interlude 8-1
「フフ、シロウお帰りなさい」
久しぶりに我が家へと帰ると玄関には銀髪の少女が立っていて、その可愛らしい笑顔で俺を出迎えてくれた。
その少女――イリヤは藤ねえの家の居候なのでわざわざこっちに来てくれたのかもしれない。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも~、わ・た・し?」
ゴクリ。
「だ、誰だー、イリヤにこんなこと教えたやつは!?」
「タイガだよ、家に帰ると何時もやってくるの」
ちなみに帰ってくるのは藤ねえらしい。
イリヤは目を細めてクスクスと笑う。
何処かにきっとあるような何でもない光景。
しかしこの場にはとある矛盾が介在していた。
「イリヤ、動いて大丈夫なのか?」
理由は何となくわかっていた、しかし俺は確認しないではいられなかった。
「うん、大丈夫だよ」
イリヤは満面の笑みでそう答える。
その表情に俺はホッと内心で溜め息をつく。
「ちょっとー、後がつかえてるんですけどー」
「ああ悪い、遠坂、直ぐどく」
後ろで赤い悪魔が文句を言っている。あまりその手帳にネタを増やすわけにはいかない。いや既に取り返しのつかないことになってるかもしれないが。
俺は廊下へと上がり道を空けた。
「ふー、あー疲れた。やっぱり士郎の家は落ち着くわねー」
「オバサン臭いわよ、リン。この一年でだいぶ老けたんじゃない?」
「失礼ね!まだそんな年じゃないわよ!」
相変わらずこの二人は仲が良いのか悪いのか、疲れたと言いながらこの調子である。
「まあまあ、えーと、桜はどうしてるんだ?」
「サクラならダイガクにいってるんじゃない?」
「そっか、今年から大学生だもんな」
なんだか時の流れが妙に寂しく感じられるが、桜が頑張っているのなら何よりだ。
しかし今回はその日常に暗い影が差そうとしていた。本来ならもう少しあっちにいる予定だったのだが、急遽日本に帰ってきたのはその為だ。
居間に腰を下ろすと早速その話になる。
「現状は電話した通りよ。本格的に大聖杯が起動を始めたわ」
「それじゃあ本当にまた聖杯戦争が起きるのか?」
「ええ、間違いなく」
イリヤは澄まして首肯するが事はそう簡単ではない。
前回の戦いからまだ二年しか経っていない。あんなものをそうポンポン起こされたらたまったもんじゃない。
遠坂も納得いかないようでイリヤに疑問をぶつける。
「本来聖杯戦争の間隔は十年単位よ。それはもったいぶってそうした訳じゃない」
「リンは魔力が足りないって言うんでしょう?シロウも」
「ああ、イリヤの言ってることは本当なんだろうけど俺も引っ掛かる」
「けどその問題は解決済みよ」
そうなのか、さすがはアインツベルンの魔術師、それなら話が早い。
「大聖杯は龍洞から消失したわ」
「はあああ!?」
居間に遠坂の驚声が響きわたる。
「あんなものをばれずに持ち出しったて言うの!?それこそ不可能よ!」
「リン、貴方の家の家訓はなんだったかしら?」
常に余裕をもって優雅たれ、である。
それを聞いて遠坂はぐぬぬと押し黙る。遠坂の家の事情はある意味、彼女に対する特効薬みたいなものだ。俺は様々な事情をかんがみて控えているが、イリヤにそのような容赦はない。
「持ち出されたのは概念、中身でそのものじゃないの」
「ちょっと、それだっておかしいじゃない。あんないりくんだ概念を抽出するなんてできるかどうかすら怪しいわ」
「それは元からある機能みたいよ」
「はああああああ!?」
遠坂の外面はいとも容易く崩れ去った。
「それじゃあ、何処で聖杯戦争が起こるかわからないのか?」
「ちょっと士郎、貴方切り替えが早過ぎるんじゃないの?」
遠坂は何やら不服そうな顔をする。
おそらく魔術社会に染まっていない俺の方が驚きが少ないのだと思う。
「今は現状把握の方が大事だろ?話は俺が聞いておくから、遠坂はしばらくブーたれてていいぞ」
「べ、別に大丈夫なんだからこれくらい!何年あんたの魔術に付き合ってると思ってるのよ!」
そんなに長かったろうか?
