あうんどばいみー(一対の神獣が鎮守府に迷い込んだら) 作:n番煎じの戦闘員
海に面した鬱蒼とした松林。
幻想郷の外の世界…いわゆる外界と呼ばれる場所に、たった今1人の妖怪が降り立った。
妖怪はしばらく周りを見渡した後、感慨深く呟く。
「ここが外の世界…」
妖怪の名は
幻想郷すら出ることになった経緯にはまた別の理由があったりするのだが…それは置いておこう。
(神社の気配がすごい!沢山ある!)
しばらく周囲を見渡していたあうんは、目をキラキラと輝かせた。
(百?ううん…もしかしたら千以上あるかも…ほんと凄い)
あうんは能力で神社(寺院)の気配を探知する事ができる。
その広さに限界は無く、幻想郷の比じゃない凄まじい数の神仏を見つけたあうんは驚くとともに、興奮していた。
あうんは神社を守る狛犬に宿った霊から肉体を授かり、生まれた存在である。「神仏に心酔する守護神獣」という二つ名の通り、神社に居ると安心できる性格のため、外の世界でも幻想郷に帰るまでの間はどこかの神社に寄生……いや守護しようと画策していた。
(でも…どこに行こう?)
ただ千個も候補が有るとは予想しておらず、多過ぎる選択肢に迷ってしまうあうん。幻想郷には片手で数えられる程しかない事を考えると仕方ないことではあるが。
もちろん、千個の中には現在地からかなり遠くにある神社も含まれている。、人外の彼女にとって「距離」はさほど障害ではない。
悩むこと数秒、案外直ぐに答えは出た。
「とりま、1番近いとこに行こ!」
受け入れてもらえなかったら次の場所に行こう、と前向きに考え、あうんは1番近い神社がある方向に歩き出した。
ちなみに「とりま」というのは守矢神社の巫女早苗が使っていたフレーズで、早苗いわく「とりあえず、まあ」の略語らしい。なんとなく使ってみた。
また、千個も存在する神社にすっかり浮かれていたのだろう…この時のあうんは、幻想郷を出る際に「人間の前に無闇に現れないように」と口すっぱく注意されていたことをすっかり失念してしまっていた。「誰にも気づかれずに影からお護りしよう」という自身のポリシーをあうんが思い出すのはだいぶ後のことだった。
☆☆☆
ある日の早朝、ある鎮守府の提督は日課の散歩をしていた。この散歩は鎮守府全体の視察であり、少ない艦娘と交流する機会であり、事務仕事に疲れた己の気分転換でもあった。
先程も朝からランニングしている真面目な不知火や、弓の鍛錬に励む加賀と会話を交わした。朝から自主的に鍛錬を積む艦娘を見ると、ここはブラック鎮守府では無いんだと少し安心できる。喜ばしい限りだ。
…もっとも、不知火や加賀たちが早朝トレーニングをしている理由の6割が「提督と会話するため」であることにこの提督が気づくことはないだろうが。
ふと、提督はいつもの散歩コースを外れて外壁に沿って歩くことを思いついた。周囲から鎮守府を眺めて歩いてみよう、と。
たまに良くあることだ。何かの拍子に、別のルートを通ってみたくなることがある。
(工廠と食堂は通らなくなるが…まぁ今日もいつも通りだろうし大丈夫だろ。明石や間宮さんに会えないのは少し残念だが)
その思いつきの度に、早朝から起きて提督と会える期待を裏切られる艦娘がいることを提督は知らなかった。
ーーいつもと違う道を進んでいくと、1人の艦娘がある建物の前のベンチに座っているのを見つけた。
私服を着ており顔を伏せた状態だったので遠目には誰だか分からず、提督は確かめようとベンチに近づいていく。
「そこに居るのは……鈴谷か」
普段着ている制服ではなく私服の寝間着だったせいで近くに寄らないと分からなかった。
鈴谷は声を掛けられ、ようやく提督の存在に気づいたのか
「お…?てーとくじゃーん…ちーっす…」
と言って、無邪気に、だが弱々しく手を振った。
薄着の寝間着と、寝ぼけているのか無防備な姿勢は誘惑しているようで、男性には目に毒だろう。
そんな鈴谷を見て、男である提督は…
(上司にこの対応。軍隊なら即首を斬られるな。まぁ、優しい俺はそんなことしないが)
至極どうでも良いことを考えていた。
その時、鈴谷の背後の建物から声が聞こえた。
「おーい、鈴谷ー?もう目は覚めたー……って、提督!?」
「最上?…そういやここは重巡の寮だったか」
建物から姿を見せたのは最上だった。こっちはきちんと制服を着ている最上を見て、この建物の情報を思い出す。何分、来た事がほとんどないのですっかり忘れていた。
そして、最上の声を聞いて目が覚めてきたのか、鈴谷は現状をだんだんと理解していき……目を見開いた。
「はぁ!?て、提督!?」
「ん?おはよう鈴谷」
「おはよ…じゃなくて!なんでここ居んの?」
「それは…」
提督がここまで来た経緯を説明しようとした。その時、鈴谷は自分がどのような格好をしているのか思い出し…顔を真っ赤にして叫んだ。
「こ、こっち見んなバカ!!」
「ぐへ」
八つ当たり気味に提督に一発入れて、鈴谷は風の如く建物の中に逃げていった。
「て、提督!大丈夫?」
「んん…?なぜ俺は殴られたんだ?」
心配そうに駆け寄る最上に対し、提督は疑問をぶつけた。鈴谷のパンチにダメージはなかったようで、痛がる素振りはない。それよりも殴られた原因が気になった。
