はぁ~~~~!
……不死鳥のフランメ、最高でした!!
「いよいよですね」
二人が同時に腕を振り上げたところで炎がドカン!となってシルエットになった二人の影が不死鳥の形になってたところはなんていうかこう……感謝しかないっていうか……あーテンション上がっちゃいますーー!!
「……(落涙ッ!?)」
はッ!?
い、いけません……感動しすぎて涙腺がゆるゆるになっていました……
女の涙は軽々しく人前にさらしてはならないとドラマで言っていたのに!!
「イノエラ……あなた、まさかとは思いますが……」
! な、なんでしょうか……
「今日マリアがステージに立っている理由を忘れているわけではありませんよね……?」
……いやいや、そんな、さすがにそれを忘れるわけないじゃないですかぁ!
今日は大事な大事な全世界にわたしたち『フィーネ』の存在を知らしめる宣戦布告の日……
そして、わたしが先生好みの女の子に『成長』する日!
つまりは先生が英雄になるための、神話の幕開けの日なのですから!
……あれ?
「……はぁ」
そうしちゃうと翼様が、あのマントがカッコいいシンフォギアを纏ったマリア様を迎え撃つために同じくシンフォギアを纏って……
た、大変です!
「待ちなさいッ!」
はぅッ!
「外出は許可できません」
……うぅ、いや、でも
「そんな顔をしても駄目です。あなたの身に万が一のことがあれば我々の、マリアの頑張りの全てが無駄になってしまうのですよ?」
! それはダメです!
「イノエラ、あなたには別に大事な役目があるのをお忘れですか?」
いーえ、忘れてなどいません!先生から仰せつかっている私の大事な大事な役目。
そう……わたしの役目は――
「『フロンティアの起動』……理解しているのなら、いいでしょう」
お船の舵を切るジェスチャーで、教授に意思を伝えました。
そーれ、おもかじいっぱーい!…ってやつです。
いつか機会があれば、本物でやってみたいですね。
ぐるぐるするの絶対楽しいです!
「……イノエラ?」
おっと、つい我を忘れてしまいました……。
こくり、と教授に頷きます。
「よろしい」
そうです。マリアさんの今までの努力を無駄にするなんて、死んでもできません!
ここは我慢の子。ここでしっかりマリアさんと翼様の戦い、歌のぶつかり合いを見守るのです。
……うぅ、できればもっと間近で観たかったです……けど……
「そろそろですか……二人とも!」
「デェス!」
「…はい」
切歌ちゃんと調ちゃん。
今日のお二人は、マリアさんのお手伝い。
なんだか気合が漲っていますね!頼もしいです!
「……それじゃあマム!行ってくるデス!」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
あ、はい!お二人とも
「!」
行ってらっしゃいませ!
「……(ぺこり)」
「……(ぺこり)」
……あぁ。
今日も、手を降るわたしに、二人は何も言ってくれませんでした。
いいんです。
しょうがないですよね。
お二人がわたしを仲間と認めてくれるはずないですもん。
だってわたしは
《私は、私たちは『フィーネ』!――終わりの名を持つ者だ!》
マリアさんの妹さんを死なせてしまったんですから。
「流石はフィーネ。アメノハバキリの特性を完全に理解した搦め手の数々……クク、いい戦闘データが取れそうだぁ」
強奪した完全聖遺物、『ソロモンの杖』より繰り出したノイズによりライブ会場を封鎖した後。
僕は物陰より我らが新生フィーネ、黒のガングニールのシンフォギアを纏いしマリアと、アメノハバキリのシンフォギアを纏いしサキモリこと風鳴翼の戦闘を観察していた。
「私を前に、気を取られるとはッ!!」
む!
「……アメノハバキリの機能制限限定解除、それによるギアの出力亢進の影響でしょうか」
『LiNKER』切れにしては随分と早い……押されはじめましたよ?……もしや
「ナスターシャ教授。フォニックゲインの塩梅はどうですか?」
《現在22%……イノエラに変化は見られません》
「了解しました。そちらも引き続きよろしくお願いします」
ナスターシャへの通信を切る。
「やれやれ、どうやらウチの女神さまを満足させるには、まだまだ盛り上がりに欠けているようだ」
さーて、あの子が喜びそうな演出はどうしよっかなーっと……おや?
「――やめようよこんな戦い!今日出会った私たちが争う理由なんて無いよ!!」
「!!――そんな綺麗言を…ッ!!」
「……えぇ?」
「綺麗言で戦うヤツの言うことなんか……信じられるものかデスッ!!」
「ブフッ!……ックククク」
ちょっとちょっとォ、いつからここはコント会場になったんですかぁ?
仕事中に笑わせないでほしいんだけどなぁ。
「……そんな!話せば理解りあえるよ!戦う必要なんか」
「偽善者」
「!!」
おいおい……
「この世には……あなたのような偽善者が多すぎる!」
あーあ、マジで言っちゃってるよあのジャリン子。
安直だなぁ、偽善とかなんとか。全くくだらない……
真にこの世に存在するのは『英雄』と、『英雄を英雄たらしめるための有象無象』だけだっていうのに!
「痛みを知らないあなたに……誰かのためになんて、言ってほしくない!!」
ぶっははは!ちょっとぉ!あの子笑いの神様に愛されちゃってます!?
知らないって悲しいよなぁ。そのセリフを他でもない、立花響にほざいちゃうんだもんなぁ!