「リンの頭は固いから解りづらいのよね」
「余計なお世話よ、早く話を続けてくれるかしら?」
「それじゃあシロウの質問に答えるわね。大まかな位置ならわかるからたぶんそこに聖杯が現れると思うわ」
「それは何処なんだ?」
「私は日本の地理には詳しくないけど、サクラが言うにはチバってとこらしいわ」
「千葉?何でまた」
「さあ、日本の地脈とかはリンの方が詳しいんじゃない?」
俺は遠坂に視線を移す。彼女は顎に手をやり何事かを考えている。
「私の記憶では、あそこは儀式に適した町じゃないわよ、列島の隅っこで平地だし、近くに東京があるからそっちに力を吸われちゃうし」
「やっぱり、行ってみるしかないか」
もともそのつもりで帰ってきたんだし、それは構わない。
「ええ、遠坂の土地に手を出したこと後悔させてやるわ」
「ありがとうイリヤ、教えてくれなかったら何も知らずに居たところだ」
「他所の魔術師にこのまま聖杯を奪われたら癪だもの、アインツベルンとして制裁しないといけないわ」
その凍るような微笑に身震いする。
ここに恐ろしいタッグが誕生してしまった。此度の犯人に同乗してしまいそうだ。
「それで大聖杯の事は解ったけど、小聖杯はどうなっているのかしら?」
俄に活気づいていた雰囲気はそんな遠坂の一言で何処かへと逃げ去ってしまった。
それでも遠坂は詰問を続ける。
「イリヤ、貴方がまだそこまで動けるのも無関係じゃないわよね?」
「ええ、そうね」
しかしイリヤはそれにも態度を崩すことなく平然と肯定する。
本来なら、前回の聖杯戦争終結と同時にイリヤもその役割を終えるはずだった。
けれどそうはならなかった。
「おそらく二年前から今回の兆候は有ったんでしょうね。だから私は生き残った」
「それは今回も小聖杯を担うため?」
「それはわからないわ、前回までと同じように進行するとは限らないもの」
それはそうだ。場所が変わったのだから、内容が変わっても不思議じゃない。
だが。
「けれど間違いなく私は今も大聖杯とリンクしている。その可能性は高い」
そして。
「今回の問題が片付けば私は今度こそ死ぬでしょうね」
この二年でイリヤはほんの少しだけ成長した。
半分がホムンクルスである彼女は普通の人間よりも成長は遅いが、それでも積み重ねた時間は確かにそこに存在している。
その彼女は自分自身にそんな結論をくだす。
「そんな顔しないでシロウ、元々前回で死んじゃう筈だったんだから。それに誰でも最期は同じだもの」
「士郎、貴方はここに残ってもいいわよ」
この赤い悪魔は時おり優しさを見せることがある。
残された時間をイリヤと共に過ごせと言っているのだ。
「いや、大丈夫だ。俺は遠坂の弟子で、今回は戦うために帰ってきたんだから」
そんな俺を見つめるイリヤの表情は自分より使命を優先するという男に対して聖母のごとき穏やかなものだった。
それは幼い姉の弟に対する慈しみであるかのように。
ピンポーン
するとチャイムをならす音がする。
玄関の戸を開けると、そこには大学に行っているはずの桜が立っていた。
「えヘヘ、早引きして来ちゃいました」
interlude out
雪ノ下との決闘に負けたその翌日。
俺はとあるデパートの一階インフォメーション前に来ていた。
「ちゃんと時間通りに来たようね」
後から登場した雪ノ下が偉そうにそんなことを言ってくる。
後ろにはセイバーも霊体化を解いてついてきていた。
彼女は既に俺のサーヴァントではない、すなわち俺は聖杯戦争とは関わり無い筈なのに何故こんなことになっているかというと、昨夜雪ノ下から指令が届いたからである。
もちろんケータイのアドレスなんかを交換したわけではなく、魔術で一方的に言い渡されただけだ。
「んで、もう帰ってもいいか?」
ここに来いという指令は既に果たした。
「はあ、そんな訳ないでしょう。今日は買い物と聴取をするのよ」
なんか相容れない言葉がならんでいた。カツ丼でも出てくるのだろうか?俺おととい食ったんだけどなー。
