七彩物語   作:セブン

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お兄ちゃん

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私には1つ歳が上のお兄ちゃんがいる。

お兄ちゃんと言っても血は繋がってなくて私がまだ1人じゃ立ち上がれない頃から手を差し伸べてくれる優しくて頼りになる男の子。

 

フェイトママの養子でずっと、ずっと一緒にいたお兄ちゃんは私の中では決して血の繋がりなんてなくとも家族の一員だと思っている。

自惚れじゃなければお兄ちゃんも私を本当の妹のように、家族だと思ってくれていると思う。えへへ、なんだか自分で言うと恥ずかしいな。

 

そんな私は今初等科の4年生になり友達も出来てとても幸せです。まだ進路の事で悩んでいて、まだ焦るような時じゃないって言われるけど私の周りには色々なお仕事をしている人達がいてそんな人達を見ていると今から悩んでしまう。

けれどそれは決して悪い悩みじゃなく私の成長にも繋がる大事な悩みで今が充実しているからこその悩み。だからこそ自分は恵まれているんだと実感出来る。

 

そんな贅沢な悩みとは別に最近私にはもう1つ悩みがある。

私はお母さんと約束したんだ。直ぐに泣かない、転んでも1人で立てる強い子になるって。だから私はストライクアーツを始めた。ストライクアーツを始めるにあたってお兄ちゃんに猛反対されてそこでも一悶着あったんだけどなのはママとフェイトママに説得される形で渋々お兄ちゃんは認めてくれた。

多分内心では認めてないんだろうけど。

 

別にそれは良かった。私が頑張ってそれに見合った結果を出せばきっと優しいお兄ちゃんの事だ。私の事を認めてくれるはず。

 

そんなお兄ちゃんと最近喧嘩をした。小さな喧嘩なら何度もした事があるけど今回は違う。私はもう1人でも立てる、守られるだけじゃ嫌だ。なのにお兄ちゃんは私に過保護でまだ早いと言う。何故分かってくれないの?

 

お兄ちゃんより弱いから?

それとも格闘技が向いてないから?

 

いつも隣にいるお兄ちゃんがいない生活は常に私の心に影をさし続ける。リオやコロネと笑いあっても、ノーヴェとスパーをしても、テストでいい点数をとっても。

心から楽しめない、喜べなかった。

いつも「良くやったな」「凄いじゃないか」と優しく笑いかけてくれて頭を撫でてくれるお兄ちゃんは隣にはいない。

喧嘩しているのだから当たり前だけど、それでも私の心はギュッと何かに縛られているように苦しい。

 

いつも側にいて私に手を差し伸べてくれるお兄ちゃん。気が付けばそこにはお兄ちゃんがいて当たり前のように自然とお兄ちゃんを探している自分がいる。認めてしまおう、私高町ヴィヴィオはどうしようもないぐらいリネス・ハラオウンのことが好きだ。そこにいるのが当たり前でお兄ちゃんがいない生活なんてとてもじゃないが今の自分には想像が出来ない。

コロナやリオに言えば間違いなくお兄ちゃん離れ出来ない妹だ、と笑われるだろうけどそれは違う。

 

本当はもっと妹じゃなくて女の子として見て欲しい。お兄ちゃんは本当の妹のように私を甘やかしてくれるけどそうじゃないそれだけじゃ嫌だ。

 

けど妹じゃなくなったらお兄ちゃんは私から離れていくんじゃないか。

そう思わずにはいられない。

お兄ちゃんは物凄くモテる。贔屓目に見ても顔は整っていて成績もトップ、それを自慢する素振りすら見せない姿がクールだと学院では物凄い人気だ。

そしてアインハルトさんはそんなお兄ちゃんと距離が近い。それはもう近い。

はっきり言うと私は我慢していた。2人が付き合っているという噂は学院でも有名な話だったし何処かお兄ちゃんとの関係を諦めていた私はずっと傍に居られればそれで良いと思っていた。

 

あのお弁当を届ける日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「リネス見て下さい!」

「あぁ、もう!分かったから引っ付くな!」

 

目の前でアインハルトさんとお兄ちゃんはイチャラブしている。何だろう、これはもしかして私に喧嘩を売ってきているのだろうか。私がぎこちない笑顔を浮かべてアインハルトさんを見ると目が合った、ニコリと笑うアインハルトさんと歪んだ顔の私。

 

『私マウントとるの好きなんです』

『ぐぬぬ……』

 

念話でドヤ顔するアインハルトさん。

ちょっとお兄ちゃんもなんで少し照れてるの?やっぱり胸なの?そりゃ私は絶壁だけどさアインハルトさんも大して変わらないよね?こうなったら変身魔法で……

 

