東方星神録   作:あんこケース

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ここから『萃夢想』に入りますが、あまり長くはならないです。あとこの回は公式の背景世界とずれるような設定がありますので、ご注意ください。


最終第三章 ~高御産巣日神の影~
第7の原初神


長かった冬も、短いながら盛大だった春も、幻想郷から過ぎ去ろうとしていた。

 

あれほど山を薄紫色に染めていた桜はなりを潜め、既に深い緑に包まれていたが・・・

 

人間、妖怪、その他諸々が集まるお花見だけは、未だ繰り返されていた。

 

そのお花見は、幻想郷の少女を集めるだけではとどまらなかった。

 

宴会を行う度に、幻想郷に得体の知れない不穏な妖気が高まっていたのだった。

 

――だが、妖気は高まる一方だったが、まだ何も起きていない。

 

犯人は、動機は、全てが判らない。その目的すら判らなかった。

 

妖気が高まろうと、誰一人、繰り返される宴会を止めようとしない。

 

こうなると、宴会に来る人間、妖怪、全員が怪しく見えるのも仕方がないだろう。

 

次の宴会まであと3日しかない。

 

再び発生した妖気の高まり…だが今回はお花見でなくとも人と神が集まった。

 

『博霊の巫女、異変により重症』

 

そして神社に現れるは小さな百鬼夜行、迎え撃つは……?

 

 

pixiv大百科 『東方萃夢想』より前半抜粋

 

 

 

 

博霊神社 寝室

 

霊夢「………」

 

弾「…スコル、容態は?」

 

スコル《…今んとこは大丈夫だ。ちったぁ寝とけば命に別状はない…たぶんゼウスがうまくダメージを軽減してくれたんだろ。だが問題なのは…変な『気』がまとわりついてることだな…》

 

紫「弾、みんな集まったわよ」

 

弾は寝かされた霊夢の枕元に座って医者のスコル・スピアに容態を尋ねる。脳内に帰って来た答えにひとまず弾は安心していると、スキマを開いて紫が部屋に入ってきた。

 

弾「…わかった。すぐ行く…怪我…大丈夫なのか?」

 

紫「ええ♪これぞ愛の力」

 

霊夢「……ん…お…か…あさ…ん……

 

弾「ん!?」

 

紫の言葉につられて(なのかは不明だが)眠った霊夢は何か言葉を発する。驚いた弾が霊夢に視線を戻すと、どうやら寝言で言っていたようである。

 

紫「…霊夢の母親…先代の博麗巫女博麗 霊奈はね…まだ霊夢が幼い頃、妖怪退治に行って行方不明になったのよ…」

 

弾「…確か…捨て子だった霊夢を拾ったから義理なんだっけ…どんな女性だったんだ?」

 

紫「はっきり言って…『一番巫女らしくない巫女』だったわね。聖 白蓮のように「真の人と妖怪の共存」を信条としていたわ」

 

弾の問い掛けに紫は背を向け、スキマを開いたまま呟くように答えた。

 

弾「…優しい女性だったんだろうな…」

 

紫「…ええ…でも幻想郷…人と妖怪の共存を阻む敵には容赦なく鉄槌を下していったことも印象深いわね…霊夢と違ってほぼ拳で戦っていたからかしら…?」

 

弾「…ず、ずいぶんパワフルだな…」

 

紫「…あれに幽々子や萃香も怖がってたわ……まぁ私もだけど」

 

弾は今の紫の顔色を伺うことはできないが、雰囲気で紫の顔がひきつっているだろうと感じた。そんな昔話を紫から聞いていた弾は少し躊躇しながらもはっきりと、ストレートに紫に気になっていたことを尋ねた。

 

弾「…それで行方不明ってことは…死体も見つかってないのか?」

 

紫「妖怪に食べられると骨も残らないのよ……」

 

紫は振り返るとそこで言葉をやめる。何千年と生きていれば辛い経験も数えきれないほどあるのだろう…幻想郷のそんな妖怪達と接してきた弾はそう察し、それ以上追及せずに部屋を出た。

 

 

 

 

