逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

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法廷2日目 その14

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「その人物とは……昨日の証人、星熊勇儀さんです!」

 「星熊……あの迷惑な鬼ですか……」

 四季検事は眉を引きつらせた。相当彼女のことが嫌な様子だ。

 

 「昨日の最初の尋問において勇儀さんは、このように話していました」

 

──────────────────

 

 「他に何か覚えていることはありますか? 何でも構いません」

 「他に覚えていること……ああ、そういえば一つあるな」

 「なんでしょう?」

 「被害者が黄緑色の鳥が描かれたお猪口を使っていたことぐらいかな」

 「黄緑色、ですか」

 「ああ、一昨日ぐらいに、熟れる前の黄緑色の蜜柑を食って、腹を壊しちまってな……。それからしばらく、黄緑色に敏感になってて……それで覚えてたんだと思う」

 「なるほど……」

 黄緑色の鳥が描かれていた、か……。

 

──────────────────

 

 「黄緑色……確かにそんなことを……。…………あぁぁぁぁぁっ!」

 前回の法廷を思い出していた四季検事が、突然叫んだ。そう。昨日の法廷の時点で、既に事件解決の糸口は顔をのぞかせていたんだ!

 

 「宴会で使用されていたお猪口で鳥の絵が描かれたものは、あるにはあります。しかし、その色は“鶯色”。黄緑色とは似て非なるものです。そして、事件当時の宴会場に、“お猪口によく似た黄緑色の鳥が描かれたもの”はただ一つしか存在しない!」

 「水筒の……」

 「蓋っ……!」

 紫さんと四季検事が続けざまに言った。

 

 「その通りです。つまり、勇儀さんのこの証言は、被害者が水筒の蓋に口をつけたことを示す、他ならないものとなる!」

 ぼくは机を叩いた。

 

 「……四季検事! あなたの言う、この“取るに足らないムジュン”こそが、証人の犯行を如実に示していたのです!」

 「ぐっ…………きゃああああああああああっ!」

 四季検事はついに絶叫し、机に伏した。そのまま起き上がり、反論する様子はない。

 ……これは、やったか?

 

 

 

 「くくっ……。やっぱり弁護士さんは面白いねぇ」

 こ、この声は……。

 

 「しょ、証人……!」

 ここまで、証言台についたま一切言葉を発することなく、審理に耳を傾けていた名琴さんだったが、ここにきてついにその重い口が開かれた。やはり、そう簡単に事は運ばないみたいだ。

 

 「いやぁ、いい推理だったよ。確かに筋は通っている。……けれどねぇ? まだ足りない点が二つもある」

 「足りない点……」

 

 「いいかい? それじゃあ一つ目。君はここまで素晴らしい推理を披露してくれたけどぉ……いくらその方法が完璧だからって、僕がそんな危険を冒してまで、被害者を殺す必要があるかなぁ?」

 「……つまり、動機が自分にはないと?」

 「そうそう。彼女を殺したところで、僕には何の利益もないんだよぉ」

 何の利益もない……この点については、打ち崩せるだけの証拠を準備してきている。さて、もう一つは何だろうか。

 

 「もう一つは、そもそもの話になるけれどぉ……。今まで君は、僕の水筒に毒物が入っていて、蓋にそれを注いだって主張していたけどぉ……僕の水筒には、毒なんて入っていないよぉ?」

 名琴さんは、「だよねぇ、検事さん?」と四季検事に確認をとる。

 

 「……ええ。その通りです。持ち物検査の時点で、鬼殺の秘薬が検出されないかどうか、確認しています。何度もお話ししている通り、被害者の体内以外から、鬼殺の秘薬は検出されていません」

 「ほら、言ったでしょう? これでどうやって被害者を殺せたっていうのかなぁ?」

 名琴さんは、細い目を薄っすらと開いて、こちらの瞳を凝視してくる。

 

 ……これについても、ひとまずの対策は打ってある。問題は、ぼくの思惑通りにいくかということと、にとりさんが間に合ってくれるかどうかだ。

 

 「この二点が明確になっていない時点で、君がどれだけ御託を並べても無意味なんだよぉ。分かる?」

 「……異議あり!」

 彼の言っていることは事実だ。そして、これからぼくはそれらのことについて証明しなければならない。

 一つ目の動機の点については、準備が整っている。しかし、二つ目については、確固たる情報がまだ届いていない状況だ。ここは、動機の面を追及して時間を稼ぐしかあるまい。

 

 「被害者を殺害する動機がない……随分とおかしいことを言いますね?」

 「おかしいこと……? どういう意味だい?」

 「弁護側は、あなたの動機を証明する準備がある、ということです」

 「……へぇ~」

 ぼくと名琴さんのやり取りに、傍聴席が少し騒がしくなった。紫さんは木槌を鳴らしてそれを鎮めると、ぼくに尋ねてくる。

 

 「弁護人。それは本当かしら?」

 「ええ。機会さえいただければ、証明して見せます」

 胸を張って答えた。今回はハッタリ抜きだ。

……問題は、この先いかにして時間を稼ぐか。弾は十分にそろっている。にとりさんが到着するまでに、弾を使い切らないよう調整しなければ。

 

 「……それじゃあ裁判長さん。僕も一つ、この弁護士さんに付き合うとするよぉ。証言をさせていただいてもいいかなぁ?」

 「許可するわ。あなたも、自身の意見を述べたいでしょう」

 「ありがとうございます。では、遠慮なく」

 紫さんにお辞儀をした名琴さんは、証言に入る。

 さあ、ここから第二ラウンドだ。……四季検事はあんな様子だし、どうやら名琴さんとの戦いがメインになりそうだ。……もう怖いだなんて言わないぞ!

 後ろの壁にもたれて腑抜けている四季検事を横目に、名琴さんの証言を聞くことにした。

 

   

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、タイホくんです。正確には一カ月前のタイホくんです。
今回は、しっかりと予約投稿しておきました。これでまた定期的に作品をお送りできますね。

正直、今年度に入ってから、バタバタしっぱなしで、投稿をつい後回しにしてしまっていたのです。これ以上、癖になってしまう前に、予約投稿でしっかり投下していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

次回投稿予定日は、
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