fate/Tiba-si night   作:d d

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それでも聖杯戦争は続いていく

ほのぼのとした買い物を経て、突然の雪ノ下姉との邂逅をはたして、俺は雪ノ下の家で優雅にお茶を飲んでいた。

「ふむ、いい茶葉だ。ブランドものかな?」

お茶の良し悪しは判らないがとりあえずそう言っておくことにする。

「そう、コンビニで買ったものだけれどお口にあってよかったわ」

やっぱりな何処かで飲んだ味だと思ったわ。さすがは俺の舌だ。それに最近のボトル茶は職人でも違いがわからないくらい品質がいいらしいし間違えても問題ない。選ばれた綾鷹は別格だ。

「それで何を調べるんだ?」

「貴方はそこでお茶していればいいわ」

あっそう。お言葉に甘えて俺はおしゃれなカップに入ったコンビニのお茶を啜る。見てくれだけでも整えれば、気分はお金持ちだ。そのまま俺は机の中央に積まれたお茶菓子にてを伸ばし、茶色のクッキーを一つとると口にほうばった。

次の瞬間、体に電流が流れる。

「あばばばっばばあばっbn」

「ふむ、これは効くっと」

「ちょっと待て、お前何してんだ!」

「言ったでしょ、調べるって」

雪ノ下はきょとんと首を傾げる。

やめろよ、ちょっとかわいいじゃねーか。

「お茶を飲んでいろとも言った、こんなんで飲めるか」

雪ノ下はぐぬぬと眉根を寄せる。

しかし何か思い至ると再び食って掛かってきた。

「確か貴方はお菓子も食べようとした筈だけれど?」

いやそれは重箱の隅をなんとやらだろう。

俺と雪ノ下は互いに睨み合う。

しかしこのままでは埒が開かない。

雪ノ下もそう思ったのか二人同時に溜飲を下げた。

「貴方に効く魔術を確かめていたのよ」

「俺に効く?どういうことだ?」

「どうやら貴方には効かない魔術があるみたいなのよ」

よく判らないがひこうタイプにじめん技は効かないみたいなことだろうか。

「決闘の夜、私は学校とその周辺に使い魔を放って貴方が小狡い手を使ってこないよう警戒していたわ。けれど結果は貴方も知る通りよ」

マジか、全く気がつかなかった。

それがなければ俺は瞬殺されていた訳か。気づかないうちに助けられたことが他にもあるかもしれない。

「でもさっきの電気ショックは効いたよな」

「ええ、だからその条件を調べているのだけれど」

成る程、調べるとはこの事か。

確かに何故そんなことが起きるのか俺も気になるところだ。

「それってよくあることなのか?」

「特殊な体質をもって生まれてくる人はいるわ。人を魅了したり、石化したりする魔眼とかね」

そうか、しかし特別なものであることに替わりはない。選ばれたのは綾鷹ではなく俺だったわけか。

「貴方は普通の人間ではないということね、人でなし君」

「おい、その言い方わざとだろ」

雪ノ下はしてやったりという顔をしていた。

だから可愛いからやめろって。

「何か今までに変わったことは無かったかしら?人と違ってるとか、あ…」

「そうだよ、人と違うのは日常茶飯事だよ」

言われる前に言ってやったが虚しい分ダメージはどっこいだった。

しかしそんな話をしているとある出来事を思い出した。

「そういやセイバーを召喚した夜でっけー音がしたんだが周りには聞こえてないみたいだったな」

その時の光景を思い出す。思えばあれが聖杯戦争に参加するきっかけだった。

「人払いの結界ね。一定の方向から意識を遠ざけるの」

つまり音は聞こえていたがそれに反応することができない状態だったというわけか。しかし俺には効かなかったようだが。

「あとランサーが俺の気配がしないとか言ってたな」

「そう、そういうことかも…」

すると雪ノ下が何かに気づいたようだ。

「どうしたんだ?」

「基準は対象設定にあるのかもしれないわ」

「対象設定?」

