プレゼントはどうするのか?
6月1日土曜日。
久しぶりに鳥白島にやってきた。さしずめ俺は…。
港に降り立った俺は歩いて鏡子さんの家を目指していた。
『最近蒸し暑くなってきたな…』
まもなく梅雨入りしようかという頃だ。
そんなことを呟いているとふと少し前に見慣れたひとを見つけた。天善と良一だ。
『よう!羽依里、島に来てたのか。』
『鷹原、ずいぶんと久しぶりだな。春休み以来か?』
相変わらずの二人のようだ。
他愛の無い話をしながら歩いているとあっという間に鏡子さんの家についた。
『じゃあまたな!』
二人が歩いて去って行く。
ガラガラッ。
『こんにちわー』
呼びかけても返事はない。
寄り合いにでも出ているのだろうか?
倉庫の方へ行ってみる。
が、鍵がかかっており人がいる気配はなさそうだ。
『仕方ない。そのまま上がらせてもらおう。』
土日だけの滞在なので荷物は少ない。
背負ってきたリュックを部屋に置き、座る。
30分くらい経った頃だろうか。
ガラガラッ。勢い良く玄関が開く。
『あら、羽依里くんもう着いてたの!?』
『ええ、一本前の船に間に合いまして。』
『そうだったの。連絡してくれれば迎えに行ったのに。』
『いや。道にも慣れてますし大丈夫ですよ。』
鏡子さんに最近の近況を報告した。
『お昼はどうする?今はカップうどんしかないんだけど…』
鏡子さんが苦笑いしながら言う。
『外で食べてきますから大丈夫ですよ。』
このやり取りにも慣れてきている。
とは言ったもののどこへ行こうか。
朝食べるのが少し遅かったので実はそんなにお腹が空いているわけではない。
『しろはの居場所もわからないし…』
とりあえずゆっくり歩きながら駄菓子屋を目指していた。
5分くらい歩くと後ろから声をかけられた。
『羽依里。』
振り向くとそこにはスーツケースを持った鴎がいた。
『羽依里も島に来てたんだね。』
『鴎こそ夏休みだけなんじゃないのか?』
『今日はたまたま。お母さんの仕事の用事で一緒について来たの。』
『ってことで〜羽依里、スーツケース押して!』
『歩き疲れちゃった。』
とびっきりの笑顔で言われてしまった。
駄菓子屋までスーツケースを押してくる。
『あれー?羽依里じゃない?いつ来たのよ。』
声をかけてきたのは駄菓子屋でバイト中の蒼だ。
『さっきついたんだよ。』
『最近こっちに来ないからしろは拗ねてたわよ〜。』
『し、仕方ないだろ。忙しくて来れなかったんだ。』
『でもちゃんと連絡は入れてたぞ。』
『そうは言ってもやっぱり寂しいんじゃない?』
『そう言えば来週しろしろ誕生日なんだよね?』
鴎が話に入ってくる。
『えっ?誕生日?』
『…あんた、もしかして知らなかったの?』
『…今知った。』
まさか来週が誕生日とは思ってもなかった。
何かプレゼントを用意しないとな。
と思ったものの…
『…何をあげたらいいんだ。』
『気持ちがこもってれば何でもいいんじゃないかな?』
『鴎の言うとおりじゃない?』
『そうだな…。蒼、通販頼めたりするか?』
『あー、最近注文立て込んでて頼んだとしても多分誕生日には間に合わないわよ。』
なんてこった。本島で買いに行くにしても時間がない。
『て言うかあんた島の外から来るんだからケーキ買っていくくらいでいいんじゃない?』
『なんなら手作りとか喜んじゃうかもよ!』
『鴎…俺が作れると思うか?』
『全然。』
『だろ?』
『…羽依里。なら私が手伝ってあげよっか。』
『鴎…いいのか?』
『どうせ時間あるしね。ちょうど来週まで島にいるから。』
『はっ?学校は?』
『それは…教えてあげないよ!じゃん!』
『なんだそれ。』
そんなこんなでしろはへの誕生日プレゼントは鴎が手伝ってくれることになった。
『…でしろしろの好きなものって何?』
『あー、スイカバーとか?』
『既成品じゃん。』
『う〜ん、面白みがないなぁ。』
『スイカバーだけでも喜びそうだけど。』
『羽依里はそんなのでいいの?』
『そりゃ何かしてくれたら嬉しいけどさ。』
そんなやり取りを小一時間続けていた。
『思い付いた!!』
突然鴎が大声を張り上げる。
『スイカバーを使ってケーキを作ったらどうかな!?』
『…スイカバーのケーキ?』
『いわゆるアイスケーキだね!作り方は簡単だから当日作っても間に合うよ!』
『作り方あるのかよ。』
『ううん、ないよ。』
『ないのかよ!!』
『あー、でもそんなに難しい物じゃないから。』
とりあえずレシピは鴎に任せることにした。
鴎と別れていつもの釣り場へやってきた。
『…ヒット!』
魚釣りをしているしろはを見つける。
しろはも俺がいることに気付く。
…がスルーされた。
『…怒ってる…?』
『…怒ってない。』
明らかに機嫌が悪そうだ。
そう言えば蒼が拗ねてたわよなんて言っていた気がする。
『ごめんな。ずっと忙しくて。』
『…知ってる。』
先ほど駄菓子屋で買ったスイカバーを取り出す。
『…っ!?』
『スイカバー入荷してたから買ってきたぞ。』
『そ、そんなので、き、機嫌取ろうとしても、だっ、ダメなんだからねっ。』
効果はバツグンのようだ。
二人で並んで座りスイカバーを食べる。
最近の出来事や忙しくて来れなかったことを話した。
『そう言えばしろは来週…。』
『来週?』
こういうのってサプライズ的な方がいいのだろうか?
