七彩物語   作:セブン

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いつも間に合わない

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俺はいつも遅い。

大切なものに気が付くのも、誰かを助けるために動き出すのも何もかも。俺はいつも間に合わない。

手が届かないのがまるでお前の運命なのだと嘲笑うかのように俺がその手で掴もうとするものを全てに俺は手が届かない。

 

 

俺は聖王だ。1つの国を納める最高責任者、民を導き守る者。所詮はお飾りの聖王だが民達は何かと俺を気に掛けてくれていたと思う。何せ俺と妹が城下町を歩いていると目線が何やら微笑ましいものを見るような目で見てくるのだから。

彼らは俺達を何かと気遣ってくれていた。正直感謝していた。味方が少ない俺と妹にとって民がそのように接してくれるのは数少ない心の支えでもあった。その構図は聖王家の腐った野郎どもの思惑通りだっただろう。それでも何気ない言葉や気遣いというのは心地良いものであった。

だから俺はそれに報いた。この力が誰かの、オリヴィエ以外の役にもたてれるのならと。

 

だが結局俺は国を捨てた。

全ては妹、オリヴィエの為に。

 

俺の力は自惚れでも何でもなくベルカで最強だった。俺を止めれるヤツなんていない。常勝無敗の天下無双。

俺が天下を統一するのは時間の問題。

だがそれがいけなかった。だからこそ彼らはその引き金を引く事が出来た。

ロストロギアの引き金を。

 

禁忌の兵器。

それは生物兵器であったり無差別殺人兵器であったり様々だ。技術や仕組みなんてものは完全なブラックボックスでそんなものを誰もが制御出来るはずもない。それでも国の王達にはプライドがあった。やられるのならお前も道連れだと、次々と引かれる禁忌の引き金。

戦場はもはや混沌と化しベルカの大地は腐敗し荒れ果てた。もはや緑も水も何もかも枯れ果て腐った大地。

 

俺はロストロギアの脅威を食い止める為に駆け回った。気に食わない大臣からの命令でもあったがこの美しい我が国が朽ち果てさせる訳にはいかない。此処には家族が、妹が、その妹が愛した民がいるのだから。しかしいくら俺の力が絶対的であっても俺だって人間だ。疲労も溜まるし魔力にも限界がある。遅かれ早かれ破綻するのは目に見えていた。それでも俺は足掻き続けた、俺には守るべきものがある。所詮それしか能がないのが俺だ、喜んで平和の礎になろう。

限界まで身を削り僅かな休息を経てすぐに国を出る。妹は辞めてくれと懇願するが俺は止まらなかった。

俺は俺にしか出来ない事をやる。やっとの思いで何個かのロストロギアを食い止めた時魔力が枯渇し意識が朦朧とする中、気が付けば俺は見た事のある魔導師達に囲まれた。

 

俺の国の魔導師だった。

なんて酷い奴らだ。使い潰すだけ使い潰して俺を斬り捨てるのか。あのクソハゲ大臣、私兵の全部こっちに仕向けやがったな。数は実に数千といったところか。

正直立っているのもギリギリだ。

それでも俺は止まれないしまだ死ねない。だってそれじゃオリヴィエが悲しむから。せめて、せめてオリヴィエが生きていけるようにロストロギアだけでも滅ぼさなければ死んでも死にきれない。

既に感覚が無くなりつつある右手で片方の刃が欠けた己の得物であるダブルセイバーを構える。魔力はすっからかんで剣はもう使えて後数回、鎧も何度発動出来るか分からない。

 

やれるか?

いややるしかない。

 

踏み込もうとした時、突然周りの魔導師達は吹き飛んだ。俺を囲うように現れたのは見知った奴ら。

俺のピンチに駆け付けてくれたのがクラウスにヴェルフリット、雷帝だった。俺が唯一友だと認めた者達。

俺は聞いた。なぜ来たのだと。

彼らは答えた。友のピンチに駆け付けるのに理由なんて必要ないだろうと。

 

バカだろうお前ら。

お前にだけは言われたくないな。

 

代表するようにクラウスがそう答えた。そうだ、コイツらはそういやこんなどうしようもない馬鹿共だった。これなら何とかやれそうだ。

 

オリヴィエが〝ゆりかご〟に乗ろうとしている。だから僕達は君を迎えに来た。

なんだって?

 

馬鹿正直なクラウスが嘘を言う筈がない。

確かにゆりかごは強力な兵器だ。このロストロギアで荒れ果てたベルカの大地を取り戻せるかも知れない。だがゆりかごには致命的な欠点がある。

1つ目は聖王たる人物が玉座に座りコアとならなければ動かない事。

2つ目はコアとなった者の寿命を大きく削る事だ。

 

止めなければならない。

だが幾らクラウス達がいたとしてもこのままでは間に合わない。負けはしないだろう。だがこの数千の兵は俺達の足止めをするには充分過ぎた。それに何人か達人級のもいる、単体でクラウス達に迫る実力があるそいつらが俺達をまんまと通すとは考え辛い。

俺が万全の状態なら何とかなっただろう。しかし俺は既に満身創痍、足でまといもいい所だ。

 

どうする?

