「解った、今日はもういいぞ、帰ってよし。ああ作文は再提出すること」
「てことは内容はOKっすか?」
すると俺の顔の横を拳が通り過ぎていった。あっぶねぇ。
「何か言ったか?小僧」
「小僧って、確かに先生の年からすれば小僧かもしれないっすけど…」
するとまたもや拳がつき出される。今度は少しかすった。
こうして国語教師で生活指導な平塚先生のお説教は予想よりだいぶはやく終えられた。
途中、作文を読み始めた時は言って聞かせたい程素晴らしいかと現実逃避もしたのだが、先生は何かに気づいた様子を見せ、そしてどこか焦ったように説教を終わらせたのだ。
これ、用事を思い出しただけだな。なら最初から呼ばないで欲しい。
先生は既に俺に背を向け何かしらかの作業を始めていたので、俺はプリントを鞄にしまい職員室を後にする。
「それじゃ、失礼しましたー」
「ああ、夜道には気をつけろよ」
まるで悪役が言う脅し文句のようだ。少年誌だと失敗するが、同人誌だとせいこうする。
「先生も気をつけてくださいね」
てきとうに返事をして職員室を後にする。ドアをしめ俺はとぼとぼとリノリウムの床を歩く。ふと、後ろを振り返ると、俺への説教を早めに切り上げた何かをするために、何処かへと向かう平塚先生の後ろ姿が見えた。議院の記者会見並みにふわふわしてんな。
俺はそのまま階段を下り昇降口を目指す。
その途中、かしましい騒ぎ声が耳に入った。HRからもう一時間にもなろうというのに、教室内は未だ活気に満ちている。けれどこれは特に珍しいことではない。
清廉潔白なる学舎は、放課後になると青春劇を演じる舞台背景へと変貌をとげる。
普段はチャイムがなると即行で帰る帰宅部エースであるこの俺もこうして掃除や説教なんかで直ぐには帰れない事がある。
そんな時はこんな風に教室でダベっているリア充どもを見かけることになるのだ。
せっかく並べた机を崩すなとか、綺麗にした黒板に落書きするな、女子ども止めるなら本気で止めろ「ヤメナヨ~(笑)」じゃねえとか思ったりするのだ。
それで自分の席に女子が座っていたりすると次の日どきどきするからやめてくださいね。
恐らく他の教室でも似たような光景が見られる事だろう。毎日毎日ご苦労な事だ。
既に4月も過ぎ新しいクラスにも慣れてきてそれぞれの立ち位置も固まってくるころ。それで前のクラスの奴にあうと違和感を覚えたりする。
お互いを確認しあうような彼らの会話は、何処か5月上旬の斜陽によく合っているように感じられた。
そんなことを考えている内に何時しか喧騒は通り過ぎ、笑い声は聞こえなくなった。俺は駐輪場に停めてあった自転車に股がり学校を後にする。今日も今日とてかわりばえのしない一日を過ごした。
それに不満はない。
もとよりこんなご都合主義に四方を固められた箱庭に期待などしていない。青春など嘘っぱちだ、ラブコメ何てもっての他、書き直しの必要を認めない。
やはり青春とは悪である。