fate/Tiba-si night   作:d d

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再度比企谷八幡はその扉を開く

《…で爆発があり、死傷者は…名、原因はガス爆発によるものだという…》

「ガス爆発だって、怖いなー」

朝のニュースを見て小町がそんな事を呟いている。

興味があるとも思えないが受験も控えていることで、ちょっと意識が高くなっているのかもしれない。

「んじゃ、俺出るな」

「あーいよっ」

小町はパンをかじりながらてきとうに返事をする。

一晩寝ても疲れがとれないので今日は早めに家を出た。

春の風に吹かれながらゆっくりのんびりペダルをこぐ。

空は晴れ晴れとしているが、目的地が学校というだけで気分は雨模様だ。

家は英語でホーム、ホームの反対はアウェイ、つまり家以外は全てアウェイだ。帰ってごろごろしたい。

心でそんな悪態をつきつつも俺はえっちらおっちらペダルを漕ぎ続けた。

気がつけば時分は昼休みになっていた。授業中の記憶が全く無い。当てられれていない事を祈るのみだ。

俺は席をたつと購買で昼飯を買い、いつものベストプレースに腰を下ろした。

吹き抜ける潮風が心地よい。

正面ではテニス部の女子が壁を使って練習している。その音をBGMに俺は今日の戦利品を広げた。

「セイバーどれが食いたい?」

中空に呼び掛ける。

しかしセイバーの返事はない。

「セイバー?」

返事はない、ただのご立腹のようだ。

「食べちまうぞ?」

これも応答はなし。

仏の顔も三度まで。宝具にすると三度攻撃されるまで反撃できないマゾ仕様だろう。発動すると相手は死ぬ。

一緒に買ってきたmaxコーヒーのタブを開け、強い甘味のする液体を流し込む。若干喉がヒリヒリするが少女漫画のごとし甘味がそれを吹き飛ばす。痛みも消し飛ばすとは麻薬じみた恐ろしい飲み物である。

それからしばらく風に吹かれながら、テニス部の子の練習を見ていた。

テニスの事はわからないが、一生懸命ボールを追いかける様は可愛らしい。

すると、その子がこちらに歩いてきた。ははーん、これは俺に用と見せかけて違うパターンのやつだな。その手にはかかるまいと周囲を確認するが特に人影は見あたらない。

そしてテニス部の少女は俺の前で立ち止まった。

なんだろう見られるのは恥ずかしいとかだろうか。気持ち悪いとか言われたらマゾ宝具が発動してしまう!

「比企谷君、もうすぐ昼休み終わるけど食べないの?」

はて、時計を確認すると昼休み終了まで残り五分と少しになっていた。

「ごめんね、迷惑かとも思ったんだけど、気になっちゃって」

「そんなこと無いぞ、助かった」

こんな俺にまで気を使ってくれるなんて、この子は天使か何かなのだろう。

「ありがとな…」

と、ここで彼女の名前を知らないことが判明する。向こうは俺のことを知っているようだがどこかであっただろうか?

「もう、比企谷君、僕の名前覚えてないでしょ?」

そう言って天使はその赤らんだ頬をふくれさせる。

はちまんにこうかはばつぐんだ!80000のダメージ!

「戸塚だよ、戸塚彩加」

「あ、ああ覚えた、二度と忘れない」

これはお墓まで持っていくことになりそうだ。むしろ一緒に入ってほしいまである。

「俺は比企谷八幡、八幡と呼んでくれ」

「え?」

しまったいきなり下の名前はやりすぎだったか。

「うん、よろしく八幡!」

しかし目の前にいたのは天使だった。人の世の理が通じないのも頷ける。

はちまんのたいりょくはぜんかいふくした!