何か方法はないのか。

 

焦る俺にヴェルフリットは言った。

自分が此処に残り足止めをするから皆はオリヴィエの元に行ってくれと。とっておきがあるだと微笑む彼女。その顔を見なくとも察してしまう。彼女は此処を死地にするつもりだ。

だから俺は言った。

 

「ヴェルフリット」

「なんだい?」

「オリヴィエの為に.......死んでくれ」

 

当然のように友の命よりオリヴィエの命を選んだ自分が憎い。そして何より嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィヴィオがいない。それ自体は問題ない。だが何故皆がここに居るのにヴィヴィオだけいないのか。

いつもなら直ぐに違和感に気が付くのにこの時ばかりは気が抜けていたのか、それともエレミアと出会って心が罪悪感で満たされていたからか気が付かなかったのか。

 

「なのはさん.......」

「.......ごめん私行くね」

「待ってください。気持ちは分かります、けどなのはさんがそんなんじゃコロネ達が心配します。それにその状態で行って冷静な判断が出来るとは思えないです」

 

ギュッと拳を強く握り締め今にも走り出しそうななのはさんを引き止める。

今の感覚は間違いない。森の方で一瞬ヴィヴィオの魔力と他の魔力が膨れ上がったのを感じた。一瞬だった、だからこそ気が付けたのは数人。フェイト母さんを見れば頷き自然にリオ達と接している。

もう一度なのはさんを見ればその顔は少し青く胸のレイジングハートを強く握り締めている。

痛い程分かる。今すぐにでも走っていきたいのだろう。俺だってそうだ。

 

「俺が行きます」

「ごめんね、任せたよ」

 

自分が行きたい。そういう顔をしている。

俺が反対の立場ならとても我慢出来ていないと思う。やはりなのはさんは強い。

俺が行った方が確実で自分が冷静でない自覚もあるのだろう。局員として母親として。色々な気持ちがある中でこうして我慢が出来る事は凄いことだ。

 

「危なくなったら直ぐに帰ってきて」

「言われなくとも。必ず連れて帰る」

 

フェイト母さんからの念話。

ああ、分かっているさ。きっと俺はなのはさんと同じで冷静じゃない。けどなのはさんのように強くない俺はきっとこの場でじっとしていればどうにかなってしまうかも知れない。それをなのはさんとフェイト母さんは分かっているのだろう。

だからこそリスクを犯して心を殺して俺にその役目を譲ってくれ心配する気持ちを押し留めて背中を押してくれる。きっと俺は2人には一生頭が上がらない。

 

 

想いは託された。

だからこそ今回は間に合わせてみせる。

 

そして俺は森へと飛び出した。魔力を足へ回し身体強化、枝から枝へと高速で飛び移る。

森に入って直ぐに大きな魔力の痕跡を察知した。くそ、嫌な予感しかしないぞ。

暫くして辿り着いた場所は木々は倒れ地面にはクレーターが出来ておりただ事出ない事が一瞬で理解出来た。

 

 

 

今俺はいつも以上に冴えている。だからこそその場に潜んでいた何十人という敵からの魔力弾から砲撃を全て一太刀で消し飛ばした。

余波で更に木々がなぎ倒されるが知った事じゃない。不気味な全身フードの魔導師達は俺を取り囲むように現れるが追撃はない。

無駄がない動きに統率が取れた連携、今の攻撃も何一つお互いの攻撃を阻害していなかった。それだけでこの魔導師達が異常なのが分かる。

30人が同時に攻撃してお互いの邪魔をしなかった。1点を狙い済ました攻撃でそれが出来るのは局員として訓練をしている魔導師でも難しい。力技で対処したが今のは肝が冷えたぞ。

 

「ヴィヴィオは何処にやった」

「聖王は筆頭が運んだ。戻るがいい、筆頭はお前の事を待っている」

「俺を待っている?お前らの狙いはヴィヴィオじゃなくて俺なのか?」

「これ以上の問答は無用。早く戻るがいい」

 

一斉にデバイスを向けられる。

過激派だと言うのはもう既に分かっている事だが、だからこそ謎だ。何故聖王を手に入れたのに俺を待っている?奴らは俺の存在を知らないはず。何処かに存在する事は知っていても俺があの聖王だということは過激派には伝わっていない。バレたのか?

いや考えていても仕方がない。

にしても背を向けても奴らが攻撃してこないとなるといよいよ読めない。本当に俺が目的なのか?

 

ならば俺を此処に誘き出す事こそが奴らの狙い?

 

「くそっ!?ふざけんなよ!」

 

まんまと罠に掛かったのか俺は。

理解するのと同時に違和感を覚える。ヴィヴィオをだしにして俺を誘き出したのは何故だ。普通ならなのはさんや局員が来ると考えるはず。

俺の正体がバレているのならあの場で叩かれていただろう。ならば何故。

そもそもなのはさんじゃなく俺が駆け付けるのを予測出来る奴なんて極一部の限られた人で。

 

「.......てめぇ」

「遅かったじゃないか親友。お前の大好きな妹は此処にいるぞ」

「お、お兄ちゃんっ!?」

 

そこに居たのは地に倒れるなのはさん達とヴィヴィオを捕らえていたクソ野郎(親友)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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