そんなことを考えながら雪ノ下の後をつらつらとついていく。すると雪ノ下は店内の見取り図の前で足を止めた。目的の店を探しているんだろう。
手持ちぶさたに周囲を見回しているとセイバーと目が合う。しかしセイバーは直ぐに視線をそらした。
昨日まで共に戦っていたというのに冷たいもんだ。しかし魔術素人である俺は足を引っ張ってばかりだっただろうしそれも当然かもしれない。
ふとセイバーの服装が目にはいる。既に雪ノ下のサーヴァントの筈だがその格好は俺と夜を散策していた時のジャージ姿だ。まあどうせもう着れないやつだから良いんだけど。
そういえばセイバーの服を買おうと思っていたことを思い出す。
「なあ、買い物って何買うんだ?」
「セイバーの服よ、あんな格好で部屋を彷徨かれたらたまらないわ」
ああ、雪ノ下もあの破廉恥な服を見たらしい。その様を想像して脳内に百合の花を咲かせる。雪剣?剣雪?悪くないですね。
「行きましょう」
雪ノ下は目当ての店を見つけて歩き出す。
「?服飾系なら向こうじゃないのか?」
俺がそういうと雪ノ下は俺が指差した方に方向を帰る。
「別にどう行っても同じでしょう、いずれは辿り着くのだから」
確かに店の中は一周できる作りになっているが、最初の方だと遠回りだ。
「気になる店があれば言ってくれる?」
「ああ」
目的のフロアに辿り着いた俺達は今度は一つ一つの店を物色する。
しばらく歩くととある店にセイバーは入っていく。
それはこのエリアに一つだけある、ロックな感じの店だった。
俺と雪ノ下は二人でセイバーの後についていく。
あまりこういった店には入らないので少しドキドキする。
店内は黒い壁に覆われ、そこにドクロやキラキラとした装飾のついた服がならんでいた。
なんというかセイバーのイメージ通りな店だな。
セイバーはキョロキョロと店内を見回している。
雪ノ下は何やら品物を撫でたり引っ張ったりしている。
「何してるんだ?お前」
「縫製を確かめているのよ、なかなか丈夫ね」
そりゃ、雪ノ下が触っているのは革ジャンだもの。
「ていうか意外だな、お前も買うのか?」
雪ノ下もこの店の商品も刺々しいのは同じだが、雪ノ下のはもっと冷たいというか高貴な感じだ。意地悪な女王様みたいな格好があっているだろう。
「まあ、こういったものは似合わないかもね」
そういって雪ノ下は持っていた物を棚に戻す。
「そうでもねぇんじゃねえの?お前何でも似合うだろ」
イメージとは違うが見た目は美少女の雪ノ下なら案外こういった服でも様になるのではなかろうか。
するとセイバーがこっちに来て雪ノ下と何やら話している。どうやら食指に触れるものがあったらしい。二人で奥に入っていくと暫くして紙袋をもって帰ってきた。
既にセイバーは新に着替えている。
雪ノ下の顔が優れないのはそれがへそだしだからだろう。
まああれよりはましだと妥協したみたいだが。
俺は戻ってきた二人に手を伸ばす。
それに対して雪ノ下は訝しげな顔を返す。
「いや、紙袋よこせよ」
「そう、殊勝な心がけね」
いや、いずれ持たされるなら一緒だと思っただけだが。
袋の中をちらと見るとセイバーの服の他にもう一着別のが入っていた。着回し用だろうか?
「それで、これからどうするんだ?」
「そうね、思っていたより早く済んでしまったから」
現在時刻は11時前。おそらく買い物の後は飯にする予定だったのだろうがそれには少し早い。
「なあ、やることねーならあそこ行こうぜ」
セイバーが指差したのはゲームセンターだった。
「はあ、セイバー、今日は遊びに来た訳じゃ…」
何故か途中で言葉をつまらせる雪ノ下。その視線の行方を追ってみると、それはゲームセンターの中にあるクレーンゲームに向けられている。
ガラスケースの中を見てみるとディスティニーランドのマスコットである目付きの悪いパンダの縫いぐるみが景品になっているようだ。
「んん、…仕方ないわね、ずっとそうしていたら息が詰まってしまうし」
そう言ってゲームセンターの方に歩き出した。
ああ、あれが欲しくなったんですね、雪ノ下さん?
