞範蔵こと服部刑部が突っ込む。
いいぞ、もっとやれ。
「そもそもココは1階じゃないんだぞ!どうやって窓から入ってきた!というかどうして窓から入ろうと思った!!」
「そこに窓があったから」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
この男、変に真面目すぎる性格が祟ってテトの考え無しな行動と発言に対しこの短い時間で発狂を起こした。
強く生きて。
「副会長、テトの行動に理由を求めてはいけません」
「お兄様、フォローになっていません」
「フォローする気がないからな」
「コ☆レ☆ハ☆ヒ☆ド☆イ」
「元はと言えばお前のせいだ」
「フヒヒwwwサーセンwwww」
お前は少し悪びれろ。
「で、オレはなんの為に呼ばれたんですか。生徒会長殿に風紀委員長殿」
司波兄妹との漫才が終わった瞬間に意識を切り替えてテトが2人へと問いかける。
生徒会+αの面々はこの切り替えの速さに対応出来ず、ぽかんと口を開けている。……約1名頭髪を気にしてそれどころではない人物もいるが。
「風紀委員の推薦だ」
部屋全体へ視線を動かし、テトの奇行に慣れていない生徒会メンバー+αの再起動に時間がかかることを察した達也が代表してテトの疑問への答えを出した。
……部屋を見回してる途中で育毛剤の値段を調べている深雪さんの姿が見えたが、達也はその事実を頭の外へと追いやった。
「推薦?それは達也の話だろ」
「一体いつから俺だけが推薦されていると錯覚していた?」
「なん……だと」
「俺が推薦した」
「屋上行こうぜ?久々にキレちまったよ……」
「正確には―――「3行で頼む」
戦力疑問視
ツーマンセル
テト推薦、だ」
「おけ把握」
ネタとネタによる会話のドッチボールを行いながらも達也はテトをここに呼んだ理由を伝えた。
内容を把握したテトはそのまま黙り込んでしまい、手持ち無沙汰になった達也はそのままテトの頭に顎を乗せて他メンバーの再起動を待った。
「……ねえ摩利」
「なんだ」
「2人の言ってること理解出来た?」
「……いや、全く」
やっと再起動した七草の放った言葉は先程2人が行った会話についてだった。
幼い頃から付き合ってきた2人だからこそ伝わる会話方法であり、同じように昔から付き合ってきた深雪さんを除く他のメンバーは何を言っているのかどころか何をしているのかすら理解出来なかった。てか出来たら怖すぎる。
「てか達也ならソロでも行けんだろ。なんでオレを呼んだし」
達也の戦闘能力を知っているがため、テトはなんで自分が呼ばれたのかが理解出来なかった。そのため、もう思いきって自分を推薦した張本人へと聞いてみた。
「お前だけ苦労しないで悠々と過ごしているのが気に食わないからだ」
「お前の晩飯スターゲイジーパイとうなぎゼリーな。ついでにマーマイトもくれてやる」
「謝るからそれはやめてくれ」
晩御飯という人質(?)を使われた達也は悪あがきすることなく直ぐに頭を下げた。テトであれば問題なく食べられるレベルに仕上げてくることは理解しているものの、視覚的な破壊力を恐れてのことだ。
過去に1回やられた『酸素魚雷天ぷら』なる物が達也の頭をよぎった。中身は肉詰めであったものの、酸素魚雷を食べるという視覚的暴力が達也の心に少なくないダメージを与えていた。
「ま、たとえ推薦者が誰であったとしても断ってますがね」
「あら、そうなの?」
「学生でありますが、その前に『八神』の人間ですから。どうしても面倒な規約があるんですよ」
「……そう言えば、小学生の頃から電子機器を扱う委員会には入らなかったな」
「八神はどうしても大切な電子機器には触れないんですよ」
