fate/Tiba-si night   作:d d

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今度こそ決闘はその幕をあげる

夜の学校の校庭。そう聞くとどこかオムニバスロマンな響きを感じるかもしれない。

が、何の事はない。青春と称し犯罪行為に勤しむ者共が、胆試しや花火をしたりするだけである。例え補導されたとしても、それですら青春の輝きとして思いでのアルバムに刻まれる。青春の前に敵はいない。否、青春じたいが敵なのだ。何度でも言おう、青春とは悪である。

無論、孤高にして至高のボッチであるこの俺はそんなものに縁など無い。ではなぜこんなところに居るかというと、聖杯戦争という妙な争いに巻き込まれたからである。

決闘が始まって5分程が経った現在、どの付く素人である俺の目から見てもセイバーの劣勢は明らかだった。

細かいやり取りは俺の目では追えないが、戦況はバーサーカーと戦った時と同じように感じられた。

攻めては凌がれ、引いても直ぐに追い付かれて体勢を整えられない。セイバーが立ち会いを苦手としている訳ではない。相手の敏捷が桁違いなのだ。

セイバーの剣撃を正体不明のサーヴァントは長物の日本刀でさばいていく。物理的にはありえないことだ。響くのは金属同士がぶつかり合うかん高い音。

そんな風に打ち合えば日本刀何て直ぐにひしゃげてしまう筈だ。

しかしそうはならない。

それがあの刀のスペックなのか、雪ノ下が何かしているかのかまではわからないが。

…例えここで負けたとしても案外、俺のサーヴァントでいるよりセイバーが聖杯を手にする可能性は高いんじゃなかろうか。

しかしそれもセイバーが生き残った場合のはなし。

つまり勝つにしろ負けるにしろ、俺がこのまま隠れていたらまずいということだ。

「ん?」

「にゃー」

なんだ猫か。

しかし無策で出ていっても瞬殺されるだけ。既に令呪を使いきってしまっている俺にできることなどあるのだろうか?

「にゃー」

「…」

 

interlude 7-1

 