《聞こえますかドクター》
おっと、ナスターシャからだ
《最終手段です。例の増殖分裂タイプを》
「はーい」
なんだ、装者が六人揃ってもこんなもんですか。
「存外、判定が厳しいなぁ。ツヴァイウイングのライブ映像を見せすぎましたか。耳が肥えてしまったのならしょうがない」
『ソロモンの杖』を起動。
「さーて、ド派手なパーティーとしゃれこみましょうかァ!」
「三人とも退きなさい!」
《……わかったわ》
……うぅ、こんなこんなはずじゃなかったのに……なんでこんなことに……
「気落ちする必要はありませんよイノエラ。『ヒト』の気持ちに嘘はつけません」
で、でも教授……
「むしろ中途半端に励起してしまう方が問題なのです。まだチャンスはあります。三人の帰投を共に待ちましょう」
い、いいんでしょうか……それで、それで先生はわたしを許してくれるでしょうか!?
「……ドクターのことでしょうか?」
頷く。
「許しますよ。今までに一度でも、彼が貴女の気持ちを傷つけたことがありましたか?」
……でも、でもぉ……!
「あなたこそ彼を信じるのです。それが、ヒトとヒトが理解りあうのに大切なことなのですから」
う、うぅ……うぅ……
「(なんと繊細な……こんなにも純粋な感情を持つ少女を、私たちは、これから……)」
だめ、これじゃ教授の膝を涙で濡らしてしまいます。
でも、でも先生の期待に応えられないわたしは、わたしは……
どうして、生きていられるというんでしょう。
《――Gatrandis babel ziggurat edenal……》
「!!」
この……この『歌』は!!
「な……! ここで絶唱……だとッ!?」
――コセ
あ……え?
なに、なんでしょう
わたし、わたしの中でなにか……
『―――ヨコセ』
……あなたは、だ……れ……?
「!! イノエラ!
これは一体……まさか装者三人による同時絶唱のフォニックゲイン、それによる――」
『ナマエワカラナイ』
あ……じゃあ、あの、光ってるので「ピカピカちゃん」って呼んでも、いいですか?
『イイゾ』
ありがとうございます!
『オマエハナンダ』
はい!イノエラといいます!よろしくお願いしますねピカピカちゃん!
あ、それで、さっきのよこせっていうのは……
『タリナイ』
はい?
『タリナイタリナイ ナニカガタリナイ カラッポハイヤダ』
……空っぽって、何がですか?
『ココ カラダノマンナカ ココカラッポハ タエラレナイ』
あ、もしかしてお腹が空いてるんですか?
『ソレダ タリナイイヤダ タベタイ』
あれって……え、もしかして、翼様を!?
『チガウ アノ モッテルヤツ』
い、いやいやダメですよ!
どんなにお腹が空いてても刃物はさすがに……あ、でもいいのかな?
あれって確か、アメノハバキリっていう聖遺物なんだし。
「聖遺物は食べられるものだ」って先生も仰ってましたし!
翼様には申し訳ないけど、翼様が歌うのに絶対必要なものじゃないらしいし……じゃああげます!
『ホントカ』
はい!
『ジャアソッチイッテモイイカ』
いいですよー!
『ソウカ』
さー、いらっしゃ……
『イタダキマス』
え?
あぁ
目の前が、真っ白になって
せん、せ―――
「ただいま戻りました」
ジャリン子の薄っぺらい言葉にモロに影響されて泣いちゃった立花響も観察し終え、ナスターシャとあの子の待つところへと帰り、すぐさまフォニックゲインを計測していた管制モニターへと、目を移す。
《COMPLETE》
「うへッ」
おっとぉ、つい笑みが零れてしまいました。
いけないいけない。僕は嬉しくなるとつい感情を抑えられなくなってしまうところがありますからね。
デキる英雄はポーカーみたいな心理戦も上手でないといけないってのに。
「お帰りなさい。ご苦労様でしたドクター」
「作戦成功、素晴らしい結果ですねナスターシャ教授」
「えぇ、まずは第一段階をクリア。ここから忙しくなりますね」
「はぁい……フフッ」
そうだ、忘れないうちにこれをあの子に……
「………!!」
「おぉっとぉ!!」
ほーら来た!まったくお転婆な女神さまですよ全く……
「…!…!!」
犬っころみたいににこにこしながら僕に抱き着くイノエラ。
かわいいですねぇ。ホントにあの気色悪いネフィリムが中にいるのか不思議でしょうがな……
「おや?」
よく見ると、なんだか犬歯が妙に長いですね……これはつまり!
「イノエラ」
「?」
懐の包み袋から取り出したるは、今日僕がぶっ壊した研究所でかっぱらってきた何かの聖遺物。
「ちょっとしたお土産です。とっても
そう言うと、イノエラはぱぁっと目を輝かせて、
その聖遺物にかぶりついた。
「クッククク……」
やった!やったぞぉ!!
聖遺物に喰われるのではない、聖遺物を喰らう超存在!!
イノエラは今日を以って!
真の融合症例であると証明された!!
「アーーーハッハッハッハッハ!!」
「ネフィリム……すべての聖遺物を喰らい糧とする、自立型の完全聖遺物。『ヒト』がそれを身に宿した結果が……この……うぅ」
「おやナスターシャ、『人』って誰のことを言ってるんです?」
「!!」
「この子はねぇ……女神なんですよ」
紛れもなく。一点の曇りもない。
「人を超えた存在。この星で唯一の、
喰らえ、喰らえ。
有象無象を。
僕の夢を阻む全てを。
その牙で、砕き喰らえ。