デジモンの関係者である八神からすれば電子機器のハッキングなんて、おちゃのこさいさいだ。一般的にも八神は電子機器に強い家系として知られている。だからこそ電子機器に不具合が起きた時などに疑われないようあまり触らないようにするのが八神家の決まり(?)であるのだ。
「あー、そう言えばそんなウワサもあったわね……。忘れてたわ」
「てな訳で、断らせて頂きます。無論、全生徒の個人情報が漏れてもいいなら受けさせて頂きますが?」
「いや、大丈夫だ。むしろやめてくれ……」
「言質、頂きました。残念だったな達也」
「……まぁ、仕方ないか」
テトを推薦した達也も八神家の決まりを忘れており、断られたことに関しては仕方ないとした。
だからといって、自分たちが働いている中ダラダラと過ごしているのを許せる訳でもなかった。
「その分テトには家事を任せるとしようか」
「まぁ、そんくらいなら」
「結局こうなるのか……。仕方ない、最初に出ていた模擬戦をやってみるか。2人とも準備はいいか?」
「あー、オレは帰らせてもらいますねー……」
「まぁまぁテトさん。せっかくお兄様の勇姿が見れるのですがぜひ見学でもどうですか?」
ガッチリとテトの腕に自分の腕をからまる深雪さん。
「深雪さーん?部外者入れちゃダメでしょ?生徒会長殿ー、この人止めてー」
「あら、いいわよ別に。あなたも一応推薦されたという事実はあるんだから」
「……ハァ。分かったよ、同行するよ。だからこの腕を離してくれ」
「はい、分かりました」
「確かに腕は離したな、腕は。もーすきにして……」
現在のテトは深雪さんに抱き抱えられ、持ち上げられている状況だ。
おのれうやらま……ゲフンゲフン。男という尊厳をメタメタにされたテトの目は少し死んでいた。
〇●〇●〇●
「しょ、勝者……司波達也!」
「ま、そうなるわな」
深雪さんに強制連行されて見ることになった達也とはんぞー副会長殿の模擬戦。結果は変わらず達也の勝利だった。
まぁ、ここで負けちゃ主人公が廃るってやつか。
「お疲れ達也」
「そこまで疲れてもないがな。……それより疲れているのはお前だろう」
「ん、なんの事だ?」
「だから……いや、なんでもない」
全く、何を言っているんだ達也は。確かに深雪さんの手が怪しい方に動いてたり息が荒かったりするけどそんなの、イツモドオリダロ?
頭上で息を荒らげたまま深雪さんが何か話してるが何も知らない。生徒会の皆さんも気にしてないしきっと私の気の所為です。
「じゃあ、私たちは風紀委員会本部へ行こうか」
「私たちも生徒会室へ戻りましょうか」
ん、意識を飛ばしていたら会話が終わっていたようだ。
「ならオレは帰りますね。深雪さん、いい加減離して」
「名残惜しいですが、仕事の間待たせるわけにもいきませんから仕方なありませんね……」
さすがにそこら辺の常識は残ってたか。安心だわ。……現状に慣れすぎるな、オレ。この状況がおかしい事を思い出せ。
まぁ、今気にしても意味ないか。
「達也、今日の夕飯何がいい?」
「……生魚を食べたいな」
「おっけ、期待しとけよ」
原作通りではあるが達也の勝利を祝って食べたいものを作るのもいいだろう。
にしても生魚ね。……デジカムルの活け造りでもしようか。
「私はテトさんを食べたいです」
「寝言は寝て言え」
家の外でやるなよ。ほら見ろあーちゃん先輩がえっぐい顔してるぞ。
「変態はほっといて、達也。帰る少し前に連絡してくれよ。じゃねぇと刺身の用意が出来んからな」
「分かった」
模擬戦に使った部屋の片付けをしている生徒会の面々を置いて風紀委員組と一緒に生徒会室へ向かう。
「……なぁ、彼女はいつもあんな感じなのか?」
「深雪さんですか?えぇ、いつもあんな感じですよ。いい加減落ち着いて欲しいとは思いますけどね……」
その道中で風紀委員長殿が申し訳なさそうにそう問いかけてきた。
確かにあんなの見れば問いかけたくもなるわな。本人が申し訳なさそうなのは、被害者であるオレに聞いてるからか。
