fate/Tiba-si night   作:d d

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彼女は元来た道を引き返しそれぞれの道は交差する

interlude 13-1

 

かの騎士王が私を必要としている。

何よりも望んだ王がこちらに手を差し伸べてくれている。

だがあれは偽物だ、誰かが王の姿を謀った紛い物。

だが聖杯戦争を戦うなかで濁ってしまった彼女の瞳でそれを判断することはできなかった。

目の前の王が携える剣の黄金の輝きは生前見たものと変わらないから。

その表面だけをなぞったような贋作が自分自身とダブって見えたから。それを偽物だと判断できなかった。モードレッドの思考を曇らせた。

何より彼女は以前から誰かに必要とされたがっていた。

その手は少しずつ上空の船へと伸びていく。

しかしその途中、正面に以前のマスターの姿が見えると挙動は止まってしまった。

目と目が合う。

その瞳に糾弾されている気がした。

今の自分の姿を見られたくないと思った。

だがそれを振り払う。

向こうだってくそったれな人間だ。回りを見下し自分を特別な存在だと勘違いし、自らの都合のためなら平気で他者を踏み台にする。

その瞳も王とは正反対の濁り腐っている。顔つきもだらしなく、無知で非力で臆病な人間らしい人間。

オレを助けたのだって自分が生き残りたいから。楽に手放せるのなら直ぐにそれを選んだ。

だが結局のところモードレッドが彼を言い表すと、わからないという結論に至る。

彼のサーヴァントとして戦ったランサー戦、バーサーカー戦、アサシン戦。どれも思い出すたび悔しさにうち震える。己は最高の騎士では無かったのか。力も業も何一つ通用しない。

けれどそんな痛烈な記憶の端々におかしなものが紛れ込む。

それは彼の行動、それは彼自身の為ではない気がする、ではいったい誰のためだったのか?

すると元マスターが口パクで何かを伝えてくる。

そうだオレを引き留めろ。父上を倒すために、非力なお前にはオレが必要だろ?必死に、その姑息な頭でオレにお前を守らせてみろ。

そして少年からのメッセージが届いた。

――――――お前の好きにしろ。

それがいったいどう意味なのかセイバーは一瞬理解できなかった。

だが遅れて、臆面通りだと理解する。

それで何かが変わった訳ではない。

彼女はただ言葉通り彼女らしく振る舞うことにしただけ。

だがそれは間違いなく彼女に絡み付いた重い枷を取り除いた。

ならば反逆の騎士である彼女がとる行動は決まっている――――――。

 

interlude out

 

上空に浮かんでいるであろう船へと手を伸ばすセイバーが見えた。

そして彼女と目が合う。

会うのは一日ぶり。しかしその姿は記憶の彼女より弱々しく見えた。

今手を伸ばせば届くのかもしれない。決して届く筈の無かった彼女に。呼び掛ければ答えるのかも知れない。

だがそれはできない。これは罰なのだ。

モードレッドという英雄をはき違えていた自分への。

彼女が抱えていた闇に俺は気付いていた。しかしそれは怒りであって、常に強気な彼女の憤りなのだと。

それは一面では正しい、しかし別の面では間違っていた。

強さの影に弱さが隠れていた。

彼女の強さは押し付けられたものも多くある。だからこそ彼女はアンバランスな存在になってしまった。

だから俺はせめてもう好きにしろとそう伝えることしかできなかった。

もしセイバーが向こうにつけば、すうせいは決まったも同然だ。

そのまま人類は滅亡するのかもしれない。どのみちあのアーサー王には勝てないのかもしれない。

だがそれは彼女がどうこうすることじゃない。生き残りたいのなら自分達で頑張れば良いのだから。

これ以上彼女を巻き込むようなことはできなかった。

人類の未来が決まったり、決まらなかったりする一瞬。

おそらく彼女は向こうにつく、だって彼女は必要とされたがっているから、王に認めてもらいたがっているから。

 

interlude 13-2

 

そしてセイバーが王の誘いに返答する。

「モードレッド卿?」

セイバーは半端に伸ばした手で突き立ててあった剣を取った。

「父上よお、少し見ねえ内に腑抜けたみたいだな?オレは反逆の騎士モードレッド、お前の傘下には入らねえよ!」

そう言って切っ先をアーサーに突きつけた。

「貴様に父と呼ばれる筋合いはない」

そう言うとアーサーは光の粒になって消えていった。

それと同時に船が上昇を始める。

「アーチャー、バーサーカーを追え!」

「わかっている!」

すぐさまアーチャーが動く。しかしその前を塞ぐ影が現れる。

「なんだ!?」

ガシャン!

別の場所でも金属同士がぶつかる音が響く。

見るとセイバーも銀色の鎧を纏った騎士と戦っている。

「てめえ、ガウェイン!」

ガウェインって、円卓の騎士の一人の!?

