やはり聖杯戦争はよくわからない
嘗て極東の島国でとある儀式が行われた。
儀式は『聖杯召喚』と呼ばれ、特殊な贄を七体呼び出し、その魂を一つの器に収めることで『聖杯』と成すものであった。
しかしそれを得られるのが一人だけだと知った三組の魔術師は、あろうことか、呼び出した贄を使って争い始めた。
これはその歴史。
何時しか『聖杯戦争』と名を変えた、七人の魔術師と英霊の物語。
奇跡を欲するのなら汝、自らの力をもって最強を証明せよ…。
……………………
日本。その首都である東京のベッドタウンの一つである千葉県千葉市のマンションの一室。
そこで高校生の少女が一人、親元を離れて暮らしていた。
彼女の趣味なのだろう、あまり物は置かれていないが一つ一つがよく作り込まれていて、絢爛ではないものの洗練という言葉がよく似合うものばかりだ。
年ごろの少女の部屋にしては可愛いげが足りないかも知れないがそれが彼女の心情を表してもいた。
しかし部屋の一角に他の家具達とは一線を隔す物が一つだけ置かれていた。
それは部屋の中央、本来そこに置いてあった筈のガラス天盤のテーブルは、今は部屋の端に寄せられ、そこには不気味に輝く赤い石板が異様な存在感を放ちながら鎮座していた。
洗練、といえばそれも洗練といえるかもしれない。石に刻まれた紋様や屹立する装飾は周りの家具達にも勝る緻密さだ。けれどそれが異様に見えるのは何故だろう。
それは魔方陣だ。
現代ではめったにお目にかかかれない、本物の魔方陣。
時は真夜中、時計の針が頂点を過ぎた頃。
その魔方陣のそばには二人の女性が立っていた。
部屋の主人であろう少女と、一部を除き少女によく似た容姿をした女性。
二人は赤い石板を挟んで向かい合って立っている、その瞳はお互いを見つめていた。
けれど二人の間に親密さなど欠片もなく、緊張に満たされた静寂の中で、少女の目は爛々と揺れ、根目つけるように目の前の女性を睨んでいる。
それを見た少女より2、3ばかり年の離れた女性は余裕からかうっすらとその口許に笑みを浮かべている。
すると少女はその右手を手前に差し出した。その手の甲には主従の証である令呪が赤く刻まれている。少女の意思に従うように腕が水平の位置で止まると、令呪もまた輝き始めた。
そして少女は自らが持つ三度だけの命令権を使いこう言い放った。
「令呪でもって命じます、貴方の全霊でもって私に聖杯をもたらしなさい」
次の瞬間令呪はこれまで以上に輝き、その輝きで部屋を満たした後、細やかな雪の結晶と鋭い剣を型どった紋章のその一片を消失しまた元の姿へと戻っていった。
interlude 1-1
「ごめん桜、もう一度言って」
遠坂凛はそう言って現在日本にいる実の妹に再度、説明を促した。
そう言う彼女は現在ロンドンにいる。ロンドンにある魔術教会三大の一つである時計塔で業を研きつつ、自分という魔術師の存在をここ時計塔に、ひいては魔術社会そのものに知らしめるためである。
その予定は一部(金髪)を除いて(巨乳)順調だったのだが、ああ思い出すだけでイライラする。
それもこの電話により終止符がうたれようとしていた。
「解った、ありがと桜。イリヤにもよろしく言っておいて」
そうして妹との国際電話を終えた彼女はケータイを元の持ち主に放り投げこう訪ねた。
「それで、どうする?士郎」
当の本人はあたふたとこれを受け取ると、しっかりと質問は聞いていたようでケータイをポッケにしまうときっぱりとこう告げた。
「決まってる、日本に戻ろう遠坂」
interlude out