人間不信の少年は一匹の白猫と出逢い変わっていく

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妄想100%で書きました


猫と少年

 いつもと変わらない日常

 いつ通りの毎日

 スクランブル交差点は雑踏で溢れかえり

 欺瞞と偽善で溢れ返る世界

 何もかもが平凡で……それはノイズの様に耳に纏わり付く

「どいつもこいつも結局は自分さえ良ければそれで良い……どれだけ綺麗事言った所でそれは保身なんだろ? 嘔吐が出る……」

 彼は桜 優(さくら ゆう) 何処にでも居る普通の少年だ。

 何もかもが空虚

 人と関わりを持つ事に意味を見出せない

 だから自ら耳を塞いだ

 その日もまた、空虚感が身を蝕む程に何もかもが平凡であった

 優は手短に買い物を済ませると自宅へ帰る

 途中の道で捨て猫を見つけた

 それは小柄な雌の白猫だった

 近付いて手を伸ばす、手の匂いを興味津々に嗅いでくる。

 体を寄せてくる、人懐っこい。

 自分が捨てられた事すら気付いていないのだろう

 優はその猫に自分を重ねた

「お前も独りなんだな」

 このままでは衰弱死を待つだけしか出来ないだろう……

 彼は猫を抱え持ち帰ることにした

 優は白猫に白菊(シラギク)と名を付けた

 白菊と共に生きる優の人生は少しずつだが確かに至福の時間を紡いでいた

 しかし、その別れは突然に訪れる

 白菊は生まれつき免疫が弱かった

 そのため、飼い主に心配掛けまいと無理をしていたのだ

 やがて白菊は深い眠りについた

 彼は悲しんだ

「お前も俺を置いて行くのか? いつだって、俺は独りだ……

 こんな悲しみを味わうくらいなら……

 こんな苦しみを味わうくらいなら……

 誰かと共に生きるなんて……」

 泣き疲れて、彼は微睡みに堕ちる

 彼はその日夢を見た

 真っ暗な世界に形の定かではない白い影が立っている

 夢の中で白い影は彼に語りかける

『こうして話すのは初めてだったね、私はあなたに語りかけることは出来なかったから……』

「白菊……なのか?」

『悲しませてごめんね……それでもあなたが悲しむ姿は見たくなくて無理しちゃった』

「……ホントに大馬鹿だよ」

『うん』

「俺は飼い主なんだ、お前が無理してたことくらい知ってたよっ!」

『……うん』

「俺を独りにしないでくれ……」

『貴方は孤独じゃないよ? 例えもう姿が見えなくなっても……私はいつでも貴方の傍に居るから!』

「……」

『こんな私を愛してくれてありがとう。もう悲しまないで良いんだよ?』

「こんなじゃないっ! お前は白菊だ! 俺の……俺の大切な家族だよっ!」

『そうだったね。ありがとう優! 

 ……そろそろ時間だね、またいつか! でも早まるのは無しだからね? しっかり生きて、その後でまた会おうね!』

「お前は狡いよ……うん、その時はきっと……」

 

 彼は目覚め、涙を流している事に気が付く

 昨日の夢を思い出す

「救われたのは俺の方だったよ、ありがとうな」

 彼は今日も平凡な毎日を歩む

 しかしその顔は、前と違い澄んだものになっていた




こんな毒にも薬にもならないへっぽこ小説を最後まで読んで頂きありがとうございます!


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