セイバーは敷地にはいるとコインをいくつかもって消えてしまう。
雪ノ下はさっそく例のクレーンゲームに挑戦するようだ。
お金を挿入口に入れると手元のボタンが点滅し出す。
それを押すとクレーンが動きだすので、ちょうど良いところで離す。
横、前と二方向の移動で目標物へと距離を詰めていく。
そしてそれが終わるとクレーンはゆっくりと降りていき底面につくとアームを開閉させる。
しかし無情にも景品は少し持ち上がったところでアームを滑り落ち元の場所へと戻ってしまった。
バンッ!
ひえぇ、クレーンゲームで台バンしてる奴始めてみたよ。怖い、それと怖い。
すると雪ノ下は挿入口の隣に100円玉で塔を積み上げた。
うわー、ガチだよこいつ。
しかしそれらは虚しくも成果をあげることなく高さを徐々に減らしていく。
その様子にいたたまれなくなり思わず声をかけてしまった。
「代わりにとってやろうか?」
すると雪ノ下は振り替えって俺をギロリと睨む。いや何でだよ。
「貴方にあれが取れるというの?」
「まあ見てろって、これでもゲーセンはよくくるんだ」
すると雪ノ下は残ったコインを回収して俺に筐体を明け渡す。
俺は財布から100円玉を二枚取りだし挿入する。
集中しろ、タイミングが命だ。
脳の全神経を研ぎ澄まし俺はその一瞬を待った。
ここだ!
俺の命令を受けた右手が一瞬のタイムラグの後動き出す。
それすらも計算に入れた俺の右手は高々と天に突き立てられた。
「すいませーん、これ取って貰えます?」
「良いですよー」
そう言って店員さんがパッとクレーンを動かすと景品が受け取り口に落ちてくる。
「どうぞー」
「どうも」
こうして俺は無事景品を入手することができた。
「小賢しい貴方らしいやり方ね」
「別にいいだろ、手に入ったんだから」
そう言って景品を差し出す。
「何?」
「いや、俺が持っててもしょうがねぇだろ」
「別に要らないわ、貴方が取ったのだから貴方のものでしょう」
俺は頑として譲らない雪ノ下の手に縫いぐるみを押し付ける。
「な?!」
初めは納得いかない様子で眉根を寄せていた雪ノ下も暫くすると諦めたようで縫いぐるみをその両腕で抱き締めた。
「悪いな、色は選べなくて」
「別に構わないわ、これが欲しかったもの」
そう言って雪ノ下は縫いぐるみを見つめて微笑んだ。
その表情に思わず胸がなる。
そういう顔もできるんだな。
「いやー、大漁、大漁」
そこでセイバーが数枚のコインを何倍にもして帰ってきた。
あれ?セイバーにとらせりゃ良かったんじゃね?
interlude 8-2
「何はともかく、あの雪ノ下ってのが怪しいと思うのよねー」
既に定例となった御前、ではなく午前会議。
遠坂は昨日の出来事を振り替えってそう結論付けた。
その言い分事態は特に違和感のあるものではない。
聖杯に何かを仕掛けられそうで、勝つその実態は謎に包まれている。
現在時計塔の知り合いに頼んで雪ノ下家について調査してもらっている。
「けど何で雪ノ下が大聖杯を持ち出せたんだ」
「だから元からそういうものだったんでしょ?」
「なぜ雪ノ下が御三家の子孫すら知らなかったそれを知り、なおかつ実行できるのだ?」
キャスターを前に逃亡した理由を問い詰められたアーチャーはそのまま会議に参加し仕返しとばかりに遠坂を攻め立てる。
「う…だ、だからそれをこれから調べるんでしょうが!何よ二人して、あんたらほんとは仲良しなんでしょ!」
「やれやれ、趣味の悪い冗談はよせ」
俺とアーチャーの詰問に耐えかねた遠坂が吠える。
その発言は断固否定するがこの質問にもちゃんと理由があるのだ。
大聖杯敷設から今まで雪ノ下が聖杯戦争に関わったことは一度もない。
それはイリヤがアインツベルンの大翁に聞いたことなのでまず間違いないそうだ。
「そういえば雪ノ下が表の顔で経営している建設会社はあの葉山が顧問弁護士を勤めているそうだぞ」