「そ、そうか」
「えぇ、なので慣れといてください」
アドバイスにならないアドバイスをしているとちょうど生徒会室にたどり着いた。カバンを回収し、達也と別れて学校の外へと出る。
夕飯の為、何か必要なものは無いかと思い浮かべるものの大体のものは家にある。解体用の包丁はデジモン式の魔術でどうとでもなるから、用意するものは米くらいだろう。
「もしもし
スマホを取りだし、デジタルゲート管理者である銀神家の家主こと雛乃さんに電話をかける。
本来、デジタルゲートを通るには管理者である銀神の家へ向かい、使用者の帳簿に名前と渡航目的、滞在予定日数を書く必要がある。こうして初めてデジタルワールドとリアルワールドを行き来することが出来るようになるのだ。
しかし、デジモンでもあるオレはゲートを自由に開くことが出来てしまうためいつもこうやって雛乃さんに連絡してゲート使用の記録をしてもらっている。……今度何かしらの菓子折りでも持っていくか。何度も渡航してるしな。
〇●〇●〇●
テトが去った後、深雪さんは黙々と生徒会の仕事をしていた。
「ねぇ深雪さん。あなたテトくんと仲良いの?」
そんな時、七草が作業の手を止めてそんなことを聞いてきた。
「はい、お兄様と私、テトさんは幼馴染です。本人は腐れ縁と言っていますが……」
昔は彼も幼馴染と言ってくれていたのに。なんて事を思い出しながらそれに答える。
ちなみに深雪さんが今書いているのは自身のプロフィールのようなものだ。 七草曰く、「今度生徒会にこんな人が入りますよー」というのを一般生徒たちへ知らせるためのものらしい。
「そう。そんなに近いなら『八神』の評判も知ってるわよね?」
「いえ、機械類に強い家系としか知りません。昔から3人で集まる時は家の事を忘れてただの子供として過ごしていましたから……」
3人は『八神家のテト』と『四葉家の深雪と達也』では無く、『ただのテト』と『ただの深雪と達也』という関係で今まで共に生きてきた。3人の中では『家』という垣根はほぼ無かったと言ってもいい。だからこそ深雪さんは高校生となった今でも『八神』という家は電子機器に強く、不思議生命体と共に生きる家としか思ってない。……実際あってはいるけども。
「そう。……そんな深雪さんが生徒会に入ったのは幸運だったのかも知れないわね」
そんな関係である深雪さんが生徒会に入ったことは七草からしたらありがたいことであった。
「幸運……ですか?」
「えぇ、魔法師の嫌われ者である八神を贔屓目なしに見れる人は少ないから」
『八神』の中には生身の人間でありながら電脳世界へと入り込める存在がいる。その能力を持つ彼らのことを十師族を含めた魔法師は『サイバースルゥース』と呼んでいた。
サイバースルゥースはCAD内部にすら侵入することが可能であり、それによって魔法の情報を抜き出されると同時に式を弄られ使い物にならなくなるという二重苦を味わうことになる。
「彼がサイバースルゥースでは無い可能性もあるわ。でも、『八神』と言うだけで魔法師から恐怖される存在というのは理解しておいて欲しいの」
四葉が魔法師の
「それは……」
「納得出来ないかしら。でも、納得せざるを得ない。それだけ世間は八神を危険な存在と認識しているの」
生徒会長である七草だって1人の生徒が嫌われ者になるのは避けたいことだ。しかし家の名にこびり付いたウワサがそれを許さない。
「だから深雪さんは彼の味方でいてあげてね」
「……はい」
自分の知らないテトの一面。それをほんの少しだけ知った深雪さんは今度の休みにテトを問い詰めることに決めた。
「……なんだ、この悪寒は」
「ほい、今朝ったばっかりのデジカムル」
「あ、どうも。おいくらで?」
「いつも買ってくれてるし30万bitでいいよ」
「あざっす」