投稿待っててくれた方には申し訳ございませんが信じられないくらいに短いです。
読者を蔑ろにしすぎだろ自分…………
そこは舗装のされていない獣道だった。立香とマシュ、そしてロトの三人はレイシフトを終えると其処にいた。三人にとって初めての感覚だが、冬木で突発的に経験したせいか、そこまでの違和感はない。
「ここがフランス……戦争中ってわりにはそんなに騒がしくないね?」
『そりゃそうよ。今のフランスは戦争最中ではあるけど、休戦時期に入っている頃なんだから』
「あ、所長」
立香のつぶやきにオルガマリーが答える。しかし姿は見えず、声だけが聞こえてくる。サポートの面での支援は抜かりない。
「休戦時期って」
「そこからは私が説明します!先輩!」
立香が浮かべた疑問を言い切る前にマシュが先手を打って説明を切り出す。
「この時代における百年戦争というのは、なにも一百年間ずっと戦い続けたわけではないのです。時に互いで休戦協定を締結し、その後再び状況がそろえば始める。といった具合です」
「ふーん……不謹慎かもしれないけど、サッカーのインターバルみたいな感覚?」
『うーん!あながち間違いと強く言えないあたりが訂正のしようもないな!参ったよ!』
マシュの説明を受けて立香の導き出した答えに、ロマニは近からずも遠からずといった結論にどう答えたものかと頭を抱えた。
『いやいや、いいじゃないかその解釈!結論がどうであれ、彼自身が導き出した答えに変わりない!この状況下で誰かに思考を丸投げせずに自分で考えだしたという事実が驚きだね!それも魔術師の家系でもない一般生枠がね』
そこへハツラツとした声でダ・ヴィンチちゃんが割り込んでくる。立香は歴史に名を遺す偉人に褒められたことがどこかむず痒く感じた。
『それよりちょっと聞きたいことがあるのだけれど?立香?』
「ん?なんですか?オルガマリー所長?」
するとオペレーター室から流れてくるオルガマリーの声が立香を呼びかけた。その声に立香は素直に応じると、オルガマリーは少しばかり声を震わせる。
『ロトは一体…………どこに行ったのかしら?』
「「へ?」」
その質問に立香とマシュはオウム返しの様にそろって返事をすると同時に、辺りを見渡す。しかしそこにロトの姿はどこにもいなかった。
「ロト?ロト―!どこにいんのー!?」
突如として消えた勇者の存在に立香は慌てた様子でロトを呼び掛ける。しかし反応はどこにもなかった。マシュはカルデア側に連絡を取る。
「どういう事ですか所長?!普通サーヴァントはマスターの側に居続けるはずです!こんなことありえません!!」
『それはこっちも分ってるわ!だから今急いで原因を探ってるところよ!だけど何も分かってないわ!』
「……………………」
立香達カルデアによる人理修復の第一歩は、勇者なしで踏み出されたのであった。
グワギャーーー!!
グルゴォォォオオオオーーー!!!
「…………初手がドラゴンかよ?」
ロトの目の前には街中を飛び交う飛竜が人々を襲っていた。正確にはドラゴンではなくワイバーンであるのだが、ロトにとってはどちらでもいい。結局爬虫類のような見た目をして鉤爪を有していれば、ロトにとってはすべて等しくドラゴンの仲間入りである。
「…………ま、こんだけ暴れて殺しまわってんならオレが仕留めてもいいだろ?んじゃ早速…………」
そう言ってロトは空を飛ぶワイバーンに向かって弓を構えた。
「狩りの開始だ」
グルゥ…………ウォ
ガァッ!
放った矢は一直線に一匹のワイバーンの首に飛び込み、そのワイバーンは口から血を流し絶命した。ロトはワイバーンが地に堕ちる前にすぐさま矢を構える。慣れた手つきで再び矢を打ち込み、またしてもワイバーンを一匹仕留める。その流れるような手つきは見る者が見れば洗練された達人の域であることが分かる。更に言えばそこには殺意が籠っていなかった。それが恐ろしい。獲物からしてみれば何の前兆もなしに唐突に命が終わるのだ。自然災害のようなその殺戮に気付くのは中々に難しい。
グゥ! ギャガ! …………!!
一匹、また一匹とワイバーンが地に伏していく。その数が10を超えようとする時だった。一匹のワイバーンが異変に気付く。
グゥウウウウオオオオオ!!!!!