ふとそんなことを思い言葉を飲み込む。
『ら、来週もちゃんと来るから!』
『…うん。』
何か疑われるような眼差しを浴びたが気にしないでおこう…。
『じゃあね。』
夕方しろはと別れて帰路につく。
『…スイカバーのケーキって実際どうやって作るんだ…。』
想像もつかない。
6月4日火曜日。
『しかし、手作りとは言えケーキだけってのもなんだかな…。』
少し時間ができたので港近くの商店街を散策する。
『何がいいんだ。』
考えても思いつかないので適当に見て回る。
雑貨屋にやってきた。
最近流行りのものがたくさん置かれている。
『ん?鷹原じゃないか。』
のみきがいた。
『島の外でも水鉄砲背負ってるのか。』
『水鉄砲がなくなるとバランスが取れなくなるからな。』
『それで鷹原は何か買いに来たのか?』
『ああ、しろはの誕生日が土曜日なんだ。』
『プレゼントか…。』
『ラブラブなんだな…。』
のみきが突然赤くなってフリーズした。
下手に言うと余計悪化するだろうからそのままにしておこう。
しばらく他のモノを見ているうちにのみきはいなくなっていた。
『スイカバー型のクッションにスイカバー型のタペストリー…。』
『不思議なものが流行ってるな…。』
『ウケ狙いでスイカバー型クッションでもいいけど。』
結局無難なスイカバーキーホルダーに決めた。
『無難なのか…?』
自分でもよくわからなくなっていた。
そんなこんなで誕生日当日を迎えた…。
6月8日土曜日。
朝一の便で島にやってきた。
今日はしろはの誕生日だ。
『とりあえず鴎を探さなきゃな。』
と思ったがすぐそこにいた。
『おー、羽依里!今日は早いね。』
『しろはの誕生日だし遅刻するわけにも行かないからな。』
『それにいろいろ鴎に任せっきりだ。』
『おあついですなぁ。』
朝からからかわれた。
『とりあえず材料は昨日のうちに買ってあるから、羽依里の所の台所借りれるかな?』
『多分問題無いと思うよ。』
『じゃあ行こっか。』
いつものようにスーツケースに乗った鴎を押して鏡子さんの家まで歩く。
『なんで俺はスーツケース押してるんだ…?』
『細かいことは気にしない気にしない!』
あっという間に鏡子さんの家についた。
『おじゃましまーす。』
『おはようございます。』
『あら、羽依里くん、今日は早いのね。』
『鴎ちゃんもいらっしゃい。』
『ちょっと台所お借りしてもいいですか?』
『ええ、好きに使ってちょうだい。』
『ありがとうございます。』
早速台所に二人で立つ。
『なぁ、鴎。このスイカバーどこに入れてたんだ?