 

………………

 

終業のチャイムがなり、ホームルームが始まる。終了とともに俺はケータイを開いた。

そこには平塚先生に送ったメールの返信がある。

《私は用事があるので比企谷君は先に行っていてください》

先生には仲介をしてほしかったのだがそううまくはいかないようだ。

しかしメールしたことで先方にもこちらに戦闘の意思がないことは伝わっただろう。

俺は鞄をもってとある教室へと向かう。

そこは二日目に聖杯戦争について説明を受けた部屋だ。

特別棟に入ると人はまばらになる。

さすがにここで攻撃はしてこないだろうが、警戒を解く方が難しい。

そして目当ての教室までたどり着くとドアの窪みに手をかけ勢いよく開こうとするがどうやら鍵がかかっているようだ。

おかしいな、メールでは先に行っていてとあったのに。

だがまあ雪ノ下もホームルームの途中で抜けられはしないだろうし…。

そこで異変に気がついた。

ドアがいつの間にか消えている。

「!?」

「何あれ?」

そんな声が侮蔑の混じった笑い声ととともに後ろから聞こえてきた。

辺りを見回すとドアは10メートルほど移動したところにあった。

恐らく幻術かなにかだろうが、殺傷目的ではなく俺を辱しめるだけの意地の悪いトラップだった。

俺は本当のドアの前に立つと勢いよくスライドさせた。

そこでは前来たときと同じように、彼女は斜陽を背に本を読んでいた。

俺が足を踏み入れると雪ノ下は本を閉じ声をかけてきた。

「ノックくらいしたらどうかしら、マナー知らず君?」

もはや原型をとどめていない。

「そんなもん必要なかったんじゃないか?」

「ごめんなさい、部屋に来る人全員にかけているトラップなの、貴方が来るのなら外しておくべきだったわね」

「は、こんな部屋にそう人が来るかよ」

俺と雪ノ下はしばし睨み合う。しかし今日はこんな事をしている場合ではないのだ。

「今日はお前に話があるんだ」

「ええ、平塚先生から聞いているわ」

ならはじめから素直に聞け。

「いったいどんな悲話を聞かせてくれるのかしら?」

秘話ではなく悲話を使っているのがその得意気な顔から察せられた。

「おい雪ノ下、俺にだって楽しいことの一つや二つあるぞ」

「例えば?」

「戸塚と話してる時とか、小町と話してる時とか、あと二人のこと考えてる時とか」

「気持ち悪い、生きてて恥ずかしいと思わないの?」

「おい、言い過ぎだぞ、謝れよ俺の両親に!」

「貴方にではないのね…」

俺も今のは流石に自分できもいと思う。

雪ノ下は頭痛でもするのかこめかみを押さえてため息をつく。

また話がそれてしまった。こいつと話しているとどうも明後日の方に行ってしまう。

「率直に言うが、雪ノ下、お前俺と手を…」

「お断りします」

「おい、最後まで言わせろよ」

「必要ないわね、貴方のようなろくでなしのお荷物シスコン君と手を組んで何のメリットがあるのかしら?」

ひどい言われようだがだいたい事実だ。でもシスコンは聖杯戦争とは無関係のように思う。

「実は昨日サーヴァントと戦ったんだが」

「そう、それではセイバーはもう居ないのね」

「いるから、その状態で共闘提案しないから」

「そうね、貴方が楽に脱落できるのにそうしない訳が無いわよね。ごめんなさい、貴方の浅はかさから目を背けていた私が悪いの」

「お前謝るの下手だな、それじゃあまるで俺が責められてるみたいじゃねぇか」

「ええ、そのつもりだけれど?」

再び何度目かの睨み合いに突入する。

こいつは悪態をつかなきゃ会話もできんのか。

それをいちいち拾ってしまう俺も大概だが。

「その時得た情報を持ってる。具体的に言うとサーヴァント一人の正体と宝具。そして別のマスターの協力者とその魔術だ」

「そう、それはなかなかね」

どうやら感触は良いようだ。このままうまく行ってくれるといいが

「それだけの情報を貴方が無償で得られる筈無いと思うのだけれど?」

ちっ、嫌なところを。

「セイバーの宝具を使った。正体もたぶん知られただろう」

令呪を使いきってしまったことはナイショだ。

「そう…」

