あなたを愛してるって、伝えたかった   作:ポロシカマン

22 / 25
想いは疑うことすら奪うのだと伝えたかった

 

 

 

「――ッ!!」

 

 一瞬の出来事だった。

 ネフィルちゃんが背後に現れた――その気配に反射した私の脊髄が、咄嗟に両腕を交差させる。

 

 が、 

 

「立花ァッ!!」

 

 鮮血。

 真っ赤な、目に焼け付く程に真っ赤な血液が、ネフィルちゃんの真っ白の鎧を斑に着する。

 

「―――ッぐぅッッ!!」

 

 砕けた左腕のギアだったものが、私の目の前で散り広がる。

叫びだすのをこらえ、後退。

抱えられるように、クリスちゃんの腕の中に納まる。

 

「お前……血がッ!!」

「……大、丈夫」

「大丈夫なもんかよッ!」

 

 クリスちゃん怒る。

 優しい声で怒る。

 

「へいき」

 

 ダメだなぁわたし……

 

「へっちゃらだから……!」

 

 また、心配かけちゃった。

 

「雪音ッ!」

「わかってる!……借りんぞ!」

「うあぁちょっ、おぉ!?」

 

 クリスちゃんを滴るとので汚さないように抑えていた左腕から右手をどかされる。そして間髪入れずに、わたしのギアのマフラーのさきっちょを千切ったクリスちゃんは、包帯代わりにそれを傷口に巻き付けてくれた。

 

「……ッ」

 

 痛みを殺す。

 

「ッし、こんなもんだな!」

「たたた……って、おぉお!

なんで!?全然痛くなくなっちゃったよ!?」

「ったりめーだ!そういう風に縛ったんだからよ」

「すっっごいクリスちゃん!

将来はお医者さんかなぁ!?」 

「フンッ!!」

「ぎゃーーーッ!?」

「軽口叩く余裕があんなら、問題ねーな!」

「はいぃ……」

 

 およよ……クリスちゃんったら厳しいなぁ……

 

「……手は動くか?」

「んー……うん!問題なし!!」

 

 でも、ちょっと嬉しかったり。

 こーゆうの、『友達』って感じでいいよね!!

 

「ありがと!!クリスちゃん!!」

「……ふん」

 

 指も動く。

 ちょっと痛いのを我慢すれば、きちんと拳を握れる。

 ――まだ、戦える!!

 

『な……』

「!」

 

 今、ネフィルちゃんが何か言おうとしたような……

 

『(……なぜ、立花響の腕に裂傷が?

まさか、このいつの間にか伸びている腕の剣で…?

いや!私は確かにこの()を彼女にぶつけようとしたはず……!!)』

「てめぇ……『正々堂々』って言ってた割には随分と狡いじゃねえか」

『待て!今のは私にもよく――』

「ネフィルッ!!」

 

 !……ウェル博士!!

 

「何をボケっとしているんですか!!

 もうおしゃべりの時間は終わりですよ!!」

『待ってくれウェル!何か、私の体にいじょ――』

 

 ネフィルちゃんが何かを言い終わる前に、博士がノイズを召喚する。

 

「この決闘……無論この僕も

参加させていただきますよ!」

「てんめぇ……

いい加減その杖を放しやがれッ!」

「嫌だねッ!!……フン!!」

 

 博士が大きく腕を振る。

緑の光と共に、再びノイズの大部隊が出現する。

 

「征けェエエッ!『英雄部隊』ッ!!

さぁ決闘のお時間ですッ!!」

 

 一斉に襲い掛かるノイズたち。

拳と剣閃と弾丸がそれらを炭と散らしながら、夜闇に歌声を響かせる。

 

「♪――結局それかッ!!

ノイズに戦わせといて何が決闘だよッ!」

「♪――こうなるとは思っていたが、

もはや尋常とは程遠いな……!」

「オマケは僕が相手しますッ!