単純なパワーなら明らかにこっちが上回っている。

しかし向こうの剣の腕はそれを補ってあまりある程に熟達していた。

どの角度から斬り込もうと、連撃の間隔を変えようと、あのひょろい剣士はそれに正確に刀を合わせ力を受け流してしまう。

敵の攻撃は全て一撃必殺の首狙い。隙間を縫う超精密な斬撃に、鎧も兜もほとんど意味がない。

それも続けていれば刀がもたない。

しかし奴のマスターが刀を強化しそれを防いでいる。

普通、刀を強化したら上がるのは切れ味だ。しかしあの雪ノ下とかいう女は刀ではなく金属の固まりとして強化し硬度を上げている。魔力操作が優れている証拠だ。

雷を纏った魔力をぶつけようとしても耐電術式で威力を削いでくる。

それもサーヴァントの戦闘速度でだ。

マスターの差はれきぜんだ。

そのステータスも限界まで引き出されているだろう。

…だからなんだというのか。

どんな不都合な情報も全て些細なことだと吐き捨てる。

オレは最強のサーヴァント、あの死んだ魚みたいな目のマスターには文句をいってもいいたりないくらいだ。

最初は弱っちぃ癖に他人の心配をする癪な野郎だと思った。

その後なかなか使える奴だと思った。

集団から孤立している姿に親近感を覚えたこともある。

だが今はよくわからない。

自分を差し置いてオレを逃がそうとしたり、傷付きながらも助けようとしたり。

いったい何を考えているのか理解の外にある。

だが今はそんな事は関係ない。

オレはあの人の息子なのだ。最優の騎士王、そしてその国を滅ぼした反逆の騎士でもある。ならばオレは最強の英雄だ。こんな奴に遅れをとるわけにはいかない。

居間も隠れて怯えているであろうへっぽこマスターが言うにはあいつは佐々木小次郎だかいう日本の剣客らしい。

おそらく飛び道具や小細工は無いということだ。それは奴の行動にも合致する。

こちらが引くと休む暇も与えないように追撃してくる。それは遠距離が不得手だという何よりの証。

ならばそれを利用しないてはない。

引いて引いて引きまくって、建物の中に突っ込んだ。硝子が割れ飛び散り、椅子や机が転がり回る。

ここはガッコウという集まって勉強をする場所らしい。腑抜けが見栄を張り合っている場所に見えたが、とにかく壁に囲まれたこの場は俺が有利だ。

物が散乱した教室でサムライ野郎と対峙する。

「どうした、ここにきたかったのだろう?」

図星だが挑発には乗らない。相手も来ざるをえなかったことを知っているからだ。

「はっ上等!」

気合いと共にその場からミサイルの様に弾け飛ぶ。

しかしそれは目の前のアサシンではなく横の壁に向かって。

着地の衝撃で壁にはヒビが入るがそこからバウンドしてアサシンを狙う。

いとも容易く受け流されてしまうが、今度は逆の壁に着地し、上にはね天井からのバウンドで獲物を狙う。

これにはさすがのアサシンもたまらず膝をつく。それでもセイバーが止まることはなく再び壁に向かって跳躍した。

「成る程これは燕より速いかもしれん」

「なぁーにおかしな事ぬかしてやがる!」

その後もハリケーンのような攻撃にアサシンは防戦一方だった。しかしセイバーも決定打を与えられずにいた。

「うをりゃ!」

「な?!」

するとセイバーは跳躍後に手に持つ剣をアサシンに向かって投げ飛ばした。飄々としているアサシンもこれには虚を突かれバランスを崩す。

直後、剣を捨てたセイバーは拳を握り跳躍した勢いのまま突き込んだ。

「ふっ」

初めてアサシンが回避を図る。しかしすれ違う瞬間セイバーは拳を開いて手中に刀を握り込んだ。

「おらおらおらあああああ!」

そのまま力任せにぶん回す。

刀の先についたアサシンは勢いよく壁に叩きつけられる。

「なん、と、型や、ぶりな、剣士」

「どうしたー?離しても良いんだぜー?」

当然、離せばアサシンの負けは決定である。

「それもいいが、こういう趣向はどうだ?」

するとアサシンは思いきり刀の柄の底を叩いて、捕まれたままセイバーの首めがけて切っ先を突き込んできた。

セイバーの手中で火花が散る。

日本刀の反りによる滑りの特性をセイバーは知らなかったのだ。

「何!?」

たまらずセイバーは手を離す。ただでは終わらせはしないとアサシンを力の限り蹴飛ばした。

アサシンは教室の外まで吹っ飛ぶ。

それを追いかけて校庭の逆側で再び対峙した。

するとサムライの方から話しかけてきた。

「ふむ、まだまだ未完成、いや未完成のまま完成してしまったとでも言うべきか?」

「ああ?」

「何、お主の剣の腕の事よ。勝利だけを目指し鍛え上げた技術には執念を感じるが、何せ底が浅い。それでは一流の兵には攻め入れまいて。マスターに助力いただいてる俺が言うのもなんだが」

「んだと?」

こっちの太刀筋は『不貞隠しの兜(シークレット ・オブ・ぺディグリー)』の効果で認識できない筈だ。出鱈目を言ってるのか?

「そちらのはわからずとも自分の太刀筋位はわかる。そこから逆算しただけの事よ」

思考をよんだかのように言葉を返すアサシン。まあ、見えていようといまいと正しい保証はない。

話ながらセイバーは自らのマスターが言っていた事を思い出す。

奴の宝具はおそらく燕返しという剣技らしい。

超高速の切り返しとか、命中、回避に関わらず必ず命中し威力は60だとか訳のわからない事を言っていた。

必ず当たる、その部分が妙に引っ掛かる。かわすことのできない剣技、はたしてそれは父上にも有効なのだろうか?彼女にとって騎士王の威光はその瞳を焼くのに充分すぎるほどだ。故に王が自分以外に破れる姿など想像できなかった。

いいやそんなはずはない、我が父君なら必ずやそれを覆す筈だ。ならば避けられない剣技など存在しない道理。ならば自分がそれをしないわけにはいかない。

「おい、お喋りサムライ、お前の宝具絶対に避けられないんだってな?」

「む?そんなことないとおもうが、燕より速く自由であれば容易に避けられるだろう」

「燕だぁ?なめてんのか、てめぇ」

「事実を言ったつもりだが、では試してみるか?」

すると今まで無型だったアサシンが初めて構えをとった。

「構わぬよな、雪乃殿?」

「…仕方ないわね、できればセイバーを引き入れたかったけれど、比企谷君がいないのでは。いいでしょう、開帳を許可します」

サムライの纏う空気は今までとさほど変わらない。しかしこの後来るであろう攻撃の恐ろしさを直感がびしばしと伝えてきた。

いまのところ奴に付け入る隙はない。

ならば大技を打ち破りその隙を狙う。

ゆらりと、和装のサーヴァントは何の予兆もなく静から動へしなやかにその動きを変えた。

背中越しに構えられた刀が、男が振り替えると同時に月光が反射し輝いた。しかし直後それは命を刈り取る冷たい凶器として向かってくる。

「燕返しっ!!」

気合いと共に刀は振りかざされる。

だが何の事はない。勢いはついたが、この程度ならかわすのは容易い。むしろ動きが単調な分これまでより顕著に。

軌道は大上段、…いや、中断払い…、いや下段…!?

これは幻覚なのか、自分の見ているものが信じられない。

しかし確かにサムライの体は重なって見え、刀は三方に別れているように見える。

しかもそのどれもが命をたつ事ができると直感が告げていた。

それは正しく奇跡の御技―――一つの刀身が同時に三つの軌跡を描く。

多重次元屈折減少―――現代では魔法の一つに数えられる究極の理。

神秘を用いてそこを目指し多くが挫折した頂きに男はその身一つで辿り着いた。

それが秘剣『燕返し』。

宝具を持たない歴史の歪みに産まれたアサシンの必殺魔剣である。

逃げられない。かといって防ぐこともできない。

セイバーの思考は土壇場で超高速の域に達していた。しかしそれは敗北を覆す手段にはならない。むしろそれを受け入れさせられる時間でしかなかった。

まだ誰一人倒していない。ランサーには逃げられ、バーサーカーには蹂躙され、そして今目の前のサムライに負ける。宝具まで撃って偽物を振りかざす不遜な男も倒せず。ここで死ぬ?ここで終わり?これがオレの聖杯戦争なのか。

なんて惨め、なんてとるに足らない。

だからなのか、だから父上は私を認めてくださらなかったのか!?

ふざけるなっ、ならオレは、オレは何の為に産まれてきた!?!

失意の中で振り抜いた剣は迫る三つのどれにも合わせられていなかった。

相討ちを狙ったわけではない。自らの価値が定まらないのだからそれをかけようがない。

視界はもはや意味を失い、暗闇の中で剣を振った。

それは産まれ持った戦闘センス故か、それとも元々が闇の中だったのか。

振り抜く剣はそれでも今までと変わらない精度だった。

 

interlude out

 

 

 

 

 

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