東方星神録   作:あんこケース

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新規創界神一発目!


流浪の剣客

幻想郷 人里 とある団子屋

 

華扇「…はぁ……モグモグ…」

 

ここは華扇お気に入りの団子屋、いつもここの団子を袋ごと買い尽くして食べるのが彼女の趣味?と言えるものである。だがいつも団子を食べる時とは違い今日はため息混じりの浮かない表情…

 

華扇「…モグモグ…私は…何者なのでしょう…地底を裏切り…でも地上に馴染めず一人修行と称して引きこもるばかり……」

 

???《そうよ…あなたは裏切り者…裏切り者に居場所なんてない…》

 

華扇「…うるさい…」

 

そして彼女の耳に響いてくる声…再度自らの腕を封印したあとからこんな幻聴が聞こえてくるようになった。それは朝起きたとき、修行の最中、食事中にも華仙に話しかけてくる。さすがの華仙もこれには気が滅入ってしまった。

 

華扇「…はぁ……」

 

???《もし、そこのお方。良くないモノが取りついているでござるよ?》

 

華扇「…へ…?」

 

華扇が幻聴に頭を悩ませていると突然前から話しかけられた。フッと顔を上げて見れば、そこには刀を腰にさした赤い和服の侍が立っていた。

 

華扇「…あなたは?」

 

???《おろ…名乗るほどでもない、ただの流浪の侍でござるよ。それよりも…お主…鬼…でござるか?鬼の仙人とは珍しいでござるのぉ…》

 

華扇「…!?…なぜ…それを…!?」

 

その瞬間華扇は自らを恥じた。最初はこの剣客を「怪しい占い師の親戚」程度に見ていたが、霊夢ですら破れなかった自分の正体を看破したことにより「相当位の高い仙人」まで彼の評価を格上げした。

 

???《おろ…これは失敬。気にしていたでござるか?》

 

華扇「…はい…でも今…彼らの元には戻れません。私は…裏切り者ですから…」

 

???《…裏切り者…でござるか……拙者はそうは見えぬぞ?》

 

華仙「…え…?」

 

???《なぜ今まで良くないモノの言葉に耐えられてきたかを良~く考えてみるでござる。お主にはまだ仲間がおるからではないのか?…いや…戻れないと思っているのはお主だけではござらんか?》

 

華扇「……仲間…?」

 

その剣各の言葉に華扇はぼうっと空を眺めて思い出す。昔仲間だった鬼の四天王達は自分を爪弾きにはしなかった…正体がバレたあとも霊夢は気軽に接してきた…すると隣に腰をおろした剣各が話し出す。

 

???《…そうでござる。お主は自らをどっち付かずのように評価しているようでござるが、拙者と違ってそれは両方の勢力に身を置けるという事ではござらんか?》

 

華扇「……拙者と違って…とは…まさかあなたも?」

 

???《……ずいぶん昔のことでござる…旧友を裏切りその部下達を何百何千と斬り殺した…だがその後…旧友の所は勿論、味方した勢力の所にも拙者の居場所はなかった…幸運にもとある神が拙者を救ってくれたが、拙者は裏切りを悔い…自らを戒めた。これがその証拠でござる》

 

そう言いながら剣各は腰の刀を抜刀して見せた。その刀は刃が峰の方についている不思議な刀だった。だがこれでは戦闘の時、敵を斬ることができなくなっている。

 

それよりも華扇は「とある神」の所で剣各の目付きがどこか泣いているように感じてならなかった。あれは…後悔と懺悔の瞳だ…

 

華扇「…あなた…もしかして…!」

 

???《…さて…拙者の話をしてもつまらんでござろう。お主はどうするつもりでござるか?》

 

《騙されるな!お前になんて居場所はないのだ!》

 

華扇「…うぅぅ!!」

 

剣客の問い掛けに答えようとした華扇だったが幻聴の声がさらに強くなり、ついには華扇も頭を抱えてしまうほどになってしまった。仮にも仙人である彼女をここまで追い詰められるモノとは…?