「人払いや使い魔の監視は不特定多数に向けたものだった、けれど今さっき貴方に撃ったものや特別棟の教室のトラップは貴方個人に向けたものなの」

あー、要するに範囲攻撃無効みたいなことか。

「貴方の影が薄すぎて魔術ですら存在を認識しづらいという事ね、幽霊谷君」

成る程、影が薄いから幽霊、てそれもう無くなってるじゃねえか!こいつ、普通に名前を呼んだ時の方が少ない気がする。

「ふー」

結論が出てスッキリしたのか雪ノ下は口をつけていなかったお茶を啜る。

「もう貴方に用はないわ、帰っていいわよ」

そしてこの態度である。

その辺のコンビニのお茶の癖に。

「お前、何でわざわざ俺の体質なんて調べたんだ?」

「知らないことを突き詰めるのは魔術師の本分よ」

つまりはわからないままにしておけなかったということか。魔術師とは己の研鑽に倒錯する連中だと平塚先生は言っていた。しかし今回の事は俺の体にまつわることなので良しとしよう。

「そうなった原因とかわからないのか?」

「そうね、先祖が関係している事もあるけれど、貴方の家は一般家庭なのでしょう?」

「ああ」

俺の親はよくいるサラリーマンだし、小町は可愛い妹だし、カマクラは猫だ。

俺はそのまま玄関をめざすと途中でセイバーと出くわした。

今はもう俺のサーヴァントではないが元マスターとして話しかけるくらいは許されるだろう。

「雪ノ下とはやっていけそうか?」

「難しいな、あいつの言ってることは綺麗事だ」

セイバーは簡単に否定する。

「けどまあ、どっかの間抜けがへましたからな。やるしかねえだろ」

セイバーはぶっきらぼうに答える。

決闘の時、俺が勝手に飛び出した事を怒っているのだろうか。

いや、こいつはキレたらわかりやすく突っかかってくる筈だ。

アサシンの宝具に対処して、セイバーを雪ノ下に譲渡することもできた。

これが最善だった筈だ。

それはセイバーもわかっているだろう。

正直雪ノ下とセイバーはあまり相性が良いとは思えない。

雪ノ下は信念というか譲れないものがある。それはセイバーも同じだが、戦闘では使えるものは何でも使うタイプで正面から叩き潰すと言った雪ノ下とはベクトルが違う。

まあそれでも俺よりは増しだろう。

俺はそのまま雪ノ下の家を後にした。

 

…………………

 

朝、目を覚ました俺は寝ぼけ眼を擦りながら時計を見やる。時刻は7時前、いつも通りの時間だ。

雪ノ下との買い物があった土曜日から、日曜は特に何もなくだらだらとすごし今日は泣く子はもっと泣く月曜日だ。

未だ体の節々は痛むものの昨日一日休んだおかげでだいぶ元の調子に戻ってきている。

ようやく戦いから解放され俺の日常は再開されつつあった。

「お兄ちゃん、おっはー」

「おう」

小町と挨拶を交わし俺は食卓につく。台所からはじゅーじゅーとこぎみよい音が聞こえてくる。

「もうちょっとだからー」

どうやら今日は小町が料理当番のようだ。

しばらくすると二人分の皿をもって現れる。

「いつも悪いねー」

「もう、それは言わない約束でしょー」

小町はエプロンをとると同時に制服に着替える。

我が妹ながら何てずぼらな。

毎度のことなので俺は気にも留めず皿に乗った自家製フレンチトーストを頬張った。

小町もコーヒーをもって参上する。

「ふっふ、今日はイギリッシュにまとめてみました」

「イギリッシュってなんだよ、てっきりブリティッシュって言うのかと思ってたぞ」

ちなみにフレンチトーストはフレンチさんが考案しただけでフランス料理でもない、これ豆な。

するとそれきり小町は黙ってしまう。顔を向けると鳩が豆鉄砲くったような顔をしていた。

「お兄ちゃんが変だ」

「小町ちゃん?いきなり何を言い出しているの?」

「なんかこう何時もより目が腐ってるのは元からか、性根が曲がってるのも元からだし、んーとにかくなんか変!」

もしかしてこいつ俺をバカにしてるのか?

