幻夢泡影古伝   作:aetos

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今まで書いていたものを中止させてこの作品を書き始めます。
まぁオリジナルだけど前よりか良くなってると思います。


では、どうぞ...


第1話 プロローグ

そこは東方の国からさらに広大な海原へと船を進めると辿り着けるであろう場所。

しかしその道程は簡単な筈も無く、数多の経験を積んだ航海士や機関士、通信士も地図から消滅したこの孤島の姿を捉えることが出来ず……、だが、存在は認知されていた。

それはその島を知っている者が少しながらも居たからである。

だが、全貌を知っていながらも最低限の情報しか国に提示せず頑なに口を閉じていた。

実は彼らはその島の住人だったのだがそれすらも口に出さなかった為、牢屋に入れられた。

牢屋に入れられ最期にはどうなったかは誰も知らない。

まだ経済が急速に成長した頃の東方の国の領地であったが、自棄を起こした大国はそこに核を撃ち込もうと躍起になり、とうとう領地主の了解を得ず発射されてしまった。

そのミサイルは一国を混乱に陥れたものよりさらに強化されていた。

大国の狙いはこうだった。

島を破壊出来ないのならその付近の海や地盤を破壊すればその島も跡形も無く消えるだろう。

それはもう狂言だ。

何故なら撃ち込んだ爆弾は大海原を消滅させるのに十分なもの、そしてその島の存在を明らかにしなければならないのにそれを消そうとしているのだから。

それを知った他国は手柄を立て様と躍起になる国やこんな時に戦争を起こそうとしようとしたのだ。

そんな事をしている間にもミサイルが島に近づいていく。

後1時間というところだろう。

全国の誰もが諦めかけた。

―だが、その時!

 

空を覆う黄と赤の激流にミサイルの姿が飲み込まれる。

それは一瞬の出来事でその激流の跡には何も残っていなかった。

人々はこの出来事によりこの島に関わると何が起こるか分からない為、不干渉にする事を東方の国を筆頭に世界で決めた。

 

――今、かの島を想う者は数少ない……。

 

―以上、とある夢見る少女だった者の日記

 

 

 

 

「はぁ、私達は故郷恋しさにあれほどまでの術を使ってしまうとは……。」

 

とある山中にある小屋の陰で座り込むのは黄土色の如法衣を身に纏う男の顔に刻まれた深い皺は哀愁を漂わせる。

その男の片方の頬には歴戦の記しである斬られた痕が今もなおそこに鎮座していた。

彼は十数年前にとある強大な術を後一人となった仲間と共に放とうとするが、その仲間が力の出力を見誤ってしまい彼の膨大な力が仲間の力を全て吸い上げてしまったのだ。

結果、放つ事には成功したが、最後の仲間を喪ってしまったのだ。

 

「後は……、最後は私一人だけか……。」

 

小さくそう呟くと男は手に持った1メートル程の長さの太い枝を支えに重い腰を上げ、南東に顔を向けかつての記憶を思い起こす。

 

「あの子達は立派に成長出来ているのだろうか……。」

 

男が見るのはあの島。

彼はかつてそこに住む子を我が子の様に接していた。

しかしそれは昔の話。

今はそこから離れこの東方の国へと旅をしている。

彼の心には帰る等という気持ちは無い。

 

何故なら既にこの先は短いと気付いてしまったから―。

 

男は(ナツメ)を齧りながらかつての罪を償うべく道無き道を歩いていった。

 

 

 

 

とある島の頂上...

 

 

「はぁ~、ど~しよっかな~。」

 

俺はただ一人、黄色に黒が混じった髪を振り乱しながら畳の上でゴロゴロして暇だと連呼する。

いや、暇っていうか雨降ってるから何も出来ないんだよ。

一応家族はいるが上も下も女って…。

まぁ、とにかく上も下も全員いないと話が続かないから最終的にきまづい雰囲気になるんだよ。

誰か一人でも欠けるとなぁ……。

あっと、そういえばあいつに聞きたい事があるんだった。

結構気になる事だったから雨の中突っ走るか。

 

「よし、行くか。」

 

俺は私生活の必需品である乾燥した(ナツメ)が入った巾着袋を懐に家を飛び出そうとする。

が、その時

 

「ちょっと待ちなさい。」

 

突如耳に入る凜とした声に思わず足を止める。

そしてその方向に顔を向けるとそこには余りこの島に帰ってこない人が立っていた。

その女性はこの島では見かけない服を着ているが、俺は恐らく東の国の服だろうと推測をたてる。

 

「あ!貴女は俺の父のお知り合いでしたよね?」

 