博霊神社 定例会用の一室

 

 

妖夢「不覚…敵に操られるとは……!!不肖、魂魄 妖夢!今ここで」

 

咲夜「ハイハイ、あんたの切腹なんて誰も得しないわよ。本当に申し訳ないならこれからの活躍で挽回しなさい」

 

妖夢「…みょん……」

 

いつもは定例会で使われる部屋に、魔理沙達幻想郷メンバーと創界神達が集結していた。妖夢の切腹問答を咲夜が軽くたしなめていると、紫と弾が部屋に到着した。

 

紫「待たせたわね。それでは始めましょう」

 

弾「…さて…一応確認すると…先日の異変で敵の目的と正体、そして動機も判明した」

 

カグツチ《…原初神ねぇ…ゼウスやヘラは知ってる?》

 

ゼウス《『原初神』は儂らが生まれる前、世界を支配していた七人の神々のことだ。単純な力は普通の創界神とは比べ物にならん》

 

アプロディーテ《…ええ…その当時七人の原初神は世界をほしいままに支配してて、彼ら以外の命にはほとんど力を与えなかった。だから世界はひどく荒れ果て、貧しさ故犯罪に手を染める者が溢れかえっていたわ…》

 

弾が紫から聞いたことを全員に共有すると、古株のゼウスとヘラ、アプロディーテが原初神について知っていることを話してくれた。

 

幽々子「…酷い…」

 

ペルセポネ《神の風上にも置けない連中ですね…!》

 

ヘラ《でも…数十億年前にうちらの連合軍が一神を除いた六神全員を倒したはずなんやけどなぁ…》

 

レミリア「…『一神を除いた』…ということはまだ一柱残っているの?」

 

紫「…そういえば…テテュスも『裏切り者』がどうとか言ってたわね…」

 

ヘラ《…原初神は傲慢やったから…自分達のことしか考えんのよ。でも唯一その考えに異を唱えた原初神がいたわ…それが生命の神タカミムスビさんや》

 

原初神の蛮行に憤る一同の隣でレミリアの質問に、ヘラはどこか懐かしむような表情で語った。すると『タカミムスビ』の名前に若い創界神達も反応した。

 

アレックス《え!?タカミムスビさんも原初神だったんですか!?》

 

ロロ《…なるほど…ならあれほど強いのも納得できる…》

 

アリス「…ごめんなさい…誰?」

 

妖夢「…初めて聞くお名前です…アマハラっぽい名前ですが…」

 

創界神達とは正反対に幻想郷メンバーはクエスチョンマークを浮かべている。もちろん弾も知らない名前だった。

 

アプロディーテ《まずはアレックスとゼウス=ロロの戦争から話さないといけないわ。ちょっと前にツクヨミとスサノヲがゼウス=ロロに乗り換えたことは話した…はずよ》

 

ペルセポネ《一応、ポセイドンおじ様やアマテラス様がアレックスに味方したけど…それでも戦力的にはアレックスは不利でした。万全な神が少なかったですし…》

 

魔理沙「そこまでは知ってるぜ!な!そのあとどうなったんだよ?」

 

魔理沙が身を乗り出して創界神達に尋ねる。だが一同気になっているのか、魔理沙を咎めるより創界神達が次話す内容に注意が向けられていた。

 

カグツチ《実はね…創界大戦時に崩れた『エジット』のオシリス、イシス、セト、ラー…あ、創界神が力を失うことを『崩れる』って言うんだけど…崩れた彼らに力を与えてアレックスサイドについて貰った…んだよね?》

 

アレックス《はい、その時に生命力を分け与えたのがタカミムスビさんなんです。崩れた創界神をまた創界神にするなんて普通の創界神じゃできませんけど…》

 

アプロディーテ《…そしてタカミムスビさん自身も戦場に出陣してツクヨミ、スサノヲを数発の攻撃で叩きのめし、あげくのはてにはゼウスとロロを無理矢理分離させることに成功したわ》

 

ゼウス《…あの弓矢はヤバかった…ツクヨミの式神やスサノヲの龍を軽く蹴散らして儂を追い詰めてきたのう…》

 