 

???《…む…!これはいかん!少し失敬!!はっ!!》

 

華扇「…んん!!」

 

すると剣客はなにやら赤い魔法陣を腕に展開し華扇の胸元に叩きつける。幻聴に苦しんでいた華扇は目の前が静かに暗転していくことだけはかろうじて理解できた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華扇「…ん…ん~…はっ!ここは…!?」

 

《あら…ここに来れるなんて…あの剣客の仕業かしら?》

 

華仙の意識が戻るとそこは一面真っ黒な空間だった。そして背後からあの幻聴の声が響く…華仙はすぐに振り向くと……そこには…

 

華扇「…む、昔の…私…?」

 

華扇《ええそう。ずいぶん腑抜けになったじゃない。鬼の四天王の名が泣いてるわよ?》

 

そこにいたのは…今はもうない右手で頭の角を撫でながら愚痴っている昔の自分だった。

 

華扇《…いい加減気づきなさい。裏切り者のには誰も助けてくれないのよ》

 

???《そうではないと思うがの》

 

華扇「…!あなた!どうやって!?…というかこの世界は!?なぜ昔の私がいるの!?あなたは何者なの!?」

 

???《おろろ…お、落ち着くでござる…》

 

再び華仙を誑かそうとした昔華仙だが、華仙の隣に現れたあの剣客に否定される。すると華仙の中に膨れ上がっていた疑問が弾けて剣客に質問をマシンガンの如く浴びせかける。

 

???《…フム…さて…そこの悪霊よ。誰の差し金かは知らぬが…すぐさまこの娘から出ていくでござる》

 

華扇《…そう言って出ていくとでも?》

 

???《……そうか…なら…冥界の創界神として…お主を見逃すことはできぬな…!》

 

華扇「…創界神!?あなたが!?」

 

突然のカミングアウト、確かにただ者ではないと思ってはいたがまさか創界神という華仙と比べたら桁外れの存在だったとは…!

 

???《…おろ…お主…名は?》

 

華扇「…え…茨木 華扇…です…」

 

???《よし!拙者エジットの創界神が一柱、冥界と地竜の神アヌビスと申す!共にこの悪霊を消し去ろうではないか!》

 

そう名乗った剣各…アヌビスは光の粒子になって華扇の身体に入る。すると華扇は身体の奥底から力が漲るような感覚を覚えた…

 

華扇「…今なら…行ける!」

 

華扇《ちぃ!捻り潰してやる!》

 

華扇「《ゲートオープン!界放!!》」

 

 

 

 

華扇「…こちらから行くわ!メインステップ!ゴッドシーカー 冥神官オヴィラを召喚!召喚時効果でデッキを三枚オープンしてその中の創界神アヌビスと赤の天渡/化神を回収!!」

 

先手を取った華扇は神官の格好をした羽毛恐竜を召喚する。そしてめくられたのは…冥界の恐竜人ヴェロキック…冥界の恐竜人プシッタ…創界神アヌビス…!

 

華仙「ヴェロキックとアヌビスを手札に加えて残りは破棄!!ターンエンド!」

 

華扇《…メインステップ!ネクサス、故郷の山に似た山を配置して南蛮武者ハクライを召喚!》

 

対する昔の華扇は背後に大きな山を配置し南蛮甲冑を武竜を召喚した。

 

華扇《ターンエンド!》

 

華扇「…やはり武竜ですか…メインステップ!闇を切り裂く大剣豪!創界神アヌビスを配置!神託によりアヌビスにコアを三個置きます!さらにオヴィラをレベルアップ!」

 

アヌビス《…参る…!》

 

華扇の後ろに先程の赤い和服ではなくエジプト風な甲冑を着たアヌビスが現れる。

 

華扇「アタックステップ!オヴィラでアタック!効果で一枚ドロー!そしてアヌビスの神域を使用!!」

 

アヌビス《こちらの手札が増えるたびコスト4以上の地竜をフル軽減で召喚する!冥界の恐竜人 ヴェロキック!推参!》

 

アヌビスが振るった斬撃が地面を割り、そこから小さな肉食恐竜の竜人が現れる。

 

華扇《ライフで受ける!》

 

そしてオヴィラのアタックを昔の華扇はライフで受けた。

 

華扇「…深追いは禁物です。ターンエンド」

 

華扇《…この…!メインステップ!陀武竜ドローを使用して二枚ドロー!剣武龍ムラマサ・ドラゴンを召喚!そしてバーストセット!!》

 

少し焦りが見える昔の華扇はドローマジックで手札を補充したあと、頭に刀がついたドラゴンを召喚する。そしてソウルコアをムラマサ・ドラゴンに置いた…

 

華扇《アタックステップ!ムラマサ・ドラゴンでアタック!!ソウルバースト!発動!!炎龍刀オニマルの効果でムラマサ・ドラゴンをBPプラス10000!!そしてムラマサ・ドラゴンに直接合体!!》

 

開いたバーストが炎になってムラマサ・ドラゴンの力を底上げする。さらに炎は一振りの刀になりムラマサ・ドラゴンの手に収まった。

 

華扇「…ライフで受けます!」

 

オニマルを振り上げてムラマサ・ドラゴンは華扇のライフを二つ切り捨てた。

 

華扇《ターンエンド!》

 