「何時もはもっと適当というか、逆にそこに愛を感じてたのに」

妹がヤバイ性癖に目覚めかけていた。毎日冷たくしてせっせとポイントを稼いでしまいそうだ。

「アホなこと言ってると遅刻すんぞ」

「えー、ほんとなのにー」

小町はまだブーブー言っていたが俺は食器をかたすと学校へと向かった。

クラスの様子も以前とは違っていた。

我が2年F組カーストの頂点に君臨する葉山が土日を跨いでも学校に来ないからだ。

クラスの太陽(笑)を失った教室はどんよりとした空気が支配していた。

「あ、ヒッキー、やっはろー」

すると何故か女子が俺に話しかけてくる。こいつは確か前に葉山の家に行くのを止めたやつだ。それに恩でも感じているのだろうか。

「ヒッキーは葉山君のこと何か知ってる?」

ああ、そうか。また俺が何か聞いているかもと期待しているわけか。

「いや、何も」

「そっか」

それきり女子生徒は黙ってしまう。まるで脅迫のような沈黙がこの場に蟠る。

俺は悪くないぞ、ほんとの事を言っても大して替わらないのだから。むしろもっと悪くなるまである。

「変なメッセージは届いたんだけど…」

「メッセージ?」

その女子生徒は何やらケータイをいじると画面を見せてくる。

そこには地図と《宝のありか》と書かれていた。

確かにこれは変だ。差出人には隼人君とある。

「これどこなんだ?」

地図には印がついておりここが宝のありかなのだろう。

「え、さっさあ?」

しかし受け取った本人は理解できていないようだった。

脱落した葉山からのメッセージだ。良いか悪いかはさておききっと何か意味があるものなんだろう。

だが気になるのはあのオトモダチとの空気感を何より大事にしていた男が、聖杯戦争に関係ない奴を巻き込もうとするか?

これは誰かが送った罠なのかもしれない。

「まあきっとウィルスか何かに引っ掛かったんだろうな。けど一応調べてみるから画像もらっても良いか?」

「え、い、良いけど。アドレスコウカンスルノ?」

俺の言葉を聞いた女子はその場で何かモジモジしだす。

承諾を得ると俺は自分のケータイでその画像の写真を撮った。

「むー」

すると女子生徒は何やら不服そうな顔をする。何だよアドレス交換するの嫌だったんだろ?

その後授業を適当に受け学校は昼休みになった。

俺は何時ものベストプレースで昼食をとる。しかし何かが足りないような気がしてしまい俺は二の足を踏む。暫く考えてあることに気がついた。

そうだ、今日は戸塚が来ていないんだ。クラスの太陽がいないのでは心が晴れないのは仕方ない。

俺はそんな寂しい気持ちを噛み殺すようにパンを咀嚼し一緒に飲み込んだ。

「ハッチマーン」

すると何処からかそんな俺を呼ぶ声がする。

いや後ろからだ。

やがて声は大きくなると、そいつは勢いよく飛び出してきた。

「我、参上!」

デカイ体に指貫グローブの痛々しいこいつは材木座義輝。俺とは初対面以上知り合い未満の関係だ。

ざいもくざがあらわれた!はちまんはめのまえがまっくらになった…。

「聞いてよはちえもーん」

「ええいうざったい」

何故か材木座は俺に泣きついてくる。

「この土日で魔導少女マジ☆デスカの公式サイトが荒らされたのでござるよー」

「だからなんだってんだよ」

「ほぽぉ、この一大事にその鉄面皮っぷり、さては貴様が犯人かー、真実はいつもひとーつ!」

「はいはい、ワロスワロス」

こいつに付き合っている体力は今の俺には残されていない。

「むー冷たいぞはちまん、一緒に体育の二人組つくってーを乗り越えたなかではないか」

「そんなことで仲良くなってたまるか」

ちょっとしたことで勘違いして痛い目を見るのが俄ボッチにはよくあることだ。ソースは俺。

ボッチとボッチは馴れ合わない。それは傷を舐め合うのと一緒だから。それはお互いに効果抜群のドラゴンタイプのように。つまり真のボッチとはドラゴンに他ならない。

「ガーン」

はちまんのこうげき!こうかはばつぐんだ!