君は立花響に専念なさい!!」

『……助かる!』

 

 腕から伸びていた金色の剣がしゅるしゅると収納され、代わりに、ネフィルちゃんの拳がわたしに目掛けて飛んでくる。

 

『(そうだ……今私がすべきなのは

立花響と決着を着けることだけ!!)』

 

 一閃、二閃。

 避け、受け流し、カウンターを入れる隙を探りつつ、巨体となったネフィルちゃんの懐へと近づく。

 

「♪―――

(やっぱり速い……ッ!!

でも、まだ目で追える!!)」

 

 懐に、入った。

 

「(ここッ!!)」

 

 しかし

 

 

「……ふひッ」

 

 

 ネフィルちゃんの背後から、脇の下を通って、高速で奔った『何か』がわたしの体を引き裂いた。

 

「――ぐぁああああッ!!」

 

 吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

『(……また、私の知らないものが私の中から勝手に!!)』

 

 顔を上げ、その『何か』を視認する。

 

「………!!」

 

 それは、全身が覚えている激痛と同じ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あれっ、て……!!」

 

 まさか。

 そんなはずはない。

 

 だって、あれは、あの時。

 

 了子さんと、一緒に――

 

 

「嘘だろ……?」

 

 クリスちゃんの声が聞こえる。

 

「雪音……まさかあれは……」

「見間違うものかよ……ッ!!

なんでアイツが纏ってんだ……

"ネフシュタンの鎧"をッ!!」

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 

 

 

 まただ。

 

「――貴様の仕業かッ!!」

「そうですとも!!

 僕のLiNKERは最早人と聖遺物を

結びつけるだけに留まらない!!

 全ての聖遺物を喰らうネフィリム

の特性と合わせ、あらゆる聖遺物の

特性をこのネフィルは再現――」

 

 また、私の意思ではない何かに、私の体が突き動かされた。

 

「じゃあさっきの金ぴかの剣は――」 

「無論、かの聖剣の因子から生成――」

 

 何故だ。

 私の体に、一体何が起こっ

 

 

――引っ張られるように、走らされる。

 

 

 ……またか……!!

 

 

――足が、一人でに持ち上がる。

 

 

 待て!!

 その下には、立花響が!!

 

 

――断頭台の刃のごとく、踵が落とされる。

 

 

「……ッ!!」

 

 

 やめろ

 

 やめてくれ

 

 私がしたいのは、尋常なる決闘だったのに。

 

 人類を護るものを決める聖なるものだったはずなのに。

 

 こんな、こんないたぶる真似は、私の本意ではないのに!!!

 

 

「……ッ!……ッ!!

 ……ぁッ!!」

 

 やめろ!!踏みつけるんじゃない!!

 なぜイノエラの体が言うことを聞ないくれない!!

 

「、、、あ、あ、……ッ!!」

「やめろォおおおお!!!」

 

―――雪音クリスの、私の顔面に狙い放たれた弾丸を、他でもない私の右腕が勝手に防ぎ弾いた。 

 

「……ざけんじゃねぇ!

ざけんじゃねぇちくしょォ!!

あたしの関わった聖遺物がまた……!」

「くひ、ふふふひひひ……」

 

 

 何を、笑っているのだウェル。

 

 私の何が、可笑しいのだ。

 

『……!!』

 

 

 待て……

 

 

『……!……!』

 

 

 これは、なんだ

 

『…………!!!』

 

 声が、出せない……だと!?

 

 

 

 

「(G-LiNKERに含ませた聖遺物の因子は

何もネフシュタンとデュランダルだけ

でなない……)」

 

「(ソロモンの杖……その表面を薄く

削り取って、含ませちゃいましたよ…)」

 

「(おかげで、ほら……文字通り、

この手の杖を介して伝わる

()()()()()、君は動いて

くれるようになった……)」

 

「(必要な知識と経験はもう与え切った!

フロンティア制御に必要な思考回路(プログラム)

すでに完成した以上、最早君たちの意思

など邪魔でしかない!!)」

 

「(君は僕の、僕だけの物……

だから僕が好きにしていいのは当然!!

さぁもうひと頑張りですよネフィル!!

僕の意思で、君を最高の女神に仕上げ

てみせましょう!!)」

 

「ハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 

 

――ウェルの高笑いが響き渡る。

 

 

『……!!!!!』

 

 

 私の声は、聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。