華扇「…く…さすがに二点同時はキツいですね…メインステップ!バーストセット!!ヴェロキックをレベル2にしてそのままアタック!効果でデッキを三枚オープン!!」

 

華扇はレベルを上げたヴェロキックを攻撃させる。そしてオープンされたのは…アヌビスの冥界神殿…冥界の武者竜人クリョロ…冥界の恐竜人プシッタ

 

華扇「冥界の武者竜人クリョロを回収してアヌビスの神域によりそのまま召喚!!召喚時効果で創界神アヌビスにコア二つを追加します!そしてもう一つのアタック時効果でハクライを破壊!」

 

華扇《…ぐ…ライフで受ける!》

 

ハクライを蹴り飛ばしたヴェロキックが飛び上がり、爪先の鉤爪をライフに叩きつけた。

 

華扇「よし!ターンエンド!」

 

華扇《…ふん…メインステップ!バーストをセットしドラマルを召喚…そして…地獄の炎操る無双竜!戦国龍ソウルドラゴン!!オニマルと合体しレベル3に上がれ!》

 

昔の華扇の上空に出現した炎球からソウルドラゴンを呼び出してムラマサ・ドラゴンが持っていたオニマルをソウルドラゴンに合体させた。

 

華扇「…きた……ソウルドラゴン…!」

 

華扇《アタックステップ!行け!ソウルドラゴン!連刃を使用する!ソウルコアをトラッシュに移動させてソウルドラゴンは可能なら二体でブロックしなければならない!》

 

華扇「クリョロとオヴィラでブロック!フラッシュタイミング!マジック!ロックシュートを使用!!コストはブロックしている二体から確保。トラッシュに地竜が五枚あるのでBP8000以下のスピリット二体を破壊する!」

 

ソウルドラゴンの斬撃による指定を受けたクリョロとオヴィラがブロック態勢に入ったが、斬られる瞬間消滅する。そして華扇が放ったマジックがドラマルとムラマサ・ドラゴンを破壊した。

 

華扇《ぐぅ…オニマルの効果でソウルドラゴンにソウルコアを戻して回復…ターンエンド》

 

アヌビス《…華扇殿!今でござる!》

 

華扇「ええ!ドローステップ……!?…なぜ…このカードが…?」

 

アヌビスの言葉に答えてドローした華扇は驚いた。なぜならそのカードはあの妖怪のキーカードのうちの一枚だったからだ。振り返ってアヌビスに目を向けてもアヌビスはニヤニヤと微笑むだけだった……

 

華扇「…これは後で当人に聞きますか…メインステップ!ブレイヴがあるのでコストを4に!闇より生まれし魔竜!滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ!!これでオニマルは破壊されます!」

 

華扇が呼び出したスピリット、それは紫の切り札としても名高いダークヴルム・ノヴァであった。フィールドに降り立つノヴァが黒い息を吹くとソウルドラゴンのオニマルが煙になって消えてしまった。

 

華扇《…!?なぜだ!それは八雲 紫のカードなはず!?》

 

華扇「…さぁ?そしてもう一体…闇の輝石を率いる恐怖の化身!今その剣は義の名を得る!闇輝石六将 冥恐斬神ディノヴェンジ!!レベル2で召喚!!」

 

アヌビス《これが拙者の生きざま!拙者の信ずる義のために剣を振るう!》

 

アヌビスが腰の刀を居合いの要領で振り抜く。すると華扇の空間に裂け目が生じ、中から黒い鎧に刀を構えた巨大肉食恐竜が咆哮と共に降り立った!

 

華扇「アタックステップ!ディノヴェンジよ!今その力をここに!!アタック時効果でBPプラス5000してBP合計12000まで相手スピリットを破壊する!」

 

華扇《まだだ!バースト発動!!武将転生!ソウルドラゴンを再びレベル3で召喚してフラッシュ効果!!BPプラス5000!!合計18000のソウルドラゴンでブロック!》

 

ディノヴェンジが刀から斬撃を放ってソウルドラゴンをぶったぎったが、武将転生の効果で復活&パワーアップしたソウルドラゴンが槍でディノヴェンジの剣を受け止めた。

 

華扇《こちらのBPは18000!そちらは15000!所詮過去から逃げることはできない!》

 

華扇「…逃げる…?…いえ…逃げていたのは今までの私です!フラッシュタイミング!オフェンシブオーラ!!これでディノヴェンジのBPは20000に!!さらにフィールドとトラッシュに赤のカードが七枚以上あるので闇界放!!相手ライフを一つボイドへ!!」

 

ソウルドラゴンと刀と槍のつばぜり合いになったディノヴェンジに華扇はマジックで力を与える。

 

華扇「今こそ…過去と向かい合い!越えていく!!斬れ!ディノヴェンジ!!」

 

華扇の叫びに呼応するようにパワーアップしたディノヴェンジが槍を弾くと一閃!!再度ソウルドラゴンを真っ二つにして破壊した!!