実はこの人と会うのはこれで二度目なので名前も知らない。

しかしそれとなく雰囲気が似ていた。

 

「ふふふ、そうよ。そういえば前回は私の名前を言ってなかったよね。でも、その事も含めて話したい事があるから、他の子達も呼んで頂けるかしら?」

「あ、はい。分かりました。」

 

俺は突然の来客とその人の顔が少し暗かった事に動揺しながらも姉二人と妹二人を座敷に呼ぶ。

この座敷はかなり広く来客専用なのだがその広さ故に俺は無断で使用している。

そもそも此処に用がある人って余り居ないからな。

 

「はぁ~、今日はゆっくりしようとしてたのに…。」

「……で、何?」

「あの人は始めて見る人です~!」

 

おい、姉一人と妹二人よ、静かにせい。

 

「それで、貴女はどの様なご用件で来たのでしょう?」

 

おお、流石は四季宗家の現当主である長女。

おっと、此処で捕捉だが四季宗家の四季の読みは「しき」じゃなくて「よよとき」な、ここ重要。

 

「私の名は白畠 真千琉(しらばたけ まちる)です。以後お見知り置きを。」

 

真千琉と名乗った女性は恭しく頭を下げると俺達の顔を一人ずつ見てから話を続けた。

 

「…そして、私が此処を伺ったのは他でもありません。皆様方の父からの伝言です。」

 

「おぉ、父さんからか!」

 

俺達は一様に笑顔になる。

実は俺達は幼い頃に母を亡くし父も何処かに行ってしまった。

だから俺達は両親の顔を完全に覚えてはいないので父との再会を心待ちにしているのだ。

 

「四季宗家の当主を四季 黄眞(こうま)に変更、との事です。」

「は?」「へ?」

 

俺に向けられた真千琉の言葉に笑顔のまま呆然とする5人。

 

「………?」

 

突然固まった俺達に首を傾げる真千琉。

そして沈黙を破る驚愕の声。

 

「「「えええぇぇぇ―――!!??」」」

 

その叫び声を切っ掛けに真千琉に詰め寄る俺達。

 

「どういうこと?!」

「それは本当?!」

「あ!ちょっと?!……待って下さい!!!」

 

このままでは埒があかないと察したのか大声で静止の声を放つ真千琉。

その効果はしっかりと発動し俺達は一気に静かになり後ろに下がる。

 

「こほん、これについてはもう変更する事が出来ないので確定と思ってください。」

「「「はい……。」」」

 

それを聞きもう諦めるしかないと思った俺達は素直に引き下がった。

 

「…では、次が父からの"最後"の伝言です。」

 

真千琉が暗い顔で言った言葉。

俺はこの言葉に違和感を感じた。

 

「おい、最後ってどういう事だ?父さんに何があった?!」

「……すいません。最初にこれだけは言っておきます。心の準備を整え下さい。」

 

父さんについてはまだ元気で生きていると、この人に数年前教えてもらったから安心していた。

けれどその父さんに何かあったなんて到底思えない。

でも此処で現実から逃避するなんて俺達が今まで積んで来た修行の毎日はなんだったんだ、って皆に笑われる。

だから俺は覚悟を決めよう。

俺には真実を知るだけの器はあるはずだ。

姉と妹に目を向けるとその目からは意志の固さが感じ取られた。

 

「決まりましたか?」

 

真千琉が俺に目線を向け聞いてくる。

だから俺は前に進む事だけを考えよう。

俺は家族の前に進み出る。

 

「ああ、既に意志は固まっている。」

 

その返答に真千琉は少し驚いた様な顔をしたが直ぐに顔を引き締め言葉を紡ぐ。

 

「『私はもうこの世界から旅立つが私達が創り上げた故郷を護ってくれ。』だそうです。…彼は自分の子を、貴方達の身の健康をいつも願ってくれていました……。」

 

目尻に涙を浮かばせながら伝言を言う真千琉。

それを聞いて浮かび上がるのは一つの真実。

その真実は俺達5人共間違い無く同じ結論に至った。

 

――それは、

―――最後の支えを亡くした……。

 

その真実を受け止める事は出来ない。

だが、父さんがこの島を俺達に託したのなら身を挺して此処を護ろう。

それを標にしてこの島をより良いものへと変革しようと心に誓った。

 

「俺はこの島、幻夢島を護ってみせる!」

 

目の前の真千琉の少し口を開けたまま動かない顔を見てやってやったとニヤリと微笑する。

 

「流石黄眞だね。その気持ちを忘れずに、だよ。」

 

体を後ろに向けると前四季宗家当主である四季 風春(かざは)がうるうるに潤った碧眼で見据えてくる。

 