雪ノ下は顎に手を当て考える仕草をとる。

俺は彼女が答えを出すのをただ待った。

沈黙はそう長くは居座らなかった。

「やっぱり、お断りするわ」

「そうか…」

こちらの手札は全てきった。ならばもうこの場にとどまる理由はない。

「待ちなさい」

すると部屋を後にしようとする俺を何故か雪ノ下は呼び止める。

「今貴方が話した分の見返りをあげるわ」

「見返り?たったあれだけのことでか?」

「私にかかればそれも有益な情報ということよ」

雪ノ下はそう自信ありげに微笑する。事実、自信があるのだろうが、貰えるものは貰っておこう。

俺は再度雪ノ下に向き直る。

「貴方のクラスの葉山君だけれど、聖杯戦争から脱落したわ」

「はあ?!」

いきなり出てきたその名前は予想だにしないものだった。

しかも参戦していたことすら知らなかったのに、既に脱落しているという。

そういえばクラスの様子がどこかおかしかった気がするが葉山が来ていないせいだったのか。

「それは…死んだってことか?」

「いいえ、今は彼の家が懇意にしている病院に入院しているわ。右手先に酷い損傷があるみたいだけど、命に別状はないみたい」

「右手先?」

「令呪のあった場所でしょう。殺すこともできたでしょうに良心的とも言えるわね」

マスターであった事もだが、何でもそつなくこなすイメージのあの葉山がそんな状態になっていることが想像できなかった。

「これくらいでいいかしら?」

「ああ、充分だ」

当初の目的は果たせなかったが収穫もあった。

「んじゃ、俺はもう行く」

「ええ、さようなら」

俺のそっけない言葉に雪ノ下も同じうように返す。

同盟が叶わなかった今、俺達は目的は違えど立場上は敵同士。ならば長居は無用だ。

いや違う、聖杯戦争なんて物が始まる前から俺も雪ノ下も馴れ合いなんて必要としてこなかった。

気持ち早足歩く。ドアまでの距離など大したこと無いのだが何故か俺の足は少しでも先に行きたがった。

そうしてドアに手をかける。

しかし俺がそれを動かす前に、向こう側からドアは開かれた。

「話しは聞かせてもらったぞ二人とも!」

いや、急に開けんなよ。

「ノックをしてくださいと何度言えば…」

「すまんすまん、それよりも私から提案がある」

「何ですか…?」

雪ノ下はため息をつきつつも、平塚先生の話を促す。

「うむ、二人で決闘をしてみてはどうだろう?」

「突然何を言い出すかと思えば」

先生にうろんな目を向ける雪ノ下。

「勝った方は相手に何か要求してもいい。膠着状態とも言える今、差別化を図るいい機会だと思うのだが?」

「この男が要求をのむとは思えませんが?」

おい、俺が負ける前提で進めてんじゃねぇ。

「む、それはそうかもしれないが…」

しかも肯定すんなよ。あんたが言い出したことだろ。

「なら魔術であらかじめ契約しておけばいい」

「ギアスでも使うんですか?」

「おお、やはりお前なら知っているか。どうだ?すごいだろう、羨ましいだろう?」

てきとうに言ったのだが、マジか、魔術スゲー。

いやこの場合コー〇〇アスがすごいのか?

「待ってください、まだやるとは…」

「比企谷だって曲がりなりにもサーヴァントと戦って生き残ったんだ。それとも雪ノ下は自信が無いとでもいうのか?」

「っ……、……良いでしょう。そんな安い挑発にのる訳ではありませんが、その男が調子にのると迷惑なので提案を受け入れます」

いや、完全にのってます、雪ノ下さん。

「雪ノ下はこう言っているがお前はどうする?」

何故か雪ノ下までやる気になってしまったがどのみち決めるのは俺ではない。

《どうする?セイバー》

《いいんじゃねぇの?俺は負けねぇし》

「俺も大丈夫です」

「よし、それじゃあルールを詰めよう。クー、良いなあ、熱い展開になってきたじゃないか!」

あんたそれが目的だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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