俺が何かしたのか、と首を傾げる提督に対し、最上は暫し考えた後、
「はは…それより、提督はどうしてここに?」
鈴谷のためを思って言葉を濁すことにした。提督も何となく察したのか深く追求はせず、先ほど鈴谷に説明しようとした事を言う。
「ああ、日課の散歩…まぁ視察のようなものだ (後で鈴谷本人に聞けば良いか)」
察してなかった。
「視察?こんな朝からしていたの?初めて知ったよ」
「まあ、普段ならここは通らんしな。知らなくても無理はない」
提督の朝の散歩を知っている艦娘は案外少ない。提督の言う通り同じ場所しか行かないのもあるが、そもそも知っている艦娘たちがその情報を広めないからである。つまり、提督の朝の視察は「知る人ぞ知る」という類のものなのだろう。
「ふーん…。それなら提督、明日もここを通るといいよ」
「それまたどうして?」
最上は悪戯っ子の笑みを浮かべて言う。
「明日はもっと面白いものが見れるだろうからさ」
「それはどういう…」
提督がきき返そうとしたその時、建物の中から別の声が聞こえてきた。
「最上さん?どこいるんですの?折角の朝食が冷めますわよ?」
「この声は…」
「いま行くー!…ほら、提督も時間ないだろうしね。じゃ、また明日!」
「あ、あぁ分かった…」
提督の返事を聞き、最上は満足げな表情をして建物内へ消えていった。
最上によって思考が中断され、(…ま、明日確認しに来ればいいか)と思いつつ、散歩を再開する提督だった。それが最上の術中であることに提督は気づいていない。
☆☆☆
——提督が去った後、建物…重巡寮内にて
「…どなたかいらっしゃって?」
「ううん?誰も居なかったよ?」
「しかし声が…」
「それより鈴谷は?」
「…なぜか部屋に篭って出て来ませんわ。わざわざわたくしが朝食を作って差し上げたにも関わらず…」
「まぁまぁ、鈴谷はボクが呼んでくるから。朝弱いのにありがとね」
「もう…明日は最上さんが作って下さってよ?」
「もちろん!起こすまではゆっくり寝くれて良いよ!」
「…朝から元気ですわね。なにか良いことでもありまして?」
「ん〜?別に〜♪」
朝から提督に会え、明日の朝が楽しみで仕方ない最上と、姉の笑顔を見てなぜか不安になる熊野だった。
【どうでもいい裏設定】
・外界
幻想郷の外の世界。「外界」という名前は適当。なんか「外の世界」という名前が正式名称らしいのですが、なら略して「外界」でもいいじゃん、となりました(適当)。「がいかい」でも「げかい」でも「げどう」でもお好きなように読んでください。
・神社の候補が千個
「あれ?少なくね?」と思った方は大正解。ぶっちゃけ日本に現存する神社は8万を超えています。寺院も合わせると余裕で10万超えでしょう。しかし、その数は「神社の総数」であり、「神様の総数」ではないのです。これは、神社の特性として、勧請システム(本宮などから神霊をお招きする仕組み)を取り入れた神社がかなりの数あることに起因しています。つまり他の神社と神様を共有するシステムです。よって、「なら、(奉ってる)神様自体の数は大体千かな?」という作者の適当な考察により、勝手に候補を千個まで絞らせて頂きました。
はい、ご都合設定です。ご了承のほど宜しくお願いしますm(_ _)m
ちなみに神社の数全国1位は新潟県らしいですよ(無駄知識)
・
種族:狛犬
能力:神仏を見つけ出す程度の能力
二つ名:神仏に心酔する守護神獣、神色自若の狛犬、など
狛犬に宿った神霊が肉体を得て誕生した存在。博麗神社を守護る役目を(勝手に)担っていたが、訳あって外界に降り立つ。
あうんが1番近い神社を選んだのは思いつきに他ならない。神社にいる神の強さは千差万別であり、序列もある。だが、あうんはもともと貧乏くさい神社を守護しており、そこら辺は全く気にしていない。寄生できたらどこでも良い。
口調や性格などは現在進行形で考え中。
・提督(神谷東吾)
種族:人間
能力:持ってたら怖い
二つ名:そのうち判明
ある鎮守府の提督。作者によって名前に遊び心を込めまくられた可哀想な人。転生者でもニートでもない普通(?)の人(?)。
口調や性格はry。
・鈴谷
種族:艦娘(たぶん人間)
能力:艤装を展開する程度の能力
二つ名:
初登場艦娘。朝にめっぽう弱い。実は熊野も…?
【takeあとがき】
読書の皆様。初めましてorお久しぶり、sentensuです。艦これから来た方はwelcome。東方から来た方はsorry。両方知っている方はDOGEZAと伝えておきます。
東方は今や「原作知らんけど二次創作物なら知ってる」という方が多くいらっしゃるでしょう。「あうん知らねぇ…」という方、安心して下さい。作者も似たようなもので、知らない東方キャラはわんさかいます。ワンさか。
とりあえず「あうんどばいみー」でweb検索して下さい。1発で好きになります(たぶん)。
↓下にリンク貼ってみますが、失敗しているかも知れません。警告来たら消します。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm32494201