「小僧、代われ!」

急にアーチャーの声が響く。

慌てて剣を投影し、アーチャーが敵を弾き飛ばしたところに割ってはいる。

アーチャーはそのまま弓を構えると矢を射出する。

すると矢は何も無いところで音を響かせて墜落していく。

その延長線上をちらと見ると。

赤い髪を風になびかせながら、奇妙な弓を構える人物がいた。

セイバーの言葉を信じるのならこいつらは円卓の騎士なのか。まさかこれがアーサーの能力なのか。

「くそっ!」

目の前の騎士と剣を合わせる。

しかし俺でも戦えるということはサーヴァントレベルの能力は与えられていないようだ。

だが。

しゅんしゅんしゅん。

周囲に新たな騎士が現れる。これでこの場にいるのは全部で6人。

こっちで戦えるのは俺とアーチャー、遠坂にセイバー…。

「ユキノオー、へこんでる場合じゃねぇぞ!」

「セ、イバー…」

妹さんが立ち上がる。ひとまずは大丈夫みたいだ。

一人少ないがこれなら持ちこたえるのは可能だろう。

だがバーサーカーを追わねばならない今は一刻を争う。

「アーチャー、なんとかならないのか!」

「…」

向こうは百戦錬磨の円卓の騎士だ。一人一人の能力はそれほどでもないがその連携力が凄まじい。

「くそっくそっ!」

結局数十分打ち合うと騎士達は消えてしまった。

アーチャーはすぐさまバーサーカーを追う。

「せーんぱーい、何処ですかー?」

するとグラウンドの入り口の方から声が聞こえてくる。

見ると高校生くらいの女の子だ。

「あ、いた」

女の子は何かを発見したようでそっちに走っていく。

そこにいたのは比企谷だった。

 

interlude out

 

「もう、いきなり呼びつけるなんてひどいです、もしかしてもう彼氏気取りですか?」

「いや、ランサー貸してくれって言っただけなんだけど…、ていうか登録名の愛しのいろはってなに?」

「先輩が簡単にケータイ渡すからです」

「なあ、比企谷、この子は?」

「ランサーのマスター」

「本当か!?ええっと、君、ランサーは今どうなってる!?」

「え、そ、それが、私もよくわからなくて…、令呪も消えちゃうし」

令呪が消えたということは、ランサーはもう。

「くそっ、遠坂!」

「アーチャー、そっちは?」

その場に緊張が走る。確か冬木というのは衛宮達の故郷だった筈だ。

「先輩、どうなってるか教えてくださいよ?」

不安そうな顔で俺を見上げ、裾を引っ張ってくる。ええい、あざとい。

しかしこの事をどう伝えたもんか。

「一色、よく聞け、ランサーは消えた」

「え?」

俺の言葉を聞いた一色の顔が固まる。

俺はランサーと交わした約束通りお願いをし、

ランサーもそれを守っただけだ。

だが確かにあのバーサーカーと一対一で戦えというのが無謀だったのはわかる。

「そう…ですか…」

一色は俺の腕に顔をうずめる。俺は何もできずに立ち尽くしていた。

「本当?!本当ね?アーチャー」

凍えるような沈黙を遠坂凛の声がかきけす。

「バーサーカーは消滅したって、たぶんランサーと相討ちで」

「本当か!」

すると衛宮がこっちに近づいてくる。

「そのままで良いから聞いてほしい、ランサーが守ってくれたのは俺の大事な故郷なんだ。本当にありがとう」

「私からも、ありがとう」

すると一色が顔を上げる。

「先輩、ランサーは、頑張ったんですか?」

「ああ、バーサーカーはとんでもない化けもんだ。俺なんか手も足も出なかったからな」

「そんなの…、当たり前じゃないですか…」

一色はそう言って微笑んだ。

「それで、一時休戦ってことで良いのかしら、セイバー?」

「さあな、マスターに聞いてくれ」

遠坂凛が雪ノ下を見る。

「それで…良いと思います」

覇気の無い声ではあるが、ここに休戦協定がなされた。

「それじゃあ、今後の予定を決めましょう」

そのまま遠坂凛が場を仕切り会議が始まる。

現在時刻は午後1時、後23時間で敵を倒す算段をたてなければならない。

「取り合えず今日は休むとして、何処か集まれる場所、少し拓けた所が良いわね。」

しかし誰も意見を言うことができない。

「冬木の家なら丁度良いけど、今からじゃな…」

衛宮の言葉に沈黙に耐えられない一色が続く。

「えと、私の家も無理、です」

それに便乗する俺。

「俺んちも無理だ」

「私の家も、…実家は何があるかわからないですし…」

「なら学校を使うといい」

するといつのまに現れたのか、平塚先生がそんな事を言い出した。

「何時から鋳たんですか?」

「ついさっきだ。戦いの後始末を雪ノ下家に頼まれていたのでな、この瓦礫の山をどうにかしないとならん」

「いや、状況わかってるんですか?」

「何となくな、なーに、子供の事情なんてわからんことの方が多い。それでも支えになってやるのが教師ってもんだろう」

先生は豪快に笑ってそういう。

やれやれ、この人には敵わないな。

「それじゃあ、使わせていただきます。事後処理は私達も手伝いますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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