「ヴィヴィオ落ち着いてっ!?」

 

何か2人が言っているような気がするけど聞こえない。

そもそも私達が後部座席で2人が隣同士で座っていること自体がおかしい。そりゃ私が喧嘩中だから仕方がないのかも知れないけど、やっぱり鼻の下伸ばしてるお兄ちゃんが悪い。

むむむ、と唸っていると困った顔で助けを求めるようにくるくる顔を回していたお兄ちゃんと目が合った。ふんっ、と顔を逸らす。おっぱいで鼻の下を伸ばすお兄ちゃんなんて知りません。

 

 

合宿地であるルーテシアの家に着いた頃にはお兄ちゃんはげんなりとしていてアインハルトさんは心なしか肌がツヤツヤしていた。

 

「さっさと仲直りしたらどうですか?張合いがなくてつまらないです」

「今回ばかりは譲れないんで無理ですよ」

 

そう今回だけは絶対に自分からは謝らない。因みにアインハルトさんとはあの試合の後に良きライバルとして認め合った仲だ。格闘技の実力は悔しいけど実力差はかなりある、けどお兄ちゃんを落とすという意味であれば私とアインハルトさんは平行線である。曰くどれだけアプローチしても全然効果がないらしい。それは此方も同じなのだがやはりおっぱいなのだろうか。ぐぬぬ、やはり大人化して1度迫らねばならない日が来るような気がする。

 

何故アインハルトさんとそんな事になったのか。実は自分も良く覚えていない。ただボコボコにされて何も出来なくて、けれど諦めたくなくて。お兄ちゃんを見返したい一心で。

その時に私はある事を口走ったらしい。

恥ずかしいから明言は避けさせて貰うけどこれで私のお兄ちゃんへの気持ちは皆にバレたわけだ、だけど皆なんというか「知ってるけど?」みたいな反応で更に私は恥ずかしくなった。私ってそんなに分かりやすいだろうか?

 

「久しぶりリネス」

「久しぶりだねリネスくん」

「エリオにキャロ久しぶりだな。にしてもめちゃくちゃ身長伸びてんなぁエリオ。ハンサムになりながって。キャロは……」

「なんで合掌してるのっ!?これでも1.5cmも伸びたんだからねっ!」

 

涙目でぷりぷり怒るキャロさんをからかうお兄ちゃん。エリオさんとキャロさんはお兄ちゃんと同じようにフェイトママに保護された身の内で家族のようなものであり仲が良い。

私の方が仲がいいもん、そう言ってやりたい。

 

一通り挨拶を終えた後エリオさんはお兄ちゃんに向き直った。

 

「リネス。僕と模擬戦をしてくれないか?」

「え、普通に嫌なんだけど」

 

即答だった。

流石にエリオさんも苦笑いしている。

 

「そもそも俺あんまり戦うのは好きじゃないんだけど。何より……」

「いいんじゃない?受けてあげても」

「フェイト母さんまで……」

 

お兄ちゃんは極端に戦うことを嫌う。私とのスパーだってこれでもかってごねたりおねだりしないとやってくれないぐらいだ。

フェイトママに言われるとは思っていなかったのかお兄ちゃんは少し悩んでいる。

 

「リネス、君だって負けっぱなしは嫌だろう?男なら逃げずに受けてくれ、それとも負けるのが嫌なのか?」

「……分かったよ。やろう、彼女の前でかっこ悪い姿晒してやるから覚悟しとけよ」

 

彼女、そう言うとエリオさんの隣にいるキャロさんはギュッとフリードを抱き締めて顔を赤くしていた。いいなぁ、と思う。

 

「これは良い機会ですね」

「何がですか?」

「ヴィヴィオさんはリネスの戦闘スタイルをご存知ですか?」

「……いえ」

 

そう私はお兄ちゃんの魔法の腕もその実力も殆ど知らない。今思えばお兄ちゃんはそれを隠そうとしていた。

何故だろう、と疑問に思う前にアインハルトさんは言葉を続ける。

 

「私もリネスの本気は見た事はないんですが知識としてはあります。恐らくそれは使わないでしょうが実力の一端は見ることが出来ると思いますよ」

 

何故かアインハルトさんがドヤ顔をしていた。少しウザイ。

エリオさんは決して弱くない。寧ろストライカーとは言わずとも準ストライカー級の実力は持っている。そんな第一線で活躍している管理局の魔導師相手をアインハルトさんの言葉通り受け取るならば倒すのだとさも当然のように言い切った。

 

遠い。

今近くにいるはずなのにお兄ちゃんが遠くに居るような。

私全然お兄ちゃんの事知らない。

それがとてつもなく嫌だった。

 

 

 

 

 

 

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