ざいもくざはたおれた。

俺は苦しみもがいている材木座を残してその場を後にした。

 

………………

 

自宅へと戻った俺はベッドに潜り込んだ。

最近はろくに休みもとれず録画したアニメが溜まっているのだがそんな気分にもならなかった。

なのでゴロゴロと転がって暇をもて余しているのだ。

するとわずかに開いたドアの隙間からカマクラが入ってくる。

仕方ない、今は我が家の猫様を可愛がることにしよう。こーいこい。手を前にさしだしカマクラを誘う。しかし少し顔を覗かせただけで何処かへと行ってしまった。

「あー、暇」

「なんだ、じゃあちょいと頼まれてくれよ」

「!?」

突然聞こえた声に驚いて身をおこす。

その声は聞き覚えのあるものだった。

予想通り俺の視界に飛び込んできたのは、もう見慣れてしまった時代錯誤な、青い装束を纏ったランサーだった。

「よお、お互い生き残ってるみたいで何よりだな」

心臓がものすごいスピードで脈打つ俺に対してランサーはにこやかに話しかけてくる。

こいつとは初日の因縁がある、しかし殺すときは躊躇しないことも知っている。

なら何しにやって来たのか?

俺はもう聖杯戦争に関係無い筈だ。

「そういやセイバーはどうしたんだ?」

どうやらこいつはその事を知らないらしい。

しかしあの決闘の顛末をコイツに話していいものか。

「…セイバーは、もういない」

「そうか、あいつとは決着つけたかったんだけどな」

嘘は言っていない。セイバーはもうこの家にはいないのだから。

「まあでもそっちの方が都合がいいかもな。実はお前に会って欲しい奴がいるんだ」

「会って欲しい奴?」

「俺のマスター」

ランサーの言葉に驚き数秒間沈黙するがすぐに会話を再開する。

「どういうことだ?」

「実はそいつもお前と同じで巻き込まれた口でな。まあお前と違って自分から召喚した訳じゃねぇみたいだが。あんまりにもうまくいかねぇてんでパニクっちまってんだ」

ランサーは心底悩ましそうにため息をつく。

それはランサーの快活なイメージとは少し離れて見える。

こいつも色々と苦労しているのかもしれない。

「それで、俺が会ってどうしろと?」

「てきとうに話聞いてくれりゃいい。正直期待はしてねぇ、藁にもすがるってやつだな」

「断ったら?」

「まあ、しゃーねーな」

どうやら罠の可能性は低そうだ。

「引き受けたら何かあるのか?」

「めざといな、俺のマスターが知れるのじゃダメか?」

成る程、確かにランサーのマスターがわかれば雪ノ下とセイバーの助けになるかも…、いやいや、俺はもう聖杯戦争には関係無いんだった。

「言ったろ、俺はもう脱落してんだよ」

「なら何が欲しいんだ?ムカつくやつでもぶっ飛ばしてやろうか」

ムカつくやつかまあ、今までのトラウマをほじくりかえせばいくらでもいるが、既に俺は自分の糧にしているのでもう気にしていない。別に思い出したくない訳では決してない。

それにそんなことにサーヴァントを使うのは牛刀割鶏というものだろう。

「まあいいや、行ってから考える」

「おう、わりぃな」

こいつが約束を反故にするような奴でないことはわかっている。

それに暇だしな。

俺はちょちょいと支度をして玄関に向かった。

「あれ、お兄ちゃん、またお出掛け?」

その途中、小町とでくわした。

「ちょっと散歩」

「ふーん、あ、そういえば玉子きれちゃってたからついでに買ってきて」

「気が向いたらな」

「えー、お兄ちゃんの意地悪、おたんこなす、ラノベ主人こー!」

「いやいや、いかないとは言ってないから」

誰がラノベ主人公だ、俺をあんな楽してハーレム作る連中と一緒にするな。いやなれるもんならなりたいが。

そして俺は家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

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