アーチャーが新たな情報を追加する。
「あら、そうなの?まあ、同じ土地に構える魔術師同士だし面識はあるわよね」
しかしその葉山のマスターである葉山隼人は遠坂達が家を訪れた際に家ごと爆破されて既に敗退している。
「それじゃ、雪ノ下に狙いを絞るってことでいいわね?」
「それは良いけど、どうやって探りを入れるんだ?」
「まず間違いなく邪魔になるのはキャスターでしょうね」
今一番調査しやすいのは遠坂が戦った雪ノ下姉妹の妹の方だろう。顔と名前、そして総武高校の学生だということまでわかっている。
しかしその前にキャスターが立ちはだかるのは想像に難くない。
「どうアーチャー、キャスター、倒せる?」
「やれと言われればやるより無いが、こちらも消滅を覚悟する必要がある」
「そう、やっぱり」
アーチャーの答えは芳しいものではなかったが予想の範疇だったようだ。
「ならマスターを狙えばいいんじゃないか?それなら雪ノ下を調べることにもなるだろ?」
「それは、そうなんだけど…」
しかし何故か遠回りだはそこで言い淀む。なんだろう、何処か見落としがあっただろうか。
「キャスターのマスターは本当に雪ノ下なのかしら?」
「え」
ユキノシタハルノのマスターが雪ノ下ではない?
確かに縁を用意できるのなら召喚することはできる。だけどキャスターは未来の英霊で聖遺物を用意するのは大変だ。
ならば、残りのマスターの数を考えても未だに顔を見せない雪ノ下姉妹の姉、雪ノ下陽乃自身がマスターであるとちょっとややこしいが思ったのだが。
「例えば、私と桜みたいに」
「あ」
言われて遠坂が何を考えているのか思い至った。
姉は英霊になる可能性を秘めていて、妹の方も遠坂が認める優秀な魔術師だ。
それは遠坂と桜の関係によく似ていた。
魔術師の世界は基本的に一子相伝だ。
だが優秀な跡継ぎが二人産まれた場合、そのどちらにも可能性を残したいと思うのはわからないことじゃない。
そうするとどちらか一方が家を離れることになる。
実際に遠坂と桜がそうなのだ。
だとすると雪ノ下を名乗り英霊になった自分の姿をどう思っただろうか。
「仲は良さそうだったよな」
キャスターは終始妹を気にかけていた。そこはまるで遠坂みたいだ。
「どうかな、キャスターならばあそこで私達を倒すこともできた筈だ。だがそうしなかった、仲が良いとは言いがたいな」
アーチャーがすぐさま俺の間違いを指摘してくる。
「それに未来の英霊の姿に現代を見るのは早計だと思うが?」
ああ、確かにその通りだ。
「ふん、仲がいいならそれが一番に決まってる」
「はいはい、喧嘩は後にしてよね、今は味方同士なんだから」
「では私は見張りに戻るとしよう」
そう言ってアーチャーは光、粒になって消えた。
アーチャーには当然前回の記憶がない。
本人はやりづらいと言っていたがとてもそうは思えない。
さてそれでは話を再開しよう。キャスターのマスターが雪ノ下かどうかは結局会ってみないとわからない。
しかしこっちでもやはりキャスターは邪魔をしてくるだろう。
「あ、それじゃあ少年Aからあたってみるのはどうだ?」
少年Aとはセイバーのマスターのことである。名前がわからないのでこう呼んでいる。
「あいつは雪ノ下の妹さんと面識があるみたいだし、キャスターの守護下にも入っていないんじゃないか?」
「確かにそうね、でも士郎は接触しちゃダメよ」
「なんでさ?」
「はあ、貴方セイバーに嫌われてるじゃない」
「あ」
確かにそうだった。おそらく俺が彼らにもう一度会ったら直ぐに戦闘になってしまうだろう。
そうしてふと思い出す。昨夜、彼と雪ノ下雪乃は決闘をしていた。気づいたら終わっていたのでその結末を確認していない。
果たしてあの闘いはどちらが勝ったのだろうか。
interlude out