クーラーバッグ持ってないよな?』
『今日のスーツケースはクーラーボックス仕様だよ!』
クーラーボックス仕様のスーツケースとはなんだろう。
そんなことを考える余裕もなく作業は進む。
『羽依里はスイカバーを出して赤と緑のところを切り分けてね。』
『わかった。』
『大きいのは大変だから小さめにするね。』
『スイカバーは四本切ってね。』
切り分けたスイカバーを鴎に渡す。
『今度はスイカバーをすり潰してね。』
赤の部分と緑の部分をそれぞれペースト状に仕上げていく。
『羽依里。早くしないと溶けちゃうよ。』
常温にあるスイカバーは早くも柔らかくなっていた。
『これくらいかな?』
鴎は手際よくスイカバーをステンレス製のケーキ型に流し込んでいく。
『よし、後は冷凍庫で少し凍らせるよ!』
ここまでの作業は20分程だろうか。
『2時間くらい凍らせれば問題無いと思うよ。』
『そう言えばお誕生日会みたいなことするの?』
『そう言えばなんにも考えてなかったな。』
『ええー…。』
『お昼くらいに来てもらったら?』
『そうだな。ちょっと電話してくる。』
電話をしに行く。
『…はい、鳴瀬です。』
『あ、しろは。お昼くらいにうちに来れる?』
『…うん、いいよ。』
やや疑問を抱かれながらも承諾してくれた。
2時間後。
『よし、盛りつけやってくよ!』
かなり張り切っている。
金型から取り出したスイカバーは綺麗なケーキ型をしていた。
『ここからは溶けないように気をつけないとね。』
そう言いながらホイップクリームをスイカバーケーキの上にトッピングしていく。
『羽依里、トッピング乗せて。』
鴎の合図と共にマーベルチョコをトッピングしていく。
『ほい、完成!』
あっという間にスイカバーケーキが出来上がった。
『とりあえず溶けちゃうから冷凍庫に入れとくね!』
そう言いながらスイカバーケーキを冷凍庫に入れる。
『鴎、ありがとな。』
『いいよ、わたしも楽しかったし!』
『しろしろといい感じにイチャついたあとくらいにまた来るね!じゃあねー!』
何かをやり遂げたからなのか満足そうに鴎は帰っていった。
鴎を見送って30分くらい経っただろうか。
ピンポーン。
しろはが来たようだ。
『おじゃまします。』
『あら、しろはちゃんいらっしゃい。ゆっくりしていってね。』
『羽依里くん、ちょっと寄り合いに行ってくるから。』
『わかりました。』
何かしばらくじっと見られていた気がする。気にしないでおこう。
『しろは、誕生日おめでとう。』
言葉をかけながら先日買ったキーホルダーを手渡す。
『あ、ありがとう。』
少し照れくさそうに笑いながら言う。
さっそく開けていた。
『スイカバー型のキーホルダー…。』
『無限に食べられればいいのに…。』
などと言いつつも気に入ってくれたようだ。
そして俺は冷凍庫から鴎と作ったスイカバーケーキを取り出す。
『あとこれ。』
目の前にスイカバーケーキを置く。
『…っ!?スイカバーのケーキ!?』
かなり驚いているようだ。
『これ、羽依里が作ったの?』
『ああ、鴎に手伝ってもらったけどな。』
『…ありがと。なんか嬉しい。』
喜んでもらえたようだ。
二人でスイカバーケーキを食べながらゆっくり過ごす。
『ごちそうさまでした。』
スイカバーの形を変えただけなので味はスイカバーそのままだ。
ホイップクリームがスイカバーの味とマッチしてなかなかイケた。
食べ終わって少し経った頃だろうか。
ピンポーン。
『誰だろう。』
ガラガラッ。
玄関を開けるとそこにはみんながいた。
『しろしろの誕生祝いに来たよ〜!』
鴎に蒼と藍、天善と良一、のみきが来ていた。
『誕生日おめでとう!!』
それぞれが持ってきた誕生日プレゼントをしろはに渡す。
『あ、ありがとう…。』
あまりこういうのには慣れていないようでかなり照れている。
そこがまた可愛かったりする。
少し恥ずかしがっていたがみんなから祝ってもらって楽しんでいるようでもあった。
『羽依里…。ありがとう。』
『いや、しろはが喜んでくれるならそれでいいよ。』
『あら、見せつけてくれちゃって!』
こうしてしろはの誕生日は楽しく過ぎていったのだった。
おしまい
このSSの生い立ち。
そもそもスイカバーケーキを実際に作ったところからお話をイメージしました。
スイカバーケーキはテストで1回、本番2回と計3回作りました。
中でも説明している通りのやり方ですが実際は緑の部分が非常に出しにくいんです(笑)
赤が混ざると緑が薄くなってしまい白っぽくなります。
着色料使ってみたけど違和感アリアリで( ^ω^ ;)
実際のスイカバーケーキはほぼ赤だと思ってくださいw
逆スイカバーがあればワンチャン!?
一応材料・作り方↓
スイカバーケーキ(約10センチくらい)
スイカバー四本
ホイップクリーム
お好みでトッピング
スイカバーを赤と緑に分けます。
どちらもペースト状にしていきます。
(時間をかけ過ぎると溶け過ぎますので注意)
金型に流して凍らせます(約2時間と書いてますがお好みで調節してください)
凍ったら金型から取り出してホイップ、お好みでトッピングをします。
完成ですw
もしご興味ありましたら作ってみて下さいね(笑)
まぁ鴎好きで有名なワタクシでございますので鴎多めのお話となりました(主役なのにしろはごめんよw)
今後もこういったものが出来ればなぁと思います。
ご覧頂きありがとうございました。
(ノ*°▽°)ノルーっ!