 

華扇「…ダークヴルム・ノヴァ!!」

 

ディノヴェンジと交代するように飛び上がったダークヴルム・ノヴァが口から紫の炎を放った!

 

華扇《 ぎぃゃぁぁぁぁぁ!!!!

 

バトルが終わった瞬間、目の前が白く光に染まった華扇の耳に聞こえたのはそんな過去の自分の叫びだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

華扇「……は…!…こ、ここは…」

 

アヌビス《おはようでござる》

 

鈴仙「あ!目覚めました?ししょー!華扇さんが目を覚ましました~!」

 

…ツンと鼻につく薬品の香りに華扇としては寝慣れてないベッドの感触…そして鈴仙の存在…これらから華扇は自分が永遠亭のベッドに寝かされていることを把握した。

 

華扇「…あなたが…運んで…?…ふふ…変な夢を見たものね…」

 

アヌビス《夢ではござらんよ。お主と拙者が精神空間でバトルしてる間外の拙者がここに倒れたお主を運んだのでござる。その証拠に…もう幻聴は聞こえんでござろう?》

 

華扇「…え……あ……お手数かけました…」

 

アヌビス《…いやいや……そろそろ入ってきてはどうでござる?…八雲 紫殿?》

 

ベッドから身体を起こして頭を下げた華扇にアヌビスは手を振りながら何もない空間に向かって声をかける。するとそこに裂け目が現れ……

 

紫「…こちらからもお手数おかけしました」

 

アヌビス《…拙者はすこぉぉし彼女の手助けをしただけ…頑張ったのは彼女自身でござるよ…さてここからはおなごの会話…拙者はお邪魔虫でこざろう…ではこれにて御免…》

 

スキマからニュッと現れた紫に会釈してアヌビスは病室を出ていった。すると華扇は懐からカードを紫に投げ渡す。

 

華扇「…そのカード…貴方のでしょう?なぜ私に力を貸した?」

 

紫「………ただ単純に……あなたが心配だったから…では不満?」

 

華扇「…ええ…あなたはそういう妖怪ではない…何か別の理由があるはずです」

 

紫「…以前、私はあなたに言いました…「貴方、こっち側でしょう?」と」

 

その言葉に華扇は少し前、座敷わらし騒動で紫に言われた話を思い出した。己は『天道』を行き、あなた達『妖怪』側ではない…

 

紫「…本当は…「貴方も自分を探しているのでしょう?」と言ったつもりだったけど…」

 

華扇「……貴方も…?」

 

紫「まぁ…私…昔は人間だったから」

 

華扇「…へ…ぇぇぇぇぇ!?Σ(Д゚;/)/」

 

あまりにも唐突に…しかもサラッととんでもないことをぶっちゃけた紫に華扇はベッドの上でひっくり返りそうになった。

 

紫「…そこまで驚く?」

 

華扇「あ、あ、当たり前です!」

 

紫「うふふ…私も昔、あなたみたいに『人間』と『妖怪』の価値観の差に苦悩した身…だから手を貸したくなっちゃうのよ……ねぇ…華扇…答えは見つかった?」

 

どこか明後日の方向を見ながらぼやいた紫は視線を華扇に戻す。その目は何時にもまして真剣な感情がこもっている。華扇もキッと姿勢を正して返答した。

 

華扇「…はい…私は…鬼の仙人、茨木 華扇…!鬼の私も仙人の私も…私です!」

 

紫「……まったく…まぁ私もそれに気づくまでずいぶんかかったけど……」

 

華扇のはっきりとした返答に紫は昔の自分を重ね合わせながら微笑む。まるで「手のかかる子供がようやく巣立った」ような…そんな顔…

 

紫「…そうだ…ようやくこの言葉を何の気がねも無しに言えるわね…鬼の仙人、茨木 華扇…改めて…

 

 

 

幻想郷へようこそ

 

 

 

 




はい。ありがとうございました。

背景世界のアヌビスのその後っぽいことを妄想したらこのキャラに行き着きました。

アヌビス

エジット所属の地竜の創界神。性格は温厚で優しく、少し抜けている。だが敵と認識すれば凄まじい目付きへと変わる。神世界一の剣各で、カグツチとは剣士としてのライバル。昔、仲間を裏切って数々の命を奪ったことから己を恥じて『不殺』を誓い、人のため世界のために尽力している。今現在ではホルスやインディーダの創界神との仲は良好…ホルス曰く《あの時はお互い若かった》


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