たとい、エースと呼ばれても   作:丸亀導師

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フクジュソウ

西暦2191年 9月 兵器試験場

 

機動艦隊から地上勤務に回されて2週間ほどたったある日。新型の空対艦ミサイルの実証試験が行われていた。

私は実戦時のミサイルの破壊力不足を、報告しこれが元となって、同時旧式となっていた対水上艦艇用のミサイルを宇宙にもしよう可能とするプロジェクトがあった。

 

それに私は呼ばれることとなった。

水上艦艇用のミサイルは、宇宙艦艇に対して攻撃力が過剰であったがために従来の対艦ミサイルは小型飽和攻撃用であった。

 

開発主任である、とある技術者とともにミサイル格納庫で、実物を見せてもらっていたが、どうもこれだけで終わるはずがない。

 

「それで、私が呼ばれたのはこのミサイルのエキシビションを見せるためだけではない筈ですが。」

 

「そうだった。入りたまえ。」

 

ミサイル格納庫の小さな扉が開かれ中からはマーズノイドの女性が表れた。歳は私とはそれほど離れていないように見えるが、正直言って凛々しいという言葉がよく似合う、そういう女性だ。

 

「紹介しよう、彼女は新型艦上戦闘攻撃機開発部のメンバーで、今回の対艦ミサイルの考案者である、

佐々木 華奈 三尉だ。

彼女は正規の軍人ではなく、技術士官として今回君のパートナーとなる人物だ。」

 

はあ?

 

「ちょっと待ってください、そんなの初耳ですよ?だいたいこの娘は本当に技術士官なのですか?」

 

するとだ、開発主任よりも佐々木三尉が怒って言った。

 

「それは、私が若いから行っているんですか?それとも女だから?」

 

「いや、両方だよ。普通そういうのは、ある程度経験があり書類の作成とか、欠陥を見つけるのが上手い中年ぐらいが付くのだが。」

 

それで更に機嫌を悪くする。

 

「確かに私には、経験が無いです。しかし、私には他とは違う閃きと、判断力があります。」

 

「まぁまぁ、互いに矛を納めて。彼女はテストパイロットも行える非常に優秀な人材だよ。

君の《早期開発》というノルマを達成するためには、彼女が必要だよ。」

 

渋々了承した。これが俺と華奈の出会いであった。

 

それからというもの、実証試験機を飛ばしたら不具合の報告、また飛ばしたら報告という日々が続いた。

いつの間にか信頼関係のようなものが芽生え始めていた。

 

周囲からは《若者は良いなぁ》なんて感じの目線が感じられるくらいには、親密になっていたが付き合っていると言うわけではなかった。

 

2ヶ月という時間は二人の垣根を捕るには充分な時間で、何より互いに信頼できるものを得たことにより作業効率は上がっていた。

 

この時期まだまだ地球圏には余裕があり、食料問題は起こっておらず闇市もなかった。

都市はきらびやかで、無駄な高層化ではなく都市は大きく栄えていた。

 

余裕があるため勿論軍関係者も、警戒体制を行いつつも周囲に悟られぬよう休日を与えられるということを、情報操作の一環として行われていた。休日返上での作業等言語道断である。

 

そのため意外とこの頃は休暇が多かった。

俺の場合は第二機動艦隊が元々長期航海からの帰還途中からの戦線へ、とんぼ返りとなったのと重なったお陰でこれ程の長期間滞在となった。

 

休暇の際には華奈さんと共に、過ごすことも増えていて二人が共通してわからない、ファッション等にも手を出しつつ過ごしていた。が、戦時であるから当然酒は飲めない。いつ招集されても良いように、常に連絡をとれるようになっている。

 

だけれども、非常に楽しく、戦時だというのを忘れてしまいそうなほど有意義な時間を過ごす。

きっとこれは一時の夢物語の様なものだろうと、そう感じていても、今はこれに浸っていたかった。

 

あるとき、彼女を後部座席に載せて飛行実験を行う事となった。

アクロバティックな操縦をした場合どういう影響が出るのか、エンジンは負荷に耐えられるか、という試験だった。

 

彼女は俺の後ろに載りたいとこのとき、言っていた。本来は、後部座席にあるはずのデータ収集用の機械が最初から取り外されていたのは、そのためだったか。と、その時は初めて行った工員がグルだと、わかった。

 

実際彼女の載る理由はあった。計算上では無いはずの気流の乱れがエンジンから見つかっていた、シミュレーションデータでは不可能と結論付け、実機でもう一度同じ現象を作り上げるのがベスト、と言われた。

 

そこで、《パイロットと共に自分が載れば一番分かりやすい》と、考えたのだろう。彼女は載るといって頑なたった、と言うわけだ。

 

このとき、俺は彼女に弱気な言葉を吐いていた。

「俺はこの星を護りきることが出来るだろうか。」

と。

 

そうしたら

「何でそんなにも全てを背負った見たいに言っているの?そんなの出来っこないじゃない。でも一人で出来なくても、このチームや多くの兵隊さん立ちと協力していけば良いんじゃない?」

 

と言われた。《そうだよな、確かに俺は転生してきた。だけど特別な力と言ったら、戦術的なことしかできない肉体だけだ。なら全体のことは気にせずに、目の前の出来ることをやれば良いじゃないか。》

と、考えられるように彼女がしてくれた。

 

「ハッ。そうだよな一人で戦ってる訳じゃ無いよな。」

 

彼女がその時どんな顔をしていたのかわからない。ただ俺の正体に薄々感ずいていたのではないだろうか。

 

そこからというもの、彼女との接点はますます増えていった。きっとこれが急接近の元だったのだろう。

彼女と一線を越えるのはそう遠くなかった。そして、彼女との結婚を前提といた交際が始まった。

 

それから1週間も経たない間に、第二機動艦隊へ集結することとなった。定期的な第一機動艦隊との交代、火星へと進む。しかし、それでも彼女との交際は解消されず俺に「待っているから」と言ってくれた。

 

そして、地球に帰還すると彼女の両親と合い自分と彼女の関係を認めてくれるよう、説得した。

幸いなことに、彼女の父親は軍属で俺の事をよく知る人物だった。そのお陰でもある。

 

そこから一年の月日が流れ、突如として平和は終わりを迎える。

 

第一次火星沖海戦の始まりであった。

 




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今回もちょっと難しかったです

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