IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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相変わらず鈴ちゃんが勘違いします。
アニメでISに乗って生身のイッチーに襲い掛かったりしてましたけど、こちらの鈴ちゃんはどうなるのか、楽しみですね。



19.鈴ちゃんの勘違い!2つ目☆

side鈴音

 

「転校生?こんな時期にか?」

 

「というか遅れて入学してきたって扱いみたい!隣のクラスの話なんだけど、なんでも中国の代表候補生なんだって!クラス代表じゃないから代表戦には出れないみたいだし、助かったね!織斑くん!」

 

「ま、まあ確かにそうだな……」

 

「とは言うが、例え相手が専用機持ちでなくともクラス代表を引き受けるほどの熱意を持った相手に、一夏が油断できる要素など一切無いがな。」

 

「そうですわね、現状の一夏さんの実力はクラス内だけでも4番以下ですし。相手の力量云々で勝敗を語るには実力が足りませんわ。」

 

「うわぁぁぁ!ISに関する2人の評価が厳し過ぎるよ綾崎さぁぁん!!」

 

「えっと……大丈夫ですよ?織斑くんもちゃんと成長しています。ただ"ちょっと"2人の成長速度が、織斑くんよりも"かなり"早いというだけで……」

 

「"かなり"って言っちゃったよ!"ちょっと"はどこに行ったんだよ!綾崎さんでもフォローできないとか辛過ぎるだろ!!」

 

やんややんやと騒がしい1組の教室。

私こと凰鈴音はそんな様子を教室のドアから何処の家政婦ばりに覗き見ていた。

 

(ぐぬぬ、中に入るタイミングを逃した。ほんとはクラス代表云々の話の所で入ろうと思ったのに……!)

 

昨晩、綾崎奈桜と名乗った彼女のおかげで何とか事務室が閉まる前に手続きを行うことができた私は、自分と同部屋のティナ・ハミルトンという女生徒が2組のクラス代表だということを知った。

クラス代表とは何かと綾崎に尋ねれば、選ばれた生徒は今度行われる代表戦に出場することとなり、そしてあの一夏が1組のクラス代表であるというではないか。

 

自分の今の実力を一夏に見せるには最高の機会だ…!

 

そう考えた私は案内をしてくれた綾崎にお礼を述べ、早速同部屋の女生徒にクラス代表を変わってくれるよう頼み込みに行った。

どうやら彼女も無理矢理クラス代表を押し付けられていたらしく、むしろこちらからお願いしたいと喜んでいたのを思い出す。

 

一夏が専用機を貰ったという事は既に知っていたので、強力なライバルとして突然現れた自分にきっと注目してくれるだろう。

そう思い朝からスキップをしながら1組の教室までやってきていたのだが……

 

「一夏、今日から私との模擬戦の回数を増やすか。」

 

「でしたら私と箒さんの2vs1で行いましょう。多少過酷な訓練になりますが、本番まで続ければ嫌でも戦闘慣れすると思いますわ。」

 

「名案だな、セシリア。採用だ。」

 

「殺す気か!?殺す気なのか!?訓練官達がスパルタ過ぎて明日の自分を投げ出したい!」

 

(……なんか、ちょっと可哀想に思えてきた。)

 

ポニーテールの少女は昨日会った綾崎の子供である篠ノ之箒という名前だったか。

どこかで聞いた名前だが、立ち振る舞いからして何らかの武道に精通している人間なのだろう。

金髪の方は多分事前に報告を受けていたイギリスの代表候補生とやらだ。

私はよく知らないけど、専用機を持っていることから実力に間違いはないはず。

 

そんな2人が一夏に対して2vs1でボコボコにするというのだ。

 

……いや、確かにそんな相手達と2vs1で戦うことに慣れることができれば、訓練機を扱う一般生徒を相手にするくらい造作もなくなるかもしれない。

けどそれまでは普通に地獄だと思うんだけど、そこの所どうなのよ。

 

(正直、『一夏の周りの女鑑定士』の私からすれば、ポニテの子と金髪の子は一夏に惚れてる節があるのよね。綾崎はやっぱり無さそう。

でも2人とも訓練に関しては関係なく厳しいってのも不思議な話よね。こういうのって大抵、訓練相手としての立場を取り合うようなものだと思うんだけど……)

 

それだけISに対して2人が真剣に考えているということだろうか?

それとも男性操縦者として狙われる可能性の高い一夏の身を案じて?

 

彼女達の行動の理由を考察している私だったが、やはり聞いた方が早いというのが結論だった。

 

昨日話した感じではポニテの子はいい子だったし、一夏が仲良くしているのなら金髪の子も性格は悪くないはずだ。

いざとなれば大人な綾崎がいるのだし、自分があの輪に入っても特に問題はないだろう。

 

(……ということで、)

 

いざぁ!!

 

そう扉にかけた右手に力を入れた瞬間、

 

「と、こういった感じで一夏さんの訓練を行いたいと思うのですが、何かアドバイスを頂けないでしょうか?【お母様】?」

 

【お母様】

 

 

『お母様』

 

 

[お母様]

 

 

「お母様」

 

 

お母様

 

 

おかあさま

 

 

 

「…………おっ!?おおっ!?お、お、おっ!?」

 

私は銀河の彼方まで吹き飛ばされた。

 

あまりの衝撃に「お」しか言うことができなくなってしまった私を置いて、金髪の少女は綾崎に話を向ける。

何かの間違いではないかと「お母様」と呼ばれた優しげな女性の方を見るが、彼女もそう呼ばれるのが当然であるかのように微笑みながら一夏のフォローをしていた。

 

(え!?親子!?この2人も親子なの!?何歳差の親子なのよ!?いやそれはもういいけど、綾崎の娘が金髪碧眼って絶対おかしいでしょ!?事情!?何か事情があるの!?もしかしてまだ何か隠してる感じだったの!?)

 

もしそうならとんでもない事実である。

二女の母、そして父親は違う2人!?

この事実に彼女達は気付いているのだろうか……

いや待て、物事を表面だけで捉えてはならない、私はそれを昨日知ったはずだ。

 

考えてみれば直ぐに分かる、綾崎という女性は複数人と関係を持つような軽薄な女性ではない。

彼女は間違いなく1人の男性だけを愛し、最愛の夫を亡くした後も一生その思いを抱き続けたまま独身を貫くような、純粋だけれど切ない、存在だけで悲愛小説1本が書けるような女性だ。

 

きっと金髪の子が綾崎のことを「お母様」と呼ぶのはカモフラージュ。

恐らく金髪の子は綾崎とポニテの子の本当の関係を知っていて、ポニテの子が偶に「母さん」と呼んでしまっても問題が無いように『綾崎を母親の様に慕っている自分』を演じてそのミスをカバーしているに違いない……!

 

……はっ!でもそう考えてみれば、時々綾崎がポニテの子だけではなく金髪の子に対しても慈愛と悲しみが共存したかのような笑みを浮かべることも納得できる!

あの綾崎のことだ……きっと綾崎にとっては金髪も自分の娘同様に思っており、金髪の子もそれを受け入れているのだろう。

それでも金髪の本当の両親のことや自分の存在のせいで迷惑をかけていることを考えると自責の思いに駆られて……

 

……なんということなの、どんどんパズルのピースが埋まっていくじゃない。

綾崎は間違いなくこの空間における緩衝材だ。私と年の変わらない彼女達が1人の男性を取り合っていても関係が悪化していないのは、確実に彼女のおかげだろう。

彼女の性格から考えて、一夏も含めて生活面から勉強面、ISの訓練に至るまでありとあらゆる分野で世話を焼いているに違いない。

それなのに肝心の綾崎の心は自責と不安によって日々蝕まれ、それをフォローできる人物もいないという有様だ。

 

なんということだ、なんということだ……金髪の子の一言からこんなところまで繋がってきてしまった。

自分の天才的な頭脳が恐ろしい。

 

私の想像(妄想)だと、綾崎の心の現状については私以外に誰も気付いていない。

その違和感に気付くことができないほど彼女は上手く立ち回っているのだろう。

だがそんなことを続けていれば彼女はきっと潰れてしまう。

 

……だが、私は本当にそこまで踏み込むべきなのだろうか?

そもそも、真実を知ってしまったからとは言え、彼女のためにそこまでする義理などどこにもない。

昨日の礼なら彼女達の関係を黙っているということでチャラなはずだ。

余計な波風を立てないためにも放っておくのが最も無難な選択だろう。

 

(……でも、そんなことできるはずないじゃない。)

 

そうだ、一言二言話しただけだが、それでも私は彼女の心根を知ってしまった。

どんな環境で育てばあんなにも慈愛に満ちた女性が生まれるのか、私には想像もつかない。

けれど確かに一つ確信できることは、あんな素敵な女性は世界に2人と居ないということだ。女としてこうあるべきだという目標にするべきレベルの女性である。

 

そんな人を見捨てる?

 

バカを言うな、代表候補生になるまでに色々と過酷なことはあったが、それでもそこまで落ちたつもりはない。

 

(それになにより……!)

 

こんな良い人を見捨てるなんて、私が許しても一夏が許さない……!

私は一夏の横に立つ人間になると決めた、だったら彼に対して後ろめたい思いをするようなことは絶対にできない。

彼に報告して、胸を張れるような生活をしなければならないのだ!

 

(だから……!)

 

「……大丈夫よ、あなたのことは、私がしっかり守るから。」

 

彼女の悲しい笑顔が忘れられない。

何かを隠して、飲み込んで、それでも笑おうとする仕草が頭から離れない。

彼女は私の想い人である一夏のフォローをしてくれている。この女だらけの空間で日々過酷な訓練を受けながらも頑張れているのは、きっと彼女のメンタルカバーがあるからだ。

いつか一夏の隣に立つ女として、私はその恩を返そう。

彼女が自責の念に押し潰されてしまうことのないように、微力であるが努力をしよう。

 

私は言葉と共に、彼女と想い人である一夏に対して誓った。

 

 

凰鈴音はこうして盛大な勘違いなんだけど実際にそう外れたものではない思い込みを抱えたままIS学園での生活を送っていくことになる。

真実を知ることになるのは、まだ遠い先の話……

 

ちなみに直後に背後から出席簿で叩かれて自分の存在が明るみになったことは別の話である。




今回4000文字程度ですが、次回8500文字くらいあります。
バーラーンース!

【次回:鈴ちゃんの勘違い!3つ目☆】
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