ゼウスは当時を思い出して冷や汗をかく。ゼウス=ロロの雷をすべて矢で撃ち落とし、ズンズンと歩いてくる姿はさすがに怖いだろう。

 

ロロ《そして戦後処理になったが、タカミムスビさんはお互い何も求めず、創界大戦前の勢力図に戻ることを提案した。もちろんただ戻すのではなく、平和な関係を続けるよう勢力の間で努力していた》

 

ペルセポネ《クベーラさんにも声をかけてね。そして色々な創界神達に活をいれまくっていたわ…信じられないかもしれないけど当時の創界神ってみんな自分勝手だったからかしら…?》

 

パチュリー「…それと原初神の話に関係性は?」

 

ゼウス=ロロの話と原初神の話に関係を見いだせなかったパチュリーが話を元に戻す。このまま行くとただの思い出話になってしまいそうである。

 

ヘラ《…あ、すまんなぁ…実はタカミムスビさんは原初神達の考えに反発してうちらを率いて離反したんや》

 

ゼウス《戦力はアマハラの三貴子と儂、ヘラ、ポセイドン、デメテル、アプロディーテ、インディーダの『トリムルティ』あと数神が組んで原初神達と戦った。まぁ…原初神の中で一番力があったタカミムスビさんの指揮もあって、儂らは勝利することができたぞ》

 

紫「なるほど…だから裏切り者と呼ばれたのね…そのタカミムスビ様は今どちらに?」

 

魔理沙「…なんだよ。みんな揃って黙っちまって…?」

 

紫の質問に創界神は全員押し黙ってしまう。首をかしげた魔理沙が続きを聞こうとしたその時…!

 

咲夜「…敵襲!壁が吹き飛びます!!」

 

アレックス《…へ?》

 

ばごぉぉぉぉぉぉぉん!!!!

 

『分神』の力で『時間を操る程度の能力』が爆上がった咲夜の目は()()()()()()を見抜くと、全員に警戒を促す。その瞬間部屋の壁が粉々になって床に散らばった。

 

咲夜「…!?…へぇ…あなたも来たのね…」

 

萃香「ニャハハハ!!さぁて…馬神 弾!あんたの首!貰いに来たよ!」

 

壊れた壁の破片を踏み越えて来たのはもちろん伊吹 萃香。だが一同の視線はその隣にいる人物に向けられていた…

 

魔理沙「…魅魔…様…!?」

魅魔「…ったく…魔理沙…さすがに馬神 弾と共謀するなんて…見逃せないねぇ…」

 

魔理沙「…この…よくも魅魔様を……!!」

 

なんと隣に居たのは魅魔だった。弾達全員が驚いていたが、魔理沙の表情はすぐに驚きから怒りへと変化していた…もう魔理沙はミニ八卦炉を握りしめ、いつマスタースパークを放つかわからない。

 

アリス「…魔理沙、こらえて…それで…あなた達は何の用かしら?わざわざ真正面から二人だけで突っ込んできた理由は?」

 

萃香「簡単!ケンカしに来た!」

 

魅魔「…私はその利かん坊(魔理沙)を連れ戻しに来ただけだい。まぁ…どうせ聞かないからバトルで連れて帰るさ」

 

萃香と魅魔の言葉から察すると、今回の襲撃は案外彼らの独断であるようだ。だが当の魔理沙の怒りは収まるどころか、逆にヒートアップしていく…

 

魔理沙「…弾!ここは私がやる…!奴らは…!私の逆鱗に触れた…!!!」

 

アリス「…私も行くわ。なぜか今は負ける気がしないの」

 

弾「……任せる!」

 

ロロ《マナカとケイも取り返してくる!》

 

ヘラ《…鬼…フフ…うちも鬼やで…呪のなぁ…!》

 

弾は気合い十分な魔理沙と珍しく闘志を漲らせたアリスを見て、弾は一言…されど力強く彼らの背中を押した。

 

四人「「「「ゲートオープン!界放!!」」」」

 

 

 

 




はい。ありがとうございました。


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