咆哮がそのワイバーンを中心に町中に響き渡る。その咆哮に逃げまどっていた人々の恐怖は更に煽られ、他のワイバーンも異変に気付く。
そして見つける。
一斉にワイバーン達がロトに向かう。
業火がロトに向かって打ち出される。それを追随する様に他のワイバーンが背を屈め全速力で命を取りにかかる。
「パワフルスロー」
次の瞬間、すべてのワイバーンの命が一撃で葬られた。円の軌道を描いて飛んだそれはワイバーン達の脳天を見事にすべて貫きロトの手元に戻る。
それはブーメランであった。
「ふぅ…………久々に手に取ったけど、憶えてるもんだな。さて、それじゃあ早速皆を探すか」
ロトはくるくるとブーメランを回しながらそう呟く。そして再び足を進める。
「まて、そこのもの!!止まるのだ!」
「ん?」
しかし、そこで唐突に声が掛かる。そこには白銀の鎧を身に纏った武装集団がこちらに槍を構えていた。するとそのうちの一人、指揮官と思わしき人物が前に出る。その男は黒いウェーブのかかった髪に光の無い粘土のような黒い目、そして病的なまでに白い肌を持った男であった。
「失礼する。私の名はジル・ド・レェという。この軍の指揮官をしているものだ。貴殿の名を聞かせてもらえるかね?」
「うん?あ、ああ。えーっと、ロトだ。よろしく頼む」
「ほう、あの有名な勇者と同じ名を冠しているとは…………いい名前ですな」
「ど、どうも…………」
色白の男、ジル・ド・レェの紳士な対応にロトは少々むず痒さを感じる。しかしそんなロトを置いて、ジル・ド・レェは話を進める。
「先ほどの貴殿の活躍を見ていました。何とも凄まじいものです。我々が苦労してやっと一匹倒すのが限界なあの竜をあれだけの量を一人で倒してしまうとは」
「あ、ありがとうございます」
真っ向からの称賛に慣れていないのか、ロトは気まずげに頬を掻く。ジル・ド・レェは話を続ける。
「そこで貴殿にお願いがあるのです」
「…………なんですか?」
その真剣な表情にロトの顔も自然と鋭くなる。自分を利用しようとしているのか、はたまた本心からの懇願なのか。まだ分からない内は安易に首を縦に振れないからだ。ジル・ド・レェは続ける。
「どうか、フランスを救って頂きたくため、その力、貸していただきたく!」
後者であった。こうなった場合のロトの返答は決まっていた。
勇者の人理修復の第一歩はフランス軍とともに始まった。
「ん?」
「どうしました?」
フランスのとある森の中にて。二人の女性がいた。一人は長い金髪に蒼い瞳を持つ幼さも兼ね備えた美貌のその女性は、純白の旗を携えもう一人の女性に話しかけていた。
「いえ、なんだか…………懐かしい雰囲気を感じて……ごめんなさいジャンヌ。先を急ぎましょう」
その話しかけられた女性はある一点の方角を見つめ続け、やがてその懸念を振り切る為に視線を金髪の女性、ジャンヌに戻す。ジャンヌは何か考え込むように顎に手を当てた。
「ジャンヌ?」
「……おかしいです。この時代はあなたが生きていた時代ではないからそんな事は起きない筈……つまりは誰かあなたに近い縁のものが召喚された?」
ジャンヌは相方に話しかけられているにも関わらず熟考を続ける。やがて考えがまとまったのか、女性の方に振り替える。
「一体どちらの方角でしたか?」
「え?あっちだけど?」
急な質問に女性は困惑しながらもその方角を指さす。それに釣られジャンヌも顔をそちらに移す。
「…………いってみましょう」
「え?!あなたが言ってた目的地とは真逆の方角よ!?」
「いいんです。行きましょう……それに」
「それに?」
「あなたのそんな未練に満ちたような顔をされては」
「…………!?」
自身の心中を見透かされたような返答をされた女性は驚きに顔を染める。そして驚きによって硬直した女性の体をジャンヌが引く。
「さぁ、行きましょう。行けば何か分かるかもしれません!!」
「ちょ、ちょっと!!」
ジャンヌの引く力が強いのか、女性は引かれるがままだった。
二人は走り出す。
今更ですかやっと人理修復完了出来ました(遅っせ…………)