IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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評価に必要な文字数とか設定してた頭ポッポがいるらしいですよ。ぽっぽー。

あとウチの綾崎ちゃんはめちゃくちゃ強いです。
理由は次までに考えておいてください。


11.最高の良妻はまず負けない

side奈桜

 

「……なんだ、このISは。」

 

千冬さんが呆れている。

そして私も呆然としている。

 

オルコットさんと一夏くんとの決闘前日、私は千冬さんに連れられて私の専用機が搬入されてくるとされる場所に来ていた。

そんな私達の目の前には薄い青色と薄い桃色によって着色されたISが一機居るのだが……

 

「うふふ♡すごいでしょ♡

これが私達"乙女コーポレーション"が総力と性癖を挙げて作成した第三世代のIS……その名も"恋涙(れんるい)"よん♡」

 

そう言って見慣れた化け物が見せてくる武装やスペックを確認しながら、私と千冬さんは眉間を抑えていた。

 

「この短期間で独自に第三世代作るとか乙女コーポレーションの技術絶対おかしいですよ、速やかにフランスとかに謝罪してきて欲しいですね。」

 

「……まあ、内容が変態的過ぎて量産には向かんがな。」

 

「これ量産されても困るでしょう……」

 

「使われている技術は軒並み授賞ものなのにも関わらず、どうしたらこうなる。」

 

「高級肉を生クリームのパフェに乗せるくらいの暴挙ですよこれ。」

 

「もう♡もっと素直に褒めてくれてもいいのよん?♡」

 

「「どこをどう褒めればいいのだ(いいんですか)、この化け物!」」

 

「あぁん♡ひどぅぃん♡」

 

それはもうとんでもないISだった。

まずこの"恋涙"の特徴として、自身のシールドエネルギーを利用した特殊な銃弾によって、着弾地点に小型のバリアを発生させる拳銃型兵器を装備している。

さらにさらに、人体に対して効果のある治癒ナノマシンと精神を落ち着ける鎮静ナノマシンの2種類を噴出することが可能。

 

その2種類を併用することで戦闘中にも怪我人を安全に治癒することができ、対象が集団であってもパニックを抑えながら保護することができるのだ。

治癒ナノマシンの技術とシールドバリアの変形、これはどちらもかなりレベルの高い技術であり、この実物だけでも何十億という単位の金がビュンビュンと飛び回るレベルである。

 

だからこそ言わせてもらいたい。

いや、だから言わなければならない。

 

「なぜこの技術をISに使っちゃったんですか……!」

 

もっと他に使うべきところがあるでしょ!

怪我人の保護だってISじゃなくてドローンとかでもいいじゃない!

何をトチ狂って貴重な枠を大量に使ってまで実装したのか!

そもそも数の少ないISは基本的に単独戦闘が想定されてるのになぜサポート系!?

開発コンセプトから間違ってるよ!

 

そして終いにはこれ!これですよ!

 

「……千冬さん。これ、僕どうしたらいいんでしょう。」

 

「……わからん。」

 

武装

→鉄の棒

 

ドラクエの初期装備かっ!!

いや、"ひのきのぼう"よりはマシだけど!

そういうことではないの!

第三世代の特殊武装はどこにいったの!?

イメージ・インターフェイスとやらはどこで使えばいいの!?

ナノマシン打っ込む余裕があるなら他の武装入れてよ!!

せめて銃の類を入れてよ!!

なんで鉄の棒入れちゃったの!

棒術とか習ったことないんですけど!?

それどころか近距離攻撃とか世界で一番苦手な自信があるんですけど!?

もうやだこの会社!!

 

「うふ♡気に入っていただけたようでなによりだわ♡」

 

「眼科行け」

 

自分でもビックリするくらい低い声が出た。

見た目が嫌いじゃないだけに辛過ぎる。

いや、怪我人を保護するっていうコンセプトも好きなんだよ?

でもね?

それは攻撃する武装を減らしてまで頑張ることじゃないよね?って。バランスって大切だよね?って。

僕はそれを言いたいだけだったの。

やめて千冬さん、そんな可哀想なものを見るような目でこっち見ないで。

 

「ふっふっふ、安心して奈桜ちゃん♡このギンギンにそそり立ったガッチガチの棒はね、貴方がこの子と1つになることで一皮向けて真の姿になるのよん♡」

 

「面倒なのでスルーしますけど、それが特殊武装ってことなんですか?」

 

「そゆこと♡乙女と言えば、って武器にしておいたから、期待してて♡」

 

「は、はぁ……」

 

とは言うが全く期待なんかできるわけがない。

この変態がつくった兵器だ、間違いなく変態に決まっている。

 

"変態からは逃げられない"

 

どうせ私はこれからもそんな目に遭い続けるんだ。

どうせこれからも私の周りには変態が集まるんだ。

 

あ!そういえば僕も女装して高校生活を送ってる変態だった!

だったら仕方ないか!

類は友を呼ぶって言うもんね!

 

「あははは……」

 

「……お前は本当に不憫な奴だな、綾崎。」

 

千冬さんが珍しく慰めてくれる。

もうなんかそれだけで泣きそうになった。

 

 

専用機"恋涙"

持久力重視のサポート型の第三世代。

もはやオルコットさんどころか同じ初心者である一夏くんとすらまともな試合ができるのか不安である。

既に2次移行をして機体性能を大きく変えてくれるのを望むくらいに不安である。

けれどこれから否が応でもこの力を使わないといけないのだ、例えどんな変態武器が主力になろうとも、その武装一つだけでこれから先を乗り越えて……あ、なんか涙出てきた……これが恋涙……?

 

「さ!フィッティングするわよん♡こちらにいらっしゃい♡」

 

「うぅ……どうして僕だけこんな目に……」

 

今日も今日とてマイクロビキニにガバガバショートパンツを穿いた変態野郎に身体中を触られることになる。

できるならもうさっさと狂ってしまいたい、そう思うようになった。

 

--

 

side一夏

 

「え?俺の専用機、まだ来てないんすか?」

 

「ああ、故に試合の予定を変更して、最初にオルコットと綾崎の試合を始めることにした。あいつの試合はどうせ長くなるからな、丁度いいだろう。」

 

オルコットとの決闘当日、俺は箒と共に第3アリーナのAピットにて自身の専用機が到着するのを待っていた。

決闘当日にギリギリ間に合うとは言われていたが、既に開始20分前。

どんな機械にも初期設定というものがあることを考えると、試運転どころか試合にすら間に合わないのは確実だろう。

当然の判断だと言える。

 

「……ちなみにですが織斑先生、それは綾崎があそこで頭を抱えているのとなにか関係が?」

 

「……いや、あれはただあいつが不憫な奴だというだけだ。そっとしておいてやれ。」

 

「そ、そうですか……」

 

ピットの隅で体育座りをしている彼女は酷く目立つ。

そして箒ですら苦笑いをするくらいに話しかけ辛い。

あの人があれだけ落ち込むなんてなにがあったのか本気で気になるのだが、事情を知っている千冬姉も説明を躊躇うほどのことなのだ。

詮索するのは良くない気がする。

 

「綾崎!気持ちは分かるがいつまでも落ち込んでいるな!さっさと行ってオルコットの相手をしてこい!」

 

「ふぁい……」

 

 

「……落ち込んでる姿ですら様になるとは、美人は得だな。」

 

「箒だって美人だろ。」

 

「なっ!?なっなっなっ……!!」

 

箒と適当に言葉を交わしながら渋々と歩いていく綾崎さんを見送る。

……というかあの人IS展開せずに歩いてったぞ、カタパルトとか使わないのかよ。

 

「……さて、織斑。そろそろお前の専用機が到着するはずだ、試合の観戦は最適化処理と並行してやれ。」

 

「あ、ああ、それはいいんだが……ちふ、織斑先生は綾崎さんにアドバイスとかしなくてよかったのか?あの人も専用機に乗るのは初めてなんだろ?」

 

「……あいつには必要ない。」

 

「は……?」

 

俺だってここ数日何も勉強していなかったわけではない。

再発行された参考書を読んで専用機と訓練機の違い、その特殊性だって少しだが認識している。

なにより今日行うのは模擬戦だ、戦闘なんかしたことのない俺達にとっては実戦経験のある人物からのアドバイスは喉から手が出るほど欲しいもののはず……

 

それでも千冬姉は綾崎さんにはそれが必要ないと断言した。

 

「織斑、篠ノ之、お前達の入試の実技試験はどのような内容だった?」

 

「どんな内容って……」

 

「……私は試験官のシールドエネルギーを半分削れというものでした。色々と弄ばれましたがなんとか。」

 

「俺の時は山田先生が勝手に壁に向かって衝突したからなぁ、あんまり印象ない。」

 

「うぅ、あの時のことは忘れて下さい織斑くん……」

 

「まあ、たしかにあの時の山田先生は試験官にあるまじき醜態を晒していたがな。」

 

「織斑先生まで酷いです……!」

 

IS学園の教員というのは総じて実力者であり、相応の経験と実績を持っている者にしかなれないのだと箒は言っていた。

あの山田先生すらも信じられないことに元日本の代表候補生だという。

そんな彼等を相手に、初めてISに乗るような人間にシールドエネルギーを半分削れというのだ。

この事実を知っていたら俺だって"無理だ"と思うだろう。

 

「あの試験は敵がどれだけ強大であっても諦めない精神力を持っているか、加えて実際に削れるだけの技能があるのか、それを判別するためのものだ。オルコットのように試験官を倒すだけの実力があれば既に精神力は問題無いからな。」

 

「そういう意味だと一夏の実技試験は全く意味のないものだったのですね。」

 

「篠ノ之さんまで酷いですよぉ……!」

 

ごめんな山田先生、こればっかりは全くフォローできない。

 

「それで、実技試験がどうしたって言うんだ?もしかして実は綾崎さんも試験官を倒してたりするのか?」

 

「いや、綾崎は試験官を倒してはいない。それどころか全くシールドエネルギーを削れなかった故に違う試験を実施した。」

 

「……それは、」

 

贔屓ではないか?

箒は言うのを躊躇ったが、言わなくとも分かる。

だからこそ、あの厳正な千冬姉がそこまでした理由があるはずで。

 

「……綾崎が受けた試験はどういう内容だったのですか?」

 

箒も同様の思考に辿り着いたらしい。

俺も箒と同様に千冬姉の反応を伺う。

 

すると千冬姉は就業中にも関わらず、珍しく口角を大きく上げ、酷く楽しそうな顔をして言葉を発した。

 

 

『私の全力攻撃を15秒間耐え切るというものだ。』

 




バケモノか……?

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