「ああ、俺は絶対に諦めない。」

 

幻夢島は未だに全体の2割程しか開拓されていない。

しかもそれは俺達の先祖様が頑張ってきたのに、だ。

山の麓には一番低い所から下町、中町、上町と分かれ下に行くほど位が高い人々が住んでいる。

何故、高位の者ほど下に行くのかは後ほど分かるだろう。

 

「まずは深淵の森を開拓してその材木で町を護る防壁を造ろうか。」

「そうだね。まずは町の人々の安全が第一だよ。」

 

風春も賛成の様だしこれに決まりか。

 

「それじゃあ『深淵の森』を開拓するんですか?」

 

察しが良くて良いぞ、我が妹第一号よ。

 

「そうそう、『深淵の森』の木々を貰ってそれで防壁を造る。……だから町の土木さんにも頼まなきゃなあ。」

 

土木をしている人は比較的材木を手に入れやすい上町に集まりやすい。

だからそこで何人か、協力者を集めるか…。

 

「……町の巡回は?」

 

どうして妹第一号の後ろに隠れてるのだ、妹第二号。

と言うかやっぱ妹第一号の秋沙(あきさ)の髪は月夜に輝く銀だから綺麗なんだよな。

 

「なぁ、堂々と言ったらどうだ?」

「…黙れ。私の質問に答えろ。」

 

いつもはこんなんじゃないのにな。

俺が話しかけると顔真っ赤にして誰かの背後に隠れるんだ。

まぁ今も長い黒髪が見えるだけで顔見えないからどうなってるかは知らんが…。

 

「この中から二人を巡回班にする。残りは土木さん達が安全に木を切る為に辺りの獣とかを討伐する。これで良いか?冬渦(とうか)。」

「ふん…、好きにしろ。」

「冬渦ちゃん?お兄ちゃんにそんな事言っちゃダメですよ。」

「そういう秋沙だってにぃに甘えたくないって言ってたくせに……。」

「うぅぅぅ。」

「ぐぐぐぅ。」

 

なんか勝手に妹同士の姉妹喧嘩になってるし。

身長が同じくらいの秋沙と冬渦はおでこをぶつけ合って睨み合っている。

俺が制止の声を上げようとしたとき、

 

「はぁ、迷惑掛けるなよ。ほら、止めた止めた。」

 

妹二人の間に入り込み引き離したのは俺の男気のある姉の螢夏(けいか)だ。

さっきまで壁にもたれ掛かって話を聞いてるのか聞いていないのか分からない程だったのに。

 

「やっぱり姉として妹の喧嘩は見過ごせなかった?」

 

俺が役目を終えたと言わんばかりに再び壁にもたれ掛かりこの姉妹の中で一番大きいと言える胸の下で腕を組んだ螢夏(けいか)に聞くと。

 

「まぁ、……そうか。そう言われればそうだったかもな。」

 

俺の問いに逡巡したが心の中で合点がいった様だ。

その答えを聞くと俺は皆の顔を一人ずつ見てから決めた。

 

「巡回班はの二人は螢夏と秋沙が担当する。そして残ったメンバー、風春、俺、冬渦が辺りの獣等の討伐だ。しかし撃退でも良い。決行は明日で雨の場合は中止で翌日に持ち越す。分かったか?」

「「「「了解!」」」」

 

そこで俺は真千琉に向き直り言う。

 

「真千琉さん、貴女はどうします?もうこの島から出て行きますか?」

「いえ、私は此処に残ります。幻夢島が私の故郷なので……。何かありましたら私に聞きに来てください。では……。」

 

真千琉は俺に住所を書かれた紙を渡し去っていった。

俺はそれを見送ると姉妹に体を向ける。

 

「じゃあ明日まで自由だ。雨で外は危険だから止めておけ。室内での有意義な時間を過ごしてくれ。」

「はい。」

「へーい。」

「はいです。」

「ん……。」

 

それぞれが返答した後自室へと戻っていく。

俺は場所はそのままで寝転がる。

あの人が来る前はあいつの所に行こうとしたけどなんか疲れたからいいか……。

 

「それにしても俺が四季宗家の当主かぁ……。」

 

そう呟き懐から巾着袋を取り出し棗を齧る。

ほんのりとした甘味と酸味に舌鼓を打つ。

そして巾着袋を懐に入れ瞼を閉じる。

聞こえるのは雨のざあざあとした音のみ。

他には何も無く大して時間も掛からず俺は辺りに広がる闇に身を委ねた。

 




前と余り変わってなかったらすみません。m(-_-)